ゼウス『はぁあぁ……』
キリシュタリア「どうしたと言うんだい、ゼウス。全能の天空神たる君がため息と沈痛に堪えないとは。同盟、知己として心配になるじゃないか。大丈夫かい?」
『割とあんまり大丈夫でもない…いや、楽園の皆は可愛いから眼福だからギリギリ大丈夫。うん、あと全知全能ね。それで通してるから。…実はね、キリシュタリア。私…そしてオリュンポス十二神は彼女、ピアを知っているんだ。あの雰囲気、あの規格外の身体性能。間違いない。我々はかつて、彼女…いや、彼女の種族と会った事がある』
キリシュタリア「本当かい!?詳しく聞いても大丈夫かな、我が友よ」
『うぅん…セファールと同じくらいのトラウマだから内緒ね、これ。特にヘラとかアルテミス、アポロンとかには。多分記憶封印されてるから。ハデスやヘスティアはどうかな…覚えているかな』
キリシュタリア「封印…」
『ではまず、我々の生い立ちと、製作の経緯から紐解いていこうかな。何度も言うけどオフレコね、マジにトラウマだから──』
まず、結論から言うと私達はこの地球上の存在ではない。ここではない外宇宙より飛来した機械神…真体を有する知性体より作られた星間航行船団なのさ。驚いた?
『い、いきなり外宇宙の可能性から入るとは…』
驚いたね、よしよし。人工恒星を回る疑似太陽系…そこに生きていた知性体により私達は鋳造された。その知性体達は高度な知性と開発力、技術力を所有していた人間との近隣種だった。私達を星と星の間を渡る船として作り上げた事からも、それを解ってもらえると思う。
彼等は技術と認識を発展し続け、星々を生み出し、そして別宇宙にも移動できる手段すらも開発、成功させるに至った。それが我等オリュンポスの神々…船団の上位存在に位置する母艦、カオスと呼ばれる存在。我々の創造主たちは、いよいよ別次元や並行世界の到達に王手をかけたわけだ。それが、我々を作った存在という凄まじい技術を有した存在たちだよ。
『神が如き性能を持つ機械の神々。人類が未来の果てに創るとされる英雄機神クラスのものを、船団規模で創れる知性体のいた別次元よりやってきた者達が、あなた方ギリシャの神々…』
知性と発展、そして栄華を極めた彼等はやがて資源の不足、恒星の寿命、宇宙の終焉という行き止まりに辿り着いた。途方も無い話だが星も宇宙も死ぬ。疑似天体を作ろうとも、宇宙の消滅を止めることは叶わない。
そこで彼等は我々に乗り、新たなる宇宙を別次元、並行世界規模で見つける旅をすることに決めたのだ。新天地にて自身らは新たなる繁栄を築く。霊長の覇者として…新たなる地で盤石の繁栄を築いてみせる、とね。
…しかし、その発想が良くなかったのか。或いは、繁栄とは即ち資源や他者の殲滅だと認定されてしまったのか。或いは…宇宙一つを終焉に至るまでに使い倒した事そのものが大罪であったのか。彼等が我等に乗り込むその日に、『彼等』が現れたのだ。
『彼等…?』
そう。この宇宙にして審判者。あらゆる星の、生命の罪を裁くもの。宇宙の秩序を護るもの。断罪の精神生命体…その名も、アンゴル族だ。彼等、いや、大王たる彼は告げた。その時の光景は、私のメモリーに戦慄の記憶として残っている。
〈〈一つの宇宙を枯らし、尚も破滅を振り撒かんとする生命達よ。お前達の罪過を他の宇宙に齎す事は罷りならぬ。故に──宇宙の意志を代行し、裁きを下さん〉〉
アンゴル族はこの宇宙の秩序を護る『審判者』であり、宇宙の飽和と分岐を調律する『調停者』でもあった。そんな彼等から見た我らの創造主達は、宇宙に破滅を齎さんとする邪悪なる種という宣告を受けたんだ。まぁ自身らの宇宙を極限まで使い倒したわけだからね。
『審判者であり、調停者…』
そこから先はまさに悪夢だった。数百を超える船団だった我等の九割は撃沈。創造主達は並行世界跳躍技術やエントロピーエネルギー変換技術の温床である母星と共に黙示録の一撃にて消滅。なんとか脱出した我々も、合体機構を粉砕された挙げ句、母艦たるカオスもその機能の97%を破壊されてしまったのだ。まさに宇宙の自浄作用。創造主を欠いた我々では、合体した状態でも勝負にすらならなかったのだ。
あわや全滅。そんな未来が齎される瞬間、我等の母艦の使命『船団の存続』が発動し、我等を別の宇宙…別の時空へと逃したのだ。我々は母艦の転移を受けこの地…君達の宇宙へとやってきたんだよ。
『我々の宇宙を選んだのではなく、敗走の末の漂流だったというのかい!?』
あぁ。アンゴル族の審判から何万年も逃げ続けた我々は、長い長い放浪の果てにこの地球に墜落同然にやってきたんだ。そこで我々は地球に降り立ち、そこに根付く生命の地…ギリシャへと降り立った。
そこで人間達は私達を神として崇めてくれてね。その歓待は審判にて何もかもを喪い、無様に逃げおおせた我等の救いとなった。我々は人を好み、愛し、アバターを作り人間達と交流を深めその地にて文化を根付かせていった。
