じゃんぬ「割と観光名所まばらじゃない?一日一日行ってたら一週間間に合わないわよこれ、どうするのかしら」
早苗「王様がワープホールを設置し時間を短縮するみたいですよ!移動の時間も旅行にあてるのだとか!ここから各所までワープ0分!交通費無料!混雑の心配はありません!」
天空海「ダルい渋滞とかないわけ!?やたー!ギリギリまで、閉店まであそべるじゃなーいうれしー!」
ヤマト「解るよ。混雑続くと、車両を跳ね飛ばしたくなるもんね」
サラ「装甲車改良しろなんて言い出した時は焦ったぞ、全く…」
榊原「じゃあみんな。思い切り遊ぶ為にももう寝ましょう。旅行で疲れてベンチキーパー、なんて高校生活の過ごし方は認めないからねー」
「「「「「はーい!」」」」」
アカネ「じゃあ、皆また明日…置いてかないでね、寝坊しても置いていかないでね…!」
ゆかな「心配するな、財布は持っておくさ」
「持ってかないでぇ!?」
カーマ「それでは皆さん、おやすみなさい。明日もまた、よろしくお願い致しまーす♪」
…そして、寝静まった女性の部屋。
リッカ「──」
扉前の床が踏みしめられる僅かな音を知覚し、そろりとベッドを抜け出しリッカは扉へと手をかける──
「…それでは、リッカ殿の故郷の安寧をいのって、乾杯」
「うん、乾杯。グドーシもお疲れ様」
一行が寝静まった夜の頃、リッカはグドーシを部屋に招き、優しくそよぐ海辺にて共にグラスにて飲み物を嗜みながら乾杯を交わす。一行は明日の旅行と、やはり先の激戦の疲労により寝静まり、穏やかな寝息を立てていた。二人は言葉少なくも万感の思いで、海と空…救った世界に立っている。
「二人であの小さい屋敷で、閉じた文化の探求をしていた頃より随分と遠くまで来られました。御学友に恵まれ、故郷に恵まれ…リッカ殿の力強く揺るがぬ足取りは、彼等の事を知っていたからであると何よりも理解できましたぞ」
グドーシと離れた後、彼女は潰れるわけでも、迷うわけでもなく彼女として精一杯生きた。誰かと触れ合い、そして絆を紡ぎ、それでいて一生懸命誰かの力になった。彼がしてくれた事を、誰かの為に行っていた。その結果と頑張りが、彼女の周りを取り巻く今なのだろう。グドーシはその奮闘に、心からの賛辞を送る。
「憧れてたんだと思う。誰かの為に頑張って、誰かを救うって生き方が凄く…綺麗だと思ったから。グドーシのしてくれた事、救ってくれた命に恥じない様にって形振り構わず頑張ってたんだよ。──いつかまた、会えるって信じてたから」
彼女は、彼の生き方を美しく尊いと思った。自身の身を省みず、自身の命を誰かの為に懸けるという事の素晴らしさと難しさを教えてくれた恩人の生き様をどうしても翳らせたくなかった。自分が、なんとしても体現し続けようとも思った。或いはそれは、彼女自身が初めて『尊重』したものであったのだろう。彼の生き様が、とても美しいと思ったからだ。
「…まずは謝らなくては。あの日お別れした時、僕は…もうそなたと会えるとは思っておりませんでした。起動停止時間…寿命、活動限界が迫っていたが故に。拙者は死期を悟っていたのです。そなたと過ごす時間に、いつでも」
「……うん」
かつてのグドーシの寿命は極めて短かった。どこぞの三流魔術師が真似で作った失敗作のホムンクルス。報復を恐れ維持環境だけ残して廃棄したモノ。だがその時間は、常に一刻一刻と迫る死を知覚し、終わりに向かうものだったのだ。彼にとって。
「……ありがとう、グドーシ。本当に。本当に助けてもらいたかったのはあなたの筈なのに。死にたくないと思っていたのは、あなたの筈だったのに。私は…あなたに、助けられてばかりで…」
リッカはあの時、貰った救いを受け取るのに夢中で、精一杯で。彼がどんな状態か、彼がどんな存在で、どんな思いで日々を生きていたか考えもしなかった。あの日の手紙を読むまで、彼が人とは違うものであるなど考えもしなかった。夜の塩風が髪を、明くる日の悲嘆が瞳を揺らす。
「何も…してあげられなかったね、私。助けを求めたかったのは、きっと…」
「何を申されます。僕は君と出逢って、君と過ごした全ての時間にて救われたのです。あなたはとっくに、僕を救っていたのですよ」
リッカの少なくもくすぶる悔恨を、優しく解すグドーシ。黒髪と蒼眼の麗しきホムンクルスが、そよぐ海風に目を細める。
「僕は廃棄され、捨てられた誰からも不要とされていた存在でした。恥ずかしながら憎しみと怒りも懐いてはおりましたが、それらは誰も悪くないのだと踏ん切りを付けました。付けましたはいいのですが、拙者はその後に空っぽになってしまっておりましてな」
