人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜   作:札切 龍哦

168 / 3000
いちどめは しろいおへやのなかでひとりぼっち

にどめは うみのおそこで もえつきて

さんどめは いじわるなめがみに ころされて


よんどめは? よんどめも、かなしくおわってしまうの?


――さて、それはどうだかな


ぴりおど――ありすとアリスの、さいごのおはなし――

「ここがヤツの本拠地だ。肉体労働の準備はいいな?開けるぞ」

 

 

アンデルセンの導きにて招かれた部屋の中央に、それはいた

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 

 

ふわふわと浮いている。メルヘンな装飾の本が浮遊している

 

 

「まさか本当に座しているとはな。貴様が対応はしなかったのだな。本の扱い方はお手のものではなかったか?童話作家」

 

「俺はペンより重いものは持てん。殴り合いなどもってのほかだ。くそ弱い物書きに何を期待しているのだコメディ王め」

 

 

「――ふむ」

 

クイ、と財を射出する。2門から放たれた刀剣が本を穿つ

 

 

――が、それは変わらず浮いている。まるでそこにはないように

 

「あれっ!?ギルが外した!?」

 

 

「なるほど。そういうことか。サーヴァントどころかそれ以下の有り様だとは予想外であったわ」

 

「どゆこと?」

 

「アレはサーヴァントじゃない、『サーヴァントになろうとしている塊だ』。その魔力を集めるために・・・」

 

 

『固有結界です、ギル!』

 

 

通信よりマリーが叫ぶ

 

 

『あの魔本は、固有結界によって人を眠りに取り込み、魔力を吸い上げています!サーヴァントとして、形を得るために!おそらく、こちらの彼女と同じ・・・!』

 

「ご明察だ、賢く献身的なお嬢さん。ヤツは生まれようとしている。ソーホーの連中を糧にしてな。眠らせているだけ?正しくそうだ。しかし、目覚める保証はない。目覚めないかも、目覚めるかもしれない。だがいつまでも顧客を眠らせていては物書きの商売は上がったりだ。このエリアには古本屋などが山とある。よし倒せ」

 

 

「直球!?でも、ギルの財も効かないんじゃ・・・」

 

 

「――さて、山場だぞマスター」

 

――器に呼応して、意識を眠らせる

 

王には、何か考えがあるはずだ。それを信じよう

 

 

「財が効かぬ以上、我はエアでヤツを滅する。固有結界の粉砕は我の専売特許ゆえな」

 

 

「えっ!?」

 

『ですが、それは・・・』

 

「固有結界もろとも特異点が滅びるやも知れぬな。我に抜かせるとはそういう事だ。――だが」

 

ポン、と頭に手を置く

 

 

「『そのような解決は何の意味もなさぬ』。そうだな、マスター」

 

「うん!ちゃぶ台返しには早すぎるよ!」

 

 

「それでこそだ。――一騎、サーヴァントを選べ」

 

「一騎?」

 

 

「ヤツを倒すに相応しいサーヴァントが一騎いる。そやつこそがあの哀れな幻影を解放する唯一のサーヴァントだ。知恵を絞り、頭を捻りたどり着け。我はそやつをお膳立てするのみよ。――童話作家」

 

 

「解っている。俺をわざわざ呼びつけたのはそういう事だろう。全く。有効活用してくれるな英雄王!」

 

「命を削り働くは作家の日常であろう?いや、ウルクでは死んでからが本番だがな。――」

 

――念話にて、彼女に問い掛ける

 

 

(準備はよいな、ナーサリー)

 

(任せて、王様。私のおはなし、見ていてね)

 

 

 

「――――解った!」

 

「よし、では始めるか。倒せぬ本を倒すなど簡単だ。――確かな名前をくれてやればいい。俺が貴様に、正式な名称をくれてやるぞ!」

 

 

「――来て!」

 

「お前の名は――」

 

 

アンデルセンと、マスターの声が重なる

 

 

同時に、器が『何か』の宝具を起動する

 

「――貴様の幻影だ。しかと面倒を見てやるがいい」

 

『――わかりましたわ。すてきなおうさま』

 

――そんな声が

 

 

 

