「無論ですとも!!さぁ!私とめくるめく社交に耽りましょうぞジャンヌゥウゥウ!!」
「るっさい!!」
「ホアッ――!!?」
「慎み!貞淑!!私が男役やるからあんたは女!いいわね!」
「はいっ、じゃんぬっ♥」
「うぉえぇえぇえぇえ!!!」
「ジャンヌ――!?」
アパルトメントに突如現れた、Pを名乗る計画の首謀者
その対応に名乗りをあげたのは、なんとジキルであった
「端的に、簡潔に、穏便に済ませてみせる。君達は物陰でみていてくれ」
「大丈夫なんだろうな、ジキル。洗脳とかされんじゃねぇぞ」
「そうなったら、躊躇いなく切り捨ててくれ」
「・・・冗談でも笑えねぇな」
「ごめんよ」
「精々情報を聞き出せ、貴様の信じる『善』とやらでな。・・・マスター」
「なに?」
「カルナめを呼び出し、話し合いの席につけよ。ヤツめの見識はあらゆる虚飾を見抜く。欺きや偽りを見抜いたならば即座に我が串刺し、八つ裂きにしてくれる」
「では私は細切れにしましょう」
「こぇえよ父上たち!」
「解った!来て、『カルナ』!」
右手が輝き、インドの大英雄が現れる
「・・・オレは対話の虚飾を暴けば良いのだな」
「貴様のけして認められぬ環境で培った見識の見せ所だぞ。精々虚飾発見機としての役目を果たすのだな。それと黄金の鎧はまだ取り戻さぬのか」
「質に出した故な。――承知した」
ゆっくりと歩いていくカルナ
「なんだあいつ。ヒョロヒョロのガリガリじゃねぇか。アレも英雄か?」
「みすぼらしい見掛けに騙されれば死あるのみだぞ。ヤツはカルナ。格で言えば我と同等のインドで名を馳せし無冠の大英雄よ」
「本領であらば私より強いですよ、彼は」
「マジで!?・・・あ、そういわれりゃどっかで・・・」
「うー、そふぁ・・・」
「我慢してください、フランさん」
「アパルトメントの存亡を駆けた、対話の始まり――!」
「人類の存亡を懸けているかのような口ぶりよな。さて、どんな下らぬ言の葉を発しに来たのやら」
――どうか、気をつけて
「オレの名はカルナ。この場の虚飾を払う役割を仰せつかった。我が父スーリヤの名に懸け、浅ましき嘘や甘言は暴かれるものと知れ」
「輝ける太陽の大英雄――あぁ、やはりあなたたちこそが・・・」
「ヘンリー・ジキルです。まずは、貴方の来訪を歓迎いたします」
紅茶を差し出す
「ありがとうございます。・・・えぇ、美味しい」
ゆっくりと口をつけ飲み干す
(毒でも仕込んどけよ・・・)
(騎士にあるまじき発想よな。ネズミと同程度の頭の悲惨さだ)
(うるせー!敵なんぞに容赦はいらねーの!)
(これはカリバります)
(どうだマスター、カルナめに異常はあるか?)
(うで組んでピクリともしないね)
(ならばよい。注視し、眼を離すなよ)
「今回の貴方の来訪の理由は?」
「『伝達』と『警鐘』・・・計画の首謀者としてではなく、一人の男として」
「――・・・」
(ゆらゆらしてる。大丈夫みたい)
(・・・読めぬな。よもや本当に雑談に興じに来たというのか?)
「では、『伝達』から御伺いしましょう」
「はい。・・・先日、私達の有していたサーヴァント『ジャック・ザ・リッパー』が消滅しました」
――・・・!
(思い出した!)
(頭をあげない)
(そうだ、アサシンだ!何度かやりあった相手はソイツだ!くそっ、なんで今まで気づかなかった!?スキルか宝具か!?)
(敵討ちですか?ギル、受けて立ちましょう)
(まぁ待て、短気を起こすな。話題にはまだ先があるようだぞ?)
「私は彼女の最期に立ちあいました。霊核を、砕かれていたあの悲しき子を、再利用するため維持しながら」
「――・・・」
(外道!死刑!!)
(早計ですモードレッドさん!)
(ろくなヤツじゃねぇぞ絶対!再利用とか顔色を変えないで言いやがった!)
(そのわりには消滅したって)
(会話の最中に腰をあげた方が負けよ。最後まで話には耳を傾けるものだ)
「その末期の言葉を、あなたたちに。私にとって、驚くべき言葉だったので」
――驚くべき・・・?
「それは?」
「『わたしたちにいのってくれて、ありがとう』・・・そう言い残し、私の延命すら振りきり、安らかに消滅していきました」
――!!
(怨霊が末期に吐いたのが安寧とはな。珍しいこともあったものよ。祈ったのは貴様か?アルトリア)
(寝言で祈ったかもしれません・・・)
――もしその話が本当ならば・・・彼女達を救った、祈りとは・・・
「怨霊である彼女らが残した最期の言葉。末期に魂を解き放った遺言を、必ずあなた方に伝えねばならぬと」
「・・・そのために、貴方は?」
「はい。――彼女らは、愛すべき愛し子ですから」
(カルナはどうだ)
(・・・変化なし!うそいってないよ!)
(訳わかんねぇ・・・悪人じゃねぇのかあいつ!)
