人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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アンリマユ【くっそ、どこにもいねぇ…!なにやってんだリッカはよぅ!】

アジーカ『シミュレーション上がりから自由時間』

アンリマユ【今あいつと鉢合わせしたら色々とめんどくさいから予め説明しようと思ったらこれだ!探索の出目悪すぎねぇか!?】

アジーカ『ダイスの女神最強説』

アンリマユ【とりあえず、リッカの周りに今いるのが理知的なヤツであることを祈るしかねぇ!セコムだったら下手したら…うぅ、怖ぇ!愛怖ぇ!】

アジーカ『リッカサーチ(ミョミョミョ~)』

アンリマユ【できるなら最初からやれよぉ!?居場所は!?】

アジーカ『食堂』

アンリマユ【エンカウント率高すぎな場所だな!笑うしかねぇわ!】

(頼むから鉢合うなよ…せめて理性的に解決してくれ…!)

アジーカ『(ミョミョミョ)あ、いる』

アンリマユ【誰が!?】

アジーカ『ママもどき』

アンリマユ【笑うしかねぇや!あっはっはっは!!】



ファンブル・エンカウント

【と、ひょんな事から私の保護下に入ることになったピアちゃんです。新しい家族として受け入れて貰えるととても嬉しい。仲良くやっていこうね】

 

食堂の一画にて家族の会合を行うニャル一家。ピアはニャルの隣に座り、ナイアとエキドナにまずは紹介する形を取ったのだ。残りの面々にも、必ず紹介する時間は取ると決めている。

 

「私の目が曇っていなければ…どう見ても我が最愛の隣人、リッちゃんと同じ顔なのですが…」

 

【お前の目はいつも曇りなく澄んでいるよ愛娘。ピアはどういう訳かこの姿になっている。いずれリッカちゃんにも説明するつもりだが…まずは情報共有から始めよう。ピア、挨拶できるかな?】

 

「当たり前、マナーじゃん。えっと、こんにちは。ピアっていいます。おっさんに面倒見てもらってて、不慣れなことしかないってゆーか。よろしくしてもらえるとめっちゃ嬉しい。主に私が。よろしくです」

 

たどたどしいとふてぶてしいの絶妙なラインの挨拶に、ナイアは確信する。いい娘であると。お父さんはまた宝物を増やしたと。

 

「ナイアといいます。邪神ニャルラトホテプの娘であり、光の世界を護る狩人を営んでいます。どうぞ闇に蠢く冒涜的なアレコレが起きたなら私にご連絡を。ナイちゃんと呼んでくだされば。もうこれは血の繋がりを越えたベストマッチファミリー…即ち、桃園の誓いなのでは?」

 

「え、あ、はい。よろしく、ナイちゃんさん」

 

(御満悦)

 

「コイツから話は聞いてるよ。アタシはエキドナ、夫婦っていうのをコイツと結婚して勉強中。お母さんとして、家族として出来得る限りの事はやらせてもらうから、遠慮なく頼っていいからね」

 

ほっこり笑顔のナイアと、不安を和らげる優しい物言いのエキドナに緊張からくる警戒心が鳴りを潜めるピア。仲良くやっていけそうだと、確信を以て頷く。

 

(どう?私の自慢の家族。内面も外観もとても素晴らしいだろう?実はまだまだいるんだけどね)

 

(うん、おっさんには勿体ないと思う)

 

最近のピアちゃん、キツイや…。自分でも常々思っている事をズバッと言われ、苦笑いするしかないニャル。そんなやり取りをエキドナは笑いを堪えながら見つめ、そして油断なく現実的な話題を振る。

 

(で、リッカとの折り合いはどうするのさ。そもそもなんでああいう見た目なのか予想は付いてるわけ?)

 

「肌、白…雪みたいな白い肌、あげパンなおっさんとは全然似てないんだね」

 

「自在に肌色は変えられるのですが、お父さんが好きな肌色はこれなのです。肌の色や、血縁が家族としての証ではない。いつも父はそう言っています」

 

「…ホント、あのおっさんっていいやつなのか悪いやつなのか解んない。変なの」

 

「銀河一悪い人です。でも、銀河一…素敵なお父さんでもあるのです」

 

ナイアとピアは早々に打ち解け、思い思いの雑談に興じている。何処かに行かないようには会話させるが一番。そう見たニャルはナイアに見張りを託したのだ。

 

 

(あぁ。地球に来た詳しい時期はまだ分からんが、恐らく彼女はリッカちゃんの遺伝子提供者の見た目や魂をモデルにしたんだと思う。というか、そうでなくてはあれほどそっくりな理由が説明できん。褐色の要素は何処から来たか知らんが…そもそもアンゴル族は精神生命体で、他の星で活動するには誰かに擬態しなくてはならん存在だったからな)

 

だった、というのはもう既にアンゴル星も、アンゴル族もこの世界には存在しないからだ。ヴェルバーに収穫され、この宇宙より消え去った種族…ピアはその、最後の生き残りなのだから。

 

(そういうものなんだ…あれ?でもそれならなんで今まで見つからなかったわけ?地球にいたなら、今のあんたならすぐに見つけそうなものだけど)

 

エキドナの疑問にも、ニャルは自分なりの推察を導いていた。恐らく彼女は一度やってきて、また休眠に戻ったのだと。

 

