人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

1632 / 2536
夏草シーワールド

「海の世界との出会い」をコンセプトにした、太平洋を目の前に望む水族館。川の源流から北極・南極の海の世界まで、自然環境をリアルに再現した展示環境で、約800種1万1000点の川や海の生き物たちに出会えます。特に、海の王者シャチをはじめ、ベルーガやイルカ、アシカのクオリティの高いパフォーマンスは一見の価値あり。


姉なるものと凄女の胎動

「わぁ…!これが、これが海の世界…!青い海の下には、こんなにも素敵な世界が広がっていたのですね…!」

 

今更な事だが、夏草に来ているのはリッカ達だけではない。楽園在住サーヴァントも、外の世界を見たいと希望している者たちはカルデアを出て、都心のビルに拠点を構え思い思いの時間を過ごしている。そしてこの、ガラスの向こうの世界に目を輝かせているのは聖女にして麻婆ウーマン、ジャンヌ・ダルクである。

 

「夏が近いから水着を見たい、っていうのは解るけれど…だからってなんで水族館なのよ。そりゃあモチーフ水着くらいはあるかもしれないけれど、にしたって本格的な店に行ったほうが良くないかしら」

 

そして真っ当な意見を告げるはマルタ、海の聖女たるマルタの姉さんである。二人は今、聖女コンビとして水着、ひいては目前の夏のイベントの準備を行いにやってきていた。初手で水族館チケットを購入したのはジャンヌ・ダルクであるゆえ、巻き込まれたのだ。

 

「ふふふ、確かにそうかもしれません。確かに水着には水着の専門店というものがあるでしょう。流石は聡明なる聖女マルタ!まさにハレルヤです!しかし私達はサーヴァント、水着だけを着込むより霊基をまるっと改造した方が手っ取り早い気がしませんか?」

 

(とんでもない事言うわねこの娘…)

 

「その際に必要なものは布の生地ではなく、デザイン…エンチャント属性…イメージするのは最強の自分…!そう!夏という環境において自分はどうあるべきか!それが大切だと私は思うのです!」

 

意外にもその意見は真っ当で、かつサーヴァントならではの観点だ。マルタもその意見には賛同を示す。

 

「確かに、砂浜や遠泳、走り込みに適した姿というのは大事よね。身体を痛めない最適なフォルムっていうの?霊基申請、通してみようかしら」

 

「はい!というわけで今私はモチーフ、使い魔にするならどの子かなーと吟味するためにここにいます。私と共に夏を過ごす子は誰かなー?あなたかなー?どうかなー?」

 

信徒を選ぶような、生贄を選ぶような状態に見えなくもないギラつきを見せながら水族館を闊歩するジャンヌ。彼女は本気なのである。夏という行事に。夏というイベントに。

 

「それにしたって、ねぇ…。どうせなら可愛らしいのにしなさいよー。鉄板モノでイルカとか!」

 

イルカの聖女。目にしたものが海の奇跡を目の当たりにしたと確信する事うけあいな光景が生まれることは想像に難くない。ジャンヌもまた、その意見に異論はない。イルカは実に可愛らしく賢い生き物だ。

 

「流石は聖女マルタ!私も丁度同じ事を考えていました!イルカはいいですね…!」

 

『『『キュー!』』』

 

見ると、その言葉に返礼するかのようにイルカが三匹くるくると回ってみせる。その様は非常に愛らしく、ジャンヌはその美しさと賢さに心を奪われる。

 

「決めました!私の夏の使い魔はイルカさんです!このひと夏、忘れられないものにしましょうね!」

 

『『『キュー!』』』

 

(良かった、突拍子もないものは選ばなかったみたいね…いや、今の彼女が一番突拍子もないって言われたら返す言葉もないんだけど。しかし、使い魔ねぇ…)

 

使い魔、というよりは自身の相棒でありパートナーである竜、タラスクの事を思うマルタ。夏の場でなら、タラスクとの新しいコンビネーションが開発できるやもしれない。

 

(そういえば、リッカが読んでいた漫画で面白い技があったわね。あの、上からロードローラー落っことすヤツ。アレ…タラスクで代用できそうよね?)