(せまい・・・)
「愛し子を解き放ち、救う。・・・あなた方こそが正しき英雄。私は、その刃にて倒されるもの」
(わざわざ懺悔に来たわけでもあるまい。・・・面白いではないか。中々に底を見せぬ、食えぬ男よ)
「・・・あなた方に感謝を。報われぬ怨霊に、幾ばくかの救いをもたらした貴方がたに」
「・・・『警鐘』とは?」
「はい。どうか、躊躇わぬように」
「・・・」
「私は悪逆を成すもの。人類の焼却に荷担するもの。慈悲なく、迷いなく、一息に命を断つのです」
――どういうことなのだろう
狂化がかかっている様子も見られない。彼の価値観は真っ当に見える
・・・計画に加担しながら、自分を倒すことを躊躇うな、と・・・?
「・・・貴方は矛盾している。善を理解し、命を慈しみながら、ロンドンを混乱させている」
「えぇ、哀しい事です。痛ましき事です」
「それを理解していながら、何故破滅に荷担するのです!!善を知りながら、誠実を信じながら、何故――!!」
(・・・あんなにキレてんの初めてみたぞ、ジキル)
(ヤツの生涯にて、善悪はけして切り離せまい。特に今のアレに、善を騙るなど神経を逆撫でる最たるものだ)
(・・・ジキルとハイド、ですね)
「それを覆すものは『諦念』と『大義』。私達は一様に『諦め』一様に『大義を』成し動いている。そこに自由はなく、そこに希望はない」
「・・・」
「『もう、どうにもならない』。そんな致死の毒が、私達を満たしている。・・・それが、悪逆に私達を走らせた要因」
――諦める・・・諦念・・・
(松岡修造の言葉を叩き込まなきゃ!どうして諦めるんだそこでぇ!!)
(カルナさんはどうですか!?)
(・・・反応せず、か。あのキャスター、戯れ言を口にしているわけでもないらしい)
(――っ)
(モードレッド?)
「どうか、皆様は正しく在ってください。希望を胸に、我等を打ち倒し、未来を救ってください」
「あなたは・・・」
「・・・そうであるなら・・・私達も」
(――だあぁ!!我慢できねぇ!)
(モードレッド!?)
止める間もなくモードレッドが躍り出る
「おい!ウダウダ言ってるモヤシ野郎!よく聞けよ!」
「モードレッド!」
「テメェらはオレの、父上のものに手を出した!王ならざるものが、王のものに手を出しやがって!」
「――されば、貴方は私達を」
「あぁ、ぶっ殺す!!然るべき報いと罰を、てめぇら全員に叩き込む!!」
ジャキリ、とクラレントを突き付ける
「ウダウダグチグチいってんじゃねぇ!殺すか、殺されるかしかオレたちの間にはねぇだろうが!!」
「――あぁ、それでこそだ。安心しました」
ゆっくりと、パラケルススが消えていく
「なっ、テメェ逃げんのか!?」
「えぇ、私達には『大義』がある。それがあるかぎり、私は命を果たすのみ」
「パラケルスス・・・!」
「どうか、正しき道をお進みください。私達のように、絶望と諦念に囚われぬ事を・・・――」
・・・真摯な忠告を残し、パラケルススは姿を消した。転移したのだろう
「・・・対話は決した、か」
腕を組んでぼんやりと立っていたカルナが動き出す
「お疲れさま、カルナさん」
「あぁ。ヤツに虚飾はなかった。全ては本心の言葉だ」
「・・・矛盾しています。善を信じ、善を説きながら悪に荷担するなんて」
「そうでもないぞ?悪を為すものが善を為し、善を信ずるものが悪に堕ちる。人間共にはよくある心境の変動だ。英雄とてそれは例外ではない。絶対悪も至純の善も、世界にはけしてあり得ぬのだからな」
「・・・心の機微は、私には難しいです・・・」
――自分は、少しだけ理解できる
善も、悪もそれを産み出すのは人の営み
どちらが優れているかではない。どちらも大切なのだ
美しいものから生まれる美しさは、きっと味気ない
おぞましさから生まれるおぞましさは、あまりにありきたりだ
・・・二つが織り成す多様性、二つが重なり連なっていく、世界の営み
だからこそ・・・彼は伝えに来たのだろう
『自分が善を知ろうが、刃を止める理由にはならない』と
・・・だとすれば
善を信じる、彼が諦めなければならなかったという存在こそが
・・・自分達の、敵なのだろうか
「だぁぁあーー!!スッキリしねぇ!!大人しく俺に斬られろ――!!」
「円卓の評価をこれ以上落とさないでください。ただでさえ巷では変人集団なんですから!」
「そこには貴様も含まれていような、アルトリア。円卓を纏め上げた貴様が珍妙でない筈はあるまい」
「異議あり!断固抗議します!」
「フハハハハハ!却下だ!我の決定は最高裁も上回る絶対裁定だ!」
「横暴です!弁護士を呼びなさい!ベディ!ベディ!!」
「まぁ要するに!『おもいきりやっていいですよ』って事でしょ!解りやすくていいじゃん!訳わかんない理由でいじめてくるわけでもなし!私は好きだな!」
「ほう、善なるものを打ち倒せるか?マスター」
「もちろん!別に敵だからって、全部を否定する必要はないでしょ?言い分認めて、リスペクトして、その上で戦えばいいってだけ!」
バシッ、と拳を叩きつける
「別に、敵だから憎まなきゃいけないなんて理由はないしね!邪魔なら蹴散らす!それだけ!」
「先輩・・・!」
――男らしい・・・
「フハハハハハ!!見よ!これが我のマスターよ!並の男なぞ比較にならん益荒男ぶりよ!サーヴァントとして鼻が高い!!」
「マスラオってどういう意味!?」
「男らしい、荒々しいという意味です」
「嘘だ――!!?」
――ジャック・ザ・リッパー。報われぬ魂たち
どうか、もう一度
――君たちに、救いがありますように・・・
ろーすとびーふに、みーとぱい
――またたべたいな。つぎはきっと
おかあさんと、たべたいな――
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