「おっと、すまねぇな。アヴェンジャーの嬢ちゃんか」
「ちょっとどこ見て・・・ヒェッ」
「立てるかい?悪かったな、ぶつかっちまって」
「け、ケルトで一番強いわんこ・・・!」
「なんだそのあまったりぃ称賛!わんこは止めろやわんこは!侮蔑とは別の意味で捨て置けねぇじゃねえか!」
「・・・たくましい胸板、快活な笑顔。小粋なトーク」
「ん?おい、大丈夫かよ?」
「アンタ・・・沢山の女にモテるわね!」
「お、おぅ?まぁ、それなりにはな」
「じゃあ私にエスコートの仕方を教えなさいください!お願いします!」
「・・・あぁ、女子力アップってやつか。いいぜ、付き合ってやるよ」
「ホント!?」
「こう見えて俺はアルスター一の美少年として名を馳せた事もある。女子の扱い方なんざ百戦錬磨だ」
「俺に任せな!『クランの猛犬』は伊達じゃねぇとこ見せてやるぜ!」
「おいギルガメッシュ、お嬢さんの顔色が優れん。暇をもて余しているなら哨戒にでも連れていってやれ」
書斎から出て開口一番、理由のある毒舌が器を襲った
「なんだ藪から棒に、いい加減王に対する口の利き方を学ばぬか」
「知るか。お前が王なら俺は作者。人を人と思わない点で俺とお前は同類だ。なら遠慮も気遣いも無用だろう」
「フハハハ!相も変わらず観察と毒舌は優れているな!」
――もしかしてこの二人、かなり相性がいい・・・?
「にしては解せんな。そんな貴様が人の心配だと?貴様のその呪いにまみれた身体のどこに情を隠し持っていたのだ?あれか?ラブレターのように懐か?」
「――――――その話は止せ。またソファーを占拠しジキルに非難される」
苦々しく呟くアンデルセン
「・・・酒に飲まれたか、頭でも打ったか・・・お前も大胆な事をするな、ギルガメッシュ」
「であろう?アレを読んだ貴様の反応を目の当たりに出来なかったのが残念だ。さぞかし面白い無様をさらしていただろうに」
「愉悦のためなら自分の真名すら使うか。やはりお前は特大の人でなしだな」
「やはり貴様とは気が合うな。お互い性根が腐ったもの同士仲良くやろうではないか。酒でも出すか?」
「間違えるなよ英雄王。俺は性根がひんまがっているだけだ。そしてお前の性根は底が深すぎて読めないだけだ。どこまでも作家泣かせだな!」
「ほう。ならばそんな三流作家共に、我を動かすコツを教えてやろう」
「――ほう。そんなものがあるのか?」
身をのりだし、紙とペンを取り出すアンデルセン
「よいか、心して聞け」
――ごくり・・・
「『我を主役に抜擢し、崇め、奉り、敬意を払い賛美しつつ執筆する』!これが我を輝かす王道、最適解だ!さすれば日に二度三度の投稿は容易い!簡単な真理であろう!賛美せよ!執筆せよ!そら書斎に戻れ!」
――な、成る程・・・!あれ?それって当たり前なような・・・?
・・・英雄という実在の偉人を扱うにリスペクトは基本だと思うのだ。この英雄王には特にそう思う
・・・英雄王は初心者向けの題材だった・・・?
フハハハハハ!と上機嫌に笑う器
「――――――」
死んだ目で懐にメモをしまうアンデルセン
「む?どうした?はやく『マッチ売りのシドゥリ』か『裸の我様』『醜い天の女主人』を執筆せぬか」
「・・・やはりお前は厄ネタだなギルガメッシュ。リスペクトは大事だが、それで貴様が動かせれば苦労はしない。最低系の駄文がリスペクトで浄化できるか、バカめ!」
「知らぬわ!それは作家側の敗北よ!我が叙事詩を100度見直し出直すがいい!我を題材にするには最低10年は我を見なければな!フハハハハハ!!」
「――なんという厚い面の皮か。これが人類最初に物語となった男の正体か」
ハァ、と嘆息する童話作家
――10年と言わず、この王の活躍は、ずっと見ていたいと思う
愉快、痛快、絶対無敵の英雄譚。こんな素敵で鮮烈な物語、世界の終わりが来るまで読んでいられるという確信があるのだから
「まぁ、お前の物語は魔が差したら書いてやるとしよう。どう足掻いても単純明快な痛快娯楽になるが・・・けして三流にはならないと保証してやる」
「当然だ。売れなくば即座に筆を折れ。我を題材にして日間ランキングの一位も取れぬようならば物書きを名乗る資格はないわ」
「キャラクターにして編集王かお前は!全く・・・まぁいい。一つ言っておく」
「ん?」
「『上には上がいる』。お前より面倒な描写をしなければならない者は確かにいるということを忘れるな」
――英雄王より、難儀なキャラクター・・・?
