人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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承太郎「お袋。水族館に行ってくる。土産の注文はあるか?」

ホリィ「承太郎が!水族館に!?それにお土産も買ってくれるの!?本当!?」

承太郎「いらねーならいい」

ホリィ「いるいる!いるわよ承太郎〜!待ってちょっと待ってね承太郎!アレでしょ、これでしょ!アレもこれもそれも!」

承太郎「…やれやれ。持ち帰る労力も考えやがれ」

ジョセフ「すっかり孝行息子じゃの承太郎。エジプトに行く前とは愛想が違うわい。わしに似て、ハンサムぶりが増してきたんじゃあ無いか?」

承太郎「ねぼけんじゃねーぜ。テメーにも一応聞くが、土産は何が欲しい?」

ジョセフ「おぉ、わしか。じゃあアレじゃ、えーと…あーと…いかん思い出せん。なんじゃったかのぉ…」

承太郎「……てめー、波紋の呼吸はどうした」

ジョセフ「そういやぁ一週間前からサボっとったわい。そうか、この歳老化に気を配らんとあっちゅーまにボケるんじゃのぅ、いかんいかん!コォオォオォオ…!!」

承太郎「………………………」

ジョセフ「はい復活ー!!じゃあ承太郎!ジョーズのぬいぐるみを頼もうかのぉ!承太郎はジョーズにお使いできるかの!ジョーズなだけに!!ダーッハハハハハハハハ!イーッヒヒヒヒヒヒ!!」

承太郎「…………………やれやれだぜ」


空条承太郎は鍛えたい〜水族館へ行こう〜

「まさかジョジョの方から遊びに来たいって言うなんて…ビックリしたけど、夏草に興味を持ってくれるのは凄く嬉しい!任せて、水族館巡っちゃおう!」

 

「よろしく頼むぜ」

 

夏草観光の穏やかな時間。リッカの故郷、その穏やかな地。なんとそこへ降り立った人物は意外な人物。リッカの楽園で出来た友にして、いずれ来る『運命』に打ち勝たんと日頃より自分を磨き続ける男。自身のいる1989年から何十年も未来に足を踏み入れた男。

 

「やれやれ…田舎モン扱いされねーように気合い入れていかねーとな」

 

空条承太郎!リッカが唯一『ジョジョ』と呼ぶ男!シーワールドの自由行動のおり、リッカに丁度ラインを送った承太郎はシーワールドの見学を要望したのだ。彼はリッカの故郷に一歩を踏み出したのだ!

 

「電光掲示板にスマホ…全員持ってるんだな。おまけに電子機器の普及も俺のいた時代とは比較にならん。やれやれ…とんだ浦島太郎ってヤツだぜ。ここも龍宮って言われてるくらいだしよ」

 

「ジョジョにも太郎ってついてるもんね。ダジャレ?」

 

「…やれやれ。くだらねー事言い合うのがダチとはいえ、なんとも気が抜けるもんだぜ。さっさと券を買いに行くぞ。ショーが始まるまでは付き合ってもらうぜ、リッカ」

 

リッカをそう長く束縛するつもりはない彼は、一通り巡る事を条件にリッカに案内を頼んだ。もちろん、彼は探索資金を用意してきたのである。母、ホリィの土産を買うための軍資金も兼ねたその資産約5万円!学生にしては破格ッ!

 

「学生2枚」

 

「え、学生?し、失礼しました!こちらをどうぞ!シーワールドをお楽しみください!」

 

「…ガタイは先祖譲りなのは知ってるが、日本では不便な事も多い。過ぎたるは及ばざるが如し、ってヤツだな」

 

「ジョジョ、博識ー!」

 

「学び盛りの華の学生よ」

 

(リッカちゃん、よね?あの子、夏草の制服じゃない…?まぁリッカちゃんの知人なら悪い子なはず無いわよね)

 

そんなやりとりを行い、シーワールドへと脚を運ぶ承太郎。何も呑気しに来たばかりではない。これらは彼が考案した、日頃の中の特訓でもあるのだッ!

 

 

(やれやれ…このスマホってーのはなれねーぜ。タッチ?スワイプ?タッチは触るが、スワイプってのは… ライン、だったか)

 

『スワイプ』

 

『どったの?何かのスタンド?』

 

『ラインだぜ』

 

『あぁ、私に用だね?』

 

(…大したヤツだぜ…リッカ)

 

承太郎は、最新機器に苦戦していた…。

 

 

「知っているか、リッカ。日本でシャチを有している水族館ってのは二箇所しかないらしい。片方は忘れたが、もう片方はここ、夏草シーワールドだ。2017年時点でもそれは変わってないようだぜ」

 

薄暗い水族館内、水槽を見て回りながら承太郎は豆知識を補足する。2017年の情勢を掴む20年以上前の人物、というのも中々に奇妙だが、旅を楽しむ心に時代は関係ない。心の若さとは、探究心、好奇心、信念や勇気によっていつまでも保たれるのだ。承太郎は確かに変わっていた。以前なら自分から知識を披露するなど考えられなかったからだ。

 

「流石ジョジョ、やるといったらなんでも本気…。私より詳しいかも?」

 

「おだてんじゃねーぜ。…今回わざわざ南極を出て夏草に来たのは他でもねー。『スタンド』の活かし方ってやつを俺なりに見つけたからだぜ」

 

スタンド。側に立つもの。パワーあるビジョンたる力。彼の星の白金は超スピード、超パワー、超精密な動きを併せ持つ無敵のスタンドである。が、その特性上日常生活には活かせない、機会がないと思われたが…

 

「スタンドだろーと、聖杯戦争のマスターだろーと。要するにてめー次第なのは変わらねーってことだ。見てな、例えば…」

 

『キュー!キュイー!』

 

その時、リッカと承太郎に挨拶する様にイルカが水槽をコツコツと叩く。リッカもそれに応え、イルカに近付き手を伸ばし──

 

「───『スタープラチナ・ザ・ワールド』」

 

瞬間ッ!スタープラチナの速度がこの世のあらゆる全てをブッチギリで超越し、全ての物体が動きを止める!約7秒!時の止まった時間の中で7秒とは奇妙なものの数えだが、それでも7秒時は止まっている!それは藤丸リッカも例外ではない!

