人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜   作:札切 龍哦

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ナイア「二人と行ってしまいましたね、お父さん…」


エキドナ「大丈夫だよ、きちんと話をつけてくれる筈だから。だからそんな凹まないでって。ね?」

ピア「あたし…何か失礼な事しちゃったかも。だとしたら、ちゃんと謝らなきゃ…!」

エキドナ「大丈夫、ピア。まずは信じて待つことだよ」

ナイア「はい!間違ってもお父さんは、大切な人を騙したり誤魔化したりはしませんから!」

ピア「おっさん…リッカちゃん…。…わかった!」

エキドナ(ちゃんと責任を果たしなよ。ピアと、何よりあんたの未来がかかってるんだからね…)


食堂

『CLOSE』

エミヤ「ふぅ…やれやれ、念の為貸し切りにしておいて助かったといったところか…」

(どのような答えを出そうとも、君なら陰惨たるものにはなるまい。しかし…子は親を選べないというのは残酷だな)

「血の繋がりがなくとも絆を紡ぐ彼等。血の繋がりが呪いとなってしまった彼女。…運命というやつは、どこまでも意地が悪いらしい。…もしもし、ジャンヌ・オルタ君かね。特注メニューをリッカの部屋に送りたいのだが、手は空いているかね──」




過去と今の交錯

【これが、リッカちゃんの母親の姿をしている彼女について解っている事と経緯、事のあらましだ。我が家族と楽園の皆に掛けて、翻意も下心も無いことを誓う。君達に嘘など通じないだろうし、やましい隠し事をしたくもないからね】

 

場所を移し、アルクとリッカの二人にピアの事、何故ここにいるのかの全てを話したニャル。彼が選んだ手段は詭弁、弁明でもない。誠実に、説明責任を説明するという手段だった。彼女が宇宙を巡り星を裁く審判者最後の末裔であること。長い旅路を巡って地球にやってきたこと。そしてその原因が自分にあること。告解の如く、彼は包み隠さず言葉とした。嘘に真実なども交えたりしない、知りうる全てをだ。

 

「私のカンは当たってた訳ね〜。星の触覚として、惑星を一撃で壊せる相手なんて天敵もいいトコだもの」

 

隠し事、要領を得ない返答を行っていたらニャルもろとも裂きイカにするつもりだったアルクは、口をぶーと尖らせ納得を示す。星の側である彼女は現状を把握したいという要望が通ったので、一先ず警戒のレベルを下げる。

 

「バグって今の価値観に至るなんて親近感アリアリだから、今のところは地球としては見逃してあげる。カルデアにいるんだもん、ヤバいヤツなんてゴロゴロいるのが普通よね、今考えたら。嘘をつかず、誠実にリッカに向き合った貴方を信用してあげるわ」

 

【感謝する。ありがとう、アルクェイド】

 

「いいのいいの、私こう見えてノリで生きてて気分屋な所があるから。今どうこうするつもりが無いならなんとかなるわよ、多分!で、私はいいんだけど…」

 

肝心なのはこっちよ、こっち。リッカの肩を抱くアルク。傍らには精神安定セラピー要員のあまこーが控えており、リッカは常にモフっている。

 

【…謝っても謝りきれないのは解っている。言い訳にしか聞こえないかもしれないが、君の血縁者を選んだのは断じて私が君に精神的苦痛を与えたいが為の行為ではない。これだけはどうか、信じてほしい】

 

「うん、大丈夫。ニャルが楽園の皆を大切に思っているのは解ってるし、そんな事を冗談でもやらないのも解ってる。きっと、ピアちゃんがどこかであの人の事を知る機会があったんだよ。多分、選んだ理由もなんとなく察しがつくっていうか…」

 

ニャルからすればそれは寝耳に水でもあった。彼女はなんと、ピアが自身の母を選んだ理由に当たりを付けたのだと言うのだ。無言で、リッカの言葉に耳を傾ける。

 

「あの見た目からして、多分成人する前の学生時代…高校生が懐くなんでもできる感と実力が完璧に釣り合ってた頃だと思う。あの人が歪んでしまう前の」

 

【全能感、というやつだね】

 

「これはあくまで予想なんだけど、ピアちゃんは強い生き方と、歪んだ時に起きる変化を彼女の価値観で必要なものだと思ったんだと思う。誰よりも完璧な人生でありたいって願いと、それが果たせなかった時に生まれる負の感情を、この地球で活動するためのモデルにしたんじゃないかな。どちらも人間が出せる強さとしては最高峰のものだと、彼女は認識したんだと思う」

 

つまり、リッカの遺伝子提供者の魂の強度は歪みさえしなければ格別かつ鮮烈であった。そしてその強さがあれば、最後の生き残りである自分を外界から護る事ができる。そうした経緯で、ピアは彼女を擬態先として選んだとリッカは予想を立てたのだ。

 

【そうか…ピアからしてみれば劣等感も全能感も同じ感情の発露。魂を保護するための擬態先としてはうってつけだったと言うことか。知的生命体の精神活動の分別が付く前に休眠を選んだ為、その魂の持つ歪みの本質を把握していなかった…】

 

「でも、それがホントならあの娘も性格とか歪んじゃうんじゃないのかしら。式から聞いたんだけど、それはもう凄かったらしいわ。恨み辛みでガイアの怪物一歩手前とか…」

 

