人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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フッと思いついたネタを投稿します。年末の厄落としにどうぞ。

なんか調べてみたらあの巨体は呪詛の腐肉で本来は神格サイズらしいですね…



マーリン♀「フォウくん!アーネンエルベに行きたくない?」

フォウ(別に)

「そっけないぞー。エアちゃんに魅せる顔を僕にも見せてよー。可愛くなつけよー。君に持ってこられた案件があるんだ!」

フォウ(案件?)

マーリン♀「そう!名付けてマスコット企画!アヴァロンからアポ取ったから、君が承諾してね!頼んだよキャスパリーグ!そーれ、バシルーラ!」

フォウ(説明しろお前ーーーー!!?)

マーリン♀「行けばわかるさ、ありがとー!!さーて、特許申請の準備しなくちゃねー!」




年末ショートストーリー〜ケル〜

(楽園に、寄りによってマスコット企画持ち込みだって?クリスマス年末年始だからって随分と舐め腐ってくれるじゃないか…ロード画面で鍛えに鍛えた僕の可愛さと力を把握していないと見えるな?)

 

話は代わりアーネンエルベ。時空チャンネルを2021年年末に合わせて単独顕現のフォウくん。自身に、というか楽園に向けられた持ち込み企画の審査へとやってきたのである。

 

『楽園カルデアで是非商品化してほしいものがある。お話だけでも聞いていただければ』

 

等と丁寧に言われては断るわけにはいかない。何より商品化、つまるところマスコットシェアを争うつもりなら自分が出張らない訳にはいかないだろうとフォウは決意を燃やしていた。ジルくん人形等というテロリズム呪物と自分のぬいぐるみが同じ棚に並べられる悲劇は繰り返してはならない。ならないのだ。

 

(よりによってアーネンエルベを選ぶとは随分と慎重なのか、内密に話したいのか…まぁいいだろう。ボクが直々に商品化査定をやってやる!3月の決算までに間に合わせるのが商売の基本だからな!)

 

しかしその情報の出処が気がかりだった。あの薄ら笑いのウスバカゲロウのオスマーリンと、顔と身体は最高なメスマーリンからもたらせた案件だ。何かある。必ず何かある…だがその何かは解らない。千里眼なんて便利なものは無いからだ。人は未知があるから明日に進める。ボク獣だけど。

 

(是非会ってほしい子達がいるんだ。私達が話をつけておくから任せたよ、フォウ)

(驚くと思うよ。汎人類史の彼等は出番なかったしね!ていうか汎って字が変換めんどくさいなぁ!)

 

(なんの話だ…?誰だって言うんだ…?)

 

そんな風に、人でなし夢魔共の戯言を話半分に聞いていたフォウだったが、気配を感じ耳を立てる。

 

(む…来たか)

 

気配、神霊寄りの…いや、神霊そのものの。中々ビッグネームが来たのか?仄かな警戒を持ちながら扉を開き、やってきた存在を見て──フォウは、絶句した。

 

『ノスー。ヌーン』

 

(!?!?!?!?!?)

 

親しげに両手を振りながらやってきた、二メートル近いモフモフ…そうモフモフ…モ〇ゾーとかト〇ロとか、そういう系列の神気溢れるゆるキャラ的な、癒しが満ちるそのモッサモサな生物に、フォウは度肝を抜かれたのである。

 

「ケルヌンノス様、扉の前では止まらずに…あ!あなたがマーリンさんが言っていた星の獣ですね!はじめまして!」

 

そしてその後ろからケルヌンノスと呼ばれるモッサモサを押し、やってきたのは優美な赤髪と白き巫女服を纏った…一見して聡明そうな美少女。笑顔で二人は、フォウに挨拶を交わす。

 

「こちらはケルトの旧き神、ケルヌンノス様です。私はその巫女を務めている者で、名前は失伝してしまってるので巫女とお呼びください。ケルヌンノス様共々、アヴァロンに籍を置く者です」

 

『ヌーン』

 

