「諦めてほしい(にっこり)」
「さて、僕は一つだけ伝えに来た。僕の友の慧眼の話だ」
「彼に好き放題語らせたらどうなるかって?知らないのかい?」
「小便王の出番が無くなるのさ」
「はーい1、2、1、2!」
「スパッツとタンクトップ用意するなんて準備いいわね・・・」
「はい、そこでターン!くるっと回って~」
「くるっと回って・・・」
「キラキラキラキラ、輝くの――!」
「出来るかぁ!!」
「まぁ・・・ダンスは皆輝くものでしょう?」
「輝くって、そういう物理的なアレじゃないと思うの・・・!」
「じゃあもう一回!わん、つー、わん、つー!」
「問答無用!?これだから王族って・・・!!」
「差し入れ麻婆お持ちしました!」
「んんんんんんんん!!」
「マスターがサーヴァント殴り殺したってマジかよ!!やったぜ!兄弟子として鼻がたけぇ!」
「素晴らしい・・・現代に転生せしヒッポリュテか・・・」
「女ヘラクレスと呼ばれているようですよ」
「なんと・・・!いかん!その名はよくない!ヘラになど関わってはいかんのだマスター!」
「そこかよ!しかし、マリーに比べたら打撃はイマイチなリッカがなぁ・・・やるじゃねぇか!・・・ん、先生?」
「一刻も早く、女子力の回復に努めなくては・・・」
「全員揃っているな?よし。では早速、俺の無駄話に付き合ってもらおう」
アパルトメントの応接室にて全員を集め、眼鏡を上げながら話すのはアンデルセンだ
「なんだ?童話作家の滑らない話でもする気か?ユーモアに溢れた話題を話せるとは驚きだ」
「お前には答え合わせをしてもらうぞギルガメッシュ。身内に全能クラスの回答者がいるのだから、利用しない手はない」
「ほう。よい、許す。述べるがいい。興味を引く話題であらば採点でもしてやろう」
「違えるなよギルガメッシュ」
「わざわざツーリングしてまで何してたんだよ。男同士でむさ苦しくねぇのか」
「こっちも女同士だよモードレッド?」
「・・・・・・・・・特別だぞ!女扱いさせんのは性別リッカなお前だけだからな!!」
「ぐっはぁっ――!!」
口論で撃沈するリッカ
「貴様はいつも撃沈しているな、マスター」
「傷付く・・・でも、これでいい・・・!一番不味いのは、性別リッカ扱いされても気にしなくなってしまう事・・・!」
――魅力的だと思うのだけど・・・どうしてそこまでマスターは危惧しているのだろう・・・
「女ヘラクレスは放っておけ。・・・まず、俺が着目したのは、極東にて行われた聖杯戦争、そのシステムだ」
アンデルセンが語り始める。そのよくとおる美声に一同は沈黙し、真面目に聞き入る
「一つの聖杯を巡り、七つの英霊を召喚し戦い、争わせる・・・聖杯戦争の仕組みはこれで合っているな、裏方」
『あぁ。万能の願望機たる聖杯、それを手にするために招かれた七体のサーヴァント。そのマスターとなり魔術師七人が戦う。これこそが冬木にて行われた聖杯戦争だ』
「随分と詳しいな、ロマン?」
『情報調べただけだよ!?』
「聖杯戦争かぁ・・・マシュとギルを召喚してがんばりたいなぁ」
「ルール違反ですよ、先輩」
「ルールは破るものです。かつての私のマスターもそうでした。・・・その次のマスターは、身を省みず私を庇う別の意味で変わったマスターでした。何度道場のお世話になったのやら」
――道場?
