人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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ピア「あんた…あたしにそっくりじゃない?なんで?」

アンリマユ『なんででしょうねー。クソッタレな血縁とかなんじゃないかねー。迷ってんの?』

ピア「そうそう、おっさんがどっか行っちゃってさ。迎えに行かなくちゃいけないの。心当たりない?」

アンリマユ『あー…』

【終末の大潮牙】

(リッカにとって邪魔にしかならねぇし、死んどいてもらうか)

ピア「?もしもーし?」

『あー、そうだな。──………』

「?」

「…あっちじゃねぇのかね」

『正道』

「あっちね!ありがとう、白いの!」

アンリマユ『……何やってんのかね、私は』

(ガワが同じだからって、魂が同じなわけねぇよな…まぁ、誰かが保護したんだろ。多分)

アンリマユ『ちゃんと見とけよな、ったく…』

数分後

ピア「あれ、また同じ場所じゃん…」

【大終末の潮牙】

「ここ?おーい、おっさーん」


ピアの迷い(物理)

「おっさーん!ねー、おっさーん!どこ行っちゃったのさー、おーい!おっさんてばー!」

 

アンリマユの正しい方向への指差しにも関わらず、ふらふらと違う方向へと迷い込んでしまったピア。正しい道筋から二転三転、ニャルがちょっと目を離してしまったあっという間の出来事である。方向音痴ゆえの迷子、スーパーやモールではよくあることである。

 

「つーか何ここ…暗いし、なんか空気悪いし。マジでなんか変な感じじゃん…」

 

ただ、迷い込んでしまったところが不味かった。そこは不正に楽園に侵入しようとした者が放り込まれる楽園の防犯施設、大終末の潮牙。あらゆる神獣、魔獣、そしてトラップ。侵入者を魂すら残さぬ程の凄絶極まる仕掛けの数々が盛り沢山の地獄である。本来なら常人が迷い込んでいい場所ではないのだが、彼女は迷い込んでしまったのである。コズミック方向音痴な為だ。

 

【!?】【…!?】【…!?】

 

当然ながら、放たれているバシュムなどは面食らう。彼等は侵入者、敵対者は粉微塵に粉砕する者らではあるが、迷宮全体に迎撃の指示は出ていない。完全に呑気していた頃の来訪、思わず目を見合わせる。

 

「あ、ねぇねぇ。おっさん知らない?こう、あたしと肌はおんなじ色で、赤眼で悪そうに笑う人なんだけどさ」

 

【【【……】】】

 

少なくともここには絶対いないよ…バシュム達はそっとピアを出口に押しやる。飼い主セミラミスの躾として、敵対者以外は帰してやるのがマナーである。ラマッス、スフィンクスもそれらは同様だ。彼等もまたれっきとした楽園の一員なのである。

 

「わ、何。教えてくれんの?居場所。ありがと、こっち?じゃあ行ってみるわ」

 

サンキュねー。そういいながら駆けていくピア。バシュム達は困ったように顔を見合わせ…管理者セミラミスにコールを送るのであった。

 

 

「うわ、水たまりあんじゃん…靴下と靴濡らしたくないから脱いで、と…」

 

水たまりという名のセミラミス特製毒沼である。バシュムの毒やフグの毒、神経系列のヒュドラ毒などをブレンドした自慢の沼。本来なら近付いただけで不死者が不死を返還する程の地獄の苦痛が待ち受けるのだが…

 

「めっちゃぬかるむ…キモい感触…」

 

なんとピア、平気である。対毒の加護を受けた存在でさえ昏倒は避けられないであろう毒沼を平然と踏破していく少女の姿は、ともすれば異常そのものだ。

 

「おっさんってば迷子なのかなー…ったく、家族がいないとダメダメなんだね、あの人」

 

むしろダメになっていないピアの頑強さの方がおかしいのだが、それを突っ込む人間はいない。彼女は進む。迷子が迷子のおっさん探しに勤しむという奇怪極まる状況を作り出しながら…。

 

そして彼女が進んだその先。そこはコールを受け、非常口方面に進路を作り変えていた黄金のスフィンクス、スフィンクス・アウラードが彼女を迎える。

 

『汝、迷い人と見受けし。ここは危ない場所なので早くお帰りなさい。我々は理性なき獣にあらず。毒大丈夫ですか?』

 

「あ、喋った。喋れるワンちゃんとかもいるんだね、ここ。凄いなー」

 

ワンちゃん…。まさかの犬扱いにもアウラードは動じない。何故なら彼はスフィンクス・アウラード。ファラオ・オジマンディアスの誇るスフィンクスの頂点種であり、迷宮の監督役を任されし崇高なる存在であるからだ。

 

「じゃあちょっと聞きたいんだけどさ。おっさん知らない?ほら、白髪と黒髪が混ざってて、肌の色があげパンみたいなんだけど」

 

『ブフォッ…あげパンて…にゃ、ニャルさんの事ですね?彼なら今、何やら小包を用意してトイレの前に向かっておりますよ』

 