【…恐らく歪みさえしなければ、正しい情緒や道徳を有していれば正しく大成した魂だったんだろう。しかし、その魂の歪みの発露が最悪だった。オガワハイムの件は私も目を通している。恐らく彼女らの魂はイアソンの魂の形と同じだったんだ。思い通りに行かない感情を、呪いとして世界に吐き出す。そういった、王にも覇者にもなれない歪んだ魂の持ち主が…君の、遺伝子提供者の在り方だったのだ】

 

望んでいたものには終ぞなれない星の下。イアソンと似通った魂の形。その魂をモデルにしたピアは、しかしいまも歪みを見せずに楽園に存在している。

 

【此処は選択の妙だったんだな…。ピア本体の魂はこの宇宙を放浪する孤独にも堪え、故郷と隣人を皆殺しにされても復讐に狂わなかった程の強靭さを有していた。故に遺伝子提供者の魂の歪みの発露の再現にも至らず、呪いを生み出す事も無かった…】

 

歪んでしまえば大怨霊にすら届くが、歪まなければ強度と克己心に溢れた魂なのは間違いない。今見せる悪くない悪い子の振る舞いも、彼女が見せる精一杯の悪い事の再現なのだとすれば。彼女は無害と言ってもいいだろう。

 

「私の不安はあの人たちがあのモデルや、似姿の縁を辿って悪さをする事。そうなったら、私の家族がまた誰かに迷惑をかけることになる。そうなったら私は、自分の血縁者として何度でも引導を渡すつもり。でも、そうなったらピアちゃんが無事でいられるかは解らない」

 

「リッカ…」

 

それは彼女にとっての決意だ。自身の血縁が世に仇なすなら何度でも断ち切る。その覚悟こそが、雷位の力の根源。

 

「約束して、ニャル。ピアちゃんの魂が、絶対に私達の血筋の争いに巻き込まれないよう護る事を。その約束が出来るなら…私はあの子の選択とあの子の姿を受け入れてみせる。これ以上…私の家族が誰かに迷惑をかけてほしくないから」

 

危惧していたのは、再顕現の可能性。その危険が無い事と、娘から目を離さない事。その要求が、彼女の天敵とも言える血縁者の魂の擬態を容認する条件であった。

 

【…。誓うとも。他人に迷惑ばかりしかかけない私だが、君の不安と危惧は決して実現しない、させない事を誓う。もう二度と、君に親殺しはさせないよ】

 

その言葉に、ニャルは確信をもって頷いた。リッカは二人の母と、一人の父をその手にかけている。それでも人生を懸命に生き、たくさんの笑顔を浮かべる彼女を曇らせる真似は絶対にしないとニャルは誓った。彼が全霊で行う、不断の誓いだった。

 

「うん、信じるよ。なら私から言うことはなんにもない。やっと巡り会えた娘さん、ナイちゃんと同じくらいに大切にしてあげてね!」

 

あまこーとアルクを促し、静かに退席するリッカ。だが、ニャルには最後の願いが残っていた。

 

【リッカちゃん!】

 

「?」

 

【とても酷なお願いなのは解っている!残酷な事を言っているのも百も承知だ!だが…だが敢えて言わせてほしい!】

 

それは、避けられる娘の顔を見たくは無いからという事と、何よりこのカルデアでリッカが曇る様な事態にはなってほしくないという願いから来る言葉。

 

【私のもう一人の娘をどうか、どうか…よろしく頼む!これは楽園の仲間として、そして一人の父としてのお願いだ…!】

 

「ニャル…」

 

彼女はこのカルデアの中心にして、たくさんの存在の希望だ。そんな彼女を、自身の家族が翳らせるなど容認できない。

 

「あなたねぇ、リッカと遺伝子が同じなだけの顔のヤツと仲良くしろだなんてどれだけ無茶を言ってるか解って…あいた!?」

『ワフ!』

 

あまこーがアルクを制し、リッカは無言で歩き出す。やはり虫の良すぎるお願いだったか、とニャルが苦渋に顔を上げた時──

 

【…おぉ…!】

 

リッカが示していたもの。それは──後ろ姿と、力強いサムズアップであった。光の楽園に戻る力強きその姿を、ニャルは眩しげに見つめていた…




アルク「リッカってば、もう!本当に大丈夫なの?血縁者の顔を見ちゃうと反射で驚いちゃうから、一人で寝ないようにってお医者さんから言われてるでしょう?」

あまこー「ワフ…」

リッカ「もちろん解ってる。さっきもちょっと目が見れなかったし…やっぱり苦手なんだと思う。どうしても」

アルク「だったら…」

リッカ「でも、もうあの人はこの世にいない。私が仕留めたあの人はもういないから。ピアちゃんは私の母親じゃない。ピアちゃんとして接さなきゃ、彼女を哀しませちゃうから」

あまこー「…」

リッカ「いつまでも苦手なものを苦手なんだと言ってられない。皆が作ってくれた今の私が、過去の縁に負けるなんて私も嫌だから!だから私は仲良くなる!母親の顔をしていたって関係ない!それが私の生き方だから!」

アルク「…もう。リッカってばメンタルの硬さがオリハルコン並なのね!」

リッカ「皆に鍛えられたからね!だからアルク、あまこー!私に勇気をください!」

アルク「オッケー!辛くなったらいつでも伝えて!いつでもギューッとしちゃうから!」

あまこー『ワフ!(禊祓はお任せなさい)』

「うん!じゃあ改めて──!」



ピア「あ、あの…」

リッカ「さっきはごめんなさい!私は藤丸リッカ!改めて…私と仲良くなってください!」

ピア「…は、はぁ?そんなの…私も望むところだったし!」

過去の因縁ではなく、今ここにいる新たな仲間として。心の痛みを乗り越える道をリッカは選ぶのであった──
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