人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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大和「グラフィックモデリング最適化数値計算モデフィケーション調整プリント起こし起動テスト確認自立モードプログラム設定タイムルーチン製作タイムスケジュール確認…」

アカネ「た、タイピングしてる指が見えない…生き物みたいにカタカタしてる…」

エル「大和さんはプラモデルロボットバトルのグラフィックモデリングを担当しているプロフェッショナル!僕よりもずっとずっとエフェクト担当に相応しいお方!僕より頼れる方がいるとはなんと頼もしいのでしょう!ありがとうございます!!」

「リッカ達から話は聞いていたからね。手伝えることがあって良かった。アカネちゃんのお陰で整理も終わったし、あとはショーを成功させるだけだね」

アカネ「………うん!」

(六花もどこかで見てるんだとしたら…今は、ううん。今回もヒーローに勝ってもらわなくちゃ!お願い、うたうちゃん…!)

エレシュキガル『通りすがりのサポートAIなのだわ!やれることはあるかしら!』

大和「!?」



星人『ぎゃー!?』
『ぐわー!?』
『な、何者だ!?』

金時(ミニ具足)『オレか?オレっちは…仮面ライダー!ゴールデンだぜ!!』

「「「「かっこいいー!!」」」」

ジャンヌ「会場はあちらでーす!スタジアムの方はこちら!慌てないでくださーい!」

マルタ「走ったら〆るわよ!慌てない!」

ニャル【こちらは大丈夫そうだ。さぁ、頑張りなよ。アレク君…】

先刻

ニャル【エミュ疲れたし、こっちの世界でエンジョイしない?退屈しないよ】

アレクシス【おかのしただねぇ。あ、こっちにもアカネ君いるんだ?よーし、楽しんじゃおうか!】

ニャル【じゃあさじゃあさ、アカネちゃんのイフストーリーとして脚本書いたんだけど…】



ニャル【さぁ、どうなるかな?】




壮絶!アドリブだらけの台本無きシーワールドショー!〜後編〜

【呼べば来る…これは驚きだ。まるで本当にヒーローだねぇ、うたうちゃんとやら。私もビックリしているよ】

 

おどけた口調をもたらしながら、タコとイカの触手を差し向けるアレクシス。その一撃は、うたうちゃんの素早い行動に阻まれる。

 

『オーソライズ!』

 

素早くゼロワンドライバーを装着し、ヒーリングドルフィンキーをオーソライズ。展開したイルカ型のライダモデルが縦横無尽に飛び跳ね、アレクシスの触手を弾き飛ばしたのだ。それはまさに、うたうちゃんと機械のイルカの共演。奇しくもライダーモチーフが水族館に適していたのだ。

 

「変身!」

 

そのまま素早くプログライズキーを挿入し、ライダモデルを素体のアーマーに装着し、夏草を護るライダーがここに現れる。仮面ライダーディーヴァ、ヒーリングドルフィンの変身プロセスが完遂されたのだ。奇しくもドルフィーと似たシルエットにより、その出処ははぐらかされる。

 

「おぉっ!メカドルフィーだ!カッコいい〜!」

 

「仮面ライダーみたいだけど…あんなライダーいないから、やっぱりシーワールドのメカドルフィーみたいな立ち位置なのかな!」

 

「お顔が見れなくなるのは残念だけどカッコいいから素敵よ!うたうちゃーん!」

 

『夏草の皆さんは基本的にもの凄く寛容よね…。というわけで仮面ライダーディーヴァ、参上!さぁどうする?必殺技でシメにしましょうか?アレクシスさん』

 

秘匿回線にて打ち合わせをしながら、ショーの進行は滞りなく行っている。徒手空拳で触手を捌いていくその立ち回りは、見る者の心を熱くさせている。

 

【そろそろ宴もたけなわだし、私もやられ時だからねぇ。やられるのに文句は無いけれど…】

 

『…?』

 

【…少しだけ、私のわがままに付き合ってもらおうかな】

 

ワガママ…そう口にした瞬間変化は起きた。アレクシスの展開している触手の精度と苛烈さが、一気に増したのだ。ディーヴァですら対処に手こずる程に。

 

『くっ!これは──!?』

 

【ごめんね、うたうちゃん。後でいっぱい謝るから、ここだけは付き合ってほしいな…!】

 

 

「あ、アレクシス!?何やってるの!?うたうちゃんに合わせてぶっ飛ばされればいいんだって!」

 

「この状況…さながら真打ちに対し本気を出す海の怪人です!これもアカネさんの指示なのですか!?」

 

ブンブンと首を振るアカネ。アレクシスに任せきりで、任せたら大丈夫だと思ったら急に反旗を翻され困惑しているのはアカネの方なのだ。

 

【いい機会だ。せっかくだからアカネ君の夢を叶えてあげようと思ってねぇ】

 

「私の、夢…!?」

 

