人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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アンリマユ【アナーヒター、ねぇ。まさか旧友に会えるとは】


アジーカ『私は会ったことない』

アンリマユ【だよな。アジ・ダハーカは会う前に封印されてたか。となると…もしかしたらまた会うかもな】

『?』

【いや、まぁな。いたんだよ。…誰にでも都合のいい悪党の私と同じような『誰にでも都合のいいいいやつ』がな】

『…?』

【…光輪を持っている、ってんなら…あいつくらい、だよな…】



善神と使徒の聖談

「ぱたーん、そのいちです」

 

善神に光輪の譲渡方法を問われし、光り輝く少女。神々しく煌めく善神に、その手法を問われ顔を上げ答える。光輪──絶対善の具現にして、託されし者に絶対の浄化洗礼を与える究極の善王権。アフラ・マズダ崇高にして至高の権能を託されし少女のプランがもたらされる。詳細は以下の通りだ。

 

 

【………】

 

雨の日。傘を忘れてしまったアジ・ダハーカはぼんやりと空を見上げている。濡れたまま走り、家に帰るのは駄目なのだと悟る。何故なら風邪を引いてしまうからだ。

 

【悪い。間が】

 

このまま立ち往生してしまうのか。家には楽しみにしていたスイーツがあったというのに。しょんぼりと俯いている悪の邪龍に、光が齎される。

 

『これを、使って』

 

そっと彼女に渡されるもの。それは光り輝く光輪。雨雲を切り裂き、陽光をもたらす至高の善権の具現。

 

【これはっ】

 

『これで濡れないよ、やったね』

 

それを渡されたアジ・ダハーカは雨の中でも走ってもへっちゃらとなる。何故なら光の輪が、彼女を護ってくれるから。

 

【ありがとう、大事にするね】

 

そう告げる彼女には笑顔と光が満ちていた。いつの日か光輪が齎す光は暗雲と雨雲を切り裂き晴れ渡る空を見せていた。悪と善は、光と闇はここに一つになった。

 

『いつまでも、幸せに』

 

その幸せそうな邪龍の姿を、光の化身はいつまでもいつまでも見つめていた。光の祝福は、今確かに闇に届いたのだ──

 

【うおっ、まぶしっ】

 

アンリマユはついでに浄化された。

 

 

『という、感じで』

 

上の流れを紙芝居(作画・制作共に少女)で善神に披露する少女。そのタッチは力作だ。アンリマユが黒いモヤでしか無いことを除いて。

 

『──我が使徒よ』

『はい』

 

『いいと思う。そのように因果を組み込もう』

 

善神、二つ返事。一生懸命に考えた結果がアフラ・マズダポイントの高さの決め手になったようである。依代の少女は嬉しそうに頷く。

 

『善神よ、まだ案はあるのです』

 

『聞こう』

 

ツーカー、トントン拍子に進む光輪譲渡会議。新たな紙芝居をいそいそと用意する少女に、泰然と待ち構える善神。雄々しく輝く姿が静かに公表を待つ姿は何やら妙である。

 

『こちらです』

 

次なる案が、再び紙芝居にて示される──。

 

 

【ふぁっ】

 

お風呂に入っていたアジ・ダハーカ。しかしいつも愛用していたシャンプーハットをついうっかり忘れてしまうポカをやらかしてしまう。

 

【目に、目にシャンプーが。見えない】

 

絶対絶命のピンチに陥るアジ・ダハーカ。目にシャンプーが入る苦しみに二元の一角が落とされてしまうその時。

 

『これを、どうぞ』

 

そっとアジ・ダハーカの頭に添えられるシャンプーハット。いや違う、それはシャンプーハットではなく、アフラ・マズダの光輪だったのだ。優しさと共に捧げられたそれは、アジ・ダハーカの窮地を救う。

 

【見える。目が…痛くない】

 

そう、流れるシャンプーからアフラ・マズダの光輪から目を護ってくれている。これで目を痛める事なく心ゆくまで髪を洗うことができる。これこそ善神の慈悲にして、究極の加護。それは悪の龍すらも優しく包み込むのだ。

 

『善も悪も、共に。今こそ私達は手を取り合い一つになる』

【おめめぱっちり、汚れスッキリ】

 

ここに光輪の譲渡は果たされた。世界の安寧と平穏は、末永く護られ保たれて行く事だろう。めでたし、めでたし。

 

【うおっ、まぶしっ】

 

ついでにアンリマユは浄化された。

 

 

『お風呂で汚れと、争いも一緒に落とします。これが、第二ぷらんです』

 