「ほう。面白いではないか。参考程度に聞いてやろう。それは如何なる者だ?」
「自分で考えろ・・・といいたいが、お前のようなヤツも愛読者。無下にはできんか。よし、よく聞け。キーワードを言ってやる」
こほん、と咳払いする
「キーワードは『作家』『髭』『悲劇と喜劇が口癖』『引用』『検索』『ルビ振り』だ!」
「――シェイクスピアとやらか」
――あっさり特定した・・・
「ほとんど答えのようなものではないか・・・」
「ぶっちゃけそれだ。KINOKOとHIGASIDEの神二人が揃って苦言を漏らした筋金入りだ。俺など比べ物にならんぞ。俺はボキャブラリーをひねり出せば済む話だが、ヤツはやたらと自作を引用したがる。検索とルビ振りの手間暇で毎日投稿すら危うくなる。お前が太陽ならヤツはブラックホールだ。手のつけられなさは同じだがベクトルがまるで違う!」
「よし。其奴に合間見えたら即座に黙らせるとしよう。速筆をこの書き手から奪い取っては何も残らんからな」
「そうしろ。あぁ、それともう一つ」
「なんだ、まだ何かあるのか。前言撤回と設定追加は誉められぬぞ。貴様のことだ紡ぐ神」
――彼等は、異次元の世界を垣間見ているのか・・・自分には、何がなにやら・・・
「追記修正は多目に見ろ。お前がやる気になる情報をくれてやる」
「なんだ、それだけ弁舌を振るいまだ出し惜しむものがあるのか」
「引き出しは作者の生命線だ。総てを明かす筈がなかろうがAUO。――俺もそうだが」
・・・?
「『霧からサーヴァントは現れる』。敵に塩を送りたくなければさっさと働くんだな」
言い残し、書斎に引っ込んでいった
「――何かと思えば・・・解りきった事実ではないか。この霧は聖杯が、いや『聖杯を埋め込まれた機関』が産み出したもの。それが依代となるのは当然であろうが」
やれやれ、と首を振る器
「ギルー。見回りに行きますよー」
「・・・まぁ夜の散歩も悪くはない。霧も闇に紛れ少しはましになろうさ。――さて。我を興じさせる出逢いがあればよいのだが・・・」
心持ち楽しそうな器を待っていたのは・・・
「霧に呼ばれ、霧に招かれここに参上いたしました!我が名はシェイクスピア!此度に繰り広げられるは悲劇か!はたまた喜劇か!」
「――――――――――」
無言、そして瞳孔が開く器
「また作家なの!?流石はロンドン!」
「見るからにザコだろこれ・・・斬っとくか」
「止めなさい。肉壁には使えるでしょう」
「なんと!凛々しく麗しき騎士達、そして死んだ魚か獲物を狙う隼か!震えを催すその黄金の輝きをもたらし我輩を睨むあなたはまさに――」
瞬間、シェイクスピアの頬を飛来したダガーが切り裂く
「貴様は黙れ。引用が面倒だ。語りたくば幕間でやるのだな」
「ご無体な――!!我輩から弁舌を取ればそれは脱け殻!セミにも劣るナイスミドルではありませんか!」
「ジェスチャーがあろう」
「痛いところを!確かに我輩、主役を演じる事を夢見た役者志望でしたが!このままならぬ理不尽は、我輩の生涯にも似て!まさに――」
更にダガー五本が皮を裂く
「せめて引用は控えよ。貴様は素人創作で扱えはせぬ。モチベーションにすら関わるのだ。それともここで舞台を降りるか?幕引きは我がやってやるぞ?」
「――はい。我輩自重いたします。言葉と生命を奪われるよりマシでしょう!」
フン、と鼻を鳴らす
「恨むなら、書き手の力不足を恨むのだな。我の言葉を爪弾くのに心血を注いでいるのだ。貴様にかかずらっている暇はない」
「ふむ、ふむ。それも道理!英雄王の言葉は価千金!全霊を以て拝聴するに足るものですからな!」
「そして黙れ。いつまで台詞を奪っているつもりだ」