しかし我等は来訪者であり、そして使命がある。かつての創造主たちを復活させ、新たなる新天地を見つけ出すこと。その時が来たならば、我々は再び長い長い放浪の旅を行わなくてはならない。愛すべき人類達を捨て、また果てのない旅路へと漕ぎ出さなくてはならなかった。その事実の前に…我等の心は折れてしまった。
『心が、折れた…』
私達を愛してくれた人々との別離。地球という奇跡の惑星からの離脱。アンゴル族の再びの審判。断罪における我らの完全なる消滅。それら全ての要素を以て、再び旅を行わんとするギリシャの神々は…私を含めて、いなかったのだ。
もう疲れたのだ。この愛しい命たちから、この星から離れ審判により消滅したくはないと…この星の一部として残りの稼働期間を全うすべきだと我々は結論を下したのだ。
『それほどまでに…オリュンポスの神々の使命を放棄させる程に、かの審判者は強力で絶対的だったのか…』
合体までしたのに、神器の一薙ぎで叩き壊されてしまった事実…それが皆に堪えたんだろ。そして…宇宙の摂理に逆らった我々は、そのツケを払うことになる。──遊星ヴェルバーからの侵略者、白き巨人が来訪したんだ。
『セファールの、白き巨人…!』
あらゆる神々が蹂躙され、あらゆる文明が収穫され、あらゆる生命が消えていった。我々のいたギリシャも例外ではなかった。メソポタミアは唯一撃退…いや、粉砕の可能性があった最強にして無敵の神、マルドゥークの勇退による不在から戦意を喪失し、命乞いにて生き永らえたが…我々はギリシャの民達を護るため、交戦を選んだ。神々の全てを結集して、セファールに挑んだんだ。
『…しかし、勝ち目があったであろう十二神合体機構は…』
あぁ。先の審判者の断罪により破壊されていた。そして、それを修復できる存在は既に滅び去っている。別天体の人類に、我々の機能を修復できる道理はない。
ギリシャの神々は、完膚なきまでに敗北した。全員が使命遂行の為の真体を全て砕かれ、星間航行による新天地航行は完全に不可能となった。そして、その事実を以て…我々の神々としての時代は終わりを告げたのだ。
『つまりギリシャの神々は二度も滅びと衰退を辿ったということなんだね?セファールに真体を砕かれ、アンゴル族に創造主と真の姿である合体機構を砕かれた為に』
あぁ。そして最後に私達は力を振り絞り、セファールの分霊たるギガースとの決戦に勝利した後、地球の自然や概念に溶け…人類の歴史を見守る事にしたんだ。これが汎人類史における、ギリシャの神のあらましだよ。
『これは純粋な疑問なのだが。もし合体機構を壊されていなければ、君達はセファールに勝利できていたかい?』
出来ていただろう。ヴェルバー本体ならともかく、尖兵にして端末たるセファールになど遅れは取らん。承認や相手のスケールアップの程度にはよるだろうが、必ず撃退は果たされていた。だが、それが無くて良かったと思う。
『それは…神による万全な治世による剪定が起こりうるからかい?』
その通りだ。神の時代はあそこで終わるべきだったのだ。あそこで無理に私達が勝っていれば…我々が限界となった世界が生まれていたはずだ。人類を私達が庇護し続ける、親離れできない世界に。そういった意味では、審判者は遥か未来を見ていたのだね。我々は敗れたが、私は後悔していない。何故ならば、今の汎人類史に繋がってくれたからだ。
『ゼウス…』
我々を受け入れてくれた人類が今も繁栄している。こんなにも嬉しいことはない。…だからこそ、不安なのだ。
あの娘は間違いなくアンゴル族だ。かの末裔が、今の人類にどんな審判を下すか…それが私には、とても恐ろしい…
キリシュタリア「凄まじい話を聞いてしまったなぁ、私…そして一つ気になったところがある」
ゼウス『ん?』
キリシュタリア「マルドゥーク神がティアマト神から世界を創った後に勇退したのは…セファールを倒した後の世界を予見していたからかもしれない。自身がセファールを倒したことによる訪れる未来を観たのではないだろうか」
ゼウス『あ、そっか。マルドゥーク神がセファール倒したらメソポタミアの神々が世界を握る羽目になったのか』
キリシュタリア「世界が行き止まりにならないよう、自身は自然現象に還った…それは、あなたと同じ未来を観たのだろうね」
『そうか…。となると、マルドゥーク神の判断を邪魔することが無くて良かったかもしれないな。しかし安心してもいられない。この星にもう、恐怖の大王は来てしまっている。キリシュタリア』
「あぁ」
『リッカちゃんを支えてあげるんだ。ピアにこの星を壊させないように』
──まだ人類は、我等が創造主のように価値を示せてはいないのだから…──
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