「学生達の味方である我が弁当屋。低価格最高級品質なのは勿論のことですが、それを狙いに数々の強豪貧乏学生が集う波乱の模様を絶えず巻き起こしています!そしてその渦中には、リッカさんのクラスメートの姿も!」
「全く目を離せない組合せの中、果たして彼は無事に弁当を確保することが出来るのか!それではベントウファイト!レディー!!ゴーッ!!!」
「はぁあぁあぁあぁ……」
俺の名前は関土門(せき どもん)。夏草昇陽学園で運動部全般の助っ人をやっている者だ。巷では俺を見る度暑苦しく叫んでばかりと言う輩がいるが、そんな事はない…普段は割と物静かな方だ。そんな俺が、夏草におけるオススメスポットを一つ紹介しようと思う。リッカとはあれきり中々鉢合わせしないからな。
(今日はなんとしてもハンバーグ弁当を手にしてみせる。叶うならば豚汁も付けたい…出来たてかつ半額の恩恵を必ずこの手に!)
突然だが、学生というのは往々にして金がない。万年金欠で遊ぶ金もままならず、アルバイト三昧なんていうのは珍しくもない話だ。かくいう俺もお小遣いは雀の涙、学費を出してくれる家族に頼り切る訳にもいかず自分なりの節約術や使い所を見出さなくてはならん。そんな貧乏学生の心強い味方なのが俺が気合を込め待機しているお弁当屋、その名も『武闘伝』だ。
この弁当屋は十一時から十三時までの間、学生限定で陳列する弁当の値段を半額近くにまで下げてくれる。極上幕の内や三段ステーキ重、スペシャル三色海鮮丼なんてSランクの弁当が下手すればワンコインで買えちまうとんでも弁当屋だ。夕方の全対象半額キャンペーンは修羅を通り越して羅刹の道だから、気になったのなら黒神、リッカ、スザク辺りに話を聞いてみてくれ。
話を戻そう。ともすれば学生の救世主なこの弁当屋、しかし夏草の学生全員に配り切るというのはどだい無理な話…半額にも当然個数というものがある。並んでいてはすぐに売り切れるほどの大人気弁当、それらをどうやって手にするかという話だが…それは、たった今から理解してもらえるだろう。残り5秒で全て理解できるはずだ。…4、3、2、1…
「只今より学生限定!お弁当半額キャンペーン開始でーす!!」
「「「「「「うぉおぉおぉおぉおぉおぉおーーーッ!!!」」」」」」
BGM 燃え上がれ闘志 忌まわしき宿命を超えて
始まった…!試合開始のゴング代わりの宣誓と同時に、朝練昼練自主練貧乏人その他諸々の学生達が一気に弁当コーナーへとなだれ込む!当然俺もその一人だ、目指すは最高級弁当ただ一つ!
「肘打ちィ!裏拳正拳!てりゃぁあぁあぁぁ!!」
「ぐぉお!」「ぶげぇ!?」「ぐへぁ!?」
なんでこんなに殺気立っているのかと言うと、文字通りその弁当は数量限定、即ち奪い合いになるからだ。金がなくて昼にガッツリ食う奴、朝練からこれを楽しみに踏ん張るヤツ、ただ奪い合いを楽しむやつ、弁当のファン…まぁ理由は様々だが答えはシンプル。皆、安くて美味い弁当を食いたくてたまらないファイターって事だ…!勿論俺もその一人!ここの弁当は一流料理店に負けない味と量を持つ至極のもの、食べれるか食べれないかでは一日の評価すら変わってくる逸品だからな!
「ハイパー銀色シューズスペシャルゥウゥウゥウ!!」
「ぬぅっ、確かサッカー部の!」
当然競争になる訳だが、全員考える事は同じ。蹴落とし殴り飛ばしは当たり前の死力を尽くしたバトル・ロワイアルが醍醐味の昼飯確保の争奪戦って訳だ。全員必死だ、なんせここで昼飯抜きかどうかが関わってくるんだからな!昼を抜いた頭じゃ運動も勉強もまともに出来やしない、将来にも関わってくる寸法さ!
「お前と遊んでいる暇は無いッ!!」
「ぐげぁあ!?」
「へへっ、土門の兄貴!おっさきー!」
サッカー部エースの顔面に肘を打ち込み無力化した刹那、肩を踏まれ跳躍する身のこなしを誇る同じクラスの山口才子(やまぐちさいし)に先を越されてしまった…!おのれ少林寺拳法部、身軽に過ぎる!しかし先行、愚策なり!
「麻婆弁当いただ、どわぁあぁあぁ!?」
「悪いな、逃げも隠れも卑怯な真似も大得意でね!」
瞬間才子が足をかけた陳列棚が爆発を起こし諸共に吹き飛んでいく。あの付近には隣のクラスの競合達のいたゾーンだ。あのトラップ、デュオ・セクェルか!
「任務了解。最高品質の弁当を確保する」
「午後からの時間を、空腹のまま過ごすわけにはいかない」
その騒動を利用し、流れるように幕の内弁当とスペシャル三色丼を確保していった凄腕のメンバー、緑川ヒイロにシゲル・バートン…!顔色一つ変えずに任務を完了する夏草きっての実力者だ…!
「おーい!?俺の分は取ってくれてるのかよ!?」
「悪く思うな。一人一個だ」
「確保はしてある。レジまで死守しろ」
ヒイロはともかく、あのシゲルは仲間思いであり抜群の運動神経を併せ持つ強敵だ…!おのれ、先を越されるとはッ…!
「駄目なんだよ!ずっと楽しみにしていたんだ!僕のお弁当に近づかないで!」
「ドデカ盛りステーキ弁当は渡さァァァん!!」
演舞用の曲刀を振り回す折笠カトル、並み居る敵を陳列棚ごとショルダータックルでなぎ倒していくアルゴ秀成…彼等だけじゃない、ありとあらゆる箇所で争いが起きている。極上弁当屋『武闘伝』。ここで頼れるのは自身の力と研鑽しかない…!文字通りの武闘で伝ねばならないんだ、己の意志を!
「ならば俺も全力で行かせてもらうッ!今こそ、貧乏と、貧困と、節約のぉおぉおーッ!!」
俺とて朝はおにぎり一個、修行として誤魔化すには無理がある。これ以上腹の虫を泣かせるわけにはいかない…!俺は自身の空腹の想いと渇望をそのまま形にするように握り込み、竹刀を持つ要領で真っ直ぐに構えた!
「ハングリーフィンガーソォオォォド!!面!面ッ!!面ぇぇぇぇん!!」
立ち上るオーラを纏った形ある闘気を振りかざし、並みいるライバル達に叩き付け、薙ぎ払い道を切り拓く!叩かれた奴等は半額期間の間気絶していてもらう、恨みっこなしの戦いのルール!命を奪ってはならない!
「胴ォオォオォオォオッ!!──よし!これだな!」
そして俺は辿り着いた!輝きを放っているかのような特上ハンバーグ弁当…!ほかほかのご飯の上にデミグラスソースをたっぷりとかけた肉厚のハンバーグ、その皿に上には極上目玉焼きが…!
「「「「「キシャアァアァアァア!!!」」」」」
しかし舌舐めずりをしている暇はない!まだ購入権は定まっていない、このスキに奪われることなど日常茶飯事!俺は一年の間、たった一回しか勝つことが出来なかった。だが今の俺は違う!
「これで!終わりだぁあっ!!!」
闘気の刃を一直線に振るい、店の外まで雑魚を吹き飛ばす!そしてすぐさま弁当を手に取り、高々と掲げる!
「俺のッ!!勝ちだぁぁぁぁぁーっ!!!」
弁当を握ったものを、攻撃してはならない。そのルールに則り俺は高らかに勝ち名乗りを上げる!見ていましたか師匠!俺は、俺は再び勝つことが出来ました──!!
〜
「いただきます」
戦いを終え、無事にハンバーグ弁当にありつく俺、関土門。言っておくが、俺はまだまだ中堅どころだ。最高ランクのファイターには名誉と畏怖を込めた二つ名を冠されており、皆の畏敬を集める。『波濤』雨宮天空海、『白閃』櫻井朱雀、『乱神』黒神愛生。そして『冠位』藤丸リッカ…ここらは別格の存在だ。鉢合わせたらその日は飯抜きとまで言われているくらいのな。いつか俺も、そんな渾名を冠せるくらいに強くなりたいぜ。
「んー!美味い!」
とろりとした目玉焼きの黄身がハンバーグに絡んで、デミグラスソースと卵の祝福を受けた肉の味が口の中いっぱいに広がる!熱さに負けず噛んでみればあっさりほぐれ、肉汁と歯ごたえが身体に染み渡って、なんて美味さだ!こんな弁当が500円!?とんでもない価格破壊だぜ…!
「師匠…!また一つ、俺は強くなれました…!」
戦いと満腹をいっぺんに味わえる弁当屋、武闘伝…!夏草に来てみたら是非、寄ってみてくれ!そう…!
夏草が、食事のリングだ!!
リッカ「あそこ、いつも安くて美味しい弁当があって助かるんだよねー!」
スザク「あぁ。僕もよくあそこで食べるよ。ルルは行きたがらないけど」
天空海「ほんっと美味しいのよねー!がっつり食べられるし、味もさいこー!ロケ弁はいつもあそこに注文してるわ!」
黒神「うむ、今度皆にも取ってくるか。あそこはやや混むからな」
アカネ(やや!?あの戦争みたいな現場が!?)
ルル(イレギュラーどもめ…!)
早苗(これが、働かざる者食うべからずなのですね!)
榊原(あはは、それはどうかなぁ…?)
一ヶ月に一度、最高級の中でも至極と呼ばれる『キング・オブ・クラウン』または月桂冠印の弁当も存在するが、それはまた別のお話…
エリザベス「…弁当屋の箇所で戦闘の跡があるんだが…」
うたうちゃん「いつものことだから大丈夫です」
風物詩だった。
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