人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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イザナミお婆ちゃんと並行して御依頼していたイラストが届きましたので、ここに紹介させていただきます!

アジ・ダハーカの頭脳体こと、アジーカちゃんです!ラスボス感たっぷりでお送り致します!


【挿絵表示】


本来の完全体はリッカの大人の姿+淫紋付きなのですが、こちらは自尊の怪物に手を差し伸べた瞬間の姿なので、あくまで脅かし程度のアジーカちゃんなのです。覚醒したら白い鎧になりますからね!

という訳で、自尊の怪物のページにも貼っておきますのでどうぞ御堪能ください!サイトはSKIMA様、イラストはケセルム様にご依頼しました!

アジーカ【ムフー(嬉しげ)】


うたうちゃん「皆様に心配をかけるわけにはいきません。少し休息に致します」

ディーヴァ(解ったわ。じゃあ周囲の警戒をしておくわ。お休みなさい)

うたうちゃん「はい、おやすみなさい──」



女の子「あ、うたうちゃんだ!」

うたうちゃん「すぅ…」

男の子「寝てるよ、疲れてるのかな?」

女の子「怖いお巡りさんと同じくらい頑張りやさんだもんね、うたうちゃん」

男の子「ねぇ、ちょっと耳貸して?あのね…」

女の子「…うん!いいね!やろうやろう!」

男の子「じゃあ準備して、起こさないように…」

女の子「そーっとだよ…」


孤高の天啓と奮闘

「よし、こんな所か。夏草は民の一人一人の意識が高いのが長所、ゴミが少ないのがその証だな。生徒会長として鼻が高い!」

 

あっぱれ!と扇子を開き清掃活動に勤しむは、生徒会長黒神愛生である。かつての自らの驕りを恥じ、誠心誠意誰かに尽くす事を学んだ、真なる誇りの体現者。例え完全オフの観光であろうとも、自らは誰かの為、何かのために動いている少女である。今も誰かに頼まれた訳でなく、自主的に公園の見回りと美化活動に勤しんでいる。別方向では3人が無慙にしょっぴかれたのだが、彼女には知る由もない。

 

「魔神が溜め込み、廃棄した悪意による爪痕は僅かながらも残っている。それらを完全に浄化するもまた私が行うべき業務だろう。皆が遊ぶ際にもやるべきことをやるのが生徒会長という生き物だからな」

 

自己の律しと研鑽を是とし、皆が遊べる時間を確保する。真面目極まる奉仕を体現せし黒神が、少なくとも確かに拾い上げたゴミを纏め、ゴミ箱へと投げ捨てた。ノブレス・オブリージュ。高貴、あるいは身分ある者の勤めとして、彼女は全力を尽くしたのである。

 

「…さて、では今日も始めるとするぞ。今日は、いや今日こそは…」 

 

凛とした雰囲気から一転、若干悲壮げな決意を掲げ別の袋を持ち立ち上がる黒神。その袋の正体は、清廉公園内にいる生き物に自由にやってよい餌…即ち、動物触れ合いのグッズである。

 

そう、彼女は大の動物好きだ。動物、すべての生き物を分け隔てなく愛している。犬もねこも、ライオンも虎も等しく愛している。躍動する命、野性というものが好きなのだ。そんな野性と触れ合える機会を、彼女は逃したりはしない。

 

「今度こそ、今度こそ皆のようにもふったり、愛でたり、可愛がってみせるぞ…!絶対にだ…!」

 

愛でるという言葉とは対照的に、どこか悲壮感すら漂わせている。黒神。その理由は、彼女に今から降りかかる無常にて判明することとなる──。

 

 

ヤマト(ぽけ〜…)

 

アスカ「…ヤマトさんがぼーっとしてると、鳥とかがすぐに寄ってくるんですよね」

 

サラ「あいつの無害さと温和さを感じているんだろうな。動物とは、心の機微を敏感に感じ取るものだ」

 

