人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜   作:札切 龍哦

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シーワールド入口

少年「わー!うたうちゃんだー!」

少女「天空海さん!サインくださーい!」

うたうちゃん「ありがとうございます。ありがとうございます!」

天空海「みんなー!夏草シーワールドへようこそ!楽しんでいってねー!というか…」

職員「うたうちゃんと天空海さんのサイン会はこちらになりまーす!押さないで、押さないでくださーい!」

天空海「これ遊ぶ時間無いわよね多分!?」

うたうちゃん「ショーまでサイン会となるでしょう」

天空海「有名税重すぎるんですけどー!?」

スザク(きぐるみ)「本当、アイドルって大変なんだなぁ…」

(ルル、ゆかな。君たちは楽しんでくれ。僕達の分まで…)



コード・マリンパーク〜ドギマギのルル〜

「わざわざ同行を申し出るとは。私にだけは積極的な一面を見せてくれるのはいいが、いつまでも私にだけだと先行きが不安になってしまうぞ?」

 

「心配するな、君との経験は必ず活かす。という訳で付き合ってもらうぞゆかな。未来の俺の──デートシミュレーションにな!」

 

そんないつもの様なやりとりにも、自然と力が入っているのが丸わかりなルルといつも通りのゆかなが、仲良く券売機からチケットを購入する。夏草シーワールドという舞台を以て、ルルの魔女狩り…即ちゆかなへの進歩作戦が開始される。黒い仮面もマントも無いが、彼には身一つでゆかなに相対する覚悟がある。

 

(昨日の時点で巡るルートは24程考えてきた。ゆかなの要望にはどんなものでも答えられる覚悟もしている!イレギュラー…そう、水族館にテロリストやスザクが俺をしばき倒しに来ない限りイニシアチブはこちらが貰った!)

 

「シーフードピザは…あ、良かった。あったな…売り切れていなくて助かった…」

 

(さぁゆかな、いつもの様に魔女ムーブをしてくるがいい。この福山ルル、どんな責め苦にも耐えてみせよう。今の俺はまさに青春査問官!どんな罵詈雑言だろうとひぎぃ!ありがとうございます御主人様と三戦してみせる!呼ッッ!!)

 

「おい、何を内股になって構えている?ショーの席は確保しているとはいえ時間は有限だ。もたもたしているとシャチくんやイルカくんが怒るだろう、さっさと動け」

 

「ふっ、すまないなゆかな。さぁ行くぞ!水族館!我々全員が楽しむ!!」

 

「??…よく分からんが、元気なことはいいことだな」

 

そんな気合い十分なルルに困惑しながらも二人は夏草シーワールドに足を踏み入れる。どこかの世界では恋愛は好きになった方が負けという意見もあるが、果たしてこの盤面はどう動くのか──

 

『がんばれ、ルル。ゆかなと楽しむんだ…』

 

「イルカ戦士ドルフィー!写真撮ろうよ写真!」

 

その様子を、スタッフが急遽欠員した為ピンチヒッターとしてスーツアクターをこなしながら見守るスザクであった。

 

 

「あ、ヒトデだ。こちらには熱帯魚。ふふ…可愛らしいやつめ。人間の手であろうとなかろうと自然の美しさは変わらないな…」

 

ゆかなの好きなところに行っていい。まずはお手並み拝見とばかりにイニシアチブを委ね様子を見るルル。それは行動パターンを把握するためであったが予想以上の戦果を手にする事となる。

 

(…普通に可愛いものが好きだし、可愛いものを可愛いという。やはり魔女は外界に向けた仮面だな、ゆかな。その趣味嗜好は隠しきれていない…)

 

任せてみたところ、イルカにはしゃいだり、マナティとエアキスの写真を取ったり、シャチに圧倒されたり、メガロドンの資料にドン引きしたりと実に可愛らしい年相応の一面ところころと変わる表情をルルは目の当たりにした。率直に言って、非常に愛らしいとすら思った。魔女の振る舞いをする必要のない動物などにはまっすぐ気持ちが通じるためか、魚達と良い写真ばかりが撮れるのだ。

 

「可愛らしい奴等だ。これだからシーワールドは素晴らしい。こんなに魚達と触れ合える機会はそうないぞ?お前も存分に楽しめ、ルル」

 

「楽しんでいるさ。お陰様でな」

 

(…目を向けてみれば、親しい相手がよくわかる。いやむしろ親しいからこそ注視しなくてはいけないのかもしれんな。彼女の本性が魔女と勘違いしていたままなら目を向ける事もなかった一面…)

 

動物に好かれるのも納得だ。彼女の本質は、人間のように複雑な精神構造や捻くれた意識がなければ掴み取れるものなのだろう。思い返してみれば、屋上でぼーっとしているゆかなにはいつも鳥が止まっていた。そして、それを咎めもせずに共存していたのだ。

 

(改めて振り返ってみればなんと色眼鏡で見ていたことか。しかしもうそれはない!俺は今より百戦錬磨のエスコータールルとなる!)

