人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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今回のストーリー製作協力はDr.クロさんです!今回の話はアンゴル編の単発プロローグとしてお楽しみください!

?『い、いけない!今のぶつかりでバリアが…!しかもここは、デブリ帯…!いたっ、いたたたた!』


(こ、このままでは…!墜落!?ダメです、まだ早い…!!)

「はうっ!?」

(あ…意識、が…)

「いけない…このまま、だと…こう、なったら…!」

(擬態人格を、コピーして…次に目覚めた時のために…!)

「…お願い、します…!」

(──おじさま……)




アンゴル編プロローグ〜審判のXデー?〜

「思えば随分と長い間の里帰りになったものよ。不老不死の霊薬を求め彷徨ったかの日を思い出す…。あの時の釣果無しの手ぶら帰りとは違い、存分に土産話も成果も楽園に持ち帰れるが上々よな」

 

形式上、ひとまず終幕を迎えたリッカの里帰り。少し顔出しをするつもりが大いに楽しみ、右往左往する動乱の非日常を七日間たっぷり味わった事実を空中に鎮座する玉座、ヴィマーナにて振り返るギルガメッシュ。王が過去を思い起こす…それ程に今回の一連は実り多きものだった。酒の味が一層美味くなる程に。

 

(魔神柱達も償いに奔走してた、っていうのはいい落とし所だとボクは思う。エアのあのただ一回の決め手が生み出した自我…それらに泥を塗るような真似をしなかっただけでもボクは良しとしよう。今も彼女はアンドロマリウス達を悼んでいる。それが全てさ)

 

ヴィマーナを制御しているフォウも、満足げに跳ねる。ゲーティアは、魔神達はエアに確かに報いようとした。そして自身らの悪徳や悪行を贖おうと奮起していた。それだけで十分。彼等は何よりも、エアから受けた感謝と尊重を宝として見ていたのだ。

 

「魔神とエアの親愛に友情…それが今の夏草の形を成した、か。ならば我が至宝への恩義たるこの地を雑種より護るも我の務め。細工はとうに済ませたがな」

 

リッカらが奮闘、奮起している間に王は行動していた。個人的に市長と契約を結び、人生に不自由しない融資と街を護るための資金の支援をだ。俗物や雑種は基本的に私腹を肥やすことに終始する。利権や圧力に屈さない莫大な財力と権力を有させたのだ。統治、議員入りする気ならばそこからは市長の裁量だが…少なくとも、夏草が下らぬ争いに巻き込まれる機会は減るだろう。王なりの環境保護というやつだ。

 

(金は天下の回りもの、ってやつだよね。やっぱ資金MAXはどのゲームでも強いコマンドだよなぁ…)

 

「強いのであって最強ではないがな。シミュレーションゲームではユニットは育てられるがパイロットのスキルやレベルが低ければ思うような成果は出ぬ。何もかもが可能になってからが、本当に真価を問われる始まりとなるのだ」

 

強き決意と決心を持つ人間が、最早末代まで遊んで暮らせる財を手にしてそれでもなお信念と理念を貫けるか…。それもまたギルの愉しむゲームであり、その為のチップでもある。リッカの里への配慮、エアと魔神の再会の地、そして自身の愉悦。そこに慈善が入る余地などどこにもない。彼はただ、己のために財を放り投げているにすぎない。御機嫌であろうとも、愉快に繋がらぬ寄付などしないのがこの王なのだから。

 

──二人とも、こちらにおりましたか。すみません、アンドロマリウス達の冥福にお付き合いさせてしまい…

 

そしてそこにふわりと合流せしは白金の姫、エア。王の至宝が魔神への追悼を終え、王達の下へ参じる。

 

《入念な手向けは冥福を約束する。殊勝な祈り、御苦労であったな》

 

──はい。彼等もまた大切なワタシの運命でもあります。彼等の想いを、そのままにしておくなんてできないと感じましたから。

 

(ふふ…ゲーティアも草葉の陰で喜んでいる筈さ。そのうちひょっこり顔を出すんじゃないかな?単独顕現とかで!)

 

──もしそうなったら、改めて夏草に彼を招きたいな。人間としての人生を理解した彼ならきっと分かってくれる。悲劇の裏にあった、人生の歓びと営みを。

 

肩に乗ったフォウを優しく撫で、眼下に広がる都市と、空に広がる蒼さを見据えるエア。もう彼等は悲劇のみを見せられる存在ではない。人の様に喜び、愛と希望を見ることができる。それを助けられる日が来たのなら、これほど喜ばしいことはないと彼女は告げる。

 

《心配は無かろう。その左手の指輪が全てを物語っている。しかし決意は懐くのだぞエア。もしゲーティアが人界に再び仇なすなれば…》

 

──その時は、私達が止めます。彼がそう、再び決議したのなら。譲れないもののために互いの全てをかけて対立を選びましょう。それが、彼に捧げる尊重だと信じています。

 

彼女は彼等を洗脳した訳ではない。人の世が進み、哀しみに満ち溢れた世界を彼が憂いたのなら…何度でも彼を受け止める。彼等を討ち果たす。その決意を口にするエアを見て、満足げに頷く。愚問であったな、と。

 

《よい。その決意には我等も付き合おう。お前は我が至宝、お前の決意には我等も立ち上がるが道理。であろう、珍獣?》

 

(オマエも分かってきたな、ギル!安心してほしい、エア。キミが全てを尊ぶなら、ボク達はキミを重んじる!仲間外れにはさせないさ!)

 

──ありがとう、フォウ!王よ、深遠なる御配慮に心より感謝致します…!

