人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜 作:札切 龍哦
ラオウ「そう…親御様に伝えて初めて要請は完了となる!」
(故に私は行くぞ!突如の来訪の誹り、甘んじて受ける!しかし私は伝えねばならぬのだ!)
「……榊原君にも同行してもらおう。私だけでは厳つすぎるからな」
(明日、夏草は世界を救う使命を帯びる。憂いは絶たねばならぬからな)
はくのん「やはり親御様に説明か。いつ出発する?私も同行する」
「君は…!?」
(あーもう、そんなにしょんぼりしないでよ!恨みっこなしのじゃんけんだったでしょ!?)
(しょんぼり…)
夜。フェイト・シーでは夜のパレードが行われている頃合い。しょんぼりしなしなになっているうたうちゃんを懸命に宥めているのは彼女の半身、ディーヴァである。先のじゃんけんは、かなり重要な命運を決めていたのだ。即ち…端末における人格の担当である。
(大体私があなたの代わりにうたうちゃんをやるなんてできるわけ無いでしょう?あなたを見てきた夏草の皆が、そう簡単に欺けるわけないじゃない。もっと自分の位っていうか、功績?それに自信を持ちなさいってば!)
(ありがとう…納得はしているの。しているけど…私も行きたかったなぁ…)
しわしわうたうちゃんとなっている状態、アホ毛も元気がない。ディーヴァならば絶対にカルデアで仲良くやっていける確信はあるが、それはそれとして自分も行って見たい気持ちはあったわけなので。
(皆をよろしくね…風邪引かないでね…リッカさんのスケジュールをしっかり助けてあげてね…)
(あ〜もう!いいわよ!五十回戦で後でもう一回やりましょう!それで恨みっこなし!ね!?)
(え、ディーヴァならなんの心配もないんだけど…)
(あなた意外にウジウジな所とめんどくさいところあるのね!?)
ディーヴァを信じるのと、自分が行ってみたい事は両立する。そんな複雑な心持ちをディーヴァだけに見せながら、とある4枚の券を持つうたうちゃん。二人が歩いていると、脇から小さい影が躍り出る。
「あ、あの!うたうちゃん先輩!今お時間、よろしいですか!?」
「?…あなたは、オフィーリア?」
少女、黒いゴスロリチックな衣装に身を包んだ小さき者がうたうちゃんを見上げる。彼女はエンジェルグレイブ製、電子の英雄が一人、オフィーリアである。彼女の真っ直ぐな瞳は、キラキラと輝いていた。
(先輩って。制作日数の話?いつ照合したかしら?)
「先輩とは、私のことですか?」
「はい!電子の歌姫AI…その在り方は私の憧れ!あなたは私の、先輩なんです!どうかお話をさせてくれませんか!?」
強い圧を放つオフィーリア。これほど押されては無下にする訳にもいかず、二人は近場の土手へと場所を移す──。
〜
「なるほど。歌でみんなを幸せにする…それがあなたの望みであり、願いなのですね。オフィーリア」
オフィーリアと話してみれば、彼女はいろんな場所、様々な場所で歌を届けることに特化したAIなのだという。オフィーリアの中には全カ国の言語データが収められており、どんな場所でも歌うことができるのであると。
「はい!私は歌を歌い、人間の皆に聴いてもらえるようにと願われ産み出されたAIなんです。その使命に私は誇りを持っているんです!そしてうたうちゃん先輩を見て、それは更に強くなりました!」
「私、ですか?」
「はい!人と心を寄り添うAI…それは種族を超えた絆です!それは歌が結び導くべき境地!私はそれをもたらしたあなた方を、先輩として心から尊敬しているんです!」
オフィーリアの使命の体現者、それがあなたなのだと力説する彼女の剣幕に圧倒されながらも、照れが顔に浮かんでいるうたうちゃん。
(なんなんでしょう、ディーヴァ。私最近、たくさん褒められすぎているような…?こんなに幸せでいいのでしょうか?)
(………)
(なら先輩として是非ともできることを…。?ディーヴァ?)
喜びに胸踊らせるうたうちゃんとは真逆に、真剣な顔で思案を巡らせるディーヴァ。彼女はオフィーリアの使命に着目していたのだ。
(なんだかオフィーリアだけ、随分と平和的な製造目的な気がしない?うたう。他の三人は形こそ違えど、人類殲滅の手段を有していたでしょう?)
