人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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ニャル【夏草に家が欲しいんだけど、オススメある?】

うたうちゃん「?それでしたら…」


〜うたうちゃん宅

ニャル【ここ君の家…しかも特上一等地…一戸建て…】

うたうちゃん「家族皆様とお使いください(ニッコリ)」


テラス

ニャル【私の周りの皆が優しすぎて眩しい…(使わせてはもらう)】

(…善意と言えば…)



?『今日もご案内、ありがとうございました!おじさま!』


エボルト【お前もワルだねぇ。あんな純粋な子を骨の髄まで利用してるんだからなぁ】

ニャル【私なんかを信じるのが悪いんだよ。騙されてるとも知らずに。■■の■■だか知らんが、アホの極みだな】



ニャル【…いつか見つけて、謝らなくちゃな。今なら分かるよ、君の向けてくれた感情の意味がな…】

煙草の煙が、夏草の夜空に溶けていく。


一方、その頃。市長宅にて…




夏草の覇者、加入!!

「夜分遅くの来訪、大変申し訳ありません。ですがこれより話す情報は魔術…カルデアの秘匿情報であり、真に信頼できるお方にのみ話すものであるが故である事をご理解下さい。ギル…我等が王にも了承を得ております」

 

夜分遅く、深夜2時半頃。オルガマリー、ゴルドルフ・ムジークの両名はとある宅に足を運んでいた。質実剛健、派手さはないが格式と実用性、あらゆる防災とシェルターを有しておりいざという際には避難用の施設となる自宅…そう。夏草市市長、内海羅王の自宅だ。

 

「ご丁寧な挨拶、痛み入ります。人理を保障する機関、その苦労は並々ならぬものであった筈だ。こちらのブラックコーヒーをどうぞ」

 

巨漢──座りながらもオルガマリーを見下ろす形となる豪傑、内海羅王はにこやかに二人を迎える。はち切れんばかりの筋骨隆々の体躯は、50を越えているとは思えない覇気に満ちている。その笑顔は、強者の自負であろう。圧倒的な自信などとは対極的にいるゴルドルフは青ざめつつオルガマリーに耳打ちする。

 

(だ、大丈夫かね?我が都市を巻き込むとは許さん!ぬぅりゃぁ!とかになったりしないかね?勝てる未来がまるで見えないのだけど?)

 

(大丈夫よ。ブラックコーヒー好きに悪い人はいないわ。いい豆ね…後で銘柄をお伺いしなくちゃ)

 

オルガマリー、動じず。何故なら彼女も強者の側なのだ、揺らぐ筈もない。自信に満ちた彼女は正しく君主であるのだ。所長は伊達では決してない。

 

「では──こちらがそちらの空白の半年に起きた出来事。『人理焼却』の詳細、その資料となります」

 

「うむ、心して拝見しよう」

 

そして渡される、カルデア奮闘の記録。あまりに鮮烈で、激烈で、濃密な楽園の足跡。ラオウは静かに、確かに、流れるように読み耽る。その姿からは、智慧の満ちる賢者が様相を醸していた。

 

「…この様な恐ろしい事件を、藤丸君は率先して解決したのだな。あなたや、カルデアの皆様と共に」

 

「彼女無くしては、決して果たせなかった案件でした。他の誰でもない、彼女だからこそ。この半年という期間で解決出来たのだと、所長として太鼓判を押させていただきます」

 

オルガマリーは毅然と言い放つ。リッカがいたからこそ、この世界は救われたと。

 

「…並びに、そのリッカを受け入れ、癒やし、救ってくださったこの夏草という素晴らしき都市、並びにその都市を築き上げた功労者たるあなたに心よりの感謝を。リッカが笑えるようになったのは、この地が素晴らしかったが故の奇跡です」

 

そのまま深々とオルガマリーは頭を下げる。ゴルドルフも流石に所長のみに頭を下げさせられず、背を丸めてお辞儀する。オルガマリーが訪れた理由の大半はこれだ。リッカの故郷に、感謝を述べたかったのだ。

 

「いや、お礼を言うのは私の方だ。あなた方は藤丸君を尊重し、夏草…世界の全てを守り抜いた。この記録は秘匿され、誰の目にも映らぬ功績だろう。ならば──」

 

