人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜   作:札切 龍哦

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ディーヴァ『リッカ、聞こえる?新しい特異点が発見されたわ。名前は…』

リッカ「オガワ、ハイム…!?なんで…」

式「よし、リッカ」

アルク「うん、リッカ!こういう時は!」

リッカ「ふたりとも!」

式「見なかった事にして寝るぞ」

アルク「ディーヴァちゃんをベッドにシューッ!」

ディーヴァ『きゃあーっ!?』

リッカ「ディーヴァー!?」

式「マンション管理者のオレが言うが、寝耳に水だったぞ。不法入居者の報もなく、今聞いた。だがわかる、絶対ろくな事じゃない」

アルク「なんかこう、違うのよねー。リッカはイキイキと特異点に挑んでキラキラしててほしいのであって、泣きそうな顔で挑む姿は胸が痛くなるからイヤっていうか。これまたそういう感じのやつでしょー?お姉さんスルーでいいと思うなー」

リッカ「二人とも…ありがと。でも、もしかしたらあの二人の可能性があるなら、見てみぬフリはできないよ」

式「…だよなぁ」
アルク「誰かに任せるっていうのも無理な話よねぇ…毒親ってホント害悪!」

アジーカ『その心配はない』

リッカ「!?アジーカ!?」

アジーカ『パパとママではない』

ディーヴァ『え?じゃあ…別の存在が黒幕?』

アンリマユ【多分だが、私とアジーカが知ってる側だ】

リッカ「アンリマユも…」

アンリマユ【で、我が最愛の相棒さんよ。ちょーっと頼みがあるんだが…いいかい?】

リッカ「???」


再会

【オガワハイム……】

 

その名を苦々しく呟くニャル。それはかつて、リッカと式が攻略した伽藍の堂のマンション。あらゆる死を集めた魔術師の作り出した実験場であり、聖杯の力でその死を娘に味わわせ魂を破壊しその存在を簒奪しようとした怪物二匹の温床となった特異点。その縁切りは最早終わったものだと誰もが思っていた。…王、直々に再演の報せが届くまでは。

 

(このタイミングにおけるオガワハイム。因果関係はまさに一つしか考えられん。ピアの存在が、あの連中の何かに触れてしまったのだろう)

 

依代や触媒があれば降霊、召喚が容易い魔術を基盤とした世界の法則、モデルとして活動している存在がいるならば、最悪の展開ではあるがあの世から迷い出る可能性はゼロでは無いだろう。

 

しかし、リッカたちの攻略に手落ちがあったと考えたくないのがニャルの正直な感想だ。それは楽園の手抜かりに繋がり、トドメを刺した相手を見誤った事となる。カルデアに参列するものとして、それはあまり考えたくないのが彼の胸中である。

 

【予測や推測は今や意味を成す段階に無い。どちらにせよ、我が家族のやぶ蛇には間違いないのだ。なんとか秘密裏に解決したいところだが…】

 

もう何度も気が滅入るような人類の黒き紋様を見せつけるのには辟易している彼は懸命に頭を捻る。人類の愚かで醜い部分は見せつけるものではない。ほっとけば勝手に見なくてはならなくなるものだ。よく悪役が人類の愚かさを糾弾する描写があるが、ニャルからしてみれば痰壷や肥溜めを指して醜いと叫んでいるようなものでそれはそうだろうとしか言い様のない滑稽さでしかないのだ。

 

【だが…リッカちゃんに隠し事は出来ないだろうな。もし本当に彼女の関わりならば…】

 

【私達が気付かない筈はない。そういうのは一番理解してるだろ?邪神サマよ】

 

危惧した可能性が続々と具現化する。今回ばかりは邪神の思惑は何一つうまく行かないようだ。そこにいたのはアジーカとリッカ…いや、違う。

 

【君は…アンリマユか?リッカちゃんの肉体の主導権を?】

 

【そゆこと。今回のオガワハイムの一件は終わりを迎えてる筈だからな、親の不始末だとするならきっちりケジメをつけにゃあダメだろ?リッカはともかく、コイツと私の親には間違いないんだからな】

 

アジーカの頭をポムポムと叩き、悪戯げに笑う。その笑みの軽薄さと歪みぶりは普段のリッカではない。リッカの身体を使用している、正真正銘のアンリマユだ。

 

『ママとパパがいるはずがない。…そして、私とアンリはオガワハイムから何かを感じている』

 

そして、アジーカはオガワハイムの現状を彼女なりに推察していた。彼女はガイアの怪物に至りかけた魂二つを誰よりも見つめ、看取った第一人者。彼女が言うには、オガワハイムに巣食うのは両親ではないという。

 

『だから、あなたが気に病む必要はない。あなたとあなたの娘は悪くない』

 

【アジーカちゃん…】

 

きっと、それを告げに来てくれたのだ。彼女は邪龍の魂でもあり、リッカの力の一端。仲間である邪神の心の迷いや曇りを喰らいにやってきたのだろう。善の側面は、彼女の優しさを証明していた。

 

『たぶん』

 

あんまり保証はできていなかった。彼女は感覚で生きる者であるが故に。邪神はずっこけながらも話を戻す。

 

【つ、つまり君達はオガワハイムに赴く訳だね?秘密裏に、こっそり、予感を受けて?】

 

【おう。2度も3度も入り込むほど楽しいおばけ屋敷でもないし、皆で楽しむほど愉快なアトラクションでもない。少数精鋭っつーか、肝試しスポットに突撃するバカな動画配信者みたいなノリでちょっといってくるつもりなわけよ】

 

