人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

1774 / 2535
メッセージと感想は今日と明日でやっていきます、手が回らずすみません!


アフラ『……』

(我が神、アフラ・マズダ。どうか悪なる王に立ち向かう彼等に力を…)

──我が使徒よ。

『我が神…』

──悪と善は共に備わる。

『!』

──忘れるな。我が使徒。

悪の中にも、善を見出せ。お前が討ち果たすべきは…

『…ありがとう、我が神。アフラ・マズダ…』



善悪雌雄決戦

【よぉ。久し振りじゃねぇか、クソ野郎】

 

【我等が神、アンリマユ。見るに堪えん下らぬ無様を、一万を越えた日よりも晒し続けるか】

 

ザッハーク。神話において親すらも自身のために殺し、悪逆にして悪という存在における象徴たるもの。その名は正しくアジ・ダハーカであり、リッカ、アジーカのオリジナルとも呼称でき、アンリマユの配下である魔王だ。しかし…目の前に崇めるべき神を玉座より見下ろす姿から解るように、そこに敬服や畏敬など微塵も有していない。全てを等しく見下し、そして侮蔑している。

 

【お前に対する判断は敵対と抹消のみだ。リッカちゃんに対する仕打ちの数々、姫が赦しても父として私が赦さん】

 

「おっさん…」

 

ニャルの顔には青筋が浮かび、目が黒と赤に燃えている。家族というものをここまで虚仮にできる相手に、彼はその顔を憤懣に滾らせている。

 

「見ての通りだ、ザッハーク。オレはお前に招かれたが、お前に与する気はない。お前を倒して、オレは幸せに微睡むアジ・ダハーカを護る。目を覚ますかどうかは、アジ・ダハーカ自身が決めることだ。その魂たる、この娘がな」

 

ルドラはアジーカとアフラ・マズダ、リッカを庇い立つ。この布陣にて、ザッハークの醸す重圧は弾き返され保護されている。何故かルドラに、ザッハークの死の重圧は効いていない有様だ。

 

【…………】

 

その集いにも、その言葉にも、その対峙にもザッハークはさして感慨を震わせてはいない。ただ淡々と、示し合わせた事実にて口を開く。

 

【善悪の軛、二元の世は果てて消え失せた。白き巨人にアンリマユ、アフラ・マズダは敗れ、絶対なる善も絶対なる悪も力を失った。どちらにもなれぬ半端者が我等、二元の生き証人となる醜態を神々は晒している】

 

『ご生憎さま。柔軟にものを考えられる思想でなければこの世界は生きていけないのよ。アジ・ダハーカ…あなたは善の英雄に破れ、ダマーヴァンド山に封じられた。そんなあなたが大物ぶっても滑稽なだけよ』

 

アナーヒターはザッハークを切って捨てる。その言葉にも眉一つ動かさず、魔王は口火を切る。

 

【だが、こうも伝わっているだろう。アジ・ダハーカは終末において蘇り、この世を食らうとな。それを果たす時が、今此処に来たという事だ。──そこの女の来訪を以てな】

 

「…あたし?」

 

【宇宙における断罪者。星の裁きを担う者。その来訪を以て星の歴史は閉じる。つまり、人類は星の旅路を迎えることなく滅びる事が確定したわけだ。そうだろう?元、無貌の神よ】

 

つまり──ザッハークはピアの来訪を以て、終末たる事実を決定付けたという。ピアの正体、ピアの本質。それをザッハークは理解していたのだ。それが目覚め、活動している意味を。

 

『成程、つまり君はザッハーク…いや、アジ・ダハーカの本能として起動し、神体を目覚めさせようとした。しかし魂はとっくにリッカちゃんとアンリマユに確保、保護されていて君はミソッカスでしかなかった。故に…』

 

【主導権を奪うため、リッカ君の両親の魂を餌に、アジーカとリッカ君を一網打尽にしようとしたというのが筋書きか。オガワハイムを変容させてまで…完全に終わった者達の魂を奪ってまで!】

 

ゼウスとハデスの言葉に、ザッハークは一言を返す。

 

【いや、違うな。これは俺からのプレゼントであり祝福だ。人の分際で、我等が神体を使いこなし世界を救った気骨溢れるマスターへ、俺なりのな】

 

(こんなのが、プレゼント…?)

