人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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ギルガメッシュ「そら、受け取れ。思い出は非売品ゆえ、次も必ず足を運ぶのだぞ?」

子供「ありがとう!ギルガメッシュおにいちゃん!」

子供「ギルガメッシュ!写真撮って写真!」

「僕も!」「わたしもー!」「俺も!」

──流石はギル!その輝きでちびっこの皆様の心をガッチリキャッチです!

男「「「「「ギルガメッシュ様!万歳!」」」」」

女性「「「「ギルガメッシュ様…(恍惚)」」」」

フォウ(だけどコレは異常じゃないか!?こ、これが呪いクラスのカリスマ…!ギルとエアの売り子がこんなにも効果覿面だとは…!)

《えぇい、盛況はよいがグッズ配布四時間など本末転倒ではないか!余興ですらないが、少しこちらに人手を回し対処するか…》

着ぐるみ『!』

ギル「む?」

──あの方は…!手伝ってくださるのでしょうか? 

ギル《誰だか知らぬがよい気配りだ。よし──四時間を一時間で終わらせるぞ!エア!選別を全力で頼る故気合を入れよ!》

──私を頼りに…!はい!喜んでっ!!

フォウ(張り切るエアも最高だよ…ありがとう、ありがとう…)


『異常』と『矜持』

「フィニス・カルデア…世界を救う組織、か。漫画やフィクションでしかないような出来事が、今こうして私の目の前にある。信じられないような…しかし紛れもない真実が、だ」

 

資料に流れるように目を通し、その実態を把握し、そして答えを既に導き出しているのは黒神愛生。生徒会長であり、一同の中でも才にかつて抜きん出ていた女帝の卵…と称しても間違いはないような人物である。その少女は答えを出している。世界を救うための覚悟、そのための決意に資格。あらゆる分野にて偉大なる記録を樹立するであろう器用万能の才能を有す彼女は、しかし慢心や傲慢とは遥か遠い対極の位置に自身を置いていた。

 

(神童も、二十歳を過ぎれば唯の人。この私にあるような言葉だ。今の才覚に溺れていれば、私は瞬く間に取るに足らぬ凡才へと堕するだろう)

 

そう、彼女の見ているものはもうひとつあった。もう一つ…世界の平和、人類の未来といったものとは異なる、もう一つの可能性の意味を見出していたのだ。

 

(ならば、人とは。人という種は一体何処まで辿り着ける?他人より少し優れているに過ぎん私が、リッカの様な真なる素養と才覚と、理想の理解者達に恵まれた真なる天才にどこまで追い縋れる?どこまでその背を追えるのだ?)

 

それは野心であり、ライバル心であり、対抗心であり、掛け値ないリッカへの称賛であった。彼女はもたらされた機会を、チャンスを。完全に自分のものとした。努力する天才…彼女にとって、今のリッカはそれほど可能性に溢れた存在だったのだ。

 

(人には限界が存在する。自身が望む自身になれる者はほんの一握りだ。彼女は…今も努力している。自身の望む自身となる為に。彼女がなりたい自分になる為に)

 

天才とはそういう事だ。努力する才能、才覚。己の可能性をひたすらに信じ、自身の可能性に決して限界を定めず、一秒前の自分とは比べ物にならない程に進化する。彼女は初めから恵まれていた訳ではないのかもしれない。だが、『恵まれていない』という境遇すらも成長の足掛かりにし、真摯に丹念に歩を進めて来たのが今のリッカなのだ。

 

──確信がある。リッカの存在は今この瞬間も、人間の限界を更新し続けているのだ。彼女が諦めない限り、彼女が進歩を止めない限り。人類の価値は上向きに上がり続けている。黒神は自身の直感と洞察力から、その様にカルデアでの彼女を評価した。

 

(今尚人類の最先端を走り続ける…。なんという旅路だろう。なんという足跡だろう。我が恩人よ、我が友人よ。君の人生というものに心からの敬服を捧げる)

 

そして、それは同時に黒神の比類なき挑戦への原動力となった。人とはどこまで行けるのか?人間の限界とは何処なのか?人間は、その繁栄に足る価値を示す事が出来るのか?