スフィンクス、吹き出しながらも映像を展開する。そこにはトイレの待ち時間にちょちょいと贈り物を用意していた親バカの姿があった。ピアは手を叩く。

 

「あの人!あの人があたしのおっさん!あんた優しいね!ありがと、名前は?」

 

『スフィンクス・アウラード。凄いスフィンクスって覚えてね』

 

「凄いスフィンクス…おっけ、覚えた。…またちょっと聞きたいんだけどさ、あんたってずっとこんな場所にいるの?こんな暗くて苦しい場所に?」

 

ピアの感じた印象は陰気で暗い、変な場所。そんな場所にいて、何も感じないのかとアウラードへと問う。スフィンクスは答える。

 

『我がファラオ、並びに妃、友、仲間達を護るは我らの使命にして栄誉。我等がこうしている事で皆が幸せに暮らせる。そういう事に我々は喜びを感じるのです。なのでへっちゃらですよ。きちんと管理されていますしね』

 

「そうなんだ…」

 

『まぁでも、たまになぞなぞをやりたくなる気持ちはあります。セミラミス様はそういった問いは好まぬようで…こう見えて古代エジプトの頃より考えたネタはたくさんあるんですが』

 

「そうなの?じゃああたしに聞かせてよ。アウラードのなぞなぞってヤツ。興味あるわ、ガチで」

 

ピアは興味津々でアウラードへと問う。彼女にとって全ての事は新鮮な出来事だ。例えそれが人間であろうとなかろうと、関係はない。

 

『あ、本当ですか?でも聞かせるとなると古代エジプトから語らないといけなくなってしまうので、これをあげます』

 

アウラードが渡したもの、それは彼が考えたなぞなぞブック(手作り)である。昔懐かしのページ下に答えがあるやつ。ダジャレからミレニアム懸賞問題クラスまで幅広く難易度を取り揃えている逸品だ。

 

『迷宮踏破の秘宝として考案したのですが、セミラミス様に『この迷宮の報酬がなぞなぞブックだと?それで納得させられると本気で考えたのか?』と言われお蔵入りになった珍品、あなたに。ヴァルゼライドとかいう無限まだだマンさんは怖かったのであげられませんでしたが、是非あなたに』

 

「ウッソ、貰っていいの!?本当に!?」

 

『えぇ、もう私には不要なものです。だって全部覚えてますから。というか製作者私ですし。見たところ正規な人間ではなさそうなので、娯楽代わりにどうぞ』

 

アウラードから受け取ったなぞなぞブックを輝く目でめくり見ていくピア。スフィンクスのデフォルメと共に読み進めるその黄金の書物は、早くもピアの宝となった。

 

「ありがと、スフィンクス!これ、一生大事にするからね!」

 

『あはは、それは嬉しい。ずっとここで考えてきた甲斐がありました。それでは、滅菌してお帰りください。二度とここに来てはいけませんよ』

 

「え、あたしはまたあなたに会いたいけど…」

 

『……太陽王の神殿で、きっとまた会えますよ。バシュムには空中庭園、ラマッスにはバビロニアに。もし私達に出会いたいなら、そちらで』

 

「ん!じゃあね、スフィンクス!会いに行くわ!絶対!」

 

そんな賢さ溢れるやり取りを最後に、ピアは迷い込み用非常口から外へと抜け出ていく。

 

『また楽園に変な方が現れたものです。…あぁいえ、我々が護るべき方々、ですね』

 

アウラードは満足気に蹲り、迷宮を元の難攻不落の居城迷宮に戻す。ただ一人を除き、誰も生かして返さぬ絶望の迷宮へと。

 

『しかしバシュムとヒュドラの毒もものともしないとは。間違いなく人類ではない別天体の存在でしょうが、楽園の皆様は果たして把握しているのやら…』

 

叡智の神獣、スフィンクスは見据える。彼女の正体を。そしてすぐに考えを打ち切る。彼女や皆が踏み込む事である故、自身は守護神獣に徹するのみ。

 

『うーわ、またドライトロンですか…1ターン長すぎるんですよね…サレンダーしようかな…』

 

こちらはこちらで、未来に流行るアプリで決闘に勤しんでいるのでしたとさ。




セミラミス「…そして滅菌消毒を終え、無事何事もなく帰ってきた、と…」

ピア「あんたが管理者、セミラミス?いい子たちだね、あいつら。大切にしてあげてよね」

セミラミス(…驚愕を通り越して感嘆する他ない。間違いなく人類の範疇にない耐毒性能だ。リッカすら及ばぬとは尋常ではないな…)

ニャル【私が用意している間にどこに迷い込んでるんだ君は!?方向音痴にも程度がある!】

ピア「見ておっさん!なぞなぞブックもらった!面白いね、なぞなぞ!アウラードに今度会いに行きたい!」

ニャル【あ、あぁ…やはり、割と平気だったのか…流石と言うかなんというか…】

(…渡すのはまた、あとでいいか…)

ピア「パンはパンでも食べられないパン…ギャラクシーパンデミック…?」

『カルデア制服』

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