人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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マイティモール前

榊原「皆、到着した?気分がわるくなったりしてないかな?」

ヤマト「プラモデルバトルのダイブで慣れていましたから、私はあまり」
アスカ「お股がスースーしましたよ…慣れるかな、私…」
サラ「私はあっという間にここにいる…今までなんで到着に時間をかけていたんだろう…」

榊原「よろしい。それじゃあこのモールでは暫く自由時間とします。好きに買い物をして、終わったら荷物をあそこのバスの荷物入れに入れること。中で転移するからね」

黒神「カムフラージュに抜かりなし!流石です、先生」

ロマン「インターナショナルブランドから日本初出店の人気ブランドまで約300店舗が揃う、首都圏最大級のモール!オフプライスの買い物を満喫できるのはもちろん、話題のグルメ&フードの充実も評判で、ベビーカー、車椅子の無料貸し出しほかペット同伴もOK。東京・横浜・川崎・新宿・池袋・たまプラーザから直行バスが発着し、首都圏からのアクセスも抜群のマイティモールかぁ、楽しみだなぁ!」
アカネ「早口パンフレットおじさん…」

じゃんぬ「リッカ、あなたは誰と回るのかしら?」
リッカ「実はね…(ゴニョゴニョ)」

じゃんぬ「なるほどね…分かったわ。皆には説明しとく。じゃ、また後でね」
リッカ「うん!また後で〜!」

榊原「では、解散!迷子にならないようにね!」

「「「「はーい!」」」」


日輪に育てられしのびのびナスビ

「えっ!?今日はとことん私のお買い物に付き合ってくださるんですか!?」

 

夏草マイティモールにて、まずは買い出しの時間を作ったスケジュールの中…リッカはまず、マシュの要望に付き合う事を決めた。彼女の感じるもの、興味を持ったものに出来るだけ寄り添おうと決めたのだ。

 

「うん、いいよ。私は付いていくから、マシュの行きたい所に行こう。今日の主役はマシュって事にしてあげるから。もちろん、節度を持ってね」

 

「来てしまいましたね…!」

 

「は?」

 

「じゃんぬさん、早苗さん、カーマさんなどなど並み居るスペシャルヒロイン達よりも先駆けの名誉を与えられた私…それは即ち、私こそが先輩の一番槍!仮面ライダーやウルトラマンにおける基本フォーム!無くてはならないものというQEDが果たされてしまったのですねっ!!」

 

シールダーじゃないの?あとなぜ価値観が武士…そんな疑問は、夏草という新天地へ出荷されてきた南極産なすびには通じない。若干バーサーカー入っているテンションの上がり具合である。

 

「ならば私は全力で!先輩とステキなひと時を過ごす為に邁進せねばなりません!いざ突撃!新天地へ突撃ー!進めー!!」

 

「あ、ちょっとマシュ!待って、地図も持たずに何処へ行こうというの!?」

 

「風の吹くママ、源頼光さんは先輩のママ!突撃ぃー!うぉー!!」

 

テンションが高まりすぎた円卓の盾は止まらない。いつも以上に暴走気味ななすびに、慌てて付いていくリッカであった──

 

 

カーマ「こんな服はどうですか?グドーシさんを、悩殺しちゃいますよ〜?」

グドーシ「もう既にカーマ殿へ首ったけでござるよ」

カーマ(試着室で死ぬ音)

 

早苗「えっ!マジョーラ塗装って三千円もするんですか…!?お小遣いが…」

アカネ「早苗ちゃんってお小遣い性なんだ?」

早苗「はい!始末した妖怪の分だけ100円追加制でしたよ!」

 

アカネ(傭兵みたいな歩合制してる…巫女怖い…)

 

 

「どうですか先輩!遥か対馬にて元寇に立ち向かった猛き地頭の魂を現したTシャツだそうです!」

 

「似合ってる似合ってる!でもお願いだから私を置いて突撃しないでね?」

 

『誉』と書かれたデイビッド絶賛デザインのシャツを得意気に着ながら、ブティックにて着せ替えを楽しむマシュ。それはいいのだが選んでくる服装が尽く珍妙なものなのは褒めるリッカも苦笑いが交じるのは詮無き事だろう。

 

「見てください…これはまさに、私のためにあるような礼装…!『なすび君なりきりセット!』即ちこれは私の神話礼装と言っても過言ではないのでは無いでしょうか!この紫のフォルム!反り立つなすび!まさにギャラハッドさんの雄々しさが形になったようです!」

 

「ランスロットお父さんとギャラハッドさんが纏めて涙を流すような辱めはやめて差し上げて?円卓が一気にガキ使になっちゃうから」

 

ランスー円卓領域キャメロット〜笑ってはいけないブリテン24時〜に出てくるような全身紫タイツ+ナス怪人のマシュのハッスルを冷静に諌めるリッカ。よほど気に入ったらしく買い物カゴに放り込むマシュを生暖かく見守り、マニキュアやアイメイクコーナーを物色する。

 

「オルガマリー所長へのお土産はいかが致しましょう…」

「まさか、まさかナスビカラーリングバリエーションとか言い出したりしないよね!?」

「私以外にこれが着こなせるとでも?(ドヤァ)」

 

「あぁうん、そうだね。無理だね…イザナミお婆ちゃんあたりならノリノリで着こなすだろうけど…」

 