アスカ「じゃあ、黒神さんが全く動物に懐かれないのも…」

 

サラ「あぁ、その心の機微が問題だろうな…」

 

 

清廉公園には、人に慣れた様々な動物たちを園内あちこちで見る事ができる。犬や猫、鳥はもちろんヤギや羊、馬や牛、アルパカといった普段触れ合えぬ様な動物達も、近い距離で接する事が可能だ。餌やり、写真撮りも可能な程に親しい触れ合いが出来ると触れ込んでいるのだが…

 

「…誰も近寄ってこない…それどころか遭遇すらしないぞ…?」

 

餌を持ち、公園敷地を徘徊する黒神。目的は当然敷地内の動物との心温まる触れ合いなのだが、その思惑は果たされることなく黒神はただ敷地内を徘徊するのみである。彼女の購入した餌は、未だ誰とも触れ合えず保たれたままである。

 

(まだか…まだ、克服には至れぬのか…!)

 

そう、他者より隔絶した才能を持ち、リッカに逢うまでは傲慢と言って差支えなかった黒神。更生は果たしたものの、その気風溢れる生き様は一つの欠点を齎したのだ。即ち…動物に全く『懐かれない』のである。

 

「これが他者を凡愚と、十把一絡げと嘲っていた者の末路か…」

 

彼女の周囲に動物はやってこない。視界に現れたとしても威嚇か、一目散に逃げ去るかである。彼女は学生となってから今日にいたるまで、動物達と触れ合えた記憶がまるでないのである。

 

ペットショップでは全ての動物に怯えられ、捨て猫や捨て犬は力を振り絞って威嚇してくる始末。鳥は近付けば一斉に飛び立ち、魚は影すら見せなくなる。彼女の孤高を良しとした生き様が、正しく伝わった結果だとしてもこれには堪えた。皆が可愛らしく幸せな一時を情報発信にて伝えている様子を、歯噛みしながら見ていたものである。

 

「私もモフモフしたい…思い切りなでなでしたいんだ…!わんにゃん王国に入れてくれ…!涙を流すくらいにモフらせてくれ…!」

 

自分以外は全て有象無象。傲慢の報いなのか、その動物に好かれぬ体質は文武両道、才気煥発の報いとしてもあまりにも重い代償であった。身近な存在と時間を共有できない苦しみと苦悩、それはあまりにも大きく、悩ましいほどに絶望は深い。温もりというものに彼女は飢えているのである。ついた渾名が『逆ムツゴロウお姉さん』である。数多の動物、全てが彼女と対立しているといっても過言ではないのだ。

 

「頼む、せめて一撫で、一撫ででいい…むっ!」

 

「ニャ~」

 

悲壮すぎる妥協を口にしながら嘆いている黒神の目の前に、猫が現れる。のびを行い、あくびをしている気ままな猫だ。

 

(こ、これはチャンスではないか!?神は私を見捨てていなかった!よ、よし…距離を詰めて触れ合って見せるぞ!)

 

「ニャ?」

 

怪訝そうに首を傾げる猫に、黒神がジリジリと距離を詰めていく。冷徹に、冷静に距離を詰めていくそれはハンターが如くだ。

 

「怖くない、怖くないぞ…大丈夫だ、ちょっと頭をナデナデするだけだ、優しくぎゅっとするだけだからな…はぁ、はぁ…!」

「!…シャー…!」

 

そのただならぬ雰囲気に、自然と警戒態勢に入る。無理もない。血走った目と口から覇気を息巻く女傑がこちらににじり寄ってくればどんな鼻ちょうちんも割れ心臓の毛が抜け落ちるものである。

 

「ほら、餌もあるぞ…!お腹減っていないか…!?食べたいんだろう、そうなんだろう…!」

「フッシュアァァア…!!」

「そんなにいきり立って…余程空腹だったんだな、そうなんだな!大丈夫、もう大丈夫だから。安心、安心していいんだ…今からお腹いっぱいにしてやるからな…!」

 