そう、産業廃棄物として産み出された憎しみと怒りを彼は捨て去ったが、そうすれば彼の中には悟りの萌芽以外には何も残らなかったという。彼の全身は、その精神性に至るまで世を滅ぼさんばかりの憤怒と憎悪を宿していたのだと彼は語る。
「僕は生き甲斐が、何か自分が世にいた証が欲しかった。そんな中理不尽に虐げられるそなたを見付けて…後は知っての通り。僕はあなたに声をかけ、自身の中身に生きる歓喜を詰め込み、笑顔で逝くことができました。僕はあなたに、出逢ったその日から救われているのです。だから…」
だから、そんな事は無いのだと彼は告げる。あなたが自分にしてくれた事、残してくれた事はとてもとてもたくさんあって。確かに自分は救われていたとグドーシは告げる。あの日から卒業式までの一年足らずの時間は、間違いなく自身にとって救いであったと。そして、今も。
「今もあなたは元気に、快活に、愛らしく自らの人生を生きている。僕が何かを誇り、世の皆に示すものがあるとするならば…それは、あなたの人生。あなたという存在そのもの。あなたがあなたの人生を取り戻し、自らの人生を生きていることそのものなのです。かけがえのない貴方のすべてが、僕にもたらしていただいた救いの全てなのです。リッカ殿」
彼は怒りと憎しみと共に、世に在る全てへの執着を捨てていた。人の七欲も生きる四苦も、間もなく滅びる彼にはなんの意味も持たないものだ。それでは、世を彷徨う亡霊でしか無かったのだと語る。だが彼は世に、たった一人の存在を心から助けたい、救いたいと思った。
我欲なくば悟りを志さず、我欲あらば悟りには至れぬ。彼に彼女は何もしなかったなどとんでもない。静かに誰にも知られず命を終える筈だった人形に意味をくれたのはあなただと、そして今も尚、自身の誇りはあなただと星空を見上げる。
「あなたは僕に、悟りをくれた。僕の自慢はたった一つ。この世界で一番最初に、あなたに助けてもらえた事なのです。涅槃に至るよりも、僕にとってはあなたの生を見守り、共に在ることが大切なのです。あなたが幸せな生命を送り、静かに目を閉じる事。それが僕がこの世界にいる、無二の理由であるのですから」
ただ、彼女の人生と幸福を愛している。幸せであってほしいと、幸福を掴んでほしいと静かに見守る事こそが、彼がサーヴァントである理由であり唯一の我欲。如来に至らぬ悟りへの抑止。だからこそ、彼はリッカの傍に在り続けるのだ。
「僕をこれからも、あなたの傍にいさせてくだされ。僕は絶対にあなたを一人にはしません。哀しませはしません。ですからどうか、忘れないでほしい。あなたは決して独りではない。沢山の縁が、絆が…僕があなたを支えます。ですからその生命を、憂いなく駆け抜けなさいますよう…」
「──うん。ありがとう。本当にありがとね。こうして話せてる事が、一緒にこの世界にいる事が…私にとっての、最高の幸せだよ。グドーシ」
「ふふ、ではこの幸せがいつまでも続く事を願って」
「うん、ずっとずっと二人一緒に生きる事を願って」
「「乾杯」」
静かにグラスを打ち合わせ、夜の夏草にて互いの時間を過ごす。それはあの日別れてしまった別離の続き。魂の再会による、止まってしまった時計を、二人で動かす為の儀式。
「明日から、忙しくなりますなぁ」
「まだまだ、里帰りは終わらないね」
持ち込んだジュースが空になるまで、飲み物が無くなるまで、星の輝きが眠るように促すまで、二人は今までとこれからを語り続けた。
──別れたあの日以来、伝えられなかった全てを伝えるように。二人の夜は、静かに更けていく──
グドーシ「それでは、僕はお暇致します。また明日、お会いしましょうぞ。リッカ殿」
リッカ「うん!夏草、いっぱい楽しもうね。皆で一緒に!」
グドーシ「無論にござるよ。それでは良い夢を。おやすみなさいませ、リッカ殿」
リッカ「お休み、グドーシ。いっぱいいい夢、見るからね」
そっと扉を閉め、別れる二人。リッカは静かに言葉にする。
リッカ「──ありがとね、カーマ。気を遣ってくれて」
ひょこり、とベッドから抜け出す少女。──人払いに防音でアシストしてくれていたのは、愛の神カーマである。
カーマ「とても素敵な一時でしたよ、リッカさん。あの日に何も出来なかった私も、ようやく愛の神として本懐を果たせて…感無量です」
リッカ「これからもいっぱいお願いするから、大丈夫。だって、ずっと一緒だからね。カーマとも、グドーシとも」
カーマ「──、……。…明日も楽しむために、今日は眠りましょうか。身体が保ちませんよ?」
「そだね。さ、皆で一緒に寝よっか」
キングサイズベッドにて、二人はベッドに潜り込む。あの日の始まりを知る者達として、これからの未来に思いを馳せながら二人は目を閉じる──。
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