「「『誰かの為の物語(ナーサリー・ライム)』!」」

 

指摘する

召喚する

 

 

名前を授けられた魔本は、形を変え、形を得て、形を表す

 

 

「――ナーサリー・ライム?・・・ちがうわ」

 

現れし、少女を象る本が口を開く。寂しげに、物憂げに

 

 

「私は『アリス』。・・・どこ?ひとりぼっちの『ありす』はどこにいってしまったの?」

 

 

「・・・驚いたな。他愛ない物語を、ここまで愛した『誰か』がいたとは」

 

アンデルセンが、ゆっくりと告げる

 

 

「――ここにお前の主人はいない・・・残念だが」

 

『いいえ、『ありす』はここよ、『アリス』』

 

 

マスターのよるべに従い、カルデアのナーサリー・ライムが姿を現す

 

 

「・・・あれ!?」

 

 

目を見開くマスター。そこにいたのは、黒いドレスの少女ではなく

 

「そら、貴様の主人はここにいるぞ」

 

 

白と水色のドレス。それでいて、『ナーサリー・ライム』にそっくりな少女が現れていた

 

 

「――――――ぁ」

 

 

ぱたり、と本を落とす

 

 

『ダメよ、『アリス』。寂しいからといって、おいたはいけないわ』

 

 

「あぁ、あぁ・・・――『ありす』――!!」

 

アリスが駆け寄り、『ありす』が抱き止める

 

 

くるくると回る、『ありす』と『アリス』の二人

 

 

「ど、どゆこと?ギル」

 

「何、ヤツの主人とは何度か縁があってな。その縁に従い、少しばかり呼び寄せ、ヤツを依代に憑依させたまでのこと」

 

 

「それが、『ありす』?」

 

「しかり。何者でもなかった概念の英雄に、姿形をくれるまでに恋い焦がれ愛した、一人の亡霊よ」

 

 

右手に持つは『降霊』の原典。お互いの合意があればどんな場所からでも魂を招ける水晶玉だ

 

 

『ありす』はやってきたのだ。亡霊を求め、世界をさまよう『アリス』を迎えに

 

 

 

「会いたかった、会いたかったの!ずっとずっと会いたかったのよ!どの本を手にとっても、どのページをめくっても、どこにもいなかったあなたをずっとずっと探していたの!『ありす』はいじわるだわ!ほんとうにいじわるだわ!」

 

『ごめんなさい『アリス』。迎えに来るのがとっても遅れてしまったの。あなたにあいたいから、たくさんおめかししていたのよ』

 

「いいの、いいの・・・!もうはなさないわ、はなさないわ!『ありす』と『アリス』はずっと一緒!もう、何があってもはなさないわ!」

 

『もちろんよ、『アリス』。・・・でも、いけないわ』

 

「え・・・?」

 

 

『皆を眠らせるのはいけないことだわ。本を手に取る皆がいなくなってしまっては、誰が『アリス』を愛してくれるの?』

 

「――そう、そうだわ。ワタシはなんてことを・・・」

 

『皆を夢から醒ましましょう?元気になって、また『アリス』を読んでもらうの。いっぱいいっぱい愛してもらうの!だってあなたは!』

 

力いっぱい、『ありす』は『アリス』をだきしめる

 

 

『『誰かのための物語』!名もない皆を護る素敵な『アリス』なんだから!』

 

 

「――うん!」

 

 

同時に、感じていた魔力の搾取の気配が無くなり、ソーホー一帯の生体反応が活性化するのを感じる

 

 

『・・・固有結界、解除を確認。魔本、ナーサリー・ライム。消滅が始まります』

 

「当然であろう。本懐を果たしたのだ。最早現世に用はあるまい――そして」

 

ゆっくりと目を閉じる

 

 

「『あの』ナーサリーは・・・誰にも喚ばれることも、迷い出ることもあるまいよ」

 

 

「ギル・・・」

 

「・・・少しみない間に、随分とロマンを学んだな。なんの著作を読み耽った?」

 

「少なくとも貴様の悲観作ではないのは確かだ。――別れの時だ、幻影」

 

王が、二人に声をかける

 

 