『一応レイシフト使うから、観測サポートは必要。極秘作戦として、是非サポートをお願いしたい。この通り』

 

まるまることにより誠意を見せるアジーカ。その姿を見て、二人はスタッフの協力として自身を頼ってくれたのだと感じ取る。

 

【ケイオス・カルデア預かりの特異点攻略ということか…】

 

【あんただってこの特異点はほっとけないだろ?なんせオガワハイムだ。あんたの娘の他人の空似でヤバいもん起こしたとなりゃ、あの麻婆大往生がとんだ茶番だぜ?】

 

アンリマユの言い方は露悪的だが、その裏には【あの覚悟を無駄にするわけにはいかないだろう】という無言の激励があった。誉れも栄誉も報酬もない裏の仕事。だが、それでも護られる信頼と誇りがあるのだから挑め。自身らもその行き先には付き合うのだと背中を押している。

 

【…そうだ。もとより私はカルデア参列者。家族と父である前に、この素晴らしき皆への義理と温情への報いを果たすつもりだよ】

 

家族を受け入れてくれた存在、カルデア。娘や家族が笑って過ごせているのは皆の善性あってこそ。最早迷いはない、カルデアに立ち塞がるものあるならば全霊で挑むのみだ。家族の居場所の為に。

 

【では、オガワハイムの攻略を早速始めよう。では今回のマスター枠の一人はリッカちゃん、の半身たる君等でいいのだね?】

 

【そういう事!安心しな、リッカにはちゃんと了承を取って御身体をお借りしてるからな。魂は念の為寝かせてるが、起きたらあらましを教えるつもりだからさ】

 

『アジーカ奥義、オート特異点攻略機能。この特異点を修復したことにして進みますか?』

 

彼女達に何かがあれば、リッカは人類悪の力を行使が叶わぬ事になる極めて重いデメリットを受ける。本来なら彼女達は楽園待機が望ましいのだが…ニャルには彼女らの決心を止められる資格を有してはいなかった。故に、彼女らに出来ることは信頼することのみ。

 

【頼むぞ、最悪のマスターの半身達よ。では私は先遣隊と君達を助けるメンバーを選択するから、君等二人は単独顕現にて先に向かっておくれ】

 

【お、先に行って大丈夫なのかい?確かに勝手知ったるマンションではあるけどな!】

 

【君達の感じているものが何か…それが気になる。私の推察が正しければ、それはきっと『善きもの』な筈だよ】

 

ニャルの物言いに顔を見合わせ首をかしげる二人。まるでそれに心当たりがあるかのような言葉だ。彼のドブ色の脳細胞はそれを見出したのやもしれない。

 

【当然だが、オガワハイムへの突入は待ってほしい。あくまで入り口にて特異点の変化や変容を、君達の目で捉えて本隊の助けとしてほしいんだ。遊撃手にして、斥候の役割…解るかな?】

 

『石膏?』

 

【それは材料な。了解ですよ、どこかの騎士王みたく独断イノシシはするなって話ね。チームプレイで足並み揃え、仲良しこよしで電車道!これに勝る王道進軍はねぇもんな!】

 

バカにしているようでそれが一番だと言っているだけのアンリトークを皮切りに、二人が単独顕現を使用する。ディーヴァの端末にて、座標は転送把握済だ。

 

【じゃあ先に行くぜ!あんまり待たせんなよー!】

『コンビニ…あるかな。金箔カロリーメイト…』

 

リッカの魂達は朗らかに地獄のマンションへと向かう。それを見送ったニャルは、静かに決意を固める。

 

【…残滓の発露ならまだいい。問題は、リッカちゃんの両親を『悪用』する輩を想定した場合だ】

 

ありえない話ではある。彼女や彼は世界の全てを呪った者たちだ。それらが傅く相手を見いだせるとは思えない。

 

しかし…残滓が出たことを契機に、何者かが動いたとするならば。

 

【…彼女にも知ってもらう必要があるだろう。我々が倒すべき敵。他人の大切なものを踏み躙る者達への情動を…】

 

彼は父として、何よりも家族を愛するが…それ故に、家族の最善となる可能性を躊躇わない。例えそれが、過酷なものであろうとも。

 

ニャルは連絡を飛ばす。

 

──ゼウスを宿せし者と、新しき愛娘の両名に。

 

 




オガワハイム前

アジーカ『絞りカス』

アンリマユ【やっぱ本人なワケねぇよな。蘇るのは天空の城だけにしとけっての。…となると誰かがいるわけだな。私らの肉親を悪用しようって輩が】

アジーカ『パパとママは忙しい。地獄のお勤めに』

アンリマユ【そういうこった。悪趣味なネクロマンスの手に負える相手じゃないってのをわからせてやりますかね!】

そう決心せし二人は──予想もつかぬ相手と巡り会う。

?「二人共、こんにちは」

アジーカ『?』

アンリマユ【─────は?】

アンリマユ…悪側の王にして、かつての村の青年には忘れられない運命。

少女「この地に、来ると思っていました。あの大きな建物の中にいる【悪】をいっしょに、鎮めにいきましょう」

アンリマユ【…お前…なんでこんなトコに…】

アジーカ『誰』

少女「アジーカちゃん、こんにちは。私…アフラ・マズダと言います。渡したいものがあるから、後で受け取ってね。では」

【いやおい待て待て待て!?】

なんの力も、なんの魔力も感じない彼女はアフラ・マズダと名乗り、鼻息荒くオガワハイムへ吶喊を行わんとする。

『アフラ・マズダ…』

それを慌てて止めるアンリマユと、リッカの半身故に全くピンときていないアジーカであった…。
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