人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜 作:札切 龍哦
「…私もいつか、マシュに教えられたあの地に招かれる日を心待ちにしております。その際にはどうか、宜しくお願い致しま…」
「…おや?門の様子が…?」
リッカ、即ち夏草より生まれた龍が友との一時を謳歌する頃。我等が御機嫌王ギルガメッシュは無二の姫、その守護者たる獣を傍らにとある場所へと赴いていた。そこは日本という地をどこよりも、何よりも見下ろせる無二の場所。内海市長ととある話をつけた後に訪れた、選ばれし者のみが到れる絶景へと足を運んでいたのだ。
「見渡す限りの運河、そして蒼き空。我が楽園でも再現は可能であるが、その場の風土、その場の空気、そしてそこに根付くものとはその地にしか無いものだ。万物を手にする事は難儀であるが故、世は広く見応えがある。エビフ山にも通ずる景色を見れば一目瞭然よ。であろう?エア」
──はい。この至純の峰、世界の宝ともなっている山の頂上…その厳かさは、やはりここにしか無いものと断言できます。
そう──彼等がいるのは言わずとしれた『富士山』である。日本に知らぬ者なき富士の霊峰、誰もが臨む日本の至宝。その頂上に、ギルたち楽園の頂上は足を踏みしめ、蒼き空に白き雲海、何処までも続きゆく日本の地を見据えているのだ。
(遠目ではキレイな山だったのに近付いてみたらゴミが凄かったぞここ!どうなってるんだ!?)
フォウの言う通り、ぐるりと山を見聞してみたところ、山の地名度を脅かす勢いのゴミの山にフォウは辟易していた。ゴミ収集所もかくやの乱れっぷりに、信じられないとばかりにフォウは首を振る。
『土地の、そして自然の価値が解らぬ雑種が犇めくのが俗界だ。贔屓の国故苦言はせぬが、宝の扱いを知らぬとは哀れなものよな』
──非常に有用な資源でもありましたので、大切に回収させていただきました!日本の皆様、ありがとうございました!
勿論看過するはずも無く、片っ端からギルとエアで回収し、資源としてリサイクル。楽園カルデアに生まれ変わった資材として片っ端から利用させていただいたのは言うまでもない。廃棄物で汚れていた環境は御存知プレシャスパワーにてケア。誰が来ても恥ずかしくない地へ富士山を清掃してみせた。無論、人知れずである。
(まさかオマエがこんなに日本に親身になるなんてな。余程気に入ったのかな?いや、ボクも大分気に入ってるけどね)
フォウの問いに、朗らかに鼻を鳴らすギル。それはそうであろうとも頷く王は、無償でボランティアなぞするものかと笑う。
『気に入った、と問われれば今更に過ぎよう。この地はリッカめを生み出し、我等が旅路を彩る一万を越える財宝を産み出した地だ。いわば我専用の金鉱、黄金都市ジパングよ。贔屓にし、重んじるは当然の道理だ』
──リッカちゃんに、一万…ふふっ、その通りですね!
エアとフォウは顔を見合わせ、頷く。その言葉の意味…尊大でありながら愉快さと痛快さに満ちた王の言葉が如何なるものか、それらを察する事は容易な程に彼等は共に時を重ねて来たのだから。
『リッカにおいてもそうだ。確かに里帰りの名目で奴を南極から引っ張り出したが、それは改めて『護るべきもの』の価値を再認識させる為の心構えでもある。護るべきものの価値を知らずして、真に守護者足り得る道理も無し。世界を護るならば世界の美しさを、日常を護るならば日常の尊さを知らねばならんからな』
意味も知らず、道理も分からず、ただ護り、ただ守護するのではそれは掃除屋であり、システムであり、血の通わぬ守護者でしかない。それでは、窮地に陥った際や土壇場で意味を、芯を見失う。それでは、世界の全てを護るものとしてあまりに軽薄にすぎる。
『夏草の土地柄、人柄はとても良いものであった。ウルクに肉体の強さは流石に及ばぬが、その心と市民性はまさに幸福の土地だ。邪龍が善に目覚めるも頷ける程にな。──楽園に戻った我等が龍は、ますます強くなるであろうよ』
日常の素晴らしさ、尊さ、そしてかけがえのなさを知ったリッカの可能性、そして天井知らずの人間性を見据え、愉快げに王は笑う。幾度も示されている事だが、彼は決してつまらぬ事、興が乗らぬことは行わない。行うことは愉快で痛快無比、いつも笑顔に満ちる行動ばかりであった。そうやって、叙事詩の主役として先頭を駆け抜けてきた。
『──四年か。まさに矢の如き旅路よな。エアと対面したあの日が、遠い昔の様だ』
人理焼却を覆す戦いから一年、部員ネット換算では四年が経つ今、変わらず続く今と輝きを失わぬ過去に思いを馳せ、ギルは目を細める。そう、退屈な日など一日たりともなかった旅路。そしてこれからも、駆け抜けて行くであろう旅路。
──未だ堪能していない世界の愉悦は数え切れない程です。毎日味わっても味わっても消え去ることの無い世界の可能性に神秘性…!これから先の出来事にもワクワクしますね、二人共!
自我を、自身の魂を見出したエアもまた、その眼に絢爛の未来…胸に希望の愉悦を懐いている。未だこの旅路が得た愉悦はほんのかすか。脚を一歩踏みしめれば、顔を見上げればまだ見ぬ世界の全てが自身を待っている。その事実は、無垢な魂に白金の笑みを浮かばせるほどに輝かしい事実だ。
(看取らなくちゃいけない世界、倒さなくちゃいけない獣はまだまだいるだろうけど…どう考えたってボクらが遅れを取る未来が見えない。皆が一緒なら、きっと大丈夫な筈さ)
至尊の獣もまた、希望に満ちた瞳を世界に向ける。真に比較できぬものを知った彼が見る世界は、とても綺麗で美しいものに見えているのだ。どれほど困難と、悪性が織り込まれていようとも、だ。
『…珍獣よ、一つ良いか?』
(なんだよ)
『慢心は禁物だぞ?』
(オメーに言われたくないよ!よくその口で言えたなそれ!)