「へー。オレが参加したのは7騎と7騎が争う大戦って奴だったけどな。タイマンが主流なら解りやすくていいぜ」
「あなたは協調性が皆無でしたからね。こちらの聖杯戦争の方がやりやすいでしょう」
「そうだけどさぁ!もっと言い方がさぁ!」
「脱線は程々にしろ。・・・間違いはないな、ギルガメッシュ」
「ふむ、大方の認識はそうであったか。答え合わせを望むなら追記してやらねばな」
クイ、とグラスを取りだし酒を煽る
「魔術師どもの観点で言うならば、聖杯戦争で願いを叶えるのはただ一人だ。大聖杯にて願いを告げるはただ一人。マスター6人、サーヴァント七騎を生け贄にし聖杯を起動させる。解るか?サーヴァント七騎だ」
「あれ?自分のサーヴァントは含まないでしょ?」
「含むとも。魔術師の悲願は世界に孔を空け根源とやらに至ること。全能に到達するには聖杯の中身を満たさねばならぬ。だが、そんな無価値な奇跡を行うには中身が必要だ。頭を捻れば解る問いだ、七つのサーヴァント、七つのマスター。そら、中身となるものはどこにある?」
――・・・まさか・・・
『・・・『自分のサーヴァントも含めた、英霊七騎の魂』・・・?』
オルガマリーが呟く
「然り。願いを叶える器を餌に、英霊どもは招かれるのだ。聖杯にくべられる生け贄にされているとも知らずにな。まこと、滑稽極まる下らぬ儀式よ」
『・・・6人のマスターとサーヴァントを倒し、現れた聖杯に最後の燃料、自分のサーヴァントをくべ、大聖杯を完成させ根源に至る・・・』
「自分のサーヴァントも殺すってこと!?どうやって・・・!?」
「その右手に宿りしものだ。令呪を使えばサーヴァントは抗えぬ。所詮は使い魔に過ぎぬからな。目論見は下らぬが、聖杯戦争を考案した輩は、間違いなく神域の天才であろうよ」
――――それが、聖杯戦争の仕組み
・・・英雄王はやはり、参加したことがあるからこそその仕組みを見抜くことが出来たのであろう。・・・凄い。やはり英雄王は、隠された真実をたちどころに見抜く『すべてをみたひと』なのだ・・・!
「第三魔法『
「・・・魔術師って、人でなしなんだね。・・・せっかく、力を貸してくれる英雄の皆をそんな風に・・・!」
ギり、と拳を握るリッカ
・・・彼女の感性は一般のものだ。何かを犠牲に、という事は到底容認できないのだろう
――その人間性は個人的に、大変好ましいと思う。どうか、その心を失わないで、マスター
「なるほど。結論が早くていい。やはり聖杯戦争における英雄召喚は、人の手により劣化した『格落ち』だったか」
「ほう?その口ぶりでは更なる深奥にたどり着いた様な物言いだな」
――聖杯戦争、英雄召喚の最奥・・・?
「たどり着いたとも。今のお前の伝えた事実にて確信を持った」
「よい、聞かせてみよ。よい酒の肴になりそうだ」
「勿論だ。――魔術協会にあった資料を読み耽り、俺はその違和感に対する答えを探した。一つの聖杯を巡り、7騎の英雄を招く儀式。・・・ギルガメッシュが言うように、広く知られるこれは人間が扱えるようにスケールダウンさせた『格落ち』なのだろう」
「オレ達が格落ちだってのか!?英霊としてこれ以上はねぇはずだろ!?」
「人間に使役されている時点で、小さなスケールなのは解りきっている。俺達サーヴァントは、その大元の儀式を簡易再現したローコストの英霊というわけだ」
「・・・それは予想外でした。私は契約事情が異なっていますから、あまり気にしてはいませんでしたが・・・」
――この今話している皆が、格落ちの英霊・・・
「勘違いはするなよ、格落ちというのは『霊基』の話だ。英雄そのものの格は関係無い。・・・そして、そこに真実がある」
「――――」
目を細めて、器が続きを促している
