人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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(未開封のメッセージは返信忘れ防止です!明日開封します!)


ギル「なに?ケルトの旧神が売名の為に楽園でグッズを作りたい?ふははなんだそれは!神も信仰集めに四苦八苦する時刻であるとでもいう気か!師走ならぬ神走か!愉快にすぎるわたわけ!」

フォウ(割と深刻らしいんだよ、なんとか企画を通してくれないか、ギル!)

ギル「無論許す!基準は我が愉快と定めたかどうかだ、マメな善神など愉快に過ぎよう!因果応報、正しく敬えば楽園の財共に良縁の一つも振る舞うだろうよ!判子を押す故書類を持てい!」 

フォウ(助かる!恩に着るよギル!)

「やるからには成功させよ!人間の技術と文化、楽園の獣神に見せてやるがいい──!」


年末ショートストーリー〜ヌン〜

(やったよ巫女さん!楽園でのマスコット企画が無事に通った!そして渡された素材で生産のサンプルも出来たよ!早速確認してみてくれ!)

 

楽園にケルヌンノスを祭神として祀る為の第一歩、発足したマスコット部。許可を取るために奔走していたフォウがハイテンションでやってくる。そこには、紐引きされたプレゼントと企画書を咥えた至尊の獣が上機嫌にて駆け寄る様に、巫女は喜色満面となる。

 

「本当ですか!?楽園カルデアは大いなる王のお膝元、簡単に許可を取ることはできないと思っていたのですが…!」

 

(フフン、ボクは割と顔が利くラッキービーストだからね!本気で頼めば口利きが通じるものさ!さぁ見てくれ!君たちから提供された材質から作られたグッズの数々を!)

 

フォウッ!と箱をぺしんと叩き開封すれば、ケルヌンノスより提供された材質から作られた様々なグッズが顔を出す。ケルヌンノスの毛は癒やしと神秘の満ちた最高級素材であり、組み込めばあらゆるものへと形を変えた。

 

(まずはこれ!ケルヌンノスソファ!ケルヌンノス毛をふんだんに使った贅沢の品!ケルヌンノス様に抱かれて眠れるよ!ケルヌンノスセーター!温かいよ!ケルヌンノスミトン!ケルヌンノスマフラー!ケルヌンノスグッズのリクエストは大体通っているよ!やったね!)

 

いくつか提案、考案されたグッズサンプルが形を成しズラリと並んだケルヌンノスグッズを目の当たりにし、巫女は感嘆に身を震わせる。ここにケルヌンノスの魂を分けたと言っても過言ではない様々な神器が立ち並んでいる光景を見て、まさに感無量なのだ。

 

(年末と言うこともあって、皆二つ返事で協力してくれたよ。開発部は勿論、裁縫部やデザイナー部、科学技術部といった重要機関…更に神学部や君主組といった皆までノリノリで制作を行ってくれた!もうボク達が思い描くようなアイデアや発想は、大抵形となったということさ!良かったね、巫女さん!)

 

「あぁ…ありがとうございます!見ず知らずの私達にも、こんなにも良くしていただいて…!マーリンさんが仰る、人の美徳と善性の楽園の二つ名は決して偽りではありませんでした…!」

 

ケルヌンノスグッズを大切に、恭しく抱える巫女。神秘が衰退したこの現世において、更に旧き神であるケルヌンノスは信仰者すら希少な程だ。そんなかの神が今この時代における最先端に、こうして蘇っている事実に何故涙を流さずにいられようか。可愛らしさをデフォルメに閉じられたケルヌンノスのフォルムも、またこの待遇をとても喜んでいるかのようで。しかしまだ、このサプライズは終わらない。

 

「やぁ二人共!ちょうど揃っていて都合がいい!」

「私達からも特注品をプレゼントさせてもらおうかな!何も言わずこれを見ておくれよ!」

 

上機嫌なマーリンとマーリン、即ち♂と♀小さなスケールのプレゼントボックスを静かに置き、頷き合い包装を外す。

 

「「せーの!はい、どうぞ!」」

 

そこにあったのは…スケールフィギュアサイズにダウンサイジングされた巫女の姿、そのものだった。ケルヌンノスを祀る巫女として、その似姿が今こうして此処に蘇ったのである。