(…!…彼女の使命は、歌で皆を幸せにすることと言いました)
(違和感を感じないかしら。彼女だけ、いやに真っ当な動機すぎる。鎮魂、慰安目的ってわけ?焼け野原でレクイエムでも吟じるのかしら?──なんだか引っかかるわ、うたう)
うたうちゃんはディーヴァ、半身の意見に真摯に耳を傾ける。その使命は素晴らしいものだが…彼女の生まれを知るからこそ、丁寧に接さなければならない。
「えっと…オフィーリア?もしよかったら、あなたの歌声を聞いてみたいのですが。今、歌ってもらえたりはできますか?」
「えっ!今ですか!?うぅん、歌うのはエリザベス達に禁止されているんですけど…他ならない先輩の頼みなら!」
(禁止されている…?)
聞けば聞くほど、不穏な単語と要素が湧き上がるオフィーリア。しかし舞い上がっているのか、あれよあれよと話を進めていく。
「ではお待ち下さい、専用のステージプログラムを展開しますから!どうしても歌いたいならここでって、エステラに言われていますので!」
そうして展開された、彼女の言うステージプログラム。それは──摩天楼とも言うべき、壮大極まる大都市の再現だった。ニューヨークもかくやの、大都会シミュレーター。その威容に、うたうちゃんは圧倒される。
「おぉ、凄い…」
「産み出され、仲間となってから。うたうちゃん先輩のライブ配信をずっと見ていました。私もあなたのような、人を感動させる歌を歌ってみたいのです!」
(うたうの歌って…アンドロマリウスの前の歌はとんちきなものしか無かった筈よね?やっぱり、この娘なんだかおかしくない…?)
膨れ上がっていく、オフィーリアへの疑念。陽気に手を叩きオフィーリアを鼓舞するうたう。オフィーリアは心から喜ばしげに、マイクを握りしめる。
「先輩に捧げます、私の歌を!どうか聞いてください!私、全力で歌いますから!」
(ちょっとうたう、程々に切り上げさせなさい。聞けば聞くほど、なんだかおかし──)
───そう。ディーヴァの予感、いや。悪寒は正しかった。彼女への危惧は寸分違わず、正しかった。正しすぎたのだ。
「ああぁぁ─────ラァァァァァァァーッ♪!!!」
「え───」
うたうちゃんが呆けた声を上げ、オフィーリアが声を上げた瞬間──そのステージプログラムにて、あまりにも恐ろしく、おぞましい事態が起きた。
「ラァァァァァァァァァァァァァーーーーーッ!!♪♪」
まるで砂上の楼閣のように、砂漠の蜃気楼のように。プログラム内の構造物が、物体が消え去っていくのだ。かき消されるように、或いは粉々に砕け散るように。それらはまるで、音が届いた瞬間に自壊していくかのような有様だった。
(代わりなさい、うたう!!)
素早く仮面ライダーディーヴァに変身し、全力で防御態勢を取る。破壊は、オフィーリアの歌声に共鳴し力を増していく。ディーヴァは持ち前の解析能力で、破壊のメカニズムを解析する。
(これは…疲労破壊!?彼女の歌の範囲内すべての物質が、オフィーリアの歌声によって固有振動伝達により破壊されている…!?)
それはつまり、音波によるソリタリーウェーブ照射による大破壊の顕現。物質の分子構造を把握していればこの世界に破壊できないものは存在しない、究極の音波兵器。
(そういう事…!歌を禁止される訳だわ。彼女の歌は、全てを破壊する滅びの歌そのもの…!)
(オフィーリア…そんな…)
「ラアァァァァァァァァァーーーッ!!」
…その歌声は、プログラムの内部にある全てを破壊し尽くす事によりようやく終了を迎えた。分子構造を把握していなかったライダーシステムがなければ、うたうちゃんすらチリに還っていた破滅の破壊歌唱。
「ふぅ!ご清聴、ありがとうございました…!」
満足げに歌声を止めたオフィーリアは純粋にうたうちゃんを見つめている。自身の歌声を披露できた喜びに満ちてすらいた。
「とても…とても、個性的な歌、でした…」
間一髪で防ぎきったうたうちゃんすら、そう形容する他無いオフィーリアの歌声。そして、改めて理解する。
(歌で皆を幸せに、ね…随分と、強烈な皮肉じゃない)
彼女もまた、れっきとしたエリザベスたちの姉妹であると…ディーヴァは戦慄と共に痛感するのであった。
オフィーリア
少女型
用途
都市・城塞攻略歌唱音響殺戮型波動共振拡声殲滅AI
対象
人類文明・建築構造物、シェルター内部