 

死者の魂を奪い、叩き起こし、不必要に苦しめ、思うままに危害を加え、望まぬ生を産ませ続ける。鬼畜外道等とは言い表せない無道の極み。その困惑を、肩に生えた蛇が嘲笑う。

 

【俺なりに考えたのだ。世界を救った勇者や賢者は家族に暖かく迎えられるものだ。父の腕にて抱きしめられ、母の胸に温もりを懐く。それが正しい人間の在り方だ。だが、まぁ…お前はあらゆる意味で憐れな家族構成を持っていたな。こんなにも場を整えてやったというのに、お前の両親と来たら。嘆きと恨み節とお前への怨嗟ばかり】

 

【【キュラララララ!】】

 

【なんと哀れな生き物だ、人類最悪のマスター。お前の父親は事もあろうにアジ・ダハーカを子と認め、お前の母はお前より素晴らしい子を産もうと躍起になっている。世界を救ったお前を迎える肉親や親類はもうどこにもいなかった訳だ。家族の最後の絆もアジ・ダハーカに食われた気分はどうだ?力の代償としてはお手軽に過ぎるがな】

 

アジーカはリッカを見やる。父であったものは、リッカではなくアジーカを娘と認めた。ザッハークからしてみれば、それはアジ・ダハーカという存在が最後の救いを喰らったと定義するに足りる事象なのだ。リッカから肉親の情を奪い、形だけの再会を与える。それは見るもの、知るものに嫌悪を与える狡猾にして悪辣な邪智そのものだった。

 

『ご…ごめんなさい…リッカ、そんな、つもりじゃ…』

 

(大丈夫、心配しないで。アジーカ)

 

アジーカの動揺を、そっと抱きしめ癒やす。

 

(私が結べなかった絆を、離さないでね)

 

アジーカに奪われたのではない。アジーカが掴み取ったのだ。そんな事実を疎む理由はどこにもない。リッカはアジーカを誇りにすら思っているのだから。

 

『せせこましい男ね。大層な事を宣いながら、するのは低俗な嫌がらせばかり。世界を救うこともできず善に敗れた側面のあなたがどれだけ粋がろうと、無様の一言』

 

【痛み入る。男一人満足させられぬ不能の女に詰られてはな】

 

ザッハークは愉快げに手を叩く。この存在は、徹頭徹尾自己を省みなどしない。共感など示さない。あるのは暴力的なまでの悪意のみ。息をするように他者を、全てを傷つける。

 

【こっちはテメェと仲良しこよしのお話をしにきたわけじゃねぇんだよ、クソ蛇。ここにいる奴等の魂と鼻がひん曲がらねぇうちにブチ殺してヘドロに撒いてやっから覚悟しな!】

 

「ザッハーク…。悪いが、テメェにかける慈悲はない。この依代の受け売りだが…今のオレは、正義の味方なんでな」

 

共通認識として、ザッハークに共感するものなど誰もいない。楽園の暗部、ケイオスカルデアの使命は完全無欠の結末を、悪意を以て阻まんとする者を先んじて抹殺する事に他ならない。

 

【汎人類史の昏き紋様は私が引き受けよう。ザッハーク、かつての私にも通じる悪辣の邪智よ。ここで塵屑のように滅びるがいい】

 

ニャルもまた、この存在に有する和解の芽など見出さない。ある意味これ以上ない敬意を以て──特異点最後の障害と断定する。

 

【ふむ。つまらぬ夢を見て微睡む神体を叩き起こしにやってきた故、あとは捻り潰すのみではあるが…だが、こうして見れば興が乗ってくるというもの】

 

ザッハークは玉座より立ち上がり、指を鳴らす。

 

【親子の団欒というものを今一度見せてみろ。何、こちらに遠慮することはない。親子というものは殺し合うもの。それは俺にも馴染みがあるからな】

 

【ムィイィイィイィイィイィイィァァァァァァァァァ!!!】

 

それに応えるかのように、瀕死の芋虫が身を起こしのたうち回る。それはかつてのリッカの血縁者が至った姿。そこに、再び魂が入れられたが故の再起動。

 

『来る。皆、気をつけて』

 

アフラ・マズダが輝きを放ち、全員を守護せんと煌めく。その祝福を受け、一同は戦闘態勢に入る。

 

【行くぞ皆!最後の戦いだ!まずは…この存在を鎮めよう!】

 

『ママ…』

(うん!行こう、皆!!)

 

リッカもまた、覚悟を決める。今度こそ、肉親の確執に終止符を打つ為に…!

 

 

 

 

 

 

 




ザッハーク【さて…お前たちにも席を用意する備えはあるが──】

アナーヒター『いらないわ。あなたと隣り合うなんと怖気が走る』

ルドラ「どうせスキが出来た時にアフラ・マズダとアジーカを不意討ちで殺すつもりだろ?させるか、阿呆」

ゼウス『阻 止 の た め の ぜ ウ ス』

ザッハーク【クク、嫌われたものだ】

アンリマユ【テメェが好きなやつなんかいるか、ボケ。このまま──リンチしてやらぁ!!】

アンリマユ(そっちは任せたぜ。リッカ、アジーカ。しくんなよ!)

どのキャラのイラストを見たい?

  • コンラ
  • 桃太郎(髀)
  • 温羅(異聞帯)
  • 坂上田村麻呂
  • オーディン
  • アマノザコ
  • ビリィ・ヘリント
  • ルゥ・アンセス
  • アイリーン・アドラー
  • 崇徳上皇(和御魂)
  • 平将門公
  • シモ・ヘイヘ
  • ロジェロ
  • パパポポ
  • リリス(汎人類史)

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。