 

「実は速攻で魔術を使って組み上げてみたのさ!型取りとかモデリングスキャンとか手間だし時間かかっちゃうからね、魔術で完成したものがこちらとなるというやつだ!」

「皆神からの依頼として張り切っていたから負けじとね!という訳でこれをあげようルイノス君、大切にしてね!」

 

巫女は目を白黒しながらも、聞き慣れない単語におずおずと言葉を返す。感無量が故の謙りゆえ咎などあるはずも無いが。

 

「ルイノス…とは?」

 

「私達が勝手につけた君の名前さ。ルイは女性の祭司であるドルイダスから、ノスはケルヌンノス君からいただいた。失伝した名無しの巫女じゃ、カッコつかないだろ?」

「名前をつけると、その名前は縁と己の楔になって己を繋ぎ止めてくれる。君が君であるために、せめてラベルの一つは持っておくことだね!」

 

「マーリン様方…!ありがとうございます!ありがとうございます!本当に…ありがとうございます!」

 

何度も頭を下げるルイノスを目の当たりにし喜色満面な笑みを浮かべる二人。おそらくこの感謝の瞬間を狙っていたのだろう。ファインプレーと下劣な打算を交えた厄介極まる功績にてフォウを困惑させるが、ルイノスの涙を流して喜ぶ姿に無粋を飲み込むデキる獣なのでこの場の制裁は無事に踏みとどまった。

 

(楽園でどれほど受け入れられるかは、これからの君達の頑張りにかかっているよ。これを盛大な足がかりだと思って、いつまでも祭神であれるように彼を見守っていておくれよルイノス!)

 

その言葉に、力強く頷くルイノス。彼女の目論見は、彼女も予想外なる方向で大成功を収めたのだ。無事に果たすことが出来た喜びを表しながら、ルイノスはフォウに向き直る。

 

「皆様、私は勿論、私に伝わるケルヌンノス様の慈愛と感謝に満ちた様子から大いに喜んでくださっている感情を受け取っております。皆様の善なるこころ、嘘偽りない向上心。確かに堪能させていだきました」

 

「いや〜、それほどでもあるけどね?」

 

(お前じゃない、座ってろ)

 

「ケルヌンノス様共々、深く深く感謝を。マイナーであったケルヌンノス様を救ってくださり、本当にありがとうございます!そしてこれからも何卒、何卒我が祭神をよろしくお願い致しますね!カルデアの皆様!」

 

その誠実なる陳謝と丁寧な応対は、人の悪性に染まらぬ無垢なる人間性というものを想起させるものだった。打算も、私欲も、それらを獲得する前やもしれない昔より生存している彼女のその様は、まさに太古の神を祈る無垢なる巫女が如くであった。

 

(………)

 

「純真無垢ながらも、親身なる存在には時に辛辣かつ真っ直ぐ…誰かにそっくりなんじゃないかな?」

 

(うわっ、なんだよ急に…)

 

「そうそう。君が永遠に首ったけであろう、あのお姫様に…さ?」

 

二人のマーリンの指摘を肯定するでもなく、強く拒絶するでもない。フォウはただ静かに、ケルヌンノスグッズを愛おしげに見つめるルイノスを見つめ、穏やかに目を細める。

 

(彼女を重ねた訳じゃない。ボクが他人にでも、エアを見出す事はありえない。でも、何というのかな。…あまりにも、懐かしかったからね)

 

そう…彼女とケルヌンノスのやり取りは決して見知らぬものでは無かった。どこまでも優しく、たまにはちょっと辛辣な物言い。それは彼が誰よりも見守ってきた魂に通ずるものがあったと彼は語る。それが、いつもより気合を入れて奮闘した源泉でもあるのだと。

 

(それに加えて困っていると言うならば、ボクが力を貸さない道理はどこにも無いさ。これで彼女らがよりよい地位と感情を得られるなら、それを最良の報酬としておくよ)

 

だからこそ、フォウは親身になったのだと静かに笑った。彼にとって、僅かなりともエアを感じ取れるもの全ては等しく最優先されるべき事柄だ。ルイノスも、ケルヌンノスもそこには底抜けの美しい尊重の姿勢が見えた。ならば、彼が奮起した理由はたったそれだけなのである。