この私が、夏草と『人類』の総意を代弁すると彼は告げた。虚言や虚勢など微塵も介在しない、揺るぎない強さがそこに在った。

 

「この世界を、人類を、夏草の民を救ってくれた事に深く感謝する。君達は人類の恩人だ。私だけではあまりにも足りず、世界を挙げた戴冠式を行うべき偉業だが…まともに祝えぬ人類の未熟を許してほしい」

 

深々とラオウは頭を下げ、感謝を表した。彼は二十代半ばのオルガマリーと、後半のゴルドルフにも当然の様に礼を示したのである。

 

「う、疑わないのかね?私は中途参加だが、その、荒唐無稽だなどとは思わぬのかな?」

 

「私はあなた方を信じよう。ここに在る記録…これが嘘であるなどと私には思えぬ。言うなれば…これは叙事詩だ。世界を救った英傑と、人間達の。そう、君達の王がギルガメッシュ王であるならば──『最古にして、最新の叙事詩』だろうな」

 

ラオウは最大限の敬意を以て、資料をオルガマリーに返した。そして話は、これからが本題であるとばかりに腕を組む。

 

「未だ藤丸君はカルデアに帰参する意志を見せている。それは即ち…対処する問題が、消えていないのだね?」

 

「はい。次は…こちらの資料を」

 

そこには、これより…即ち、12月に起きるとされる『全面戦争』の概要が記されていた。王が見たとされる生存競争、ロストベルトを看取る為の戦い。その際に、歴史を保護する際の為の措置『人理金箔』が行われる事も記されていた。

 

「これは、即ち3ヶ月の間に人類史のテクスチャを守護する金のベールを貼り、人類史の漂白と濾過を防ぐという事なのだね?しかしこれを受け入れては、再び夏草の民達の時は3ヶ月空白が生まれる…」

 

「そうなるのですよ、内海殿。だが、これをしなくては侵略者に狙われ、害される心配が出てくる。救命の際の冷凍保存のような状態となるのです」

 

ゴルドルフの言葉に沈黙を返す。次の、所長の交渉を促しているのだ。

 

「…内海市長。単刀直入に言いますと、我等カルデアは、あなたをこの戦いの協力者としたいと考えています。この夏草の善性、その力をお借りしたいと。この人理金箔は、宇宙からの侵略からのノウハウが無い人類を守護するもの。ですがこの夏草は、そんな未知の脅威にも屈さない強さがあると私達は見ています。それは、この地からリッカが輩出された事からも明らかです」

 

「…………」

 

「人理金箔という、安寧の仮死状態は安全だ。だがまた、無辜の民の時間を奪う事となる。半年前も合わせればもう一年だ。夏草の民達の人生、これ以上奪われてはたまらないのではないか?市長殿」

 

「市長、あなたの口からお聞かせください。我等を信じ眠りにつくか、共に手を取り、危険や困難に抗うか。この目で夏草を見た私達は、是非ともあなたに協力を仰ぎたく思いますが…決めるのは、あなたです」

 

ラオウは沈黙していた。民達の自由か、安全か、安寧か、気高き反逆か。

 

──否。彼の中に、迷いは無かった。

 

「如何なる理由があろうと、民達を危険に晒すことは許されない。夏草すべての人口を戦闘要員にする事など不可能であるし、指揮系統や組織運用の観点から見ても、都市全体を組織化するのは難しいだろう。──だからといって、君達の提案したプラン以上に、夏草の民をいっぺんに護りきれる案を見いだせぬのも事実だ」

 

「では…」

 

「全ての叱責、責任は私が背負う。夏草の無辜なる民達を…どうか庇護してほしい。私は真の平和と未来の為に、夏草の民達から時間を奪う」

 

その決心は断腸の思いだっただろう。為政者たるもの、非情な決断を下さねばならない。彼は民達から自由と時間を奪い、未来と生命を約束する決断を下したのだ。

 

かつてウルクでは、困難に民が一丸となって戦った。しかし今回は力の劣る一般人が大半であり、戦いなど未経験、戦争すら知らぬ世代が大半の時代である。いくら優れているとはいえ、そんな平和に生きている者達を残らず戦いに動員するなど不可能であることは、オルガマリーも理解できた。

