人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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ダヴィンチちゃん登場!


その便利キャラを生かして存分にご都合を起こしてくれ!

オルガマリーはダヴィンチちゃんに(無理やり)弟子にされました


平穏

身体を起こすと同時に、通信が届く

 

 

『お目覚めかい?王様』 

 

ロマニ・アーキマン。ロマンが、笑顔で尋ねてくる

 

「快眠、とは言えんがな……王が身を預ける寝台には程遠い……」

 

器はお気に召さなかったらしい。ゆっくりと起き上がる

 

『あはは、それはそうとも。カルデアにVIP待遇のルームは残念ながら備わっていないからね』

 

「優遇以前の問題だ。仮にも世界の救済に立ち向かう連中、疲労も並大抵ではなかろう。このような安宿でよくぞ激務に耐えるものだな……」

 

そうだ。カルデアにいる職員達は言うなれば最後の人類だ

 

一人でも倒れてしまえば、それだけでカルデアの効率に大幅な支障が出てしまうだろう

 

贅沢を尽くせとは言わないが、水準以上の質は保てと設計者に一言物申したい

 

ノウハウを培った社員に勝る財産は無いのだから、重要な仕事であればあるほど、生活環境には気を配るべきだ

 

「ウルクの掘っ立て小屋より劣るとは恐れ入った……羊の方がよき睡眠を取っていような」

 

『し、仕方ないんじゃないかなぁ……カルデアに灯を入れるのにも資金かつかつだったみたいだし、そもそも魔術師に他人を思いやるとか無理じゃない?』

 

「ウルクに帰ってよいか?ジグラットが恋しい」

 

ウルク……そんなにいいところなのか?

 

器がこんなにも言うのだ。いつか自分も行ってみたい

 

どこら辺だったか?イラクの方面だったか?

 

『待って!解ったなんとか改善するようマリーに伝えるから!』

 

「シドゥリめに扇いで欲しいものだな。いや、働けと煽られるか?……はぁ、だが小言はよくないな、うむ」

 

一人呟く器をスルーし、マリーに関して尋ねてみる

 

「マリーめはどうなっている?消滅などしておるまいな」

 

『あぁ、大丈夫だよ。それどころか絶好調……いや、不謹慎だったかな』

 

「?」

 

『まぁ、当事者が納得しているならいいのかな?そうだそうだマリーだ、マリーは今、立香君を起こしにいってる。』

 

「マスターが目を覚ましたか」

 

ならば。寝ている場合じゃない

 

『ブリーフィングを行うから、彼女達を連れて来てくれるかい?これからの進退を決める大事なブリーフィングだからね。全員で来てほしい』

 

「全員?……マシュもマスターもいるのだろう?集まればいいであろうが」

 

『何を言ってるんだい、キミだって一員じゃないか』

 

「――」

 

『キミのスタンスは知っているけど。こうしてサーヴァントとしているキミは当事者だ。少しくらい距離を縮めたらどうかな』

 

 

当事者……そうか

 

もう、眺めているだけの存在じゃないんだな、と今更ながら再認識する

 

「……そうさな。郷に入らばという格言もあることだ。そう振る舞うとしよう」

 

『あはは、慣れないなぁ聞き分けのいい王様って』

 

「ほざけ。では、王の出立と行くか」

 

 

 

こんこん、とマスターの部屋の扉をノックする

 

「英雄の中の英雄王、ギルガメッシュが訪ねてきてやったぞ。もてなすがよい」

 

「すっごい偉そう!どうぞー!」

 

自動ドアが開くと、そこには四人の女性が食卓を囲っていた

 

「おはよーギル!」

 

「お疲れさまです、英雄王」

 

「おはようございます!」

 

「元気なマリーの挨拶で元気でた?」

 

「特に」

 

「フラれたね」

 

「そんなんじゃないわよ!」

 

「ようこそ英雄王!カルデアの楽園、女の園へ!」

 

大仰な物言いの、紛れもない絶世の美女が声を上げる

 

「……万能の人か」

 

「おぉう、一目で見抜くとは恐れ入った!話を聞くまで半信半疑だったけど、その慧眼、その洞察!キミは本当に英雄王その人だ!」

 

器の見通しに目を見張る

 

万能の人と言えば……

 

「そう。私の名はレオナルド・ダ・ヴィンチ!人類史に燦然と輝くダヴィンチその人さ!」

 

……ダヴィンチといえば、世界一人を惹き付ける絵画、モナリザの作者か?

 

「まさか女性だったなんて、驚きです」

 

「女性、という訳でもないわよこの変人は」

 

「なんだよマリー、冷たいなぁ。私の弟子になったんだから仲良くしようよぅ」

 

「英雄王、こちらはレオナルド・ダ・ヴィンチ。通称ダ・ヴィンチちゃんと呼ばれていて、カルデアが召喚に成功した英霊の2号です」

 

「そして!このマリーの師匠というわけさ!」

 

弟子入りしたのか。万能の天才と言われるダ・ヴィンチに?

