人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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幕張メッセ 入口

ライネス「やぁやぁ来たか我が盟友よ!準備は出来ている。幕張メッセ周囲の防備は完璧さ!」

オルガマリー「具体的には?」

ライネス「結界二十四層、魔力炉三基、猟犬代わりの魑魅魍魎。中には異界化している空間もある!」

オルガマリー「1ケイネスね。グッジョブ、ライネス」

ライネス「外には暇していた牛若丸や、雇われたこわーい警備員もいる。魔術阻害はDr.ロマンがやってくれているよ。例え君主だろうと、代行者だろうとここで何をやっているかは微塵も嗅ぎつけられないはずさ♪」

オルガマリー「トリムマウ、いつもありがとう」
トリム『恐縮です、ロード・アニムスフィア』

ライネス「私ももっと褒め給えよ!?」

オルガマリー「やはりあなたは私よりもずっと凄い君主よ、ライネス」

ライネス「謙遜を通り越してイヤミだぞ、それ。さぁて、ロード・アニムスフィアの教鞭、振るいぶりを堪能させてもらおうじゃないか?」

オルガマリー「いえ、今回の講師は私じゃないの」

ライネス「は?じゃあ兄上かい」

?「いいや!──私が!及ばずながら来た!!」

ライネス「お、お前は──!?」

(メッセージ返信、執筆時間の確保の為3話ほど、本編とマテリアルをほぼ同時に投稿致します。マテリアルはこの5分後に!)


7日目・朝〜オールマイトのサーヴァント講義・幕張メッセ編〜

「それでは諸君ッ!楽園カルデアにまつわる基本中の基本!魔術師やサーヴァントについて勉強していこう!幕張メッセに!私が来たッ!!」

 

幕張メッセを貸し切り、巨大なフロアをふんだんに使って行われしは…勉強会。これから世界を救う為に所属する組織、世界がどんなものかを皆に理解、把握してもらうための一幕。言うなれば魔術夏草科。そしてそれを教える為に抜擢…いや、立候補したのは八木俊典。最近身体の機能が復活しカプセルから出てきた別世界のNo.1ヒーローである。

 

(所長所長、なんで彼に講義をやらせる判断を!?一般人ですよね彼!?)

 

当然ながら出る疑問を呈するはシオンである。エルメロイ二世やライネス、ケイローンもいるというのにこのチョイス。自分やあなただって教えられるのにと理由を問われればオルガマリーはこう返す。

 

(魔術師に基本を教え込むのとは訳が違うわ。一般人に効率よく教えるのには感性が似た方よ。大丈夫、座学の次もちゃんとあるわ)

 

(しょ、所長がそこまで言うなら大丈夫なのでしょうが…カルデア所長がやらないのは意外ですね…)

 

(リッカに寝られた経験があるのよ、私。一般人の説明は向いていないわ)

 

トラウマなんですか…。シオンはそれ以上の追求を諦める。そして八木俊典は教師を志してもいた。オルガマリーにアメコミ画風ドアップで立候補したのは内緒である。画風と圧が違ったのだ。

 

「よし!じゃあまずは英霊、サーヴァントから説明していこうじゃないか!英霊っていうのは人類の歴史にて大いなる功績を残した『英雄』達が高次元、『英霊の座』に召し上げられた魂の事を言うんだ。世界を救ったスーパーヒーローは英霊!英雄の敵として打ち倒される事で、英雄に栄光と市民に安心を与えた者は反英雄と呼ばれる!要するに!世界史に煌めくアーサー王やヘラクレスといった英雄は皆英霊なのさ!誰もが憧れるヒーロー…私も尊敬してやまないぜ!」

 

教師として未熟ではあると言ってはいたが、自分なりの語彙で解りやすく問題を噛み砕く八木俊典にオルガマリーやシオンは好感触を覚える。用意された机や資料に堂々と、数名は必死に齧り付く事から退屈は感じさせていないようだ。

 

「そしてその『英霊』をすっげぇ超パワーでなんとか呼び出して力を借りる為に用意されたのが『サーヴァント』ってわけさ!コイツは英霊を一点特化の『クラス』に振り分けて一側面だけを切り取って召喚するトンデモな天才魔術なんだぜ!考えた人にリスペクトを忘れずにね!」

 

「質問です!クラスに振り分けるってどういう事ですか?」

 

「いいねぇ黒髪で赤眼のキミ!本来英霊っていうのはとんでもなく凄い存在で、そのままそっくり召喚っていうのは流石の天才にも無理だった!そこで英霊の一側面だけをなんとか押し込みカットして、召喚の術式に収めコストカットってわけ!大抵サーヴァントより生前の方が強いんだぜ?例えばヘラクレスさんなんかのウルトラ英霊が武器一つしか使えないなんてとんだハンデだろ?例外は勿論ある!というかこの世界はなんというか例外だらけなんだよなぁ!」

 

「例外、という事は『サーヴァントになって生前よりも強くなった』という英霊もいるのでしょうか?例えば、作家の英霊など」

 

「(この娘は八百万君にも負けない聡明さをお持ちだ…)ザッツライト!宝具、スキル、ステータスに押し込められるのは悪いことばかりじゃあない。生前の生き様を自在に振るえるというアドバンテージはかなりデカいものなのさ、黒神会長!」