「これは失敬!」
「面白い人だねぇ~」
暢気に呟くマスター
「見る分にはな。関わると頭を抱えること請け合いだぞ」
「ふふっ・・・」
「あ、マシュ笑った」
「あっ・・・すみません!」
――謝ることじゃないんだよ、マシュ。楽しかったら、笑っていいんだ
「気分転換にはなりましたか、マシュ」
「ぁ――」
「あれのウダウダを真に受けやがって。陰気臭くて飯が不味くなるってんだよ」
「ブリテンの食事に美味であったことなどありませんが」
「そうじゃなくてだな!アパルトメントの話!」
「・・・皆さん、私を気遣ってくださって・・・?」
「そうでなければ我等が総出で哨戒などするものか、鈍いやつよ」
「あなたはしそうですがね。暇をもて余して」
「徘徊癖のある老人か我は!・・・いや、そんな心当たりも無いことはないが」
――ここに、マシュやマスターを案じていない者などいない。自分が保証する
「ほーらマシュ、笑顔笑顔。にー」
むにりとマシュのほっぺを伸ばすマスター
「ふぇ、ふぇんふぁい・・・」
「どうせ生きるなら笑おうよ。悲しみや苦しみや悩みなんてうんざりするくらいやって来るんだから、せめて自分は笑っていようよ」
「・・・!」
「この世にどうにもならないことは沢山あるかもしれないけど、どうにかできることも同じくらい沢山ある。そのきっかけになるのが笑顔!笑おう笑おう!笑えば大抵のことはなんとかなるしどうにかできる!」
「せんぱい・・・」
「手本を見せてやろう!フハハハハハハハハハハ!!」
「おう!俺もできるぜ!ヒャッハァー!!反逆だァ――!!」
「今私は、貴方を生かしておいた自分の甘さを後悔している」
「えっ・・・」
「解んなかったら悩めばいいし、悩んで解んなかったらわっかんないや!で終わらせちゃって構わない。――前を向きなよ、マシュ」
くい、と顔をあげる
「自分の人生を楽しくするのは、自分だよ!」
「――はい、先輩!」
「成る程・・・実体験に基づき得た真理。それを授けたお方の顔、拝見したかったものです」
――彼女の友達、だったか。・・・どんな人だったんだろう?
「時に皆様!あちらに見えますは、確実に招かれざる来賓だと思いますが、如何に?」
大仰にシェイクスピアが指差した先には
「――お早い再会でしたね」
物憂げな雰囲気を湛える魔術師・・・
「パラケルスス・・・!?」
「――随分とみすぼらしくなったものよな。魔術師」
「・・・えぇ、お恥ずかしい限り」
そこにいたのは
霊核にヒビが入り、満身創痍のパラケルススであった――
「小粋なトークに小粋な手品。贈り物の一つでもくれてやりゃあ大抵の女はイチコロだ。伊達にテメェの妻を取られないよう嫁さんを紹介されてないぜ」
「・・・・・・」
「どうだい。参考に・・・おい、顔が赤いが大丈夫かよ」
「・・・あ、ありがとうございます・・・参考になりました・・・」
(それとない距離の取り方、間を絶えさせない気遣い、歩幅に合わせた相手を尊重する振る舞い・・・)
「これが・・・エスコートの秘訣・・・!」
「・・・あれ、女子を落とすんだったか、女子を磨くんだったか・・・どっちだったっけか?」
「ありがとうクランのわんこ!手品、ドレス、ダンスのやり方・・・参考にする!」
「お、おう。だから普通にクー・フーリンでいいっての!」
「これを応用すれば、必ずマスターも男にモテるわ・・・!!」
「・・・いっちまった。・・・流石に」
『針を大量に投げ、糸を総てに通しチェーンにする』
「これは教えなくて正解だわな・・・」
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