人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜 作:札切 龍哦
「・・・王妃」
「『ジョシリョク』を高める催しを考えていらっしゃるの?マスターの為に?素晴らしいわ!私にも協力させてくださらない?」
「・・・私は、アンタには頼む資格はないわ」
「え・・・?」
(・・・焼き殺そうとした相手に、どの面さげて頼むってのよ・・・)
「ふふふ、当てて見せますわ?フランスの事を遺恨に感じておりますのね?」
「――!」
「気にしなくてよろしくてよ!ジャンヌとくろひげ様の勧めてくださったアニメにありましたわ!『昨日の敵は今日の友』そして、『今日の友は明日も友達!』」
「・・・!」
「前に敵なら、今は友達になれるはずだわ!ねぇ、マスター想いの黒いジャンヌ。私も手助けをさせてくださらない?」
「・・・色々」
「?」
「色々教えなさい!女子力アップよ!」
「えぇ!ジョシリョクアップ!頑張りましょう!」
「だあー!!疲れたァ!!」
アパルトメントに帰還して早々、ソファーに身体を預けるモードレッド
「先輩、大丈夫ですか?」
「へーきへーき。ゴーレム百人組手に比べたら全然!まだまだいける!」
「マスターですら平気だと言うのに、情けないですよモードレッド。ブリテンの行軍を思い出しなさい」
「それは解ってるけどさぁ・・・いくらなんでもウジャウジャ沸きすぎなんだよ・・・宝具でブッ飛ばせねぇし・・・かてぇし・・・」
・・・四人は町の見回り、哨戒に精を出していた。少しでも戦力を減らす見積もりだが・・・明らかに、外をうろつくエネミーの量が増え始めたのに翻弄され、疲労を重ねられたのだ
「王は聖剣をぶっぱするだけの簡単なお仕事・・・ほざきましたねガウェイン。いつか貴方の頭蓋を中身ごとマッシュしに行きます」
「父上?」
「なんでもありません・・・おや?」
ふと、アパルトメントに集う気配が少ないことにアルトリアが気づく
「・・・ギルにアンデルセン、シェイクスピアにジキルがいませんね。何処かへお出掛けですか?」
「何か知らない?フラン」
ぐったりしながらスコーンを頬張るフランに問いかけるリッカ
「ねたあつめに、つーりんぐにいくみたいです」
「ツーリング?四人で?」
「あんでるせんが、よにんでいい。おうさまが、やすんでおけと。フランを、めっせんじゃーにしていきました」
「・・・大丈夫でしょうか・・・?」
「大丈夫でしょ!ギルがいるなら!」
「はい。彼の力は一つの頂点。今のギルならばなんの憂いもないでしょう」
「随分と金ぴかに入れ込んでるなぁ、父上」
『僕の知るギルガメッシュとどこか近いような気もするね。やぁ、久し振りだね。特訓していたヒーローXだ』
「ヒーローXぅ!お前どこから喋ってやがる!出てきやがれ!!」
『そのうちね!さぁ、今は休むんだ!休息も騎士の義務だからね!』
「はーい。一緒に皆でお風呂入ろうよ!」
「モードレッドはいいですよね?女性扱いは嫌でしょう?」
「うぇえ!?い、いやオレは・・・」
『僕はいいと思う!裸の付き合い!』
「なんなんだテメーは!!」
「しちゅーと、みーとぱいがあります。みんなでたべましょう。もぐもぐ」
――アパルトメントに、華やかな時間が過ぎていった
場所を変えて、ロンドンの一角、破壊され尽くした廃墟・・・『魔術協会』の跡地
「随分と念入りに破却したものよ。着手した輩の焦りようが手に取るように伝わる有り様ではないか」
そこには、形と言う形を徹底的に破壊し尽くされた、寂れた廃墟とその残骸が散見されていた
「余程目の当たりにされては都合の悪かったものがあったと見える」