「一度は防壁に焼かれ、二度めは五体を砕かれた。――これに懲りたならば、二度と現世に迷い出るな。――繋いだ手を、二度と離すなよ」

 

――王の想いが、伝わってくる

 

『手を取り合い、共に笑い、共に語る自由を手放すな』と、彼は二人に言っているのだ

 

 

 

「うん!ありがとう!素敵な素敵なおうさま!」

『『アリス』がご迷惑をおかけして、ごめんなさい。――もう、離れ離れにはならないわ。ずっと、ずっとよ』

 

 

「『時間を気にせず、ゆっくり楽しむのが最高の読書』」

 

「『?』」

 

「――お前たちに贈る、とある物語の言葉だ。今まで足りなかった時間を取り返せ。――もう二度と、お前たちを引き裂くものはないのだから」

 

「『――うん!ほんとうにありがとう!すてきなすてきなおうさま・・・――!』」

 

 

水色の『ありす』黒色の『アリス』が消滅する

 

 

 

手を握り、先をいく『アリス』に、引っ張られる『ありす』の光景の幻を、三人に残して

 

 

「――さらばだ、亡霊に寄り添う幻影よ」

 

 

だれともなく、聞かせるでもなく王は言葉を紡ぐ

 

 

「共に語り、共に笑い――手を取りながら。何処へなりとも消えてゆけ――」

 

 

・・・誰も届かぬ『物語』へと消えた、二人の『ともだち』への手向けとして

 

 

「――ふう。どうかしら?」

 

残ったのは、カルデアのナーサリー・ライム

 

 

「しっかり、役目を果たせたかしら?」

 

「見事な演目であった。何か言うことはないのか、役者志望」

 

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

 

「アンデルセン?」

 

「・・・・・・俺とて空気は読む。無粋なヤジは控えるさ。『物語』に読み聞かせる『物語』など・・・お前でなくば思い付かんな、英雄王」

 

 

「ようやく我の偉大さが身に染みたか。よい、許す。平伏してよいぞ。新たに我のゴージャス☆ギルガメシュ叙事詩を書きあげるもよい」

 

「それは素晴らしいな。喜劇かコメディ、痛快な冒険譚にしかならんだろう。読む人間の腹筋を破壊し尽くす危険物として即回収沙汰に持ち込むヤツを書いてやろう」

 

 

「フハハハハハハハハ!初版に何億つくか見物よな!――マスター?」

 

「――――ぐすっ、えぐっ・・・えぐっ・・・」

 

「まぁ、泣かないでマスター。この終わりは、あなたが選んでくれたのよ?あなたがワタシを選んでくれたから、おうさまがあわせてくれたのよ」

 

「そうなの・・・!?そうなの!よかったぁ・・・!」

 

「我を崇めながら、我にすがる事無かれ。・・・教えをわすれてはおらぬようだな」

 

 

「女子力がないと言うのは訂正しなければならんか。まさかこんなあてがいをできる女とは思わなかった」

 

「うん・・・目には目、歯には歯、本には本だと思ったから・・・」

 

「――は?」

 

 

「まぁっ!マスターったら、頭まで野蛮なギリシャなのだわ!」

 

 

「ブッフォっ――――――!!!!」

 

 

「・・・訂正の訂正だ。お前を見直した俺が最っっ高に愚かだった!!」

 

 

「フハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!流石は我のマスター!嫁の貰い手は永遠に現れなかろうな!!よし!仕事は終わりだ、帰還するとしよう!」

 

 

「やだ――――!!私は幸せになることを諦めない――――!!」

 

 

 

――さようなら。二人の少女

 

 

――もう二度と、悲しい別離が二人を引き裂くことがありませんように――

 

 

 




いちどめは しろいおへやでひとりぼっち

にどめは うみのおそこでもえつきて

さんどめは いじわるなめがみにころされて


よんどめは ようやくやっとであえたね



いっしょにいましょう いつまでも

はしってみましょう どこまでも

『ありす』と『アリス』はずっといっしょ!



はなさないわ ずっとずっと

はなれないわ ずっとずっと


いつまでも、いつまでも――


わたしたちは、いっしょなの――


            おしまい
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。