人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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星人『ほら、駐車場の空きは第三にあるんだ!さっさと行け!』

星人『自分だけいい想いしようと思うなよ?そんな自己中はまっさきにお仕置きしてやる!』

星人『皆でショーを楽しみたいなら、ルールは守れよ!何故ルールを護るのか?ルールに守ってもらうためだ!覚えとけ!』

榊原「…あれはアカネの怪獣スケッチ…?誘導を粛々と終わらせていくわ。パニックを起こすことなく…」

アカネ(ライン)『先生!今からグループラインに私の言う指示をお願いできますか!』

榊原『アカネちゃんね。分かったわ。どうすればいい?』

『まずはリッカさんとルルさんに大丈夫だと送って、天空海さんとスザクさんに──それから他の人には人数整理と誘導を──』

榊原『…分かったわ。今から個別ラインで別途指示する』

アカネ『ありがとうございます!こっちはエル君と私がなんとかします!』

榊原「…変わったわね、アカネ。信じるわ…!」



リッカ「!…だ、大胆な事するなぁ…!」

承太郎「どうする?乗り込んでブチのめすか?」

リッカ「待って待って!実は…」

承太郎(…成程。なら仕方ねー。ぐっと我慢だぜ)

リッカ(頼んだよ、皆。あともしかしたらの時は、任せて!)

ルル(…波乱だ。だが、やるしかない!シーワールドの未来と…!)
ゆかな(今回はヒーローショーめいているな…)

ルル(俺達の思い出がかかっているのだからな!)



壮絶!アドリブだらけの台本無きシーワールドショー!〜前編〜

【よしよし、誘導は終わったみたいだねぇ。人質というものはその人に価値がないと意味がない。愛されているんだねぇ、館長】

 

アレクシス…それらが扮装する星人同盟のボスであるいい声のリーダーが声をあげる。スタジアムの中央に陣取り、マリン館長を確保し部下たちを呼び寄せる。スタジアムは静まり返っていた。そのただならぬ状況を固唾を呑んで見守っていたのだ。

 

「あなた達の目的は、何…!?」

 

【ショーだとも。皆で面白おかしくショーを楽しむことこそ。訓練でもリハーサルでもない、たのしいショーを皆で楽しみたい。そのためにはまず、皆にマナーを護ってもらわないとねぇ】

 

本気なのか、冗談なのか…想像のつかない口調で答えるリーダー。マリンは毅然と答える。

 

「これでは皆が怖がってショーどころではないわ!海の仲間たちを開放して!」

 

【おやおや、そんな事は無いと思うよ。例えば、そんな愛くるしい動物達や頑張りやの館長さんの上げる悲鳴や哀しい表情…それらはとてもたまらないショーになるだろうねぇ…】

 

「!──あうっ!」

 

瞬間、リーダーがマリンの頬を叩く。衝撃で、床に這いつくばるマリン館長。どよめきがスタジアムをにわかに満たす。

 

(だ、大丈夫かな館長!?アカネちゃん大丈夫だよね!?打ち合わせできてるよね!?)

 

(心配ない。スタープラチナで見たところ、当たった瞬間後ろに跳んでいた。あの館長…やりやがるぜ)

 

うたうちゃんの連絡から、全容を知っているとはいえその身体の張りっぷりに肝を冷やすリッカ。冷静な承太郎がいなければ飛び込んでいただろう。次の動向を、油断なく見守る。

 

「くっ…!」

 

【流石は大人気シーワールドのお姉さん。睨みつける表情も素敵だねぇ。なら、次はグーで行ってみようかな?】

 

「私達は…やられっぱなしじゃない!頼れる仲間がいるんだから!」

 

マリンの言葉が響き渡った──その瞬間だった。スタジアムの遥か上空から、飛び出し着地する存在が間に割り込む。

 

「そこまでよ!夏草と、このシーワールドでの悪事はこの雨宮天空海と…」

 

『ドルフィッ!(CVスザク)』

 

「このイルカ戦士ドルフィが許さないわ!観念なさい、悪党どもっ!」

 

「「「「「おおっ!天空海ちゃんとドルフィーだー!!」」」」」

 

モニターにて見やすく拡大されたイルカ頭とアイドルの乱入に大歓声が上がる。まさにそれらはお約束のヒーローの姿だ。ショーの基本をバッチリ抑えている。

 

(あの動き、スザクか!天空海さんといい、よく合わせる…!)

