ニャル【おぐほっ!?見えねぇ】
エキドナ「喫煙疑惑なんて持たれたらどうするワケ?気遣いなさいよちゃんと!」
ニャル【申し訳ない…ちょっと昔を思い出してな…】
ナイア「昔?カー君の前で胸を張り語れるお話ですか?」
カービィ「ポヨ!」
ニャル【…自信は無いが…そうだな、うーん…二人共。私に隠し子がいるっていったら…驚く?】
「「───隠し子!?」」
カービィ「ポヨ?」
ニャル【そういう感じの関係だったってだけの話だけど…昔いたんだよ。そういう娘が──】
──それはまだ私が家族や善性を知らなかった頃。気ままに全てを嘲弄していた頃の話で、エボルトと行動、活動していた頃の時系列になるのかな。私は暇つぶし、エボルトは使命として数多の宇宙の星や生命を狩り尽くしていた。良心の呵責なんて期待できない、邪神らしかった頃の私の話さ。
【■■■■■■■■!!ーー!!■■■■■!!!──!】
【おいおい、流石にキレすぎだろう。ちっと落ち着けって。珈琲入れてやるから、な?】
なんでこんなに当時の私がキレ散らかしているのかというと、私の不倶戴天の敵【クトゥグア】と絶賛交戦中だったに尽きる。アイツは3度の飯より私の嫌がらせが好きなクソ小火だったからな。私達の目星を付けた惑星間航行が可能な文明レベルを持つ星を焼かれるなんてザラだった。一度や二度ではなく、千、万とだ。冷静沈着な私も流石に頭にきていてね。荒れに荒れてた。
【しかし困ったねぇ…俺達のライフワークが成り立たねぇと星狩り族の沽券に関わる。なんか手を打たないと不味くないか?相棒?】
【それが出来たならやっている…。クトゥグアめ、何の見返りも打算もなく私に対する嫌がらせというだけで喧嘩を売ってくる。鬱陶しい事この上ない…】
【どのみち始末しなきゃどうしょうもないかぁ…しかし骨が折れそうだ。何せ、お前のライバルなんだからなぁ?】
【付きまとわれているだけだ、ライバル等ではない。だが対処しなくてはならない事には賛成だ。しかし…】
しかし、クトゥグアは生ける炎だ。倒すにも封印するにも、甚大な被害が生まれる。ナイアという対邪神特化の存在もいない頃の話だったからな。最悪、エボルトのヤツをオトリにしてブラックホールで宇宙ごと巻き込むことだって考えた。親友だろって?私にとっての親友は、自分に役立つ相手のことを指したのさ。そんなふうに唸っていた矢先…
『すみません、すみませーん!あの、こちらの中域の☓☓☓惑星の行き方はこちらであっていますか?』
【【あ?】】
そんな折にな、私達の前にその娘が現れたんだ。人型宇宙人…確か、アンゴル族とかいう精神生命体の審判衣装に身を包んだ娘が道を聞いてきたんだよ。ナイア程じゃないが、可愛らしかった見た目なのは覚えてるよ。
【…あっちだあっち。確か終末論が流行った末期の星だぞ?】
【お嬢ちゃん一人で?危険じゃないかぁ?】
『大丈夫です!ありがとうございました!では、行ってまいります!』
そんな感じでふよふよ飛んでいった娘を見送って、二人でぼんやりと眺めてた──次の瞬間だ。
『ハルマゲドン!一分の一───!!』
【【は────】】
──星がな。カッてなって吹っ飛んだわけだ。そりゃあもう美しい終わりだった。超新星爆発もかくやの消滅ぶりだった。ブラックホールでチマチマ星飲み込んでるのがバカらしくなるくらいにはな。
【…そういえばアンゴル族って、星を粉砕するのが使命だったっけ…】
【それ、もっと早く思い出せよなぁ…?】
エボルトと顔を合わせて途方に暮れたわけだ。どうやらあの星は『星の裁き』から逃れるためにわちゃわちゃしてたって事も分かった。
『おーい!ありがとうございまーす!ご案内で無事、使命を果たすことができま、はうっ!?』
【星を壊すって事は、俺達の商売敵だよな?丁度いい、殺しておくか?】
まぁその時の私達は若かったからこうなるのは必然だ。ただでさえクトゥグアに一泡吹かされていた私達は苛ついていてね。更に邪魔されるなんてたまったものじゃなかったからな。
『う、く…ぁ…あ…』
【残念だな嬢ちゃん。恨むなら間の悪さを恨んでくれよ?】
そして、エボルトが手をかける刹那──私は、とある事に思い至った。
【いや──待てエボルト。まだ早計だ】
【あん?】
『うくっ、けほっ!けほ…!』
その娘…見たところ純真無垢で頭の緩そうな箱入り娘っぽかったんでな。私は思ったんだよ。使えるって。
【私の連れがごめんよ。苦しかったかい?凄いね、さっきの星の破壊、君がやったの?】
『は、はい。私達一族の使命を果たしました!』
【素晴らしい。私、実に感銘を受けてしまったよ。君の使命…どうか手助けさせてはもらえないか?】
無論、善意等では微塵もない。使えると思ったのだ。我々の手段はブラックホールがメインなため速さが足りない。だが、コイツのあの超抜破壊技術ならば…
『え!私を…手伝ってくださるのですか?』
【勿論だとも。君の崇高なる使命、その頑張り…私にも手伝わせておくれ】
『は、はい!よろしくお願い致します!あの、私実は方向音痴なので。未だ果たせてない使命がたくさんあるのですが…』
【よし、じゃあマネジメントしてあげよう。君の素敵な使命、果たせるといいね】
(…相棒。どういうつもりだ?手駒が増えるのはいいが、全部一撃で消されたら風情が無いぜ?)