アジ・ダハーカとアフラ・マズダが手を取り合う最後の色紙で紙芝居を締めくくり、どうでしょう?と少女は指示を仰ぐ。この世全ての光を束ねたような威光を放つ善神は告げる。

 

『我が使徒よ』

『はい』

 

『とてもいいと思う。その様に因果を組み込もう』

 

善神、二つ返事。一生懸命に考えた事と、困っているところを助けたところが実にアフラ・マズダポイントが高かったようだ。嬉しそうに頷く、アフラ・マズダに選ばれし少女。

 

『我が神よ、実は更にもう一つあるのです』

 

なんと更に考えていたという。こころなしか少女が自信ありげに頷き紙芝居を準備万端に待ち構えている。よもや、これほど敬虔たる者が我が代行者たろうとは。その奇跡を噛み締めながら、アフラ・マズダは促す。

 

『聞き届けよう。次なる聖申を告げるのだ』

 

『はい、我が神よ。最後の託し方は…』

 

大きさで言えば少女の眼前全てを埋め尽くす程の神威を有すアフラ・マズダ。その神威を全て少女の創作に集中させ、彼女の言葉に耳を傾ける──

 

 

【公園でやることがない】

 

公園に遊びに来たのはいいものの、何をしていいか解らず途方に暮れるアジ・ダハーカ。最近の公園は危険対策で遊具が無かったりするので、その煽りを受けてしまったのだ。心なしかがっくりと肩を落としている中、彼女は見捨てられてはいなかった。

 

『これを、使って』

 

そんな中、彼女に託されたものがある。それは光り輝くフリスビーの様な、光り輝く輪。掴み易く、非常に投げやすい。

 

【お手頃】

 

投げると綺麗に飛んでいく。走って追いかける事もできるし、キャッチすることもできる。渡されたそれを、夢中になって堪能するアジ・ダハーカ。

 

【む、これは】

 

そんな中、ふと彼女は気付くのだ。渡されたそれが、ただのフリスビーではないという事を。

 

【フリスビー…いや違う。これは…光輪っ】

 

アジ・ダハーカもびっくり。それはアフラ・マズダの光輪であった。綺麗に飛んでいったのも、自分の下にちゃんと帰ってくるのも、全ては込められた加護のお陰だったのだ。

 

『善も悪も、仲良くできる。その光輪フリスビーは、あなたのもの』

 

善なるものを悪が受け取り、悪なる者は善なるものを憎まない。

 

【あなたは、アフラ・マズダ。そうか…祝福とは…善悪とは…二元論とは…】

 

そして、アジ・ダハーカは全てを理解する。悠久の時を経て理解するべきことを理解する。

 

『この世界で、光と闇は一つとなる。さぁ、行きましょう。アジ・ダハーカ』

 

【アフラ・マズダ】

 

善悪はここに調和を果たす。最早苦痛も悲しみも、嘆きもない。公園の一角で、全ての神話は塗り替えられたのだ。

 

【うおっ、まぶしっ】

 

そしてその一環でアンリマユは浄化された。

 

 

 

『という、流れで全ては一つになるのです。神話は塗り替えられ、新たなる明日がやってくるのです』

 

めでたしめでたしと書かれた紙芝居が現れ、少女は神を見上げる。自信作ということを全力を尽くして訴えている。

 

『───我が使徒よ』

 

『はい』

 

『凄くいいと思う。その様に因果を組み込もう』

 

善神、全肯定。一生懸命に考えた事と、もたらされた幸福がとても心と印象に残った様だ。満足気に頷く善神に、これまた嬉しそうに頷く少女。

 

これはあくまで、虚ろなる神霊の座での出来事。未だ光輪は世界のどこにも見つからず、誰のものともなっていない。

 

しかし、いつの日か必ず世界に善の具現は現れよう。傷つき、迷い、それでも世界の為に戦い続ける者達の者たちの元へ。

 

『我が使徒よ。更なる因果を見出すのだ。その全てこそ、混迷の世を照らす曙光とならん』

 

『はい、我が神よ。では更なるぱたーんをお伝え致します。実は、『さんちちょくそう』なる概念を利用した方法が…』

 

『ほう…瞬きの間に悪の下へ…押印…直送…』

 

『さいんとはんこ、忘れずに…』

 

善なる神と、その使徒は見据えている。いつか、悪の身に刻まれた傷と疲労を癒やし労るその日を夢見て。

 

 

いつの日か、共に並び立つことのできるその日まで──。

 

 

 




少女『………』


アフラ・マズダ『如何にした?』

少女『いいえ、なんでもありません』

アフラ・マズダ『お前の行末が、世の命運を定める。励むのだぞ』

少女『…はい』

(いつか、また会おうね。──■■■)

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