 

「──分かりました。お約束致します。必ずやその期間以内に…」

 

故に、同盟はならずか…そう切り上げようとしたが、ラオウはそれでは終わらなかった。

 

「そして私は──君達カルデアと共に、夏草の民達の未来を護る戦いに挑む!市長として、一人の平和を愛する人間として!ラオウ個人として、あなた方の戦いに参加しよう!」

 

「な、なんですと!?」

 

そう、ラオウは既に腹を決めていた。リッカが世界を救った様に、大人である自分も『護られる』のではなく『共に戦う』と決心していたのである。

 

「私はここに『カルデア夏草支部』の発足を宣言する!藤丸君と共に魔神柱達と戦った関係者をメンバーとした私設組織…君達を夏草が培った技術と人員でサポートする事を約束しよう!そう、平和と夏草の未来は、共に戦い掴むのだ!」

 

「し、私設組織ですか?その活動資金等は…」

 

「実はギルガメッシュ王から話を付け、契約を結んであるのだよ。夏草の技術、資源などを彼は前線基地として購入し、私に国家予算もかくやの契約金を渡してきたのだ。これらは夏草の各施設に私財として寄付するつもりであったが、その予算をカルデアとの提携に使わせていただく!」

 

(あの王様もう個人スカウト王手かけていたのだね!?王だけに!?)

 

即ち、夏草の民達は金箔にて庇護し、非日常に足を踏み入れた者達を共に戦う組織に編入したカルデアの『支部』を個人的に作るのだという。市の予算も、肩書も通じぬ完全なる私設で、だ。

 

「これは私個人の戦いであり、カルデアに榊原先生と教え子を庇護してもらう為の決断だ。オルガマリー所長。見返りといっては何だが…藤丸君のように、彼女の学友の未来を保障してはもらえないだろうか。非日常を知ってしまった彼らを、護るために」

 

彼は私利私欲や名誉欲、政略的駆け引きなどで立候補したのでは断じてない。彼は非日常の中に居場所を作ったのだ。ルルや皆、楽園に関わった夏草の民達の。そして、何より…

 

「藤丸君も、学友が傍にいると思えば…戦いで心は荒まない筈だ」

 

彼は慮ったのだ。遠く戦うリッカが、孤独に嘆かぬようにと。その意志を、オルガマリーは確かに汲み取った。

 

「──進路、資格、就職などの支援は必ずや御約束致します。無論、夏草の民達の未来も。どうか、共に戦って参りましょう。内海さん」

 

「ラオウで構いません、所長。ありがとう、私は…彼等の未来だけが気がかりだった。それが保証されたのならば最早、なんの憂いもない。藤丸君が帰る場所、私が護ってみせましょう!」

 

固く握手する両者。今ここに、夏草の覇者との正式な同盟が結ばれたのだった──!




ラオウ「では早速ですが、オルガマリー所長。一つ提案として、夏草の民達の中から人材をスカウトする事をご提案します」

オルガマリー「スカウトですか?」

ラオウ「えぇ。夏草支部に属するに相応しい者や、カルデアにて活躍できそうな者。どうか吟味なさればよろしい。きっと無二の個性を発揮する者達がいる筈です。心強いスタッフになるような者が」

ゴルドルフ(オルガマリー君、もしかしたら君のほら、助手候補とかもいるのではないかね?ちょくちょく夏草に足を運んで探してみるとかもありかもしれんよ?)

オルガマリー「…分かりました。それでは、夏草支部としてのお付き合い、よろしくお願い致します」

ラオウ「市長ではなく、一人の人間として戦う。腕がなります。──この星を狙う悪よ!オレの剛拳、いつまで受けきれるかな…!」

こうしてカルデアは正式に夏草を活動拠点として獲得し、心強い同盟を結んだのであった!

・夏草支部が発足されました

新たなマスター、魔術師、スペシャリストをスカウトできるようになりました。

スタッフ募集、育成が可能になりました。

特異点調査チームが編成可能になりました。

ゴルドルフ(なんかテロップが見えるよキミィ!?)

オルガマリー(所長の腕の見せどころね…)

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