 

(リッカ、私もそれを見てみたい。君が駆け抜けていく道を、辿り着くその場所を。人類の到達点を…私はこの目で見てみたいんだ)

 

そしてそれは、彼女が思い描く恩返しの形であった。己以外の全てが取るに足らぬものと傲っていた頃の傲慢な自分を真っ向から叩き潰してくれた友人。己を孤独から救い出してくれた、あの日の対決と対立。

 

(その道の果てに何があるかは解らない。何も待っていないかもしれないし、虚無すらも感じる結末が待っているかもしれない。──その時、私が君を連れ戻そう。かつて君が私にしてくれたように)

 

もしも駆け抜けた際の果てが、何も残らぬ虚無であったなら。誰も並び立てぬ孤独であったなら。自身が必ずそこに追いついて、必ずや人の道へと連れ戻してみせる。そしてそれは、自身もまた人類という種の限界に挑むという事だ。

 

(人は繁栄する為に、数多無数の犠牲を強いてきた。それに報いる事が叶う程の進歩を、発展を行う必要が必ずやってくる筈だ)

 

その為には、リッカの様な比類なき存在に全てを背負わせるだけではいけない。人類の超抜者だけに、人類の明暗を担わせてはならないのだ。心や精神は、まだ神すらも人間以上にすらなれていない。二人…せめて一人は必要になる。彼女の様な『比類無き覇者』ではなく、『極めし凡才』となる存在が。人類が宇宙に認められる発展と進化を極めた時。それが『偶然の突然変異』だなどと切り捨て、片付けられる事など断じてあってはならないのだ。

 

(リッカの才覚は努力と比類無き向上心、研鑽で培ったものだ。断じて天啓でも、偶然でも、授かり物ではない。彼女は『人間』として誰よりも先を駆け抜けているのだ。誰であろうと、それをただの授かり物や突然変異として片付けさせはしない)

 

彼女の力は、生き様は、人間として正しく生きた結果なのであると。備わった才能が凄いのではなく、彼女が彼女であるのだから素晴らしいのだと声高に謳う事が出来るような存在で自分は在り続けたいと願うのだ。

 

(だからこそ、いつか──リッカと同じ場所に立てる人間がいなくてはならないのだ。彼女が突然変異の化け物なのではないんだと伝える為に。今の君は、君が君を極めたから在るのだと示すために)

 

彼女だけしか辿り着けない領域…『孤高』に、彼女を至らせてはならない。彼女の人生は『そう決められたもの』でも『そう恵まれたもの』でも断じてないのだと。彼女自身が人として選んだ『そう生きたもの』のだと伝える為に。

 

(リッカが世界を救い、護るのならば。ならば私は──リッカを孤独や孤高から護りたい。彼女の生命を、正体不明の怪物や理解不能の化け物にしてはいけないんだ)

 

それはかつて自身が見ようとしていた領域だからだ。全てを下等と見ていた傲慢。全てが自身より下だという驕り。その道の先には、きっと自身が危惧する未来があったのだろう。誰にも理解されない、ただの一度も勝利できない孤独の無間地獄が。

 

(仲間も、友も、後輩も、家族も、ライバルも。今の君にはいるんだろう。ならば私は、リッカ。私は君の『警告者』でありたい。人外、人を辞めた領分に、君が迷い込む事のないように)

 

越えさせない。越えてはならない。同じ目線で、同じものを見て。彼女は決して一人などではないと、人外の化け物ではないのだと伝える為に。支える相棒ではなく、競い合うライバルではなく。

 

──彼女が取り返しのつかない場所にいかないように。彼女が孤独や、疎外感を感じないように。君のいる場所は優しく、暖かい人々の営みの中なんだよと伝えられる存在であるように。

 

無論それはあまりにも厳しく途方も無い目論見だ。リッカの成長は目覚ましく、最早今は背中すら見えない。彼女の辿り着いている領域に至ろうとするのなら、人生全てを費やしたとしても辿り着けるかどうか。

 

(面白い…下を見て管を巻き、つまらん成功に満足するくらいならば、目指す場所は遥か天空である方がずっとやり甲斐がある!)