 

深々と頭を下げるエアにそっと手を置くギル。どうやら里帰りは至宝の研磨となり、曇とはならなかった事に満足げに笑う。ますますもって世界を護る手腕に磨きがかかる事だろう。

 

──時に王よ、こちらをお納めください。榊原先生よりオルガマリーちゃんに渡された、魔神達の肉声付きのUSBとなります。

 

それは、榊原へと接触し誓いを立てたもの。贖罪の証。もう耳にすることは無いであろう、彼等の償いの記憶。

 

《構わぬのか?お前の私物にして良いのだぞ?》

 

──ワタシにとって、これもまた宝物です。そして宝物であるのなら、ギルの裁定に預かるべきもの。日頃の尽きぬ感謝として、どうかワタシの宝物の献上をお許しください。

 

《──そうか。ならば王として、その宝物を受け取ろう。案ずるな、恐らく蔵にて再会が叶うだろうよ》

 

跪き、両手にて捧げられたUSBをそっと受け取り、同時にフォウに合図を送る。するとフォウがパソコンに姿を変え、二人の前に画面を開く。

 

──フォウ!?

 

(プレシャスパワーには更に磨きがかかっているのさ!)

 

《せっかくだ、奴等の玉音を拝聴してやろうではないか。奴等も魔術王の使い魔、何かしらよい予言の一つも残しているのではないか?》

 

裁定、という名の改はこの場で。ギルの判断の速さに圧倒されながらもエアは頷く。

 

──分かりました!では、皆で聞き及びましょう!

 

(優しく挿せよ!優しくだぞ!)

 

《プラグイン!!AUO、トランスミッション!!》

 

(優しく挿せって言ってるだろがーー!?)

 

突き刺され記録を再生するフォウ。ギルとエアが画面を覗き込む。

 

《む?未再生シークバーがあるではないか。誰も気づかなかったようだな。再生せよ、珍獣》

 

(覚えとけよオマエ…!)

 

『…おぉ、早すぎる。あまりにも早すぎる。我等の目的は殲滅ではない、我等の目的は選定ではない。ただ、人類を終わりから解き放つのだ』

 

その再生記録から…何かが導き出される。魔神が、何者かと話している。その記録が遺されていたのだ。

 

──マルコシアス…?

 

エアはその声に思い至る。それはマルコシアス…正義の義憤を懐くとされる魔神だ。夏草の贖罪メンバーであった一柱。

 

『星の断罪者よ、暫く時をくれ。42兆を越える罪業は、必ずや乗り越えてみせる。故に我等を信じ待っていてくれ。必ずやこの星の未来を──』

 

《教師との会話ではあるまい。人の罪を言い当てるは流石の慧眼だが…まるで審判者に赦しを乞う仕立て人ではないか》

 

──これは、一体…?

 

その、奇怪な記録に一同が釘付けになった…その瞬間だった。

 

(!?大気圏外より超高速の飛行物体が飛来!──ここら辺に落っこちてくるぞ!?)

 

──ええっ!?

 

それは急に極まる出来事だった。大気圏外よりの物体、それ即ち──隕石に他ならない。

 

(ウソだろ、まっすぐこっちに落ちてくる!なんだこの正確さ!?狙い撃ちか!?攻撃か!?とにかく離脱だ!)

 

《待て珍獣!真下は都市部であり日本だ、避ければ被害と騒ぎは無視できん!閉幕を告げたのだ、これ以上の動乱は認めぬ!》

 

(なら──この舟でなんとかするしか無いって事だな!)

 

《貴様も解ってきたな!それでこそ我のペットだ!》

 

(誰がペットだ!!)

 

瞬間、ヴィマーナは反転し都市部から猛烈な速度で離脱する。否──飛来する物体に真っ直ぐに突っ込んだのだ。

 

《エア!宝物庫の扉を開き防衛宝具を全展開せよ!》

 

──了解です!ギル、玉座にお座りを!

 

《フ──我等の歓待に不備はなかった。その礼に、我も奥の手を少し見せてやるまでよ!》

 

ギルは艦首に仁王立つ。燃え盛る飛行物体に接触する、僅かな瞬間──

 

《マルドゥーク!両腕起動!!外来の隕石なぞ、ミットのように受け止めてくれるわ!!》

 

王の言葉により、英雄神の両腕のみが顕現し前方に構えられる。エアの選抜と、フォウの操作により防御と機動の極みに至ったヴィマーナは──

 

(うぉわああああぁあぁーー!?)

 

──フォウーーっ!!

 

衝撃と共に、エネルギーの大開放が行われ──辺りの雲が瞬時に吹き飛ぶほどの波動を放ったのであった──。




雲海上空

──はっ!?ギル、フォウ!?

ギル《案ずるな、無事だ。珍獣もな》

フォウ(キミの選定と、マルドゥークに感謝だよ。ヴィマーナはちょっとひしゃげたけど十分に直せるさ)

──良かった…。

マルドゥーク『NOPROBLEM<( ̄︶ ̄)>』

──流石は我等が無敵の英雄神!すごいです!カッコいいです!

『(。•̀ᴗ-)✧』

ギル《起動の手間を惜しまなければ我等最強の手札よ。メソポタミア最優秀神賞は貴様のものだ。そして、見るがいい。これが飛来物の正体だ》

マルドゥークがそっと手を開く。そこにあったものは──

フォウ(嘘!?)

──女の、子…?それに…

?「う…」

そこには無機質な隕石ではなく…息をしている生物の女性が存在していた。

そして…

──リッカ、ちゃん…?

その風貌が…リッカに酷似していたこともまた、衝撃の理由であった──。

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