 

いつの時代も、質量の攻撃は最も強い。何故ならば現代を支配するのは物理法則であるからだ。上からタラスクで押し潰し、更にその上からタラスクをぶん殴り叩き潰す。これは最高にハイなコンビネーションなのではないだろうか?マルタは一人手を叩く。

 

(となると、私自身もあの人の杖を置かなければならないわけだけど…)

 

そう、聖女の戒めとして持っているあの杖。あの杖を手放さなくては両手で本気で殴れない。全力で拳を握るには、それくらいの覚悟を持たなくてはならない。マルタは今、神の教えを試されているのかもしれない。

 

(…もしもの話よ?まさかそこまでする相手なんてそうはいないでしょうし。そんな、モーセ様じゃないのですから、そんな…)

 

何故僕がルーラーなのかって?殴られたら平等に痛いだろ?と言ってのける名誉殴ルーラー天使撲殺タイトル保持者のモーセの屈託ない笑顔を慌てて振り払うマルタ。暴力で解決する癖を付けてしまってはいけない。まずは対話を行うべきである。マスターのように。殴り倒すのは、その後からでも決して遅くは無いはずなのだ。きっと。

 

だがもし、その時が。タラスクもろとも調伏せざるをえないシャバぞ…迷える者が現れたその時には。

 

「……──主よ、どうか目をお瞑りください…」

 

拳を解禁するもやむなし…そう静かに決意するマルタであった。やる時にはやる。信仰を護る際の鉄則である。願わくばそんな輩が現れないことこそを、真摯に祈って。モーセ様リスペクトは時には主にも我を通す泰然さだけにしたい。切実に。

 

「マルタ様?どうかなさいましたか?」

 

「うぇ!?あぁいや、なんでもないっての…こほん。ありません。それより、見つかりましたか?夏のパートナーは」

 

見ればいつの間にか帰ってきていたジャンヌが心配そうに覗き込んで来ていたので、慌てて平静を取り繕い咳払いを行う。先輩として、余計な心配はかけられないと言うものだ。

 

「勿論見つけました!マルタ様の言葉のお陰で、迷いは晴れました!心からの感謝を!」

 

「そんな大した事はしてないけれど、無事に決まったなら良かったわ。どうする?昼に始まるショーは見ていくのかしら?」

 

「それは勿論!しかしマルタ様、私はこうも思うのです。イルカは確かに可愛らしく愛らしい。パートナーにするのになんら不満はありません。しかし──」

 

しかし?嫌な予感がしながらマルタは聞き返した。聞き返してしまった。

 

「我等がマスター、リッカちゃんのように!可愛らしさだけでなく、カッコよさも重要なファクターなのではないでしょうか!というわけで見てください!あちらの生物を!」

 

そして指差すジャンヌの水槽の中を悠然と泳ぐは…サメ。巨大な海の肉食獣、サメである。

 

「…アレを…使い魔に?」

 

「はい!きっとリッカちゃんも喜んでくださるはずです!かっこよさに可愛らしさ!今年の夏は貰いましたよー!というわけでギルに申請しなくては!とびきり大きいサメと可愛らしいイルカが欲しいです、と!アンケートに書き込みましょー!」

 

「ちょっと待ちなさい!流石にそれはマズイんじゃ無いかしら!?空飛ぶサメとかどんなホラーよ!?パニックホラーよ!?ちょっと待ちなさい!ちょっとー!?」

 

思いついたら即行動。人間城塞めいたジャンヌは誰にも止められない。彼女は颯爽と、水族館を堪能しに向かうのであった───

 

(…ワシを相棒にしてる姐さんも、人の事は言えるかどうか…)

 

そんな事を考えつつも、鉄拳は怖いので何も言わない言えないタラスクであった。

 

(あと、ワシごと殴るとかおっかないこと言ってませんでしたか姐さん?)




霊基変更希望

ジャンヌ・ダルク

要望

可愛らしいサメと、メガロドンを従える海の聖女といったコンセプトでお願い申し上げます!

──メガロ、ドン…?

ギル「ふはははははははは(乾いた笑い)」

どのキャラのイラストを見たい?

  • コンラ
  • 桃太郎(髀)
  • 温羅(異聞帯)
  • 坂上田村麻呂
  • オーディン
  • アマノザコ
  • ビリィ・ヘリント
  • ルゥ・アンセス
  • アイリーン・アドラー
  • 崇徳上皇(和御魂)
  • 平将門公
  • シモ・ヘイヘ
  • ロジェロ
  • パパポポ
  • リリス(汎人類史)

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。