 

「ルル、おいルル。写真を撮るぞ」

 

「え?写真?あぁ、解った、カメラをくれ。完璧に映してやる」

 

「は?何を言っている。お前と私で撮るんだ。こういうのは思い出を残すものだろう?」

 

「───あぁ!俺とね!い、いいいだろう…!乗ったぞ!その写像!」

 

「輪にかけていちいちオーバーなやつだな。ほら、イルカやマナティ達もいる今がチャンスだぞ」

 

「え?うぉぉ後ろにいっぱいいるぅ!?」

 

『『『キュイー!』』』

『ムー』

 

(大人気じゃないかゆかなめ…!フッ、イニシアチブを魔女ムーブで奪い返そうというのか、フハハ、この覚悟を決めたルルにやり返そうなど一日早い!撮ってやる!撮ってやるぞ!)

 

「ほら、笑え。せーの…」

 

ピッタリとくっつき、屈託ない笑顔を見せる緑髪の美少女。ルルが右手、ゆかなが左手のダブルピースで撮る。すると──

 

「あぁ、見ろ!イルカ達が!」

 

「トライアングルを作り、マナティが真ん中から顔を出している!写真を撮るとき彼等が極稀にやるとされるフォーメーション!アレを後ろでしてもらったカップルは結ばれるという縁起のいい儀式だ!」

 

一行からどよめきがあがるレアな現象に立ち会った二人。しかしまだまだ恋仲などという領域の意識はないので、二人は思い思いの事を考えている。

 

(髪の質、肌の艶、手入れされていると一目で解る女性らしさ…凄くいい匂いがするぞ、これが女性のフレッシュさか…フィクションの世界だと思っていた…リアルは一番近くにあったんだな…)

 

(イルカさん、マナティさん。ありがとう。素敵な一枚が撮れました…)

 

(そして思えば彼女!さりげなく、さりげなく腕を絡ませて来ているっ!これほどさりげなく童貞という俺を殺すテクニックを使用してくるとは…!)

 

勘違いしてはいけないが、ルルの女性経験は少ない。というより皆無である。ゆかなの行為は魔女の誘惑として懸命に抗う、或いは拒絶していた。しかし彼女の行為になんの裏もないとわかった以上…

 

(い、いかん…!うまく思考がまとまらん!俺は、この連れ合いの果てに俺を保っていられるのだろうか…!)

 

「?どうした、ルル?具合でも悪いか?始まったばかりだと言うのに、繊細な奴だ」

 

心配そうに顔を覗き込み、額を軽く合わせるゆかな。ゆかなの端正な顔が、突如として目の前を覆い尽くす。

 

「う、おぉお…!!」

 

「熱はない、か。ふふ、さては楽しみで眠れなかったのか?可愛らしい坊やだ。だが責めまい。私もそういうタイプだからな」

 

「き、君も楽しみにしていたというのか…?今日という日をか?」

 

「当然だろう?お前や皆と過ごす日々が楽しくなかった日はない。だからこそ…」

 

「だからこそ…?」

 

「無理はするなよ、ルル。私はお前や、皆が幸福であるなら、それだけで…」

 

「…ゆかな…」

 

「…つまらん事を言ったな。そら、ショーを見に行くとしよう。天空海やうたうちゃんのお手並み拝見だ」

 

照れを隠すかのように、さっさと先に行ってしまうゆかな。その後ろ姿をルルは見据える。

 

「…中身が聖女の様なものならば、自分の幸福は度外視、というやつか」

 

(…違うな。間違っているぞ。その幸福には、お前も含まれなければいけないのだ)

 

何処までも献身的な在り方である事を把握した彼は、速歩きでゆかなの隣へと肩を並べる。

 

「ふふ、お前もショーが楽しみでたまらないといったところか?」

 

「あぁ。余すことなく楽しみだ。見所…教えてくれ」

 

「ふっ──聞き漏らすなよ?」

 

彼女を幸せにしたい。そう──改めて気合いを入れるルルなのであった。

 




物陰

エル「どうやら初戦は痛み分けに終わった様ですね。ゆかなさんを意識した結果ルル先輩の思考に鈍りが見られます」

アカネ「全くわからないです…」

エル「ですがけして険悪ではありません。これからの頑張り次第でどうとでもなります!さぁうたうちゃんに連絡です!ショーでぐぐっと距離を詰めてしまいましょう!」

うたうちゃん『エルくん、うたうちゃんです』

エル「ナイスタイミングです!ショーの準備は万全ですか!?」

うたうちゃん『それが──』

「──ええっ!?人員が足りない!?」

アカネ「ど、どういう事!?」

エル「どうやら急な用事や渋滞などが重なりイベントスタッフが足りないようです…これはなんとかしなくては!」

裏方にて、影に日向に先輩をフォローするエルの次の一手は果たして…?
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