人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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アカネ「何ここ!?何ここ!?」

アスカ「屋内から、いきなり吹雪の雪原に!?どうなってるんですか!?」

八木俊典「固有結界!魔術の最大奥義であり、使える人間なんてほとんどいない奇跡の中の奇跡さ!一言で言えば!世界を自分の心の景色で塗り替える!」

ルル「心象風景…!この猛烈な吹雪と夜闇の世界は、あの所長の…!?」

榊原「屈辱、焦燥…絶望、憔悴、孤独感、劣等感、無力感…」

アカネ「…言われてみれば…この世界、なんか私が引きこもってた世界と雰囲気が似てる…!」

オルガマリー「見苦しい世界であることを謝罪致します。ですがこれもまた私の心。どうかご了承ください」

榊原(最初から、今の気品と自信溢れる姿では無かった…いいえ、変われたのね。あの場所で…)

榊原「…それならきっと、皆も大丈夫…その筈よね」


人の理を示す教授

「さぁ、見て御覧。この世界は彼女が用意したスペシャルステージ!日常からかけ離れた、ここでしか見れない世界…君達がこれから飛び込もうとしている世界を見せてくれるため、オルガマリー所長が用意した世界なのさっ!」

 

星1つない夜空。カルデア参列に無いものを凍え殺す劣等感と憔悴の心象風景。その中に放り込まれた夏草メンバー一同は慌てふためきながらも、八木俊典の言葉に覚悟を決めて刮目する。そこには彼の言う通りに、教材を飛び出した非日常の光景が繰り広げられる。

 

「マスター、サーヴァント!その関係の鉄則は盤石な絆と結束さ!マスターにとってサーヴァントとは剣であり、盾であり、命を預けるパートナー!魔術師は使い魔風情と侮る場合が多いらしいが──例えその通りだとしても!道具を粗末にする職人がどこにいるのかって話だよ!」

 

八木俊典の言葉を示すかの様に──白銀の吹雪を切り裂く、激烈な火花を散らす組み合わせが一同の網膜に焼き付くかのように鮮烈な剣戟の光景が飛び込んでくる。そこには──黒き獣の衣を身に纏った狩人の爪と、金色の武装を身に纏った猛々しい褐色の戦士の三叉矛が目にも留まらぬ超絶的なぶつかり合いを齎していた。遥か離れている筈なのに、その圧力とその迫力は瞬き、呼吸すらも忘れさせる程に激烈だ。

 

「サーヴァントは基本、サーヴァントでしか対抗できないってのが基本のルールなんだ。どれ程強力な人間、超人だってそうさ。文字通り、存在の次元が違うからね!ならマスター、いや魔術師は見ているだけって?そうでもないさ!」

 

そして2つの英霊がぶつかり合う最中、その激突には及ばないまでも猛攻の応酬を展開する二人の影。片方は黒き狩人と良く似た装束、姿をした銀髪の少年。猛然と迫る少年を、水と雷の暴風雨にて迎え撃つ金髪の青年。辺りの地形を破壊し尽くすかのような圧倒的破壊、片や積み上げ練り上げられた人生の研鑽をぶつけ合う二人の人間。その光景を見れば、それが今まで見てきたどんなエンターテインメントやフィクションよりも圧倒的なスケールで行われている『リアル』だと言うことが魂で理解できる。それ程に、目の前の光景はあまりにも超常的かつ──圧倒的だった。

 

「彼等は君達の為に自身の全力を見せると乗ってくれたマスターとそのサーヴァント!リッカ少女の頼もしい仲間にして、世界を救う『グランドマスター』ってヤツさ!さぁ、瞬きはドライアイにならない最低限にしておきなよ?更に更に加速するからね!」

 

八木俊典の言葉通り──それから戦いは激しく、混迷を極めていく。激しく火花を散らしていた二組の戦いであったが、加速度的に状況は変化し怒涛の局面を見せる。黒き狩人と黄金の戦士に割り入る、眼鏡をかけた冷厳の戦士。そしてブロンドカラーの長髪と、紅き魔眼を有する淑女が二人を牽制する。それを皮切りに──目まぐるしく変動する、吹雪の中の擬似戦争。

