人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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冠陽神社

グドーシ「日本の神々…実に人に親しいイメージを懐きますなぁ」

天宇受売命ノ社〜ブティック〜

「この様に人の品物の露店を出していても違和感の無いのは本当に素晴らしい。マフラーの一つも買ってまいりましょうか」

(シーワールドの見世物は素晴らしいものでした。一足先に来て興奮を鎮めようとしたのは正解…おや?)


夏草モブボーイのレベルが高すぎる件について〜神様編〜

「ねぇねぇ、なんで神様って色々いるのー?」

 

(おや…)

 

冠陽神社、ひいては夏草を回っていたグドーシが、子供達のそんな言葉に耳を傾ける。不思議な雰囲気の少年が、仲間連れの子供と話しているようだ。

 

「モンバスの中にも色んな国の神様がいるからさー。そういうの気になるよなー。お前はそういうの詳しいんだろー?教えてくれよー」

 

「もちろんさ。知ってもらうことは神様にとっても喜ばしい事だからね。神様を通した人間の自然への向き合い方、色々振り返ってみようか」

 

(才知あふれる者が多い夏草、神学に敏い子まで。これは面白そうですな。ゆるりと後塵を拝し、教えを乞わせていただきましょう)

 

そんな旅の事情にて楽しむグドーシ。釈迦の耳に説法とは言うが、グドーシは人の身。まだ知らぬ事が数多あるゆえこういった機会には耳を添えるに躊躇わぬものなのである──。

 

 

〜ギリシャの主神について

 

「ゼウスってすげぇ強そうなのにクズだよなー!」

 

「ブッ──!!」

 

ゼウスの雷霆よりどストレートな罵倒に、天然水ラムネがむせる金髪のニクいアイツ、キリシュタリア。そんな本当の事をと言う前にむせたので、イニスに背中を擦られる。

 

「普通嫁さんは一人だろ?俺の父ちゃん、母さんといつも仲良しだぜ。おかしいよなー。好きがいっぱいあるなんてさー」

 

「ゼウスは偉大なる主神。性格はともかくそこは疑いようがない。性格はともかく天空を司る神としての威光はまさにオリュンポスのリーダーだ。性格はともかく」

 

(ははは、性格はと念を押されすぎてしまったなぁ…)

(キリシュタリア…ゼウスの力を宿すものとして恥じ入っているのですね…)

 

「でもそれには理由があるんだよ。ギリシャ神話が広く波及した際、その土地に住む有力な氏族は皆、こぞってゼウスの子孫を自称したんだ。かのアレキサンダー大王も自身をゼウスの子孫と言ったくらい、かの主神は絶大な人気と威光を持っていた。それにあやかる為の氏族の在りようが神話に反映された側面もあるから、ゼウスは好色といったイメージがついたんだろうね」

 

「となると、ゼウスのチ○チ○がだらしないのは解釈一致って事なのか!すげぇ!ギリシャ神話はでけーんだな!」

 

(ケッ。ポセイドン共々ゴミクズのカス野郎なのはフォローする必要もねえ事実だろうが)

(待ってくれカイニス!私の、私のゼウスが囁いている…!)

(何をだよ)

(……綺麗な女性とお付き合いし魅力を磨くのは男の甲斐性ではないか?だそうだ!)

(作るだけ作って満足してねーで責任持てってんだよぉ!!)

 

「ちなみに女神ヘラが何故子供を害するのかは、ゼウスが強すぎて報復できないからだよ。アポロンも同じ理由でアスクレピオス惨殺の責任を、雷霆製作のサイクロプス皆殺しで償わせている」

 

「やっぱギリシャってこえー!まともなのいねーの?」

 

「ハデス、ヘスティア…これくらいかな…」

 

「二柱しかいねー!やっぱギリシャっておっかねー!」

 

 

インドの神話について

 

「インドの神様ってスケールでけぇよなー!世界とか宇宙とか滅びまくりだもんなー!シヴァ、かっけー!」

 

(おや、あんな小さいのにインドに興味があるだなんて。ナンディやシヴァも喜びます!)

(面白くありませんね…まぁ私は夏草の女神なんでインドとかどうでもいいんですが)

 

グドーシとリッカの贈り物を見繕っていたカーマにパールヴァティーがその会話を聞き及ぶ。シヴァの人気に、少なからず思うところありなカーマとご満悦なパールヴァティーが対照的だ。

 

「シヴァはもちろん大人気な神様だが、パールヴァティーという美と誠実の女神が僕は好きだ。困っている老人を助けるため、シヴァ以外の男に触れない誓いを破ってまで人を助けたエピソードこそ、彼女を真の女神にしていると思う」

 

(うふふ、嬉しい!夏草の皆さんにもたくさん祝福を授けなくちゃ!)

((イライライライライライラ))

 

「だが、そのパールヴァティーも強烈な一面を持っている。カーリー、という怒りと殺戮の女神はパールヴァティーが変身した姿をだと言われている」

 

(えっ!あ、ぼ、ぼく!?それは、それはですね!)

(いいじゃないですか〜。聞いてあげましょうよ〜(ニヤニヤ))

 

「カーリーは首や頭蓋骨を繋げたアクセサリーをつけ、十を超える腕全てに剣を持っている黒き肌の恐ろしい女神とされていて、滴る血から増える魔神を、その血を吸い尽くし退治したという。テンションが高まりすぎたカーリーは踊りだし、その踊りにより世界は滅びかけたとされている」

 

 

(わー、こわーい。そんな神様がいるんですねー?)