「話題が無い、知名度が無いといった戯れはお控えを…ケルヌンノス様、大分気にしておられますので…私はセファール襲来のおり、ケルヌンノス様に助けられ、それ以降はアヴァロンにてケルヌンノス様の祭事と神事を請け負っております。此度の会談の機会、大変嬉しく思います、フォウ様」

 

(え、あ、はい、うん。こ、こちらこそ…)

 

随分と腰の低い、それでいて癒しの雰囲気を振りまく方達だな…フォウの印象通り、ケルヌンノスと呼ばれる神からは敵意の類いは微塵も感じられない。友好的、親身、或いはフレンドリー。そういったイメージしか先行しない程の優しさと穏やかさを感じるのだ。それは、巫女と名乗る少女も同様である。

 

「フォウ様。癒やし…足りていますか?」

 

(は?)

 

単刀直入に話題に切り込む巫女に面食らうフォウ。テーブル2つと席2つを使うケルヌンノスがモサモサと揺れる。頷いているのだろうか。

 

「人理を護る大業、そして大いなる偉業。マーリンさんが面白がって読んでいる叙事詩から拝見致しました。私達は汎人類史の存在でありながらも隠居の身。戦闘力もサーヴァントにもなれぬ知名度であるゆえ縁は無かったのですが…」

 

『ノスゥ…』

 

「ですが今、私達なりにできることを考えつきました!ケルヌンノス様の様な優しく争いを好まず知名度に欠ける神にしかできない、大変な偉業が!」

 

『ヌーン………』

 

(ケルヌンノスさん落ち込んでない?自分が言ったばっかじゃん知名度イジりやめろって!天然なの?そうなの?)

 

巫女のマイペースに圧倒されながらも、耳を傾けるフォウ。ケルヌンノスは頼りなさげにしなだれているが、いつもこんな感じなのだろうか?

 

「私は考えつきました!楽園と提携し、『アヴァロン裁縫マスコット部』を作るべきと!楽園に優しい癒やしと素敵な一時を設けるべきだと!ほら、フォウさんにケルヌンノス様!完璧だと思いませんか!モサモサ、モフモフ!隙も死角もありません!夜も冬も暖かくなれます!ケルヌンノス様のおかげで、私はさむいと感じた事がないくらいです!」

 

『ノス〜。ヌーン』

 

胸を張っている…ように見えるケルヌンノスに熱弁する巫女。話の概要を見抜くフォウ。要するに彼女は、マーリンの様に楽園に関わるためにやってきたのだ。祀る神、ケルヌンノスと共に。まさかマスコットポジションで活躍の場を見つけようとは…

 

(中々…見どころがあるじゃないか…)

 

マーリンと違い面白いからと眺めるだけでなく、積極的に助けになりたいと立候補したその意気やよし。人を騙し欺くといった概念とは無縁そうな穏やかな二人を受け入れても、全く問題は発生しないとの考えが浮き上がる。

 

「サンプル品を作ってまいりました。マーリンさんの監修を受け制作した、フォウ様のマペットにございます」

 

『ノス』

 

(こ、これは…!大したクオリティじゃないか…!)

 

渡されたサンプル品、手にはめるフォウの形をしたマペットを見てフォウは思わず唸る。質感、柔らかさ、造形。どれをとってもファンメイド、オーダーメイドを上回る至極の逸品がそこにあったからだ。これをエアに渡せたらどれくらい喜んでくれるだろう…フォウは心から感嘆する。

 

「そしてこちらが、私達が押し出す予定の…ケルヌンノス様ぬいぐるみでございます。ケルヌンノス様の毛を使った自信作です!」

 

『ノスー!』

 

(こっ…これはっ…!!)

 

続いて提出された、目の前の神をスケールダウンさせた体のぬいぐるみにフォウは衝撃を受ける。ちょこんと座った体勢のケルヌンノス。ただそれだけの所作で抜群の癒やしを誇っていることをフォウは見逃さなかった。見ているだけで力の抜けるフォルム。触るだけでモフモフな質感。まさにそれは、癒しが神となったかのような安らぎをそこに顕現させていた。

 

(とんでもない、とんでもない可能性を込めたグッズだ…!モフモフには一家言あるボクだが、それでも唸るしかないクオリティだぞこれは…!)