 

「クラスは大まかに何クラスがあるのですか?」

 

「いい質問だ福山少年!先生覚えてきたぞぅ、セイバー、アーチャー、ランサー、ライダー、キャスター、アサシン、バーサーカー!この7クラスが基本だ!勿論英霊に対してクラス資格なんてのもあるから全員が自由に選べるって訳じゃあ無いんだよね。そしてクラス適性があるからといっていっぺんに召喚される訳でもない。一回の召喚に選べるクラスは一つ!その英霊を最大限パワフルに運用できるどれか一つを選ばなきゃいけない訳だね!先生はなんだろうな、キャスターかな!先生だし!」

 

どっ、と笑いが起こり、ジョークに緊張が緩和されるのを感じる助手のオルガマリー。カンペも見ずにスラスラ言えるあたり、八木俊典は相当魔術について履修したようだ。カプセル、ヘラクレスのサインでいっぱいだし。

 

「サーヴァントにも大まかな属性があるのは知ってるかな?神話の中の英雄、神様みたいなのが天属性、土着の信仰や土地に伝わる話からの出典が地、実在する偉人が人!(…合ってますよね、オルガマリー女史?)」

 

(大体大丈夫よ、自信を持って)

 

「(OK!)眠くなる前に総括するとだね!サーヴァントっていうのは過去、現在、未来の英雄と出会える、ロマンと希望溢れる人類の偉大な発明ってやつなのさ!カルデアにはそんな夢の存在が数多集っている!君達の知っているような英雄だって、必ずいる筈だぜ!どうだい?ワクワクしてこないか!?教科書や資料で見るだけだったあんな英雄、こんな英雄と話ができちゃうんだぜ!?」

 

おおっ、と湧き立つ夏草メンバー達。最初は不安もあったが、八木俊典…オールマイトに任せたのは成功だった様だ。専門用語は程々に、ダイレクトな感覚に伝える教義が非常にうまい。オルガマリーも意外に感じた程だ。

 

(伊達にカプセルでゴボゴボしてた訳じゃないのさ、オルガマリー所長!(グッ))

 

(見事です、オールマイト(グッ))

 

サムズアップをお互い返す中、とある生徒…保志大和が質問を投げかける。

 

「八木俊典先生。質問を一つ。英霊召喚は素晴らしいものだと把握できました。では──『英霊を召喚して、何をするつもりだったんですか?』」

 

「えっ、え…あー…それは…それはだね…」

 

一般教養から、非道な儀式…ひいてはカルデアにおいても大分機密事項に踏み込んだ質問に二の句がなくなるオールマイト。慌てながらオルガマリーに信号を送る。

 

(あ、あのオルガマリー所長?この質問、大分ディープな答えを出さなきゃいけない気が…)

 

その質問を受けたオルガマリーは静かに前に出た。この答えは、所長が告げるべきものだったからだ。

 

「私がお答えしましょう。魔術師の行うサーヴァント召喚は、英霊の魂という莫大なエネルギーを巨大な魔術炉心…『聖杯』に注ぎ込み、世界の外側に辿り着くという儀式の為でした。即ち、生贄です」

 

どよめく皆に、立て続けに彼女は告げる。共に歩む皆への義理と、礼儀として。

 

「ですがそれは、魔術師の浅ましい欲や願望の為に稚拙に再現されたものに過ぎません。本来の英霊召喚とは世界を救う為の決戦術式…。世界を終わらせる悪を討ち果たすため、選び抜かれた七騎の英霊を招き寄せるもの。英霊とはその名の通り、世界を救う為に現れる希望であるのです。そしてそれらのサーヴァントは──グランドサーヴァントと呼ばれます。更に言えば、カルデアにはそのグランドの資格を有するサーヴァント達も来てくれている。正真正銘、カルデアは人類の未来、人類史…『人理』を救い、維持するための組織であることをご理解いただけたなら幸いです」

 

「じゃあ、その世界を終わらせる悪って…」

 

「えぇ、アカネちゃん。クラス・ビースト…人類が積み重ねた澱み、人類の癌細胞。イフたるまだ見ぬパートナーとは訳が違う、乗り越えるべき悪よ」

 

はっきりと告げるオルガマリー。これより立ち向かうは、人類悪という存在なのだと。

 

(頼れる仲間に、隠し事は無しよね)

(その英断に乾杯だ、オルガマリー所長!)

 

言っちゃったよ…と言いたげなシオン、喜ばしげな八木俊典の表情の味わい深さに思わず笑ってしまうオルガマリーでありましたとさ。




オルガマリー「さて…座学だけではピンとこない、という直管型な子もいらっしゃるでしょうし」

アカネ(ギクッ)

オルガマリー「ここから先は、実際に見てもらいましょう。魔術師というものがどんなものか…サーヴァントとは、カルデアとはどんな組織なのかを、実際にね」

そうオルガマリーが口にした瞬間──一同は驚愕を知ることとなる。

天空海「…雪?え、なんで?」
黒神「屋内だというのに…、…まさか!?」

オルガマリー「えぇ──その為の、貸し切りよ」

オルガマリーを中心に、吹雪逆巻く絶望の心象風景が幕張メッセを呑み込む。

そう。これは夏草より来る同志たちに捧ぐ、大いなる歓迎の始まり──

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