(順序はまだ確証が付かないが、おそらく数十年前に一度ピアはこの星にやってきていた。勿論星に裁きを与える為にな。だが、そこでピアは何者かの説得を受けたのだと思う。星を破壊するのは待ってくれ、とね)

 

(その誰かって…)

 

(予想からして…私はゲーティア、ひいては魔神達だと見ている。あいつらの活動はソロモン王死後からずっとだ。遺伝子に刻んでいた因子にて目覚めた魔神の一柱が、彼女と接触したんだろう。彼らからしてみたらさぞかしビビっただろう。偉業を形にする前に星をふっ飛ばす恐怖の大王がやってきたのだから)

 

その邂逅と目的を聞き、魔神は説得に移ったのだろう。或いはコンタクトを取ったのが正義感、あるいは使命感に燃える一柱だったのか。そう仮定すれば、予想は自ずと付いてくる。

 

(待ってくれ!まだ滅ぼさないでくれ、頼む!と拝み倒されたか、或いは自分達の偉業を丁寧に説明したか…それでピアは納得したんだろう。何故なら奴等の根底は、人類愛だからだ)

 

罪も清算し、終わりの訪れない完璧な人類を作るよ!と言われピアは納得したのだろう。魔神達の偉業を応援し、宇宙にて眠りについた。予想を付けるなら、その時に地球人の…リッカの遺伝子提供者を魂と姿のモデルに獲得し、次なる目覚めに活用する事を想定して。

 

(今まで見つからなかった事は、恐らく休眠状態でデブリ帯を漂っていた。記憶喪失な理由は、目覚めた際に記憶野にダメージを負った…そして今、獲得していた仮想人格が起動し外界と向き合っている。これが現状推察できる、ピアの来歴だな)

 

(故郷も家族も失って、おまけに自分自身も見失った、か…。あんたが入れ込むいい子にしては、背負うものが重すぎてやりきれないね)

 

エキドナの労りに満ちた眼差しが、楽園のアプリの説明を受けているピアに向けられる。彼女は今、なにもかもを失っている。それでも他者へと真っ直ぐコミュニケーションが出来ているのは、彼女の魂がまっすぐかつ純真故だ。邪神を罪過の炎で焼く程に。

 

(だが、いずれ必ず解決しなくてはならない問題だ。リッカちゃんが両親にどう折り合いをつけたか、私は見た訳ではないからわからないが…もしピアの外観がリッカちゃんに不快であるなら、私は責任を以て彼女の正体を起動しなくてはならない)

 

自身の家族は大事で大切だが、それ以前に自身は楽園の参列者。その中心たる存在への負担や危惧は取り除かなくてはならない。家族であろうともだ。

 

(…恐怖の大王として、使命を思い出したらどうするのさ。下手すると…)

 

エキドナはその先を言わなかった。ある意味それは、邪神に与えられた最大の罰の成就だからだ。

 

(…その時は)

 

(……)

 

(…そんな時が来ないのを、心から祈る)

 

断言、しなかった。邪神であり、必要であるならば情や絆すらも切り捨てる彼が、その末路の言及を避けたのだ。それは致命的な隙であり、弱さであり、彼が邪神として哀しいまでに弱体化した証。彼は今、自分が行うべき悪辣から目を背け、希望と光を信じ縋ったのだ。

 

それは、彼が闇に生きる者としての在り方を喪いかけている証左だ。その弱さを敵対する者が知れば、嬉々として突き刺す間隙に他ならない。

 

(…良く言った。上出来だよ、あんた)

 

しかし──そんな破綻と弱さを知ったのは、彼がその甘さと弱さで助けた妻である。刺される隙だらけの背中は、彼とテュポーンの伴侶たる女王が護っている。

 

「さぁさぁ!そろそろご飯と行こうじゃないの!皆で親睦を深めよう!美味しい御飯食べてさ!」

 

「「はい!」」

 

彼は弱り果てているだろう。邪神としての全盛に比べれば、最早見る影も無いかもしれない。

 

(…ありがとう、エキドナ。やはり君もまた、私には過ぎた女性だ)

 

しかし、だからこそ彼は最後に笑えるだろう。嘲笑う嘲笑ではなく、勝利を分かち合う喜びの笑みを浮かべられるはずだ。

 

(ともあれ、まずはリッカちゃんにも説明しなくては──)

 

説明責任を果たす。そう決心したニャル。だが…

 

「やっぱりマスター全員常備するべきよ!ガムテープ!バラバラにされてもくっつくから!」

 

「それアルクだけだと思うなぁ…」

 

──彼を何よりも嫌っているもの。それは恐らく、運命の女神なのだろう。




リッカ「あ、ナイちゃんだ!おーい、ナイちゃ、ん…」

アルク「────」

ナイア「こんにちは、リッちゃん!こちらは新しい家族のピアちゃんで…」

アルク「コイツ──ヤバいヤツ!そうよね、ヤバいヤツよね!」

ピア「え、は…え?」

アルク「私の直感がそう言っているわ!正体を見せなさい──ヤバいヤツ!」

ピア「え、えっと…こんにちは…。あんたが噂の、リッカ?」

眼の前にいるのは…かつて殺し合った親と同じ顔。

リッカ「は、はい。リッカです。その…こんにちは…」

エキドナ「!」
ナイア「!?」

アルク(あのリッカが!目を泳がせて敬語!?)

ニャル(…なんてことだ…すまない、リッカちゃん…)

ピアに関して、やることなすことが裏目に出る。ニャルは贖罪の困難さを痛感するばかりであった──

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