 

『オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァ!!』

 

そしてスタープラチナが、その超精密な動きでスケッチブックにイラストを書き上げていく!その力強く繊細なタッチは一流の漫画家、イラストレーターに勝るとも劣らないッ!

 

「7秒経過。時は動き始めた」

 

そして時は動き出し、静止した時間が再び元に戻る!この止まった時の中にいるのは今の所空条承太郎、ただ一人!

 

「──わぁ!イルカって可愛いよねー!…ん?ジョジョ、それは?」

 

リッカがふと、承太郎がいつの間にか持っていたスケッチブックに目をやる。すると承太郎はビリリと一枚やぶき、リッカに渡す。

 

「ほらよ。こいつが修行の成果って奴だぜ」

 

手渡されたスケッチブックのページを目の当たりにしたリッカは小さく、確かに唸る。そこには、とても数秒で描き上げたとは思えないイラストが描かれていたからだ。そこには小さな海の世界があったからだ。

 

「これ、すごい…!今描いたの!?」

 

イルカとリッカが、スケッチブックの真ん中から仕切られながらも見つめ合うイラストがそこにある。イルカの側には青の美しい海の世界が、リッカの側には薄暗い照明を再現された黒が。まさにそれは、日常の一幕を切り取ったかのような圧倒的クオリティにて描かれた超絶スチール!しかもフルカラー!

 

「スタープラチナの精密な動きは筆に、目の良さは観察眼、被写体の正確な把握に使える。殴ってブチのめすに終始したんじゃ、どーにも宝の持ち腐れって気がしてよ。何事も柔軟な発想が大事とはじじいの言葉だが…やれやれ、やってみるもんだぜ」

 

承太郎はどこか自慢げだ。イラストを描く腕はあれど、そこに記されるイラストがどういったものかは本人のセンスが問われるもの。彼は知りたかった。最新の時代を生きる人間と、センスや観念がズレていないかと

 

「すごーい…!欠かさずやってるんだね、スタンドの特訓!」

 

「まぁな。一日常にスタープラチナの使い方を考えている。人間は、積み重ねで弱くなるからな」

 

「?積み重ねで弱くなる?」

 

「例えば、お前が特訓を一日フケたとする。それでサボりぐせが付き、もう一日休んだ。これではまずいと思い慌てて特訓開始したとしても、『遅れは一日しか取り戻せない』。2引く1なんて小学生の問題、おめーならわかるだろ」

 

そう、彼は日常の中でスタープラチナを鍛え上げる事にしたのはそれが要因でもあった。一日を漫然に過ごしてしまってはどんな名刀、どんなスタンドも錆びついてしまう。波紋の呼吸を試しに一週間止めてみたジョセフの老化がちょっと看過できないレベルだった点もまた、自身が鍛え抜く事を決意した一因でもあるが…

 

「オメーにかぎっては余計なお世話だろうが、言っておくぜ。じじいみてーになりたくねーならお前も、日々を漠然にとは過ごさねー事だ。──オメーも俺も、まだまだやる事は山積みなんだからよ」

 

きっとそれを、承太郎は伝えたかったのだろう。それは不器用なりの、彼の精一杯の身の案じ。母譲りの優しさの発露であった。

 

「ジョジョ…うん。ありがとう!それと…」

 

「ん?」

 

「このイラスト、貰っていい?あとちょくちょくイラスト依頼していい!?スッゴい可愛く描いてくれてありがと、ジョジョ!」

 

『キュイー!』

 

「…やれやれ、勝手にしな」

 

伝える事を伝える。それを実践すれば仲は深まる。気恥ずかしい事だが…そう悪くはない。人知れず、笑みを零す承太郎であった。

 

 

 




少女「す、すみません…」

承太郎「?」

少女「その絵、おじさんが描いたんですか…?」

承太郎「……………………………………………………………………あぁ」

リッカ(おじさん呼びにメチャクチャショック受けてるー!?)

少女「あの、その、えっと…」

承太郎「…………」

少女「あの…マナティを、その…」

「………」



『スタープラチナ・ザ・ワールド』!!



承太郎「ほらよ」

少女「!…あ、マナティ…!」

「一枚だけだ。大切にしな」

少女「ありがとうございます、おじさん…!ありがとう…!」

リッカ(…自分が寡黙だから、伝えたい事をうまく伝えられないもどかしさは理解できる、かな?凄く成長してるよ、素晴らしい方に…!流石ジョジョ!)

承太郎「………………………………………」

(…まだ二十歳にもなってないのにおじさん呼ばわりは、ザ・ワールドのパンチより効いちゃったかー…)

この後ショーが始まるまで、いつも以上に寡黙になってしまった承太郎を励ます為に色々な場所へ案内するリッカであった。

to be Continue ………⇛

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