 

『ヌーン♪』

 

「お気に召していただけたようで何よりです。…そしてこれには私達の目的がありまして。フォウさんにはお話させて戴きますね」

 

(目的?)

 

全人類を骨抜きにする気かな?できるよ多分。そんな言葉を告げる前に巫女は告げる。ケルヌンノスの、キャンペーンを催したいと。

 

「ケルヌンノス様ははっきり言ってマイナー神。知名度も伝承もあまりに少ない神様です。滅びゆく世界から私だけでも保護してくださった素晴らしい神様なのに…それが私は無念なのです」

 

『ノス…』

 

「そんな現状を私は打開したい。ケルトの旧き神たるケルヌンノス様に、もっと親しみを感じてもらいたいのです。信仰を広め、信頼を得て、祭神と呼ばれる未来を勝ち取りたい…掴み取りたいのです」

 

(ケルヌンノス…巫女さん…)

 

その手段を闘争でも侵略でもなくこうした地道な配布を選ぶあたり、骨の髄まで善神であるのだろう。癒やしを与えたい、というのも建前ではあるまい。本気でそれが神のあり方と信じているのだ。

 

「どうかお願いします。ケルヌンノス様を楽園の祭神へと至る第一歩を…助けていただけませんか!?」

 

『ヌーン…ノス』

 

二人揃って頭を下げる姿に、フォウはすぐさま頷き机に飛び乗る。──どうやらライバルなどではないらしい。

 

(顔を上げてほしい、ふたりとも。そういう事なら、ボクに声をかけたのは正解だ)

 

「フォウさん…!」

 

(任せておくれよ。君達の願いと知名度、ボクが手助けしてあげよう!ボクと一緒に、楽園カルデアのスターダムをのし上がろうぜ!)

 

『!ヌーン!』

 

「あぁ…!ありがとうございます!これからよろしくお願いしますね!」

 

(うわぁあぁあぁ迫りこないで怖いからー!?)

 

感激とモフモフに埋もれるフォウ。年末にやってきた汎人類史の優しい神の頼みを聞く、至尊の獣でありましたとさ──。




マーリン♂「話は纏まったかい?その調子じゃ無事に済んだようだね」

巫女「マーリンさん!」

マーリン「我等アヴァロンマスコット部、ここに設立だ!頑張って一儲け…じゃないや、ケルヌンノス君の知名度アップに貢献しよう!ね、キャスパリーグ!」

フォウ(ね、じゃねーよ。気安く話しかけるなよなお前…はぁ。まぁいいだろう。付き合うと決めたからな)

マーリン「決まりだね!じゃあこのグラスで乾杯だ!祝宴を開いて景気付けしよう!」

ケルヌンノス『ヌーン』

巫女「宴を開いていただけるのですか…?私達の為に?」

マーリン「あぁ。信頼と友好の証としてね。心配しないでほしい、毒など入るはずもないからね?」

フォウ(冗談でもふざけるなよお前…)

ケルヌンノス『ヌーン!』

巫女「ケルヌンノス様はお喜びです!では、お言葉に甘えて…!」

マーリン「それではお互い頑張ろう!さぁ、せーの!乾杯!」

「(乾杯!)」

ケルヌンノス『ヌーン!…ヌ、ヌ…』

巫女「ケルヌンノス様…?」

ケルヌンノス『ヌーーーーーン!!』

巫女「あぁ…!とても美味しい、だそうです!」

マーリン「だろう?プレシャスパワー抽出のスペシャルドリンクだ。人の美徳の味がするんだ、私のとっておきさ!」

フォウ(たまにはいいことするんだな、お前もさ)

巫女「すみません、おかわりを…よろしいですか…?」

マーリン「飲みたまえ飲みたまえ。笑顔の内に宴は終わらせよう!明日から忙しくなるぞぅ!」

なんでこんなにパーティにノリノリなんだコイツ…呆れながらも、嬉しそうな巫女とケルヌンノスに、笑みをこぼすお人好しなフォウでしたとさ。

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