(あー!あー!そろそろ、そろそろいいんじゃないでしょうか!?パールヴァティーの話に戻ってもいいんじゃないでしょうかー!?)

 

「最終的にはシヴァがその身を投げ出しマットになった事で事なきを得たみたいだね。その際のイラストは原典にあるし、ペロッと舌を出している様子はお茶目さと可愛らしさを表しているようにも思える。剣と生首を有した姿とのギャップが素敵だな…」

 

「お、おう…。俺の母ちゃんより怖いな…」

 

(ドン引きしてるじゃないですかー!?)

(お子様は残酷ですねー♪まぁいいじゃないですか、本当の事なんですしー♪)

 

パールヴァティーの予想外の信仰の集め方に上機嫌なカーマと、本当の事ゆえ否定できず泣きを見るパールヴァティーでしたとさ。

 

北欧神話について

 

「ロキってカッコいいよなー!トリックスターで悪いところがさー!」

 

【おやおや】

【ろくな大人にならないねぇ、彼】

 

北欧神話、ロキに憧れる少年に生暖かい目線を向ける邪神と虚無の不死者。耳のリハビリにてたまたま聞き及んだ知識に評を下す。

 

「勘違いしてはいけないが、悪いだけの神じゃないんだよロキは。トールの盗まれたミョルニルを取り返す手助けをしたり、オーディンと義兄弟の契りを結んだりした傑物なんだ。まぁ、悪戯好きと言うには度を過ぎているところがあるけれど…」

 

「例えば?」

 

「ロキのセンナ、という啖呵が有名だな。ロキをはぶって宴を主催した神々に苛ついたロキは、宴に乗り込んで神々の恥ずべき過去を詳らかに暴き立てた。敵に捕まり屈辱を受けた事、夫以外への不義理、神としての品格の批判。これが凄かったのは、何一つデタラメ無い真実だった為にトールが来るまで誰も言い返せなかった事だ」

 

「相手の嫌がることをするには相手を知らなきゃダメって事なんだな!」

 

「そうだね。的確に場をかき乱すのはやはりとびきり頭がよく、狡猾で、残酷じゃなくちゃいけない。トリックスターといえばロキであるように、君もただ嫌がることをするだけじゃなくある意味感服するような振る舞いをした方がいいと思うよ」

 

「よーし!俺、ロキになるぞー!」

 

【おやおやおや】

【次のアカネ君候補みーっけ】

 

「でも、そんなロキも死ぬんだよな」

 

「あぁ。というより北欧神話はラグナロクで全てが滅びる運命だ。オーディンも、トールも、フレイも、フレイヤも、ロキも皆死ぬ。運命の無常さといえば、北欧神話に勝る神話は無いかもね」

 

「スルトが滅ぼすんだっけ?」

 

「あぁ。ムスペルヘイムの巨人スルト…彼の持つレーヴァテインが、世界樹の影に逃げていた二人の人間を除いて焼き尽くす。その後、スルトは何処かに消えて新しい世界が残ったんだ。レーヴァテインといえば、強い武器のイメージはここから来ているのだろうね」

 

「うーん、じゃあ俺スルトがいい!やっぱ一番強くてヤバいのがいいよなー!」

 

【フフフ、少年。その単純さでバフデバフの重要さに気付かずゲームオーバー量産なんて事にならないよう祈っているよ】

【ポケモンフルアタ構成、パラメーター攻撃オンリーなんてのはよくある事だからねぇ…】

 

順調に脳筋の道を選んだ少年に、二人は嘲笑混じりの警告を贈るのであったとさ──




少年「結局、なんで神様っておっかないんだろうな?人間に優しい神様って全然いないじゃん」

不思議な少年「それは神が、人間が畏怖するものに神を見出したからだよ。地震、噴火、天変地異、嵐。それらが理不尽な理由に形をつけたのが神だからだ。神が優しかったら、自然災害が恐ろしい理由がつかない。自然は、人間が崇めるべきものだったんだ。だから、神さまは人間を苦しめ、たまに恵みをくれる」

少年「性格わりー!」

不思議な少年「人間は甘やかすとすぐ怠けるからね。宿題終わった?ノート見せてあげないよ」

少年「えぇー!意地悪するなってー!」

不思議な少年「そういうところが、人間を甘やかさない理由なんだよ。とすれば、神様は人間にとっての『罰』の側面もあるのかも知れないね」

少年「やだよ!先生だけでいいよバツなんて!あーあ…いいよ、ノート見せなくていいから勉強教えてくれ!」
不思議な少年「それならもちろん。神罰をもらわないよう、二人で頑張ろうね」

グドーシ「〜実に含蓄溢れる言葉でした。改めて、夏草の皆様はなんと敏い方ばかりなのか」

驚愕のグドーシの脇を、少年たちが駆けてゆく。それと入れ替わりにて、聞こえる声。

リッカ「おーい!グドーシー!」

グドーシ「おや、いらっしゃられた。…良かったですな、リッカ殿」

彼女を支える神は素晴らしい方ばかり。その事実に、人知れず微笑むグドーシであった──。

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