人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜   作:札切 龍哦

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天空海「ち…ちかれた…」

うたうちゃん「サイン対応、突如のライブ大変お疲れさまでした。流石のバイタリティですね」

天空海「自分の為ならあっさり諦められるのに…誰かのためだと限界超えられちゃうのが我ながらにくい…とりあえず、今は休んで皆の場所に…」

『ライン!』

「?……えっ!?マジ!?」

うたうちゃん「?」

天空海「うたう、行くわよ!レアな店が今は開いちゃったわ!レッツゴーゴー!!」

うたうちゃん「え、あ、〜??」


岩戸の前に古着屋宇受あり!

「ウズ姉ー!開いてるわよね!開いてるわよね!」

 

天空海がうたうちゃんを連れ出しやってきた場所、そこは商店街エリアの小さな一角『古着屋天宇』と書かれた店内であった。夕方までサインとファン対応、突発ライブまで刊行しぐったりしていた天空海が、ライン通知により水を得た魚のように復活したのはこの店のオープン通知を受け取ったからである。

 

「開いてるからライン送ったんだっつの。ったくやかましいアイドルねー。日本ならいいけど外国行ったらいい恥晒しよ?脱ぐときのギャップ狙ってるんじゃないならちょっとは慎み深くしろって何回言わせるのかなこの困ったちゃんはさー」

 

そんな真っ当なアイドルを呆れ気味に言う、小さい街角に似つかわしく無い極上の生地素材をつかったオーダーメイドの衣服を着こなす二十代後半の美女がこの店の店主、ウズノミコトである。ちなみに芸名で本名は市長しか知らないとは本人の談。しなやかかつ柔らかな雌豹が如きスタイルや醸し出す威風は、グラビアアイドルの天空海に勝るとも劣らない。

 

「ここは…私はあまり来たことがありませんでした。ファッションが、うまく飲み込めなくて。ウズノさんは…」

 

「ウズ姉でいいよ。高校生になってからこのチンパンジーの師匠っていうか…アイドルのステップアップに協力してる先生かな?よーこそ。もっと早く来てほしかったよー?我等が街のアイドルさん♪」

 

「年増が何言ってんのよホント。若さ溢れるあたしに任せてアンチエイジングでもしてればー?」

 

「フフン、私の年齢知らないの?私これで65なのよねー。同じ歳になって大口が叩けるか見物よねー天空海ちゃーん?」

 

「ムカつくー!この若作りババァムカつくー!!」

 

「おっほっほ。若さにかまけたバカは干からびて行くのが運命よ。ババァになりたくなけりゃ若さを高みに登らせることよ。ごめんね騒がしくて。あのバカ落ち着きがホント無くて」

 

「いえ。その快活さとリーダーシップ、何よりエネルギッシュさには大いに助けられています。姉貴分、というのでしょうか」

 

慕われてるぅ〜。等と茶化しながら自称65の店主は立ち上がる。肌の艶、張り、所作と共に25から6にしか見えない程の所作の流麗さはまさに天空海の師匠たる説得力を叩きつけてくる。

 

「掘り出し物、仕入れたよ。オーダーメイド注文なら用紙書きな。うたうちゃんや友達の分も書くんだよ、あんたが」

 

「解ってるわよ!届け先はホテルね、ホテル!」

 

「二人とも、何をなさって…?」

 

「あぁ、ここは古着屋で通ってるからさ。古着…に見せたブランド物や衣装や服装のオーダーメイドやってるわけ。あたしはこう見えて裁縫大好きな女の子なのよねー♪」

 

「所作だけは非の打ち所がないのホント腹立つんですけど!65ってふれまわっても誰も信じてくれなさそうなのメチャクチャむかつくぅ!」

 

「お褒めに預かり、ってやつ〜♪毎週不定期で店開けて、締めたくなったら締めるなレア感を出していくお店なわけようたうちゃん。なんか衣装欲しくなったら言ってみなよ?ドン引きするクオリティの、傑作作ってあげるからね」

 

うたうちゃんにも服を渡すと豪語するウズノ。うたうちゃんはその気安さに親しみを覚えながらも問う。

 

「…解析してみたところ、衣装も、商品も、とても素晴らしい出来です。間違いなく最高峰の品揃えです」

 

「褒めてもらえると気持ちいいわー♪もっと言ってもっと!」

 

「素晴らしいです!天才!穴場!穴馬券!」

 

「ダメよこのババア図に乗るんだから!甘やかさないでうたう!」

 

「年寄は労るもんだろー?お小遣いやんねーぞクソガキー。で、どうしたのうたうちゃん?」

 