「本来の英雄召喚とは『世界』が行う決戦術式。破滅と滅びを確約させる『一つ』の何かに対抗するために招集、召喚される人類最強の七騎。その召喚を行う儀式こそ、本来の意味での『英雄召喚』なんだ。人類を救うために『世界』から与えられる強大な霊基。これこそ、英雄を召喚するという途方もない奇跡の原典、冬木の聖杯戦争の元になった儀式の正体だ」
『――世界を救う、7騎・・・』
アーサーが、噛み締めるように呟いている
「それって・・・選ばれし最強の七人!?七人衆!?かっこいーっ!!」
「七騎と言うことは・・・セイバーからバーサーカーまでの七騎、と言うことですか?」
「あぁ。その7つのクラス。世界を救う為の絶対特権を与えられし七つこそ、聖杯戦争で俺達が与えられる
――となると、セイバー、アーチャー、ランサー、ライダー、キャスター、アサシン、バーサーカー。それぞれに、世界が与える上位クラスがある、ということか・・・
「よくぞ調べあげた。やはり観察眼は伊達ではないな、童話作家」
「当たり前だ。作家の出来ることは根掘り葉掘りの追求だけだ。・・・答えはこれで合っているか、ギルガメッシュ」
「よい。大抵は正解だ。我は召喚の仕組みなどどうでもよい。器がなんであろうが、召喚術式がなんであろうが、我と、それ以外の有象無象の方程式は揺らがぬ」
グイ、と酒を飲み干す
「――どうでもいい故に。その世界の真実の一端に触れた功績に免じ、我直々に思い至らぬ所の補足をしてやろう」
――そして、器たる王は語る。
「『一つ』の敵に対し、『七つ』の英霊で挑む決戦術式。これらは互いに、呼称される名称、銘がある。此度はソレを語ってやる」
「マジでか!しってんのかよ成金!」
「当然だ。――其は世界を救う七つの切り札、訪れし破滅と滅びに抗う究極の希望。世界そのものが産みだせし『悪』を討ち滅ぼさんと世界にカタチを与えられし人類最強の七騎――」
――悪を、討ち滅ぼす・・・
「銘を『
――グランド、サーヴァント・・・世界そのものが望みし、最大最強の七騎・・・
「かっこい――――!!!!!」
「先輩!?」
「それつまり最強のサーヴァントってことでしょ!?えっと、グランドセイバーはアルトリア、グランドアーチャーはギル、グランドランサーは兄貴・・・」
「待てよ!グランドセイバーはオレだろ!」
「控えなさいモードレッド。最強のセイバーとは私をおいて他にいません。世界に招かれし最強のセイバーならば、私であるのは道理です」
「我はゴージャス故、冠位など無い。そも、世界なんぞに使役されてやるものか。・・・まぁ、キャスタークラスの冠位の資格は持っているがな」
――やっぱり!英雄王がその名を連ねない筈はないという思いは確かにある!
やっぱり、英雄王はすごいんだ!
「キャスター!?ギルが!?」
「フハハハハハハハハハ!!らしくなかろう!我も断じて御免だがな!!」
『・・・マーリンも多分持ってるよなぁ・・・クズだけど、実力はあるし・・・』
(ろくでもない奴ほど強い。残念な事にね)
――フォウ・・・!
(さて、ではその七騎が束になってかからなきゃならない存在とは何か?聞かせてもらおうじゃないか)
「・・・冠位の存在は解った、では次は」
「解っている。それら冠位が束になり立ち向かい滅ぼすもの。・・・我以外の輩に自慢気に説明されるも業腹だ。ここで我が予め教えてやろう」
酒を新たに注ぎ、王は語る。英雄召喚の真実を
「『七騎』の冠位が滅ぼす『悪』。それは人類史の汚点、積み重なりし人類史に溜まりし澱み、人類が人類で有る限り、けして切り離せぬモノ。人類が智恵を捨てられぬように、けして捨てられぬ『癌細胞』のような存在である」
――人類が人類で有る限り、けして切り離せぬ、悪・・・?
