人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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冠陽神社(オリジナル土地)

あらゆる神々、八百万の神を節操なく祀りまくった超集合スピリチュアルスポット。神々は数だよ兄貴!というコンセプトで可能な限りの神を祀った複合巨大神社。

『参拝客だけでなく、神々の騒ぎ場所としても活用したい』

との事で社などの造形には熱意が注がれたものとなっている。土産屋、キャラ絵馬などが多数で神々を近くに感じてもらいたいというのが主題。

八百万神言えるかな?で50柱言えたら賞金チャレンジを開催しているが、現代人で言い切れたものはまだいない。それだけ、八百万の神は飽和している。

余談だが、八百万の神というのは八百万いるというわけでなく、『いっぱい、たくさん』という表現である。流石に社の八百万は不可能だった。

実際にある社は10から50、分かりやすく有名所があるのは観光商売と言えるだろう。デフォルメグッズ出品中である。


あなやおばあちゃん出張〜視察!社巡り!〜

「あなやぁ…!ここが八百万の神を大体祭ってる豪気なる場所、冠陽神社!私達の数多すぎ?と思っていたりいなかったりしましたがそんな事は否であったようで!子供達の敬虔さと信心深さに感謝するばかりです!子々孫々!ありがとー!あなやー!」

 

冠陽神社…夏草の一大観光スポットにて来訪者丸出しのテンションでやいのやいの騒ぐいつもの薄着…ではない仕立てられた服装に身を包み声を上げるはやってきてしまったイザナ味の化身その名も伊耶那美命。まさかまさかの超重鎮が御参りなさる逆転現象。ゲイ・ボルクもビックリである。

 

「は、母上…わ、悪目立ち…悪目立ち…」

『ワフ(本来ならどしりと構える側であらせますのに…本当、心持ちはいつまでもお若いのですから)』

 

傍らにありしは白き大神、アマテラスと眼鏡にマスクを付けた黒髪ロングの絶世の美女たる不審者、ツクヨミ。始まりの柱達がなんとこうして夏草へと降り立ったのである。彼女たちもまた、この故郷をエンジョイする立場となっていたのだ。

 

「心と気概は老いることなく宿りし真の美徳。神も人も新しきに触れれば心は既にあんちえいじんぐとなりたもう!楽園は実に楽園なれど新鮮な心地もいと大切!ささ、こうして外界に触れるも神の使命なりたもうや!アマや!つっきーや!いざ、このおばばに続きたもーう!」

 

「は、母上…!」

 

「子々孫々がおばばを待っておられるぅー!!」

 

『ワフゥ…(流石須佐之男の母、神の血を感じられずにはいられません。追いますよ、ツクヨミ!)』

 

「ま、ままま待って、姉上、母上…!外界は、眩しすぎて…一人になさらず〜…!」

 

テンションフルマックスな母と、振り回される姉妹。冠陽神社の有り様は創造の女神の眼鏡に叶うものか、果たして──

 

 

〜須佐之男ノ社

 

イザナミ「旧き蛇神を討ち果たし、草薙剣を世にもたらした暴れん坊!私はお目にかかれませぬ子ですがイザナギの子なら私の子!アマや、御覧なさいな。弟がこんなに逞しく…」

 

アマテラス『………………(歯茎やや剥き)』

 

イザナミ(あなや露骨にイヤな顔ー!?無理もありませぬ、天岩戸は須佐之男のイタズラがアマやをうんざりさせたが故に起きたもの!彼女は慈愛の神でありますがそれはそれとして!嫌なものは嫌!あなや自然!!)

 

ツクヨミ「姉上、鎮静、鎮静…リラックス…」

 

アマテラス『ワッフ(いけないいけない、私としたことが。私も神の役目を放った手前、悪さで言えば須佐之男とどっこい。ここは無粋は無しで行きましょう。おや、これは)』

 

『須佐之男印の精力剤!7日8晩臨戦態勢!ヤマタノオロチを解き放て!』

『草薙剣レプリカ』

『須佐之男プロテイン』

 

ツクヨミ「お、男の子の…品もの…」

 

イザナミ「あなやぁ…精力剤…あなやぁ…」

 

アマテラス『ワゥ(どう思われているか一目瞭然というものです。全くあの悪童は。さーゔぁんとゆにばーすで姿を見せたようですが、何をしていらっしゃるのやら)』

 

ツクヨミ「お、お酒…須佐之男銘柄…匂い、すん…きゅう」

 

アマテラス『ワフ!?(匂いだけで!?どれだけ強い酒なのです…!?)』

 

 

〜月読尊ノ社

 

ツクヨミ「私…。忘れられて、なかった…いぇい」

 

イザナミ「忘れられる筈がありませぬとも!3柱と言えばアマテラス、ツクヨミ、スサノオ!日本の顔の3柱なのですから!」

 

アマテラス『ゥーフ(スピリチュアルや、ひーりんぐびーじーえむ。貴女の人格を表した厳かで落ち着いた品ばかりが置いてあります。やはり、夜に浮かぶ月とは静粛なイメージですものね)』

 

ツクヨミ「ん…暗闇は、怖がらないでくれたら…照らすよ、いつだって…姉上が、私を照らして、くれれば…」

 

アマテラス『ワフ!(勿論です、我が妹。太陽と月、お互いを引き立てて参りましょうね)』

 

イザナミ「絵馬があります!…おぉ…ツクヨミ!見事なまでにバラバラな描写でありますれば!」

 

