人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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唸れ、女子力――!!!


苦悩を断ち切る女子の力

「その身体は・・・」

 

 

 

 

現れたパラケルススの身体は、見るからにボロボロだ。外装は砕け、霊核にはヒビが入り。現界しているのが奇跡といっていい

 

 

「――敵に接触しておきながら、なんの成果ももたらさなかった私に、見切りをつけたのです。粛清から逃げ出して、この様ですよ」

 

 

ごふ、と血を吐き出すパラケルスス

 

 

――あんな、身体で・・・何を・・・

 

 

 

「貴様の狼藉を受け入れてやれるほど寛容ではなかったか。大義が聞いてあきれるな、魔術師?」

 

 

「えぇ――ですがこれも道理。浅ましい悪逆の魔術師は、共食いにて生命を終える――相応しい末路・・・ですが」

 

 

よろよろと、顔を上げる

 

 

「ですが・・・それでは。それでは・・・けして貴女方は納得なさらないでしょう。好きに生き、理不尽に死ぬ。そんな生き方を・・・私は選べはしないようです。なんと・・・半端な」

 

 

「テメェ・・・」

 

 

「散る生命ならば、せめて貴女方の手で。――悪逆を討ち果たすのが、正しき英雄の姿なれば・・・」

 

 

足元もおぼつかず、血反吐を吐くパラケルスス

 

 

――彼は、そこまでして・・・

 

 

「そこまでして、何を我等に伝えたかった?貴様の持論か?死してまで懸ける物だという程上等なものと自惚れたか。そのような無様を晒してまで貫かんとする生きざまをわざわざ吹聴しにきたのか?」

 

「いいえ――私の生き方など、どうでもいい・・・既に私は『二度』全能に屈したのだから・・・」

 

剣を突き立て、懸命に立つ 

 

 

「私は、伝えたかったのです――『貴女方に救われた生命があった』と・・・あなたの道行きは、正しく、光に溢れたものだと・・・」

 

真っ直ぐな光がこちらを見据える

 

 

光を信じ、生命を慈しみ。それらを――貫き通せなかった憂いを湛えた瞳が

 

 

「それが、私の――贖罪になると・・・浅ましい考えも、どこかに、あったのやもしれません・・・・」

 

 

 

黄金の粒子が放たれる。――退出の合図だ

 

 

「ですから、どうか私に止めを刺してください・・・愚かな魔術師は正しき者達に打倒される・・・」

 

「・・・」

 

「それが――覆されぬ、世界の不文律・・・誰もが望む、至高の終焉なのですから――」

 

 

「上等だ、今すぐ――」

 

「待って」

 

 

モードレッドを、マスターが制止する

 

「――彼は、私に任せて」

 

「お、おい・・・?」

 

 

「――死にかけてる人を斬れ、なんて命令、したくないから。彼の決着は、私がやる」

 

「先輩・・・」

 

 

「もしかしたら・・・『祈りを捧げた誰か』に、倒させちゃうかもしれないからさ。――ここは、私が」

 

 

――マスター・・・

 

 

 

「・・・ヤツはもはや半死半生。自決の一つもできぬのならば。一思いに息の根を止めてやれ」

 

 

「――うん。『死にかけたサーヴァントをやっつける』汚名、私が背負う」

 

 

『リッカ・・・』

 

 

「――大丈夫。これくらい、覚悟してるから」

 

にっこりと笑う、最後のマスター

 

 

「皆と肩を並べるためにも、私が私でいるためにも。――私は、逃げたりしないから」

 

「先輩・・・」

 

 

「見てて、マシュ。――ちっぽけな、私の背中」

 

 

それだけを言い、歩みを進める

 

 

 

 

「――我が最期の願い、聞き入れてくださるのですね」

 

「うん。貴方――いい人だから」

 

「・・・何を・・・」

 

 

「自分がどうなろうと、私たちに大切な事を教えるために生命を懸けた。だから私は――貴方を心から尊敬する」

 

「――」

 

 

「――出逢いが違ったなら、きっと私達は友達になれる」

 

 

「・・・!!」

 

 

目を見開くパラケルスス

 

 

「意志が繋がるなら、神様とだって仲良くなれる。――それが私の持論なんだ」

 

「そやつは神とすら交友を結んだ傑物だ。貴様程度、容易く飲み干すぞ?」

 

 

 

――その通りだ

 

 

出会いと、因果。巡り合わせが違うなら、きっと

 

 

「――それは、素晴らしい・・・えぇ、素晴らしい事です・・・」

 

 

 

「・・・だから。今は――」

 

リッカが構えを取る。パンクラチオンの構えだ

 

 

「貴方を倒す。憎しみじゃなく。恨みじゃなくただ――道行きを阻む貴方を乗り越えるために」

 

 

「――あぁ、なんて素晴らしい・・・」

 

 

「――一発だよ」

 

「?」

 