「其の銘『人類悪』。人類が歴史を重ねる毎に強さを増し、人類の営みを内側から食い破る自殺機構。人類を滅ぼす悪でなく。人類『が』滅ぼす悪――終局のⅠからⅦ。顕現せし七つの大災厄こそ、冠位を名乗るサーヴァントが仮想する世界の敵だ」
――人類悪・・・世界が産みだせし悪、人類が人類で有る限り切り離せぬ、悪・・・
「凄そう(こなみかん)」
「怪獣か何かか?すげぇヤバそうだな・・・」
『――彼方より来たりて、総てを喰らう・・・』
「心当たりがあるか、アーサー?」
『――何かを、思い出した気がするよ』
『ちょっ、それ今言っていい情報なのかい!?』
「構わぬ。我にはどうでもよいことだ。酒の席の話、真に受けるも受けぬも貴様ら次第よ」
「・・・お前が虚言を口にはすまい。答え合わせのつもりが、本質を教えられるとはな」
「我が語ったモノなど表層のものに過ぎん。人類悪の本質、真意は貴様らが探すがよい」
(・・・ふん。確かに、肝心なところはぼかしているね)
――フォウ?
(何でもないよ。・・・いずれ解る事さ。きっとキミにもね)
・・・いつになく、フォウの表情が固い
どうしたのだろうか・・・?
「こーんなでかいよ絶対!ゴジラみたいに!」
「どんなすげぇバケモンだよ!ぶったおしてみてぇなぁ!」
「大丈夫です。困ったらカリバーで大体なんとかなります」
『ロマニ、この情報を記録しておいて。少しずつ、解析していきましょう』
「フハハ、酒の肴にはよい詩であった。さて、満足したか?アンデルセン」
「あぁ。これで不測の遭遇にあわてふためく必要もなさそうだ」
「我が真実を語るなど極めて異例なのだぞ?我の上機嫌に感謝するのだな」
「絶対ゴジラだよ!ゴジラ!怪獣!」
「巨人かもしれねー!ブリテンにいたようなやつだ!」
「ふむ、そのような巨悪がいるならば、さぞや迫真の物語がかけましょう!」
「――それは確実に、惨劇になろうがな」
ゆっくりと立ち上がる器
「口を滑らせ過ぎたな。我は寝る。明日もあくせく働くのだろう?貴様らも早く床に就くのだな」
「はーい!」
「――フッ。さぞや遠見は慌てていような。だが貴様らの気苦労など知らぬ。我は我の思うままに振る舞うのみよ!フハハハハハハハハハ!」
――総てを知る王は、笑いながら部屋に戻っていった・・・
『Aaaaa――(期待されてる・・・)』
『Aaaaa――(よし・・・ママ、本気出しちゃおうかな)』
「ステイ!ティアマトステイ!(フォウ!)」
「セイバー!あぁ、私のセイバー!」
「我が偉業!我が誕生の真意を知れ!!」
「オマエ台詞大分カットされたよ。オマエのドヤ顔大分カットされたよ」
「オオオ、オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ――――――――!!!」
「あぁ・・・無垢なる魂――もう辛抱たまりません!英雄姫様にゼパなんとかさんのようなメ♥ス♥イ♥キ♥をたっぷり教授して差し上げなくては――!!それはもう!英雄姫ならぬ英雄雌イ姫――!」
「やだよぅ・・・こんなのひどい・・・あんまりだ・・・みすてないで・・・わるいことなんか、なにもしてないのに・・・」
「人理焼いて一人の人生狂わせてわるいことなんかしてないなんて無理があるとおもいまーす。自業自得、マナカ覚えた」
「マーダーすんぞアバズレェ!!ボクの姫に触るなァ!!」
「どきなさいフォウさん!私こそ、セラピストに相応しき・・・!」
「昏々と屍晒せ――!!」
『Aaaaaaaaaa!!(いやぁぁあグランドアサシン――!!)』
「やったぞ!グランドが来てくれた!」
「僕も駆けつけたぞ!グランドキャスターマーリン!英雄姫の未来は私が」
「マーリンシスベシフォ――――――――――ウ!!!!!」
「ぐわぁぁあぁあぁあぁあ!!君ばっかり抱きしめられてズルいぞキャスパリ――――――――グッ!!!」
「はやく、はやく、私を貫きに来て!セイバー!セイバー!」
「わたしを みすてないで きあらさま・・・」
「誰でしたっけ?」
「(魔神王でありながら!)私は発狂した――」
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