 

黒神はカルデアであらゆる事を学び、助けになり、才覚というものを全て捧げる覚悟が出来ている。それは自身の目的にも、大いに合致するからだ。

 

(あの時私にしてくれた、孤独からの救済。私は生涯を懸けて君にその大恩を返してみせる。それが、君に救ってもらった私の人生の最大の目標なのだから)

 

迷い無く契約書にサインを書き、立ち上がる黒神。彼女の動機は断じて彼女への嫉妬でも、彼女の成長への焦燥でもない。

 

ただ、彼女は自身をまっすぐ見てくれた恩人へと感謝を返したいだけなのだ。そして、その野望や大恩を抜きにして…彼女には出来ることを全てやってあげたいと彼女は大きく頷く。

 

(だってそれが…『友達』なのだからな!)

 

凛、と頷き拳を突き上げる黒神。──あまりに多才なため、大抵の人物が敬遠する中距離感が変わらなかったのがリッカである為、『友達』と認めた彼女への感情があまりに大きい黒神であったとさ。

 

そう──南極に赴き、人生を全て捧げても良いと思える程に。ある種の『異常』を理性と決心でねじ伏せ、黒神はカルデアへの参加を決めるのであった。

 

 




30分後

──ありがとうございましたーっ!!

ギル「フッ──本気を出せば三十分で配布完了よ。我等ならば当然だが、貴様もよく働いたな」

──はい!素晴らしい進行能力で、大いに助かりました!

?『なんとかなった?それなら何より、安心だわ!よいしょっと!』

フォウ(君は!?)

天空海「あなたね?痛快無敵のスーパーキング、ギルガメッシュって人は!私、雨宮天空海!」

ギル「まさしく我だ。貴様は…確か夏草抱えのアイドルではないか。わざわざ気ぐるみで我等を助けたか?」

天空海「売名がしたかった訳じゃないわ。あれ以上いたら列崩壊してたし。自分を売り込むのは、あなたにだけよ」

──自分を、売り込む…?

天空海「王様!私の──専属プロデューサーになってくれない!?」

ギル「ほう?赦す、理由を述べよ」

天空海「アイドルとカルデア、どっちも半端でやるつもりはないわ。どっちもやって、どっちでも結果を残す!アイドルでは最低レッドカーペットを歩けるくらいになるし、カルデアでは皆マシュコンとユニット持ちかけたりして挑戦しまくる!だからこそ!私にはプロデューサーが必要なの!今までスケジュール管理もレッスンも全部でやってたけど、流石に3足わらじは履けないし!で、どうせ頼むならトップよねって!」

──そこでギルに直談判!剛毅です、パワフルです!慧眼です!
フォウ(マネージャーもプロデューサーもアイドルも兼任してたのか…!?化け物すぎる…!)

天空海「どう?私のプロデューサー…なってもらえる?」

ギル「──ふふはははははははは!この我に!黄金Pたる我を指名するとはまさに不遜!そして大胆不敵の極みよな!アイドルなどにしておくには惜しい女よ!」

天空海「でしょぉ?」

ギル「だがすまぬな。…」

──ギル?

「…今我は片時も目も離せぬ星を見ている。そやつに専属ゆえ、他者を見ている余裕は無いのだ。赦せ天空海、ごめんなさいね」

天空海「専属いたかぁー!ならしょうがないわね、私なりにカルデアと夏草のアイドルやってくわ!ありがと、王様!」

ギル「ほう?自分を売り込み蹴落とさぬのか?」

天空海「しないわよ、バカバカしい。他人の足を引っ張る程暇じゃないわ。強いて言うなら気になるくらいね。王様にそこまで言わせる人の魅力って、どんなのかなって」

フォウ(心がきれいすぎる…)

──天空海、先生…!

天空海「時間取らせてごめんなさい。カルデアには行くから期待してて!じゃ!」

ギル「待て、天空海。プロデューサーにはなれぬが、お前との関係は結べるのだぞ?」

天空海「何それ?」

ギル「決まっていよう──!スポンサーだ!!!」

……この後、天空海はギルが立ち上げた事務所所属(枕営業、接待無し)のカルデア・夏草グラビアアイドルとなるのだった。

ちなみにこの事務所所属の条件はただ一つ。『愉快』かどうかである。

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  • コンラ
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  • パパポポ
  • リリス(汎人類史)

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