「だろうな。だが、情報や書物を完全に焚書、失伝させることは不可能だ。いくら目に見えるものを破棄しようが、存続の仕方は考案しているだろうさ。――この場合は」
「地下、だね。魔術協会が目につくところに総てを残しているはずがない。魔術的な防護を張り、破壊に備えているはずだよ」
――地下、か。ならば、この邪魔な瓦礫を払う必要があるのか
ならば――
「よし、下がっていろ」
財を選別する。『剛力』の原典、巨人の右手のスケールダウン版を波紋から取りだし振り払う
「ぬんっ――!!」
器の動きに連動し、瓦礫を粉々に吹き飛ばす巨人の腕
「豪華絢爛な財宝の蔵!そこよりいでし輝きを誇る巨人の腕が寂れた廃墟を一掃する!その光景!まさに神話の創世記のミニチュアのごとき風景に想像力が書き立てられますなぁ!」
「協力的なお前はとことん便利な存在だな。流石は叙事詩の主人公。そちらがお前の素の顔か?」
「さてな、少なくとも今の我は――最高に機嫌が良いのは確かだ!」
――む。あの地面の一部に、色の違う箇所がある
「あそこが入り口のようだ。そら行くぞ。英雄王一座、取材の探検といこうではないか」
「あは、あははははは・・・スゴいね・・・これが、英雄達の頂点か・・・」
――そうです。英雄王はスゴいのだ
――隠し扉を開け、長く続く地下を進んでいく英雄王一座
「よもやロンドンでダンジョンじみた所を探索することになろうとはな。マスターを連れてきてやれば良かったか」
「騒がしくて読書どころじゃなくなる。願い下げだ。アパルトメントで少しでも女子力を磨かせた方が建設的だろう」
「女子力を上げるにとるべき手段とは?そう!同性との語らいが近道です!華と華、それは甘美なる花園の構築!あぁ、まさに――」
「死ぬか?」
「いつもの癖ですな!お目こぼしを願いたい!」
「我の顔も三度までだ。あと二度はとっておけよ」
「・・・無慈悲ながらも愉快さに充ちた王の冒険譚・・・もしあなたの物語を書くとするなら悲劇か喜劇か?」
「喜劇に決まっていよう。誰もが笑い、誰もが絶倒する痛快かつ愉快な物語にするがよい!」
「――畏まりました」
「ふっ。・・・そら、目当ての扉に突き当たったぞ」
見ると通路の突き当たり。薄く光を放つ扉へと一行はたどり着いた
「よし。俺とシェイクスピアは本を探す。ジキルは・・・」
「ここで君達をカバーするよ。僕も役に立たなくちゃね」
「畏まりました!では、叡知に触れる戦いを始めるといたしましょう!」
「手短にな。減らず口の達者な幼児と口やかましい中年にやる寛容は多くないぞ」
「それなりの成果は出してやる。黙って待っていろ」
「――聖杯戦争、そして英雄召喚の違和感、だったか?」
「あぁ。手持ちの情報では手詰まりだ。・・・新たにここで知恵を得られればいいが」
――聖杯戦争と、英雄召喚の・・・?それは一体・・・
思案するまでもなく、平穏は遮られる
「エネミーだ、英雄王!中々数が多い・・・!」
オートマタ、ヘルタースケルター、そして・・・
「ナーサリー・・・ではないか。影響を受け、本が力を得たか」
浮遊する魔本たち。――情報を奪わんとする侵入者を撃退するための防衛機構か
「仕方あるまい。王が威光を示すにはあまりに不釣り合いな舞台ではあるのだが・・・適当に時間を稼ぐとしよう」
――財の選別を始める。狭く、被害を抑えねばならない地下に相応しい財は・・・
「僕も力添えをするよ、英雄王」
「――何?」
思わず聞き返す器
――自分も、全く同じ意見なのだが・・・ジキルが?
「貴方になら大丈夫だ。――これは、純粋な皆には見られたくはないからね」
そういって、懐から秘薬を取り出す
――あれは、一体・・・?