 

「大きく出たな。どんな心持ちだ?」

 

「……聖杯と一体化した以上、もう誰かに甘えている場合ではありません。自分は自分として、生きていかなくてはいけませんし、魔術協会をはじめとしたものたちに、ほぼ確実に追われるでしょうから」

 

「……」

 

「あ……誤解を招かないように伝えておきますと!助けて頂いた事、大変に感謝しております」

 

「私も驚いたよ。聖杯で再構成された肉体には、食事も睡眠も……コホン」

 

「?」

 

「……その、えっと」

 

「うんちもしないんだって。アイドルかな?」

 

「リッカァ!」

 

「先輩!不潔ですよ!?」

 

「あはははは!まぁそういう事らしいんだよ。聖杯がオルガマリーの願い『生きたい』を今も叶えていると言ったところだろうかな?」

 

「ハハハハハハハハハ!!」

 

横っ面を殴られたような衝撃に大笑する

 

「そうかそうか!聖杯はしかと応えたようだな!まさかそこまで気を利かすとは思わなかったがな!転がっていた容器にも使い途はあるとは、余り物も使い様か!」

 

「余り物……驚いた。キミはまだまだ聖杯を貯蔵しているのかい?」

 

「当然だ。聖杯の原典も我は所有している。人間を再構成する奇跡を起こす程度のものなぞ、幾らでも生み出せようさ」

 

「……キミの過ごしてきた世界は本当の魔境なんだねぇ」

 

「凄かろう?」

 

……あの奇跡を起こした聖杯は余り物で、さらに大元となる聖杯も所持、と

 

そろそろ驚愕も品切れてきた。この英雄がそう言うならそうなのだろうと、受け入れるしかない

 

「まぁ渡した聖杯は小さめの不出来なものであったが……起こした奇跡には相違無かろう。だから我を涙目で睨むな、笑って流せ」

 

 

「……わ、解ってます。余り物だろうと聖杯は聖杯!私は止まらず未来にいきます!」

 

「ポジティブ、素敵です所長!」

 

「希望の華が咲きそう!」

 

「彼女の身柄は当分こちらが面倒を見るよ。睡眠も食事もいらない弟子なんて最高だ!第2の私を作れるかどうか試してみたくなるね!あぁ、この美しい私はただ一人だけどね」

 

「そういえば、何故貴様はモナリザと同じ顔をしている?よもやアレは自画像だったのか?」

 

「英雄王、ダヴィンチちゃんはモナリザを愛するあまり、自分がモナリザになる事を選んだのです」

 

「――は?」

 

天才とアレはなんとやらというが……創作になりたいとはまともな頭では考え付かないだろう

 

この異常さは間違いなく天才だろう。凡人が言うんだから間違いない

 

「理解を得られない孤高さ、お互い苦労するねぇギルくん?」

 

「高みにいる者の性よな。まぁ、我ほどではないが。……それより」

 

「フォウ!」

 

脇から飛び出る、フォウと呼ばれる美しき獣

 

 

「ぁ、はい。皆さん。ブリーフィングが始まるみたいです」

 

「え~。まだねてたーい」

 

「怠惰を貪るか。ならその手足はいるまい。飾りにしてやろう」

 

「皆!40秒で支度しな!」

 

「そうだよ~。こわーい英雄王に怒られちゃうからね!そらブリーフィングルームに行った行った!」

 

 

「私は先に行きます。準備もあるし、ロマニをフォローしなきゃ」

 

あわただしく動き出す中、オルガマリーがこちらを見やる

 

 

「……本当に、ありがとうございました。救ってもらった命、すべてカルデアに捧げます」

 

「うむ、励め。貴様の奮闘に、人類の未来があると心得よ」

 

「はい!」

 

 

少女は走り出す。自分の命運と覚悟を定めた決意が、全身から垣間見えた

 

……自分はサーヴァント。キャスターのようにいずれ消え去る定め 

 

なら、彼女にその『先』を託してみよう

 

 

あり得ざる可能性、覆した奇跡のままに

 

 

マスターとマシュが掴んだ未来を、共に臨むことができますように、と

 

「デュクシ!」

 

「ぬっ」

 

フォウに、頭を小突かれた

 

「(ブリーフィングルームに行こうよ。そろそろロマンが泣き出すかも)フォウ、キュー」

 

「……よし。もう少し時間を潰すか」

 

「私には支度しろって言ったくせに!」

 

「我は良いのだ」

 

フン、と鼻をならす器

 

これに付き合わされる周りは大変だ、と……少し、おかしな気分になったのは内緒だ

 

 

……なんだか、久しぶりに笑った気がする

 

 




聖杯「女の子はうんちしない」

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