 

「相変わらずベタ褒めだなぁ…今ケルヌンノス君は高天原で祭神の儀式を行っているよ。勿論行くだろう?」

 

「夢にまで見た祭神の社!なーんてテンションマックスだったよ。これは最後まで、見届けてあげなきゃね?」

 

マーリン二人の言葉に頷くフォウ。皆でケルヌンノスの下へと行こうとした時…ルイノスが声をかける。

 

「あ、あの。お願いばかりで大変心苦しいのですが…もう一つ、ご依頼をよろしいでしょうか?」

 

(む、まだやり残しがあるのかい?聞かせてご覧?)

 

フォウの言葉に、ルイノスは頷き、神妙なる口調にて…その存在を告げる。

 

「はい。──星の外敵の襲来、それを打ち払う聖剣の作成を担い、その身を捧げ責務を全うしたケルヌンノス様の六人の朋友…六人の妖精達へ捧ぐものを、どうか作っていただきたいのです」

 

セファール来襲の際に、星の命運を分かつ聖剣の作成。その職務を全うしたと語られる六人の慰霊を、ルイノスは所望したのであった──




そらから、ほしがやってきました。

そのほしは、あらゆるものをうばうためにおっこちてきました。

そのほしはしろいひとになって、あらゆるものをうばっていきました。

はやすぎるとひとはなげきました。
もうだめだとひとはあきらめました。
たたかうんだとひとはふるいたちました。

でも、しろいひとはつよくおおきく、だれもかないませんでした。

このままでは、ほしになんにもなくなってしまいます。

『どうしよう?』『ぼくたちがやらなきゃ』『でも、こわいよ』『おそろしいよ』『しにたくないよ』『やりたくないよ』

はじまりのろくにんは、じゆうなあしたをゆめみました。
ですがそのためには、ろくにんがしんでかがやくけんにならなくてはなりません。

『しぬのはこわいよ、おそろしい』

ろくにんは、どうしてもゆうきがだせずにいたのです。
そんなとき、らくえんのともだちがあわててやってきました。
そこには、いきものがいました。

『そとからきたの?』『ないてるよ』『ふるえているよ』『こわかったんだね』『つらかったんだね』『かわいそうにね』

やさしいかみさまは、いきものをひとりだけでもたすけようとしたのです。

でも、このちいさくふるえるいきものはおびえていて。

だれかがゆうきをあたえなくてはいまにもしんでしまいそうでした。

そのとき、ろくにんはきづいたのです。

こわいのはみんないっしょだと。

このままでは、あらゆるものがこわいきもちのまま、しんでしまうときづいたのです。

『やろう』『こわくてもいい』『つらいのはいやだ』『しにたくないのもほんとうで、みんなおなじ』『それをぼくらがなんとかしよう』『それはぼくらにしかできないことだ』

『『『『『『それはとっても、かっこいい!』』』』』』

ろくにんはゆうきをだして、ひかりかがやくけんになりました。

いきものをだいてないているともだちに、なきやんでほしかったのです。

ふるえているいきものに、ゆうきをあたえたかったのです。

ろくにんはつらいのもいやでした。
いたいのも、くるしいのもいやでした。

でも、だからこそ。

『『『『『『そんなおもいは、もうたくさんだ!』』』』』』

それがどれだけつらいことかがわかったのです。

ともだちといきものがつらいことが、とてもいやだったのです。

ひかりかがやくけんができました。

ひかりかがやくけんが、しろいひとをやっつけました。

ろくにんのようせいはしにました。

でも、せかいとともだちと、いきものはいきのこることができました。

『『『『『『いつかきっと、わらえるといいね!』』』』』』

ともだちはふかくふかくかなしみました。

いきものはともだちをなぐさめ、
ふたりはとてもなかよしになりました。
いつまでもいつまでも、ろくにんをふたりはわすれませんでした。

はじまりのろくにんにすくいあれ。

はじまりのろくにんにむくいあれ。

しぬのはちょっぴりこわいのだけど。

みんながわらう、かがやくあしたがほしいから──。

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