エボルトは懐疑的だったが、私の狙いは別にあった。いつものエンジョイ星狩りじゃあない…私を舐め腐った生ける炎への報復。その娘をその手段として使うことに決めたのだ。
(この娘は頭も警戒心も三流風俗嬢より弛いアホだ。だが力は無駄にあると来たなら…利用しない手はないだろう)
そこから先は順調だったよ。クトゥグアに介する星、眷属、他の目障りな邪神共。纏めてその娘の力でチリにして貰ったからね。私の事を微塵も疑わない筋金入りのベビーサイドだったが故に、当時の私に大いに利用された訳だ。
『おじさまと出会ってから、私の使命はとても順調です。優しい優しいおじさま、本当にありがとうございます』
【…おじさま?】
『はい!私にこんなに親身になってくださったのはあなたが初めてです。ありがとう、おじさま──』
その時は取り繕っていたが、心の中では嘲笑が止まらなかったよ。馬鹿な娘がいたものだ。利用され使い潰されているとも気付かずに。まぁ、こちらとしても邪神掃除に使わせて貰ったためそれなりの愛着は湧いていたが…あくまでそれは、使える道具としてだ。
(ありがとう、ね…おめでたい奴だよ。ならば…)
ここで私は一計を講じた。狙う場所はクトゥグアを祀る教団の総本山、その星を裁くように娘を差し向けた。
『行きます!──えっ、あれっ!?』
だが間の悪い事に、その教団はどこからか…どこからか仕入れてきたアンゴル族の力を封じる石を使用し娘を封じ込めてしまった。彼女は捕われてしまったのだ。こうなってしまったなら仕方ない。私が【おじさま】として彼女を助けなくちゃならんと考えてね。
【大丈夫かい?ケガは?】
『お、おじさま…!』
教団を蹴散らした後、私はドラマチックに彼女を救い出した。その後は当然、娘の一撃でジ・エンド。この宇宙におけるクトゥグアは大いに弱体化した。大戦果だ。
『ぐすっ、ぐす…おじさまぁ…』
【おやおや、何を泣くんだい?無事で良かったじゃないか】
『いえ、いいえ…自分の未熟さでおじさまを危険に晒してしまいました…!今のままではいられません!おじさま!私、武者修行の旅に出ます!』
彼女は自分を見つめ、鍛え直す旅に出ると言い出してな。余程捕まったことと、私を傷付けられた事が堪えたのだろう。頑として聞かなかった。まぁ私としてもクトゥグアの弱体化も終わって、彼女を用済みと判断したものだから…
【あっそ。頑張りなよ】
極めてそっけなく送り出したものでさ。酷い奴だよ。──その時に私は、彼女に何かを教えた気がするんだ。何だったかな…あぁ、そうだ。
【なら、修行にとっておきな星がある。数多無数の宇宙人が挑み、侵略出来なかった最高峰の聖地だ】
『えっ!それは一体!?』
【太陽系、第三番惑星…地球。自分をレベルアップさせたいなら、この星からやってごらん?見違えるよ?】
『成程ぉ!分かりました!では修行し、力を蓄え!必ずその星を破壊してみせますね!それでは、その日まで…どうかお元気で!おじさま!』
…こうして、私と彼女の共同作業は終わった。なんてことのない、エボルトが席を外していただけの間だ。
【クク、フフフ…参考にさせてもらうよ。外面のいい父親ヅラのやり方をな】
【何の話だ?】
【とぼけなさんな。教団にあのガキの力を封じる石を横流ししたのは…お前さんだろう?】
【あぁ──その方が、ドラマチックだからな】
…今思えば1から10までゴミカスの所業だ。だが今なら、彼女の思慕に嘘偽りが無いことはよく理解できる。
地球の事を教えはしたが、今地球はこうしてここにある。だから彼女は今、何処で何をしているかは解らない。
だが、もし再会できたなら…あの時のお詫びと、紹介してやりたいと思うんだ。私の、今の家族をさ──
ニャル【以上、説明終わり。過去のパパ活、援助交際みたいな話だよ】
エキドナ「…まだナイアに会う前、か。そりゃあ愛にピンとくるわけ無いはずだね」
ニャル【そういう事。不思議なのがあれから全く連絡が無いことなんだよ。地球の事は教えた筈なのに、何処で何してるんだろうか?まさかまた迷った?】
ナイア「それは分かりません。分かりませんが…」
カービィ「ポヨ!」
ナイア「…ごめんなさい、できるといいですね。お父さん」
ニャル【…あぁ】
(…元気でいてくれたら、それに越した事はないんだがな…)
それは、邪神が邪神であった頃に取り零した大きな隕石が如き思慮の念…
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