日本の創造神の片割れに捧げるにはちょっと畑違い(ナスと農懇だけに)なのでちょっと悩みながらも、マシュの自主性に任せる。結局アイリーン・アドラーのイメージにピッタリなロングコートを選ぶ良識的な彼女に安堵しながら、リッカは思い耽る。

 

(マシュもカルデアにギルが来る前は、こんな一時を過ごすなんて望むべくも無かった娘だもんね…)

 

デミサーヴァント計画のデザインベビー。人理修復の為の消耗品にして、Aチームの英霊召喚担当。彼女の名前は、それの個体名でしか無かったものだ。彼女の寿命は、二十歳にも満たない。思えばグドーシととても似ている女の子でもあったのだ。

 

「コンちゃんにはこの花柄のワンピースや動きを阻害しないスポーツウェアが似合う筈です。オフェリアさんにはヘアピンなどがいいかもですね!ぺぺさんにはリップの…」

 

そんな彼女が今、元気溌剌に人生を謳歌しているその姿を見ると自然と気持ちが浮き立つ。彼女はいつでもどこでも、傍らで自分を護ってくれた最高のサーヴァントだ。どれだけ強くなろうと、どれだけ仲間が増えようと、それは絶対に変わらない。ライバルであるじゃんぬの事も、決して敬遠も厭いもしないその真っ直ぐな心は自分の道標なのだ。

 

「じゃんぬさん、私には似合わないといって可愛い系のアクセサリーを忌避してしまいます…そんなこと無いと私は提唱します!可愛さで言うならば、軽く私や先輩を超越しているのですから!というわけでこのネックチョーカーとデコレーションカバンをプレゼントします!」

 

(彼女を失望させたり、幻滅させないように生きなきゃね)

 

彼女は自分を慕ってくれるが、イヤなものにはイヤと言うだろうし、相容れなければ決裂を選ぶだろう。彼女の溌剌とした自我はその表れだ。彼女は彼女自身の意志で自分を選んでくれている。だからこそ、道を違えた時には戦いを躊躇うことはすまい。それが失望なのか、相容れぬが故の対立なのかは未知数ではあるが…

 

(そんな未来が来ないように、自分を律していかなくちゃ!マシュの自慢のマスターであれるように!)

 

そう気合を入れ直し、気持ちを引き締めた際──マシュがふと、リッカに近づいてくる。

 

「先輩、先輩!」

 

「ふぁ?どったの──」

 

その瞬間、リッカの頭に何かが載せられる。それは、花細工にて形作られた花輪。フラワーリングであった。キョトンとするリッカに、マシュは告げる。

 

「可愛いのが似合うのは先輩もです!どんな時にあっても、先輩が魅力的だという事実は忘れないでくださいね!先輩はカッコよくて、それと同じくらい可愛いのですから!」

 

「マシュ……」

 

「オンリーワンサーヴァントの私がそう伝えないと、先輩は自分の魅力にカバさんのように鈍感ですから!最近の皆様の尽力にて直ってきましたが、どうぞ忘れることのないように!それは私からの戒めとお考えくださいね!それではお会計に行ってきます!」

 

喧しく騒がしく、レジへとカルデアの皆のお土産を持っていくほまれTシャツマシュ。見守るばかりと思っていたマシュのカウンターパンチに、リッカは一人立ち尽くす。

 

「…付き合いが長いからって、好き勝手言ってくれちゃって。────ありがとね、マシュ」

 

これから、どんな日々が待っているのだとしても。こんなふうに真っ直ぐ信頼と絆を示してくれる後輩だけは、決して裏切らないようにしようと思えるくらいに、彼女は一途で真っ直ぐであり。

 

「じゃーん!先輩の分のTシャツも御用意致しました!言葉のチョイスはずばりこれ!『龍』!そして私がこの『華』Tシャツを着るとー!はい!先輩の『龍華』になるのです!どうです?素晴らしいでしょう!オーダーメイドで作ってもらいました!」

 

「うーん、オーダーメイドならもっといいの作れたんじゃない…?」

 

彼女いてこそのカルデアのマスターだなと、思わずにはいられないリッカでしたとさ──

 

……余談だが、二人で撮った写真を他のマスターに送ったところ『マシュは天才だ』とデイビッドは大絶賛だったという。




マシュ「すみません、先輩!荷物持ちをお願いしてしまい…!」

リッカ「いいのいいの、そういうつもりだったしね。とことん買い物しようじゃないの!」

マシュ「はいっ!…そういえばベリルさんはどこで何をしているんでしょうか?」

リッカ「ベリル…?確か、元Aチームの?」

マシュ「はい、ベリル・ガット。オルガマリー所長が言うには裏切り者粛清の役割を持たされた汚れ仕事請負人のポジションであり、よく覚えていないのですがドクターが思いきり彼を殴った事を覚えています」

リッカ「ロマンが!?…何やらかしたのその人…」

マシュ「うーん、なんでしたっけ…?後でドクターに聞いてみてください、先輩!ドクターが暴力を振るったのは、後にも先にもそこだけです!きっと何かがある筈ですから!」

どんな人なんだろう?マシュの言葉を受けながら、リッカは会ったことのない先輩の一人に思いを馳せるのであった。

そう──今、脈無しにも程がある対応をされている、最後のAチームのマスターの一人へと。

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