怪しげな秘密結社の改造勧誘もかくやの怪しさと、ただならぬ目の血走りぶりに命の危機すら感じた猫は完全に臨戦態勢である。二人はやがて、必殺の間合いに位置し──

 

「──君の柔らかさを味わわせてくれぇーーー!!!」

「シャーーーーーー!!!」

 

互いに跳躍、バトル開始。牢屋に閉じ込められれば日本刀所持で対等と言われる猫と、互角の立ち回りを行う黒神の超人曲芸が繰り広げられる。黒神のタックルを切り、離脱しようと一目散に逃げる猫へ先回りを成功させる馬鹿げた身体能力を発揮する黒神。

 

「痛くない、怖くないぞ!大丈夫、大丈夫なんだ…!すぐに終わるぞ、本当だ…!」

「フギュアァアァオ!!」

 

猫の身軽さに当たり前の様に付いてくる化け物に、本格的に恐怖を覚え生存本能を全開にする猫。その芸術的な肉体のしならせをもって──

 

「つかまえ───ふみゃっ!?」

「シャアァアァ!!」

 

タックルしてくる黒神の頭を踏みつけ後方宙返り3回転からのひっかきが黒神に直撃する。怯んだスキに餌の袋を噛み、全力で逃走する猫。顔面を引っかかれ、倒れ伏す黒神。

 

「…今の体捌き…体術に取り入れられるかもしれないな…」

 

…余談ではあるが、彼女は黒神流体術の体得者であり、並の人間では敵わぬ免許皆伝の腕前を持つ。その体術は、動物の動きを多く取り入れられているのだが…

 

「また一つ、哀しみと共に強くなってしまったな。ははは、はははは…」

 

それらは黒神一族代々に伝わる『動物への付き合い方』による様々な人間離れした動きによって構成されている。此度の猫との死闘によって、彼女は奥義が一つ『猫神転勢』を開眼するに至った。回避と受け身、反撃を完璧にこなす、猫の跳躍を是とするもの。

 

また一つ、彼女は自然を師として強さを増した。彼女はこれからも強くなり続けるだろう。動物達と触れ合い続ける限り。

 

───決裂と拒絶の悲しみを堪え、彼女は夕暮れまで掴んだ奥義の鍛錬に勤しむのであった──。




夕暮れ

無慙「なるほど、リッカの縁者だったか。それならば常識や理屈を問うのも無粋というものだ」

(昼飯時では無いが、善良な者たちにより温かいままだ。食事というものを楽しむと…ん?)

大樹の下

うたうちゃん「すぅ…」

無慙「…スリープモードか。昼寝というやつだな」

(無防備に寝ている。それが許される治安に一役買えていたならいいのだが。それに…)

「花の冠に、飾り…市民達が感謝に飾り付けたものか。慕われているな、うたう」

うたうちゃん「すぅ…」

無慙「……(フッ…)」



うたうちゃん「はっ…寝すぎてしまいました…」
ディーヴァ(おはよう。もう夕方よ、充電はバッチリ!)

うたうちゃん「はい。それでは…おや?花飾りに、冠…それに…」

『温かいコロッケ』

「これは…(むぐ)」
(躊躇わないわね…有機物をエネルギーに変換できるから大丈夫だけど、いきなりかぶりついて大丈夫?)

うたうちゃん「…優しい、暖かい味がします。この飾りも、凄くきれいです。とても…」
ディーヴァ(…良かったわね。人気者さん?)



隣町の警官『すまない、応援を頼んでしまって』

無慙「さっさと塵の場所へ案内しろ。夏草の敷居は踏ませはしない」

『お前…なんだか変わったな。普段なら夏草以外には興味も見せないのに』

無慙「お前から死にたいのか?二度も言わせるな」

『わ、解ったよ。場所は──』

無慙(…夏草の者達の平和。それが何より、俺を満たすものだ──)



うたうちゃん「…(もぐもぐ…)」

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