【あぁ、いつも言っていたじゃないか。『一度でいいから怪獣大勝利が見たい』と。今の私は海鮮怪人アレクシス。願いを叶えてあげようねぇ。うたうちゃんを倒して…!】

 

息を呑みながらも、アレクシスの言葉には心当たりがあった。常日頃から呟いていた、怪獣や怪人がヒーローに勝つ事の出来る日を。そんな日や、そんな瞬間が訪れる事を考えながら、怪獣たちに想いを馳せてきたのだから。アレクシスはそれを今、ついでとはいえ叶えようと言うのだ。アカネは戸惑いながら、それは自分の願いであった事を自覚する。

 

「ああっ!うたうちゃんが!」

 

エルの言葉通り、弾き飛ばされ追い詰められるディーヴァが映し出されていた。このままでは、本当にアレクシスが勝利してしまうかもしれない。それほどに、アレクシスは真に迫っていた。彼は、冗談を口にしていないのは見て取れた。

 

【さぁ、どうするのかなアカネ君。この機を逃してしまったら、こんなチャンスは回ってこないかもしれないねぇ…!】

 

アレクシスがディーヴァに躙り寄る。決着を付けんと触手がうねりにうねりながら迫ってゆく。ヒーローの大ピンチ。自分が何度も夢みた『もしも』の光景。

 

「ああっ、そんな!うたうちゃんが、仮面ライダーディーヴァが逆転負けを喫してしまうのですか!?」

 

「もう少し…もう少しで完成する…!」

 

エルと大和の声が遠く聞こえる。唐突に起こった夢の成就。ヒーローが敗れ、自分の怪獣が勝利する。何度も何度も夢見た光景が、すぐそばに迫っている。

 

【さぁ──言ってご覧アカネ君。『ヒーローをやっつけろ』といつもの様に。君の願いを叶えてあげよう…!】

 

アレクシスの言葉は、最高のタイミングで果たされようとしていた。ともすればこの瞬間の為に、アレクシスはこの役割を買って出たのかもしれない。ここで夏草を、仲間を、全てを裏切れば夢が現実になる。ヒーローを、自分の怪獣がやっつけてくれる。

 

「───そんなの…」

 

…だが。今の彼女は少し違った。怪獣は大好きだ。強い怪人も怪獣も、ヒーローの引き立て役に終わらないライバルとしての怪獣が大好きだ。いつだって、ヒーローに勝ってくれるのは大歓迎だ。

 

だが──今の彼女は『それだけ』ではない。自分の劣等感と鬱屈の捌け口にしていた怪獣への想いだけが、彼女の全てではない。

 

『立派に生きなよ、アカネ──』

 

「そんなの!皆を困らせるだけでしょうが──!!」

 

そう、自分一人だけは嬉しくても、そこにいる誰もが悲しむのなら。仲間達も、うたうちゃんも、夏草の皆も哀しんでしまうのなら。そんな夢は『叶えてはいけない』夢なのだ。アカネには今、『夢』よりも大切なものがあるのだ。周りに、画面の向こうに。

 

【おぉ、アカネ君…!】

 

「頭に来たぞアレクシスゥ!暴走やらかしたあなたにお仕置きしてやるからなぁ!!」

 

【ならば君の知るヒーローで、歌姫に力を授けるんだ!今の君ならば、それが何なのか解るはずだよ!】

 

言われなくても──!アカネはイメージする。彼女を助けてくれたヒーロー。今も胸に焼き付くヒーロー。あの日、楽園から出て心細かった自分を助けてくれたあの子が、作り上げたヒーロー。

 

「───アクセスコード!SSSS・GRIDMAN──!!」

【インスタンス・アブリアクション!!】

 

アカネが口にしたヒーローの名前。それと同時にアカネの身体が光り輝き、アレクシスの召喚した、アカネの部屋に大切に飾っていた人形と一体化し、『プログライズキー』へと姿を変えスタジアムへと飛来する──!

 

「アカネさんが!変化しちゃいました!?」

 

「こうなったら、信じるしかないよ。アカネちゃんと彼女が信じたヒーローを。──できた!」

 

同時にホログラムが完成し、全ての準備がここに整う。ショーはいよいよ、クライマックスを迎える──!

 

 

『くっ、流石はアカネちゃん渾身のダークヒーロー、手強い…!』

 

ゴスペルホライゾンキーを使う暇も無い手数に、完全に劣勢なディーヴァ。ドルフィーは空気を読み気絶中、天空海は動きを封じられている。あわや八方塞がりか。──その時。

 

『うたうちゃん!すみません、お邪魔します!これ、使ってください!』

 

瞬間、ディーヴァの目の前に飛来した白と赤のプログライズキー。グリップ部分が巨人の横顔となっており、目が点滅し意思疎通を図っている。その声は、アカネのものだ。

 

(アカネさん…?これは、プログライズキー…?)

 

『突然笑えないアドリブしたあのイケボ海産物を、一緒に懲らしめてくださいっ!今回だけは、私もヒーローを応援します!』

 

『よ、よくわからないけど…分かったわ!一緒に行くわよ、アカネちゃん!』

 

素早くプログライズキー…グリッティングプライマルキーをオーソライズし、ゼロワンドライバーへと挿入する。

 

『アクセス・フラッシュ・ライズ!!』

 

瞬間、ディーヴァに白と赤、そしてドルフィンライダモデルが合体し、三色のカラフルにして女性のフォルムのヒーローが誕生する。AI、仮面ライダー、そして特撮ヒーローが合わさったこのステージ限りの幻の形態──アカネの心のヒーローが、うたうちゃんと一つとなり生まれた幻のヒーロー…!

 

『『輪唱合体超人!ディーヴァグリッドウーマン!!』』

 

「「「「うぉおぉおぉおぉぉぉ!!!」」」」

 

ヒーローのピンチからの新形態の変身。そして在りし日のヒーローが新しいフォルムでリメイクされたかのような姿に、親子揃っての歓声が巻き起こる。怪獣好きなアカネという不可能要素を取り込んだ、まさに奇跡の合体が現れたのだ。

 

【フフフ…。さぁ、見掛け倒しでないといいけどねぇ…!】

 

そしてクライマックスとばかりに、先程とは比にならない程の触手を打ち放すアレクシス。それはまるで、相棒の晴れ姿に花を添えるように。

 

『ハウリング!』

『グリッドーッ…!!』

 

それに対し、アカネとディーヴァが構えを取る。ドルフィン部分の装甲が展開し、超音波を発し増幅するスピーカーへとなる。そこから音波波動の光線を発する必殺技──!

 

『『ビイィィィィィームッ!!』』

 

発射されたビームに触手は瞬時に分解され、同時にアレクシスもその音圧に高く高く吹き飛ばされる。高く打ち上げられ、絶叫が尾を響いていく。

 

【う、ぬ、ぉおぉおぉおーーっ!?】

 

『グリッティングインパクト!!』

 

『『ディーヴァ・グリッドォオォオーッ!!』』

 

ベルト側面部分を叩き、ムーンサルトの要領で跳び立ち、打ち上げられたアレクシス目掛け──

 

『『キィイィーーーック!!!』』

 

その凄まじい勢いのキックが叩き込まれ、アレクシスの身体から光が溢れ出す。実体化していた姿がキャパオーバーを迎えたのだ。そして──

 

【──たまにはヒーローも、いいものだろう?アカネ君】

 

『!アレクシス──!』

 

その言葉に応える暇なく、アレクシスは爆発四散。瞬間、大和が組み上げたホログラムの魚達が縦横無尽にシーワールドの天空を泳ぎ回る。上空から空中回転捻りを加え、スタジアムへと着地したディーヴァは顔を上げ──

 

『──お客様参加型のショーは以上となります!ここからはシーワールドオリジナル、ホログラムビジョンライブショーをお楽しみください!ご静聴、ありがとうございました!』

 

「「「「「「「うぉおぉおぉおぉおぉおぉおぉおーっ!!!」」」」」」」

 

お決まりの決め台詞で締め括り、館長と共に深々と礼を行う。それを皮切りに、シーワールドに今日一番の歓声が木霊するのだった──。




アカネ『……すみません、本当すみません。私とアレクシスがメチャクチャ迷惑かけて…!』

うたうちゃん(いいえ、お気になさらず。私達もお力になれたようで、何よりです)

ディーヴァ『シャウト、カッコよかったわよ。随分と手慣れてなかった?』

アカネ『…中学生の頃、練習したんです。カッコいい技の叫び方…友達と。このプログライズキーの元になったのも、友達が作ってくれた人形が元で』

(…立派に生きたよ、六花。あなたのヒーロー、借りちゃったけど…許してね?)


〜テレビ前

眼鏡の少年「うぉーっ!!かっけぇー!!ウルトラシリーズとアンドロイドと仮面ライダーの重ねとか欲張りすぎだろー!!」

六花「…ふふ、あいつ…」

赤髪の少年「嬉しそうだね、六花?」

六花「そ?──嬉しいしね」



エル「大和さん!!やりましたよ!大成功です!!」
大和「ふぅ、良かったね。エル君、アカネちゃん」



ゴミ捨て場

アレクシス【あいたたたた…凄い気合い入ってたねぇ、アカネ君。良かった良かった】
ニャル【堂に入ったやられぶりだったね、アレク君】

アレクシス【しかしねぇニャル君。やられ役やカマセ役も箔が必要だからね。私達が身体を張らなきゃねぇ】
ニャル【これでいつぞやのアカネ君の無念も晴れたかな?少しは】
アレクシス【さてねぇ…だがまぁ、少なくとも…焚き付けたかいがあったよ。こちらのアカネ君は──】

──奇跡のような、たくさんの出逢いがある。二人の悪役は暗がりで、蒼き天空を舞う魚達と眺めていた──

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