ツクヨミ「これといったアイコンが無いのも…ツクヨミ、クオリティ…慣れっこです、うふふ…」

 

アマテラス『ワフ(ツクヨミ…強く生きましょう…)』

 

 

天照大御神ノ社

 

イザナミ「なんと!巨大なアマや神体!?」

 

ツクヨミ「凄い…流石、姉上…」

 

アマテラス『ワゥ〜(少し面映いですが、人々は太陽にこんなにも期待と信仰をもたらしてくださっていると考えると気合も入ると言うものです。最高神の座を両親から継いだ身として、現し世を照らしていかねば!)』

 

イザナミ「流石は我等が慈母!その決意はまさに陽射しの如きポカポカぶり!時にアマや、風呂嫌いは治りましたかや?」

 

アマテラス『ギクッ』

 

ツクヨミ「姉上、神気で汚れを焼き払うのは…ずるめな気配を感じるような…」

 

『ワフ、ワフ!(なな、何を仰る!別に目を閉じるのが怖いとか冷たさが怖いとかそんな事はありません、ただお風呂に費やす時間を他の事に使いたいのです!その時間でどれだけ人助けができるか!)』

 

ツクヨミ「必死…」

 

イザナミ「いけませんよアマや!お風呂とは身体ではなく心のお洗濯!浸かって100数えて、心の汚れを落としていくもの!わかりました、帰りに私と銭湯に参りましょうや!ご洗浄なりや覚悟したもう!」

 

『ウゥゥ〜…(い、いくら夏草と言えど…オオカミOKな銭湯はありますでしょうか…?)』

 

 

大国主大神ノ社

 

アマテラス『ワフ(国造りの神、オオクニヌシ君も祀られておりますね。彼は心優しい神ですから喜んでおられるでしょう)』

 

ツクヨミ「あんまり知らない…」

 

イザナミ「有名なエピソードはやはり因幡うさぎの話したもう。うさぎは鮫に皮を剥がれのたうっていたところ、さる美女に求婚する者らは因幡うさぎに嘘の治癒法を教え、オオクニヌシは正しい治療法を教えた。その優しさに因幡うさぎはあなたが嫁を貰えると太鼓判を押したらその通りとなった!人柄がうかがえるお話でありましょうや!誠実さよし!」

 

アマテラス『ワフ(やはり正直者が得をする。そんな世の中にしていきたいものですね。オオクニヌシを見倣って、私達も奮起して参りましょう!)』

 

ツクヨミ「わ、私にはそもそもそんなに誇れるエピソードが無いのが、ネック…」

 

アマテラス『ワゥー…(あったらあったで牛の死骸等の理不尽にも逢いますし、良し悪しですよそこは…)』

 

イザナミ「私とイザナギなんて日本最古の離婚調停エピソードが有名なんて事に…とほほ、千の呪詛など伝えるべきでないことまで…」

 

ツクヨミ(これが…有名税…)

 

 

伊邪那岐尊ノ社

 

 

イザナミ「……………」

 

アマテラス『ワフ…(母上…)』

 

ツクヨミ「で、出る…?」

 

イザナミ「いえいえ、お気遣いありがとう二柱とも。…今更イザナギにどうこう言うつもりはありませぬ。歴史に刻まれたままを、ただ受け入れなくては立ち行かぬものですものね。カグツチ…ヒルコ…親としての不義理を果たした事は、ずっとずっと背負わなくてはならぬものでありましょうや」

 

ツクヨミ「でも…私達は、二柱に感謝しなかった日は、ない…」

 

アマテラス『ワフゥ(ツクヨミの言う通りです。離別が望まぬものであろうとも、愛し合い睦み合った記憶まで消すことは叶いません。分かちの儀式も、日ノ本の国造も。皆全てあなたと父から始まったものなのですから)』

 

イザナミ「……ありがとうございます、二柱とも」

 

(イザナギ…まだ鉾がリッカちゃんや私の手にあるのは、心が離れきっていない証左。姿を見せずとも、心は確かに人の世を見ているのですね)

 

「…いずれ会う日が来たならば、あなたに見てもらいたいものです。元気にすくすくと育つ、人の子らの著しき成長を。願わくばそれを…貴方が受け入れてくださいますよう…」

 

アマテラス『ワフ!(えぇ、やはり仲睦まじいのが一番です!)』

 

 

ツクヨミ「私達…父イザナギの鼻や目から生まれた…要するに、微生物…」

 

アマテラス『ワフゥ…(物語で退場したキャラクターの個性を肩代わりするアレですね…)』

 

イザナミ「プラナリや!…(ドヤッ)」

 

((別に上手くない…))

 

この調子で、彼女らはノンビリ神社を巡り子らに想いをはせるのであった──




イザナミ「その名に偽りなし!実に周りごたえある場所でした!よもや八雷神や穢神まで祀ってあるとは!」

ツクヨミ「フォロー範囲広し…ど、どうしよう。リッカちゃんたち来るみたいだから、本尊で、待つ?」

アマテラス『ワフゥ(水族館は大成功みたいですし、願掛けに来るやもですね。待っていましょうか?)』

イザナミ「あなや!青少年の恋愛、応援するはおばあちゃんの使命!ご利益集めるためにも!れっつ!準備したもーう!」

ツクヨミ(ご、御利益はもちろん本物だろうけど…)

アマテラス(良縁成就を期待して大丈夫でしょうか。その、物語の末路的に…)

恋路の成就に全力なイザナミと、そこはかとなく不安な二柱の夏草巡りは、やがてリッカ達が訪れるまで続くのであった──

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