(ホンはアカネ作なのか?真っ直ぐな展開は好感が持てるな…)

 

【おやおや、このままでは私達が引き立て役になってしまうねぇ。君達、ご退場願ってもらおうか】

 

【【【【やったれー!!】】】】

 

リーダーの号令に応え、大量の雑魚兵士が襲いかかる。天空海とご当地ヒーロー、数の差は圧倒的かと思われたが…

 

「アイドルナメんなうぉりゃあぁあぁ!!」

『ドルフィッ!!』

 

天空海の精錬にして清純なジャイアントスイングにラリアット、スザク扮するドルフィの壁走りや旋風脚、空中回転キックといった体術に一瞬で鎮圧されるアカネ制作の星人たち。ショー用とは言え二人があまりにも強すぎた。勝負にすらならない有様だ。

 

「うぉーっ!ドルフィに天空海つぇー!」

「カッコいいー!!」

 

歓声がますます高まる。シーワールドの守護者に現役グラビアアイドルの大立ち回りは大好評を博した。勿論、エルが即興した電子掲示板により全領地にその活動は広がっている。ショーとして成り立っているのだ。

 

(…プロレスの後、部下たちと一緒にしばかれる予定だったけど…あまりの強さに私と尺が余ってしまったねぇ…)

 

アレクシスが冷や汗をかく。ワチャワチャしている中で鎮圧されるつもりが、なんか黒幕めいて残ってしまった。協力してくれたのはいいが、アドリブが効きすぎてしまったのだ。

 

「さぁ!残るはあんただけよ!?(ちょっとアカネ、こっからどうすればいいの!?)」

『ドルフィ!(リンチ勝利は盛り上がりにかける、というかただの鎮圧だ…!あと一捻りはほしい!)』

 

【(あ、アレクシス!なんとかしてー!)仕方ないなぁ…乱暴な手段は取りたくなかったが、しょうがないか】

 

瞬間、天空海がプールの水が球体に形を変えた水牢に閉じ込められる。当然、怪我をしない為の措置だ。

 

「!?え、ちょ、なにこれ!?」

 

【流石にアイドルを傷つけたら洒落にならないからねぇ。ではドルフィ君を消去法で仕留めていこうか】

 

『!ドルッ!?』

 

瞬間、ドルフィに無数の蛸とイカの脚が襲いかかり、滅多打ちに打ちのめす。このままではあっけない幕切れになってしまうので、悪党側のターンを割り込ませたのだ。

 

【ショーと言ったろう?可愛くカッコいいイルカ君を血祭りにあげてやろうねぇ】

 

『ドルーッ!(なるほど、真打ちに繋げると言う訳か…ならば!)』

 

意図を察したスザクが、キリモミ回転からの車田落ちの合わせ技で大ダメージとリーダーの底知れなさを演出する。これで、観客の目線は次の展開へと釘付けだ。

 

【タコはともかく、イカはデビルフィッシュとも言われているらしいよ。また一つ賢くなったねぇ】

 

『ドル…ッ』

 

【さぁ、君にトドメを刺してシーワールドをいただき、刺し身や鮮魚市場を開いてしまおうねぇ。ドルフィを倒してしまえば、シーワールドを護ってくれるヒーローは誰もいないだろう?残念だが、ゲームオーバーだねぇ】

 

ゆっくりと歩み寄ってくるリーダー格に、迫真の瀕死の演技を披露するスザク。どよめきが大きくなり、悲観の空気が広がる。

 

【(アレクシス、援軍だれか考えてる!?)さぁ、頼れるヒーローは他にいるかな?こんなピンチにもやってきてくれる誰かに心当たりはあるのか?】

 

「──!いいえ、まだよ!まだいるわ!この夏草には、人間と寄り添ってくれる大切なパートナーがまだいてくれる!」

 

マリンのアドリブに、天空海も全力で乗っかる。そう、誰もが魅せられる動きと人気を両立出来るのは、彼女しかいない。

 

【はっはっはっ。夢見がちな館長さんだ。それでは呼んでみたまえ。この絶望的な状況をひっくり返せる素敵なヒーローが、本当にいるのならねぇ…!】

 

「私達だけじゃだめ!皆の…シーワールドに集まってくれた皆の声が必要なの!お願い、皆の気持ちを一つにして!」

 

(手が込んでるとはいえ無告知の大衆参加イベントだからな。警察沙汰にならねーようにMCとして観客の呼びかけは必須ってわけか)

 

『リッカ先輩!あなたの対話に強く働きかける能力で全員の気持ちに指向性を持たせてください!きっと──きっと皆の気持ちは一つになる筈です!』

 

『ルル先輩!私、東風谷早苗の風に乗せて絶対遵守の力を皆に!ノリと勢いを行けるところまでです!』

 

端末から飛んでくる夏草メンバーラインにて、アカネと早苗の言葉に頷くリッカとルル。

 

「皆!行くよ!!せーの!!」

 

(福山縷々が命じる!全員──隣人の名を叫べ!!)

 

瞬間、空中にギアスのマークが浮かび風が巻き起こる。リッカの号令に重なり、天地を揺るがす様な号令の大合唱が響き渡る。

 

「「「「「「助けて!うたうちゃーーん!!」」」」」」

 

薄々勘付いた両親達も、夢中になって手に汗握る子供たちも、老若男女全員が導かれる様にその名を呼ぶ。夏草を人知れず支えてきた、その隣人の名前を。

 

【うたうちゃん…?まさか、この期に及んでお手伝いロボットがくる筈が…】

 

リーダーの嘲笑が響く──その刹那。

 

「──夏草の皆様がピンチならば、私は何処であろうとやってきます。それが火の中水の中であろうとも」

 

スタジアムの遥か上空から、高速回転してスタジアムに着地する影がある。ヒーロー着地にて少し床がめり込んだがさしたる問題ではない。

 

「そう、私は──夏草という都市にご奉仕するアンドロイドAI、その名も──」

 

「「「「「「うたうちゃんだーっ!!!」」」」」」

 

ぺこりと挨拶に頭を下げるうたうちゃんと、天を割かんばかりの大歓声。真打ちを招いたことにより、シーワールドのテンションは最高峰となっていくのだった──




スタッフ室

アカネ「すっげー…アドリブでなんとか出来てる!対応力完璧すぎぃ!」

エル「流石は夏草の皆さんです!マリン館長も名MCでした!後は決着にまでプログラムを組むだけなのですが…!」

アカネ「どうしたの!?」

「僕のセンスの問題なのですが…!可愛く魚達がデザインできませんっ!皆妖怪めいた見た目になってしまいます!!」

アカネ「おいぃ!?変わってあげたいけどそんな組み上げできないよ!?カッターでの手作業専門なんだからね!?」

エル「あぁ、ここまで来て!僕の頭の中の鬼神ロボットのデザインラインで薄々感じていましたが、僕のセンスはラスボス風なようなのです!これが僕の限界なのでしょうか…!?」

?「──ううん。諦めるのは早いよ、二人共」

アカネ「!!」

エル「あなたは!!」

大和「3Dモデリングだね。私に任せて」

「「大和先輩ッ!!」」

夏草メンバーを巻き込んだショー組み立ては、佳境へと突入する。果たして恙無くショーを完遂させる事は出来るのか──。

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