『ダンスの際は、とびきりのおめかしをしましょう』
「・・・」
(
「・・・そうよね。マスターに成長を求めるのに、自分は半端のままなんて何言ってるのかって話よ」
「・・・・・・これは、マスターの為。そう思えば・・・――」
教会
「おや?」
「・・・」
「黒い私!黒い私ではないですか!なぜここに!?自力で礼拝を!?」
「付き合いなさい」
「えっ?」
「私はこれから
「え、え?おめかし?」
「成る程、そう言うことですか。霊基を確定させる為に・・・」
「えぇ。私の壁を越えるための相手なら、アンタしかいないでしょ?」
「――嬉しいです。私は、あなたに憎まれているのかと。あなたは世界の総てを憎んでいるのかと思いました」
「憎んでるわよ。私はアヴェンジャーよ?当たり前じゃない」
「・・・では、何故?何故人理を救う戦いを?」
「決まってるじゃない」
「・・・?」
「憎悪は手放すはずはない。けど『恨みや憎しみなんかより、マスターの方が大切』なだけ。簡単でしょ、こんなの」
「――――!」
「世界なんて二の次、憎悪は燃やせど我が本懐にあらず」
「では?」
「私の旗は――この世界で『私を求めてくれた』たった一人のマスターの為だけに掲げると決めたのよ。こんな小娘を求めたのだもの。ほら、ねぇ?『応えてあげなきゃ』嘘でしょう?」
「――それが、貴女の『救世の旗』・・・なのですね。求められた。ただ、それだけで――貴女は総てを懸けても良いほどに救われた・・・」
「――フン。喋りすぎました。とにかく、私はマスターの為だけに旗を掲げ、マスターの為に戦い、マスターの為に死にます。世界が滅ぼうがなんだろうが、ピエールが何人死のうが知ったことじゃないわ」
「えぇ、えぇ」
「私の憎悪と憤怒は、マスターを阻む総てに向けられる・・・!その焔を完全なものにするために!まずはアンタへのウダウダを乗り越える!吐き気がするほどうんざりするけど、マスターの為になるならギリギリセーフよ!」
「解りました!(旗ポイー)」
「ちょっと、なんで旗手放すのよ!?」
「貴女の想い、確かに受けとりました!(バキッ、ゴキッ)ならば私は」
「ねぇ、なんで拳バキバキならしてんの!?ルーラーよね!?ルーラーよね!?」
「勿論対応しますね!
「うわぁあぁあ殴りかかってきたぁ――!!助けてマスタぁー――!!」
ロンドン、ウェストミンスターエリア。
国会議事堂を有する、重要区画
「そらそら、おいでなすったぜ!」
フランの案内で、ヘルタースケルターを動かすリモートコントローラーを倒すために出立した一行
議事堂付近に大量に敷き詰められしヘルタースケルター。外敵の反応を検知し、アームに握られた剣を振るい一斉にこちらに襲いかかる――!
「ハッ、進退極まったな!この布陣、最奥に破壊されれば詰みとなる仕掛けがあると教えているようなもの!あからさまな防衛は、逆に弱点をつまびