人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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ホビービル『スラップスティック』

全7階建てのホビー、娯楽全般を取り扱う大型ビル。オリジナル施設。

一階はプラモデル制作グッズ全般、二階はBlu-ray、DVDショップ、3階は漫画全般、4階はプロフェッショナル参考書、専門書。5階はプラモデル制作場、6階はゲーム、機器取り扱い場、7階はオールプレイルーム、屋上解放。地下にはオールプラモデルロボットバトル機器全般が取り揃えており、即座にプレイが可能。

転売対策に力を入れており、過度の買い占め対策は多種多様極まっている。(クレカ導入、袋開封、名前記入、抽選販売、知識確認)

顧客と長い関係を重んじるのをモットーに、可能な限りに適性価格と相場の乖離に極めて気を配っている。


日本最大のお宝

「へぇ〜。最新の世代では商品は陳列棚とショーケースに入れておくのが主流なんだね。で、手に取ってレジに並んで、お買い上げして持ち帰る、と」

 

ホビー全般取り扱い店舗『スラップスティック』。何階にも分けられた区域にそれぞれの娯楽用品を取り扱うビル式のショップに脚を運んだのはカルデア享楽組。ティーチ、アン・ボニー、メアリー、ドレイク、クリストファーと言った面々だ。ティーチは勿論の事、意外にもカルチャー文化に興味が深いとは言えない女性組が姿を見せ付き合ったのには大層黒ひげが驚いたものである。彼は美少女フィギュア目当てであり、クリストファーはプラモデル全般といったところだ。アンとメアリー、特に後者はその陳列してある商品の売買体系に言葉を漏らしているが、目的はリッカに良さげなプレゼントをする為の吟味である。ドレイクは近場に酒場があるので時間潰しだ。

 

「あら、メアリー。聖杯やカルデアから知識はもらっているものを今更不思議がりますの?クレジットカード決済だなんて支払いもあり、今じゃ現金を持ち歩かなくても買い物ができるそうですわ。想像できない進歩をしておりますわねー」

 

ワンタッチするだけで自動に引き落とされ、一括で買い物ができる。それにトラブルもそうは起こらない。楽園の外の情勢や買い物一つとっても変わっている現状に、アンはスマホでプレミアのついている掘り出し物を探しながら答える。

 

「そうだね。凄く便利だ。自動販売機もあちこちにあって、宝石店とかも薄いガラス一枚隔てた向こうにあるだけ…」

 

「あら、メアリー?とてもいけない事を考えているのではなくて?」

 

「やらないよ?リッちゃんの故郷でやるわけないじゃないか。でもほら、僕らは海賊じゃないか。そうするとほら、つい…ね?」

 

「あー、職業柄という奴ですわねー。あの方はたくさん金品持っていそうだとか、この店舗の間取りや侵入経路はどこかとか、ついついそんな風に穿った見方をしてしまいましたのねメアリーは。そう『職業柄』ですものね?」

 

ここで言う職業柄とは、無論海賊の事である。強奪、簒奪、略奪が世の常であった海賊の目から見て、今のハイテクや快適さに満ちた現代の様相はあまりにも『不用心』である様に思えたという。

 

「学校にテロリストが攻め込んでくるシミュレーションとか、学生はよくやるんだってさ。それと似たようなものだよ。僕からしてみたら自動販売機だって、そこら中の店だってお宝を無造作に置いてるようにしか見えないね」

 

「そうですわねぇ。そういう職業柄からしてみれば、今の時代はちょっと正気では考えられないような展開をしておりますわね。自動販売機とかは見たら即座に蹴り壊しますでしょうし、無人野菜販売店なんてもう根こそぎですわ、根こそぎ」

 

「うん。なんというか凄いよね。他人のモラルと善意を念頭に入れた社会体系って言うの?日本だけが特別なのかもだけど…想像も出来ない未来になったんだなぁって痛感するよ」

 

略奪する側からしてみれば、信じられない程に善良さを社会に構築していると告げるメアリー。欲しいものは奪い、好きな様に生きていく事を信条とする人種からしてみたら、魔術などより余程不気味かつ狂気的な所業に映ったという。その、不用心とも言えるモラルへの信頼にだ。

 

「──我々の様な末路縛り首案件の目から見たら、そりゃあびっくり案件なのは禿同でござるなぁ。なんつーか拙者、うっかり道行く輩を裏路地に連れ込んで財布や諸々奪い取るムーブを頭が勝手に行った事数知れません」

 

そこに現れしは我等が黒ひげ。美少女フィギュアを物色し終わったのか、ほくほく顔とキメ顔の中間の表情でアンメアに合流する。

物色し終わったのか、ほくほく顔とキメ顔の中間の表情でアンメアに合流する。

 

「うわっ、来たよ」

 

「買い物は終わりまして?でしたら早急に戻るとよろしいですわ。私達はまだ吟味が終わってませんので」

 

「うーん、塩。同じ目標の下にいるだけで別に仲良くもなんともないとこういう扱いになるんでつね…好感度テキストの参考になりますハイ。ですが挫けず会話続行!」

 

メアリーが見上げる陳列棚の上部の商品を軽々取ってあげる黒ひげは、いつから聞いていたか解らない防犯や安全意識の事案について持論を展開する。

 

「言っときますけど、拙者らが見ている光景は人間社会でも上澄みも上澄みのすげぇ光景なんですぞ?日本を一歩出たら水道水を直飲みなんざ自殺行為ですし、ボディーガードも無くちゃまともに歩けない地域もあります。少年が腹にダイナマイト巻いて自爆だの撤去されてない地雷にカタワにされるだの、いくらでも世紀末な案件は世界に転がっています」

 

それはある意味で、海賊として海を荒らし回っていた頃より深刻化し、また恐ろしい状態となっているのですと遠い目を向ける黒ひげ。今ある快適や平和は、決して当たり前ではないと頷く。

 

「パトロールしている夏草の警官…あぁいや、アレを日本警察の基準にしちゃダメだな。ありゃあ海軍大将が海兵に紛れてるようなもんだからよ。まぁとにかく一般警護は笑っちまうような軽装備ですが、そりゃあ決してバカにされるようなものではございません。むしろナイス!いいねを連打してあげてほしい案件なのです!グッジョブ政府の犬!」

 

「どうしてだい?」

 

「『警護に割く意識が少なくていい』という事なのですメアリー殿。それはズバリ凶悪犯罪の数が少なく、突発的な大惨事はほとんど起こらねーって証明なんですから。『うちらの民度は高いです!ガトリングだのショットガンだのは治安維持にいりません!』これ、すげぇことだと思いません?」

 

武装テログループもそうは発生せず、暴力団といった反社会組織も真っ当に生きる者達への凶行は御法度。法と秩序の質による安全意識の低下はむしろ、誇るべきなのだと稀代の大悪党は太鼓判を押す。

 

「安全意識が低い事が恥なんじゃないのですぞ。むしろそういった武装しなきゃ平和を護れないことこそ真の恥だと拙者は考えます。リッカたんの故郷が、そんなやべぇ都市だったりノーモラルで無かった事にまず拙者は何よりも胸を撫で下ろしたのですから。同じ悪党として現状に思うことがあるのはよーく分かりますが、ここはまず平和ボケできるくらいに平穏を築いた日本人に乾杯しときましょうぞ!いっぱい良いフィギュア作ってくれたしね!」

 

目を白黒させるアンとメアリー。なんと平和の有難みを黒ひげに説かれたのだ。無理もない反応だろう。

 

「なんかキャラクター違いませんこと?グドーシさんとのキャラ被り避けをそんなに気にしていますの?」

 

「違いますー!拙者てぇてぇ好きなだけで平和はてぇてぇから好きなの!リッカたんの故郷がてぇてぇで良かったから嬉しいだけなの!」

 

「ふーん…でもまぁ、タメになる話を聞かせてもらったよ。大海賊で大悪党から見ても、この場所は居心地いいんだってことだね」

 

男としては毛じらみ以下の評価だが、海賊としては一目置くティーチの御高説に頷くメアリー。要するに、平和という最高のお宝をもう持っているという事なのだと納得する。

 

「と言うわけでお二方も是非お土産を買い込みましょう!よろしければオススメ、紹介いたしますぞ!」

 

「じゃあ一番の掘り出し物を選んでよ。リッちゃんのお土産にするからさ」

 

「お任せを!初心者が手を出したらやべぇプラモとかも説明致します!デンドロビウムとか!」

 

普段なら拒絶しかしない二人だが、お宝を説かれたとあれば無下には出来ないので。ここは大海賊の顔を立ててあげようと大人の対応で付き合ってあげるのでしたとさ。




クリストファー「おーい!買い物終わったかい!?」

アン「クリストファー。どこにいましたの?」

クリストファー「勿論下から上まで探索探検だよ!見てるだけで面白いだろこういうの!下のVR装置はすごかったなー!」

メアリー「流石にプレミアはなかったけど、いいものは見つけたよ」

クリストファー「あ、プラモ?なら作っていきなよ!」

アン「今ですの?」

クリストファー「今ここで、君たちがマスターの為に作ったもの!これ以上のプレミアは無いだろうさ!」

メアリー「おー、その手があったかー」

アン「手先は器用ではありませんが、やってみましょうか!」

黒ひげ「海賊の絆…てぇてぇ…!」

クリストファー「僕は海賊じゃないけどね!」

こうしていつの間にか、プラモデル制作大会に移行する海賊と冒険者であったとさ。

黒ひげ「おや?BBAは何処に?」


屋上ベンチ

ドレイク「かー…………」

フランシス・ドレイクはベンチで爆睡していた。

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