「は、はい。どうして、発展エリアではなくここに居を構えているのでしょうか。ウズノさんならば、容易くお抱えしてもらえると思うのですが…」

 

うたうちゃんの質問、問いかけに彼女は答えた。ここに、彼女の矜持と拘りがあったのだ。

 

「そういう場所には最初からキレイな人とか、きれいになろうって人が来るものだからね。私はそういうんじゃなく、心や精神がキレイな人への店を開いてるわけ。ほら、見た目はボロかったし、一目見て入ろうとは思えないじゃん?でも勇気を出して服を選びたいとかキレイになりたいけど勇気が…って人に、この店は見つけてもらう為に辺鄙ぎみな場所につけてるってわけ」

 

古臭い、ボロ臭い店だと否定せず、目に見えぬ、気付いておらぬ魅力を目覚めさせる手伝いをする。それが、ウズノが知る美しさであるとうたうちゃんに語る。あと若さの秘訣。

 

「ショー、見てたけどさ。ずっとずっとイキイキしてるじゃんあんたら。だからちょっと店を開けたりしてあげてさー。感謝してねー」

 

「悔しいけど、ステージ衣装とか大好評じゃなかった日が無いのよね…本気出してアイドルより目立たないでよ私の服!」

 

「水着やデザイン書き起こしは私の仕事よ。ま、あとはさっさとセミでもフルでもヌードをやりなさい、ヌード。人間脱いでナンボよ?なんたらトリップは神ゲーだから」

 

「…AIのわたしにも同じように、オシャレを勧めてくださるのですね。」

 

「もちろん。何せ私はアンドロイドにだってエールを送っちゃう気ぶり女でもあるんだから。これからも積極的に足を運んでみなさいな。傍から見たらまるで人間にしか見えない衣装作ったげるからね」

 

ウズノの言葉に、嬉しげに頷きを返す。天空海の師匠であり、彼女のファッションの全てを担う者と懇意に出来るのは、うたうちゃんにとっても福音だ。

 

(ちょうどディーヴァである私の服も欲しかったし、得したわねうたう!やっぱり天空海先輩は退屈しないわ!)

 

(えぇ、ディーヴァ。ですが疑問点を質問する衝動を抑えきれません)

 

うたうちゃんはディーヴァに告げ、ウズノに告げる。そう、まるで二十代かのような65歳、に尋ねる事にした。

 

「ずばり、若さの秘訣とは一体なんでしょう?是非アンチエイジングの秘訣を聴かせていただけたなら…」

 

「若さの秘訣…それはもう決まってるわ!脱ぎ去ることよ!」

 

帰ってきた答えは、思わず聞き返す程にトンチンカンなものであった。脱ぎ去る。アーマーパージ、キャストオフといった概念なのかな、とうたうちゃんは懸命に処理していく。

 

「ストレス、人間関係、その他諸々。頼まれなくてもやってくるのがストレス概念!こんな世の中だからこそ、開放が必要なのよ!キレイな服着て美味しい!脱げて二度美味しい!完璧なる美とは服とかテンションで決まるの!幸せになりたかったらニコニコよニコニコ!めんどくさいしがらみも、不満も脱ぎ捨てて踊り狂えば若返るの!これマジで!」

 

(なるほどね…縛られない自由奔放さ…それが、神髄ってことなのかしら…)

 

「この際だから言わせてもらうけど、男達の早脱ぎっていいわよねー!たくましい男が服に手をかけて瞬時に脱ぎ捨てるあの緊張と興奮いったら!人が脱ぐのも自分が脱ぐのもテンション上がるのよマジで!あなたも困ったら笑ってみなさい。笑っていれば厄も吹っ飛ぶのよ!私もぶっ飛ばしていくわー!」

 

テンションマックスで語り続ける元気な店主に、日が沈むギリギリまで脱衣とは何か、着衣とは何かを語りつつけたウズノミコト(65)であった──




『CLOSE』

ウズノ「また来なさいよー!こんどはみんなでねー!」

天空海「わかってるわよー!よし、お土産を確保!」

うたうちゃん「お土産?」

天空海「リッカたちのに決まってるでしょう?あと数日でまた帰るんだから、買えるものとか渡したいじゃない?」

うたうちゃん「───あぁ」

そのとき、うたうちゃんは理解した。彼女がいうキレイなもの。それを彼女は愛し、発掘するが故に古着屋で息を潜めているのだろう。

「キレイですね。あなたも、皆も…」

天空海「そりゃあ私!アイドルですからねー!」

…仕立ててくれたディーヴァ用の衣装を持ち、合流する為に向かうのであった──
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