ベシベシとじゃれ合う二人をなだめ、エアは頷く。そうとも。記念の節目とはゴールであり、また始まりでもあるのだ。
──ここまで支えてくださった感謝と追憶、そしてこれからの旅路!それらが続いていくように、ワタシ達のできる事を全力で頑張って参りましょう!この美しい世界に生きる、歴史を織りなす尊き全ての命の為に!
エアは勿論、誰ものゴールはここではない。遥か彼方に広がる星の大海、そこに漕ぎ出すその日こそが結末であり、真の始まりでもあるのだ。ならばこそ、この想いは原動力として胸に抱かなくてはならない。遥かな未来を生きるための活力として。
(その通りだよ、エア。キミはしたいことをしたいようにすればいい!キミのやりたいことはボクのやりたいことだからね、全力でキミを支えてみせる!)
フォウもまた、唯一見出した魂を失う未来など見るつもりはない。人類愛として目覚めた者として、彼女の望む世界を守護してみせると決意に燃える。
『ふはは、今更我が激励するまでも無いか。まこと立派になったものよ!』
二人の成長、決して見飽きることなき日進月歩に満足気に笑みを浮かべる世界を愉しむ王。そうとも、この場はあくまで中継地点。一つの区切りでありそれ以上ではないのだ。
『遥かなる星の果てを見る為に、人類の歴史を裁定するために!我等の歩みは止まることなく続く!我の背中に続く全ての者よ、心せよ!我等の旅路、一生涯を懸ける気概で共に参るがよい!さぁ───新たなる節目へ向けて!ゴージャスに走り出すとしようではないか!!』
((おーっ!!))
ギルの号令に、二人の鬨が呼応し蒼空と雲海へと消えていく。この三人こそ汎人類史の希望の中核にして、虹の軌跡を描く黄金の王。白金の姫寄り添いし王は、あらゆる不条理や理不尽を越えていくだろう。
──背中に続く、一万を越える財宝達の支えを受けて。彼の王道は自らに相応しき財宝の守護。その王道からするならば、それらは十二分に彼が全身全霊を振るう理由に、とうに昇華されているからだ──
ギル「──さて、いい感じに締めることも出来たな?ならばさらなる本題に入るとするぞ!」
──行うのですね、ギル!一年に一度しか出来ぬ最大の行事!
フォウ(唯一全く勝ち目が見えない戦い…!その名も!)
ギル『然り!セイバー召喚!!──日本出張編だ!!!』
〜
──冠陽神社で購入できるだけの御守は買いました!天照大神、イザナミ様の御守は特に!今度こそ、今度こそは…!
ギル『フッ、我は神に頭など下げんがエアならばセーフよ。神を敬わず利益のみ受け取る。改めて我の賢明ぶりが恐ろしいな』
フォウ(それオマエの利益にならなくない?)
『我とエアは異心同体、利益も当然共にあるのだ珍獣。そして我は更に盤石を期したぞ?これを見よ!』
──そ、それは!?御土産コーナーにある金色の剣のキーホルダー!御土産コーナーにある金色の剣のキーホルダーではありませんか!?
フォウ(修学旅行の聖遺物…コイツ、ガチだ!ガチで勝ちに来ている!!)
ギル『ふはははははであろうであろう!そして富士の山頂という霊験あらたかすぎる土地、これは貰ったな!勝率十割!まさにゴージャスしか勝たん!!この節目にて、勝利は貰ったぞ!!』
──いつにないような、もう3回は見たような気迫…!流石です王よ!それでは早速ロマンさんから預かったポータブル召喚システムを起動しましょう!
フォウ(アイツ魔術絡みだとギル並に何でもありだな…)
ギル『魔術王とは伊達ではないと言うことだ。即ち最早Fate時空で我等に出来ぬ事はない!そしてこの日より、楽園は万全磐石の名を真に欲しいままにするのだ!!』
サークルに叩きつけられる金色の剣のキーホルダー。同時にサークルが、虹色に回転する──!
──わぁ、虹色ぉ!
フォウ(来たのか!?来てしまうのか!?マジで最終回来てしまうのか!?)
『ふふはははははははは!!最早必勝しかあり得ぬであろう!八百万の加護よでかした!後で薄着に過ぎるイザナミめに腹巻きを奉じてやろうではないか!』
アナヤ、ホカホカ…
『さぁ来いセイバー!!存分に待った、待たされすぎたわセイバー!!この富士の絶景、共に見定め美酒を飲むぞ!!さぁ来るのだ!セイバァァァー!!!』
三人のテンションがマックスになる。人事を尽くして天命を待ちわびた一同の願いに、とうとう応えしは──
モルガン「────あぁ、ようやく出会えました。はじめまして、愉快な王様に御姫様。私はモルガン。この時空ならぬ地より産まれた、楽園の妖精である者です」
ギル『─────なん、だと………?』
──お、お姉さんがこちらに!?
フォウ(アルトリアシリーズに激震走るッ───!!!)
〜夏草
モルガン「ほう、これが現代の町並み…ほうほう…とても参考になりますね…」
ギル『フッ──慢心せず励め、という事か。味な真似を、セイバー…』
現れたのは、異聞帯の女王。──かつての冬を越え、春の楽園へと招かれた乙女が、ついにこの時空へと招かれたのであった──