ニヤリ、とリッカが笑う

 

 

「お互い、交わすのは一発。あなたが私を倒すか、私が貴方を倒すか。――一発で決める」

 

 

「・・・成る程。悪逆の私にも、挽回の機会をくださると・・・」

 

 

「勝負はフェアじゃなくちゃ!」

 

「・・・えぇ、解りました」

 

剣を構え、五つの石が浮遊する

 

 

「この死に体の全霊で――最期に。あなたを阻みましょう・・・――」

 

「うん。――行くよ。『瞬間強化』」

 

 

ゆっくりと向けられる剣

 

身体に魔術を施すリッカ

 

 

 

「待てよ!サーヴァントの宝具なんて食らったら――」

 

「黙って見ていろ」

 

 

 

「『戦闘服』――全体強化」

 

更に、全身を強化で重ねがけする

 

「――真なるエーテルを導かん。我が妄執、我が想いの形――」

 

 

精製される、原初のエーテル。眼前の敵を砕かんと練り上げられる神依の秘術

 

 

 

「令呪、一画使用――私の名前は藤丸リッカ!――いざ!!」

 

 

地面を踏みぬき踏み砕き、魔術を極限まで重ねがけしたマスターが駆ける

 

 

「だぁあぁあぁあぁあぁあぁあ――――――っっっっっっ!!!!!」

 

 

身体を唸らせ、喉を震わせ、乾坤一擲の拳を振るい上げる――!

 

 

「――チ。際どいな」

 

 

器が所感をもらす

 

 

 

「『元素使いの(ソード・オブ)』」

 

 

臨界に達した剣が光輝く。後は、切っ先を放つのみ――!

 

 

「マスター!」

 

「先輩っ!!!」

 

 

――間に合え・・・!!

 

 

 

――明暗を分けたのは一瞬だった

 

 

「パラ――ゴフッッ――!!」

 

魔力の行使により身体の崩壊が進み、一瞬身体がぐらつき、発射が遅れたパラケルスス

 

 

「これが――――!!!!」

 

 

エーテル、魔剣。死の未来

 

 

――それら全てにさらされながら、僅かも速度を緩めなかったリッカ

 

 

 

――明暗を分けた、その一瞬

 

 

「私の――――マスターとしての覚悟だぁぁあっ――――!!!!!!!」

 

 

 

――果たして。勝負は果たされる

 

 

「――見事、です」

 

 

胴体から背中を貫通し、霊核を砕くリッカの拳

 

 

「あなたは、真に・・・強き人だ」

 

 

「――こんなの、瀕死の人を介錯しただけ。強さなんかじゃないよ」

 

リッカが呟く

 

「いいえ・・・苦悩に逃げず、苦難から目を逸らさず。――慈悲と決意を以て、敵を砕く」

 

 

満足げに、パラケルススが呟く

 

「それこそが・・・貴方の強さ、なのですよ」

 

 

「――おやすみなさい、パラケルスス。私達の前に立ち塞がった、優しい魔術師を――私は忘れない」

 

 

「・・・もし」

 

「?」

 

「・・・もし、次があるのなら」

 

そして、最期の刹那

 

「――どうか、このパラケルススと・・・友達になりましょう――」

 

「うん。楽しみにしてる」

 

 

 

――笑顔を浮かべ

 

 

パラケルススは、消滅していった・・・

 

 

 

「・・・サーヴァントには、また逢える」

 

 

ゆっくりと、拳を開く

 

 

「違う出逢いがあるなら。必ず――私は、絆を紡いでみせる」

 

空を見上げ、人類最後のマスターは呟いたのだった・・・ 

 

 

 

 

ポン、とリッカの頭に手が置かれる

 

 

「ギル?」

 

 

いつのまにか、そばに王が立っていた

 

 

「――見事であった」

 

 

「!」

 

「魔術師が瀕死でようやく対等ではあったが・・・貴様の女子力は別の意味で完成したな」

 

「――これ、取り返しつくかなぁ・・・」

 

「無理であろう」

 

「いや!私は諦めない!ヘラクレスだってお嫁さんいたんだからきっと!」

 

 

――祈りを捧げた手を血に染めまいとしたその優しさに、心からの感謝を

 

 

 

――ありがとう。藤丸リッカ。君のサーヴァントであること、誇りに思う――

 




「まさに!現代によみがえりヘラクレス!!我輩感動にうち震えております!天を貫く咆哮!大地を砕く健脚!迷い無く振るわれし拳!!」


「マリーの方が打撃は上手なんだけどね」

「アマゾネスすらうつむくその勇猛さ!オリュンポスに轟くその逞しさ!まさに貴方は現代の――」


「ヘラクレスは絞め技が得意なんだって~。奇遇だなぁ、こんな風に私も絞め技が得意なんだー」


「ぐあぁあぁあぁあぁあすみませんギブ!ギブタン――」

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