「――ほう。いよいよ貴様の忌むべき『逃避人格』を見せるときが来たか」
「あぁ。僕も偉そうにばかりはしていられない。生命と言うチップを、皆の為に使うよ。・・・これを、打ち込んで・・・」
――瞬間、ジキルのまとう雰囲気は一変する
髪は逆立ち、知性を湛えた表情は醜く歪む。瞳は血走り歯は犬歯を剥き出しに、姿勢は獣がごとき前傾姿勢
「――キタ、キタ!キタキタキタキタァ!!」
「――霧の影響か、閉鎖された環境か。・・・随分と人格にキズを持った英雄が招かれるものよ。同じ英雄として恥が高いわ」
「ヒャッハハハハハハハ!!オレちゃん参上ォ!てめぇら!皆殺しにしてやるぜェ!!!」
「『ジキルとハイド』・・・伝承に通るならば、貴様はハイドであろうな?」
「ご名答ぉ!!メンたまかっぽじって見やがれよォ!!これがオレちゃんの晴れ舞台だァァッヒャッハハハハハハハハハハハァ!!!!」
バーサーカーじみた雄叫びをあげながら、エネミーを引き裂いていくハイド
「何と品のない。うっかり撃ち落とさぬように気を付けねばな」
手に取りしは『反射』の原典。掌大の大きさの、青色の弾性球体を手に取る
「そら、余興がわりにくれてやろう!」
手首をスナップさせて放り投げる
バウンドし、跳ねれば跳ねるほどこの宝具は力を増す。敵を貫き反射し速度を増し力を増し、効率的にエネミーを殲滅していく
「指ひとつ動かさず有象無象を滅する。王の戦いとはこうあるべきよな!フハハハハハハハ!」
「なんだよポンポンポンポン跳ねやがって!うるせぇうるせぇ殺す殺す殺す殺す!!!」
触発され更に勢いを増すハイド
「――ジキルめはさぞや筋肉痛に悩まされような」
呆れたように、器が呟く
バック転、側転宙返り・・・突然の運動にはハードすぎますな・・・
悪の人格とスーパーボールが乱舞する通路、敵を滅ぼし終わった頃
「待たせたな。調べものは終わった。帰るとするか」
アンデルセンとシェイクスピアが部屋から出てくる
「む、書物は持ち帰らぬのか」
「残念だが、魔術的な防御がかけられていてな。無闇に壊しては生き埋めになる。放置するしかない」
「――よもや徒労とは言うまいな」
「心配するな『中身はおぼえた』」
――覚えた!?あの短い時間でか!?
凄い・・・!作家と言うのは記憶力にも優れていたのか・・・!
「戦果は上々!凱歌と共に帰還いたしましょう!王の帰還に相応しき鬨をあげながら!・・・おや?どうしましたジキル殿」
ぐったりとしているジキルに声をかける
「いや、ちょっと・・・筋肉痛でね」
「よし、では行くぞ!辛気臭い地下の読書の余韻は、我がツーリングで吹き飛ばしてくれる!フハハハ!!やはりバイクは便利なものよな!ヴィマーナよりは速度は劣るがやはり小回りが利くのがよい!風を感じ自らの手足が如く鉄馬を駆る快感は得難きものよな!」
――全く同感です。いつか、世界中をツーリングしたいなぁ・・・
――フォウも、喜んでくれるといいな
ジキルに肩を貸しながら、御機嫌王は帰路についたのだった――
「ほわぁあぁあぁあぁあぁあぁあ!?」
「フハハハハハハハ!!どうだ演劇作家!ギルギルマシン特等席の乗り心地は!今の所感を詩にでもしてみるがいい!さぁどうだ!!耳を傾け拝聴してやろう!!」
「打ち付ける風!!叩きつける衝撃!!手を離したら死ぬと言うスリル!!まさに、これはまさに――――!!」
「その先は要らぬ!舌を噛むぞ!!」
「ごむたいなあぁあぁあ――――!!!!」
「何故俺が後部座席なんだ、サイドカーを譲れジキル!」
「ごめん、筋肉痛でさ・・・」
「くそっ、悪夢だな・・・!振り落とされないためにまさか英雄王にしがみつかねばならんとは・・・!」
「よい!!特に許す!さぁ!アパルトメントはすぐにたどり着くぞ――!!死に物狂いで詠え、作家ども――!!」
――風が気持ちいいなぁ・・・