 

剣技を極めた剣士が、槍の戦士と狩人を吹き飛ばす。横入りに仕切り直しと思われた矢先、剣士が瞬時に防御態勢を取った。禍々しい様相の機人…背に絶世の美女を乗せた狂戦士が全てを蹂躙しながら、剣士を諸共に巻き込み山を抜く程の突撃を敢行したのである。

 

そして一方では、槍と盾を勇猛果敢に振るう少女騎士が、憤怒の形相にて車輪が如き武具を振るう褐色の戦士と鎬を削る。それぞれ、光り輝く聖剣を有する金髪碧眼の少女と、外法の武術を振るう人間として完璧な黄金律の肉体を有する美丈夫が華やかに、厳かにぶつかり合う。

 

「ウフフ、皆さまどうぞ…皆様の似顔絵、描いてみました…」

「これからオレたちは、仲間だ」

 

突如似顔絵を渡してくる、ワイルドな風貌の美男子にヒマワリを握った少女の異常さにも気付けぬほどに、その場はあまりにも白熱した戦場となっていた。流れ弾が直撃して瀕死になる赤インナーの黒スーツの男性を治癒する、絶世の美女たるホムンクルスと肉を持った着ぐるみライオン。小さく、氷の羽根を有した少女の命令にて周囲一帯を焼き尽くす、美貌を有した愁い深き美女。戦いは加速度的に白熱し、最早何処で何が、誰が何処で戦っているかすら掴み取るのが難しい程の大混戦。これこそが、マスターとサーヴァントの関係。聖杯戦争で行われた、純然たる殺し合いの疑似再現。

 

「これはあくまで、聖杯戦争に当てはめた在り方。私達カルデアの敵は──もっと大きく、もっと恐ろしき存在です」

 

オルガマリーの言葉通り、周囲を大いなる振動が支配する。何事かと動揺する一同を魔術障壁で阻んだと同時に、ソレは現れる。

 

【──────!!!!!】

 

巨大な、あまりにも巨大な黒き龍。黄金の瞳と、3対の翼。両手の顔と合わせ三つ首のドラゴンが、マスター達を、世界を睥睨し咆哮する。全長50mは有する、規格外の存在。

 

「アレこそが人類悪。世界を滅ぼし、人類を滅する大災害。カルデアに集まりしマスター、並びにサーヴァントはあの存在を打倒するために集められた人類の未来を取り戻し、掴み取る存在」

 

黒龍の口から放たれる蒼炎の劫火が雪原を砕き、マスターとサーヴァントを呑み込む。彼等はそれをかわし、一箇所へと背中を預け、共に肩を並べ睨み合う。

 

「そして、その我等の研鑽と意志を束ねる王こそが──我等人類の幼年に、人類を神より訣別させし王こそが…!我等を導き、諌めし王の中の王こそが!」

 

オルガマリーの指さした先には、黄金の帆船。其処に悠然と龍を見下ろし、不敵に──愉快げに笑う黄金の王が在る。

 

「英雄王、ギルガメッシュ!我等が仰ぎ見るべき──汎人類史の王よ!どうか忘れないで、皆。カルデアに来るという事は、かの王にその価値を認められたと言う事。即ち──かの王にその生き様を魅せつける資格を得たということ!」

 

【─────!!!!】

 

黒き龍が咆哮し、黄金の王は金色の鍵剣を虚空より──誰かに拝領されるかのように──取り出し、開帳する。黒き夜空を切り裂くように、真紅の筋が拡がり往く。即ちバビロンの宝物庫の系図。かの王が有せし、財の版図にして縮図。それらが収まり、王が手にするは重く鳴動する世界を切り分かつ剣。

 

「どうか忘れないで。あなたたちの未来を、生き様を──かの王は何よりも愛し、愉しんでいるという事を!」

 

三つの石臼が連なる様な刀身が唸りを上げ、吹雪を、夜空を照らしあげていく。龍の口から蒼炎が漏れ出し、臨界を越えたブレスが吐き出されるのと同時に──

 

 

【■■■■■─────!!!!!】

「『天地乖離す開闢の星(エヌマ・エリシュ)』───!!」

 

世界を両断するかの様な真紅の暴風。世界を吹き飛ばすかの様な蒼き劫火。そのぶつかり合いは瞬時に夏草メンバー達の視界を奪い、圧倒的な破壊の奔流を齎す。それは余波、相殺だけに収まらず──

 

「見、見て皆!空とか!地面!世界全部ー!?」

 

誰かが告げた通りに、天の夜空は砕け散り、大地は余す事なくヒビ割れ消えていく。目の前の世界、それら全てが崩壊し虚無の彼方へと吹き飛ばされていく。それらは正しく、森羅万象の崩壊。黒き龍も、黄金の王も、マスターも、サーヴァント達も。それら全ては白き時空断層へと消えていき──。

 

 

────ようこそ、新たなる財たる皆様方。どうか勇気を出して目を開け、目の当たりにしてください。この景色こそが────

 

 

…一同の脳裏に響く、慈愛と尊重に満ちた言葉。世界そのものが消え去った恐怖すらも柔らかく癒やすかのようなその声に導かれ、彼らが目の当たりしたもの。それは冥府や虚無ではなく。

 

「「「「─────おぉ……」」」」

 

澄み渡る青空。煌めく真紅の極星。咲き誇る華。吹雪の止んだ、南極の霊峰。煌めく太陽、輝かしき世界そのものが彼等を、彼女らを迎え入れる。王も、龍も消え去り、存在するは人たる彼等、彼女らのみ。

 

「ここが、人理保障機関カルデア。実物は大分違っているけど、私にとってのカルデアは、いつでもこの様に澄み渡ったものとして刻まれています」

 

先の一寸先すら見渡せぬ闇夜とは似ても似つかぬ、世界の美しさと希望に満ちた光景を背に、八木俊典とオルガマリーは晴れやかに告げる。

 

「ようこそ、希望の詰まったヒヨッコ達!ここが、君達が未来の為に戦う場所──フィニス・カルデアさ!」

 

「改めて、心から歓迎するわ。共に──世界を救いましょう」

 

オルガマリーの澱みも、曇りもない言葉。夏草の新入メンバー達は誰とも知れず、そして瞬く間に全員が──感動と感激の喝采を以て返礼とするのだった──




ギルガメッシュ「ふはははは、オルガマリーめ。最後の激は素が漏れていたではないか!つられて地の理をあやうく越えるところであったわ!」

リッカ「ひぃい〜…死ぬかと思ったぁ…エヌマを前から見たマスターなんて名誉なのか不名誉なのか解らないよ…」

ギルガメッシュ「間違いなく栄誉であろう。今日から勇者を名乗ってよいぞ、我が龍よ。──しかし我も貴様も規格外の評価ゆえ、こうした寸劇では色物の鉢しか回って来ぬが難点よな。本来ならばマスターどもの先頭が貴様の位置であろうに」

リッカ「ううん、いいんだ。カルデアは私だけのワンマンチームじゃないって知ってもらう為にも、私が一番目立つ必要はないんだよ、ギル」

──リッカちゃん…

リッカ「大事なのは、皆が力を合わせる事!その為に一丸とならなきゃいけない相手がいるって事と、どんな困難でも吹き飛ばしてくれる王様がいてくれるって証明できたなら大成功!それでいいんだよ、私達の立ち回りはね!」

──それでも、リッカちゃんは倒されるべき悪なんかじゃありません。ワタシ達のマスターで、とっても素敵な女の子です!それだけは、未来永劫変わりません!

リッカ「──えへへ、姫様に褒められた気がするぅ〜。気のせいじゃないよねきっと!私、ギルと姫様のマスターだもん!」

ギル「フッ。──以心伝心というヤツよな。では行くぞリッカよ!次は貴様も含めた催しだ!」

リッカ「おーっ!!」

アンリマユ【おーおー、すっかり元気になってまぁ。大した役者だったじゃん?アジーカちゃんよ】
アジーカ【目指せ銀幕】

ギル《さて、夏草の輩がどの様に我等を愉しませるか──ゆるりと見定めてやろうではないか、エアよ!》

──はい!我等が楽園の地にて!

こうして、世界を切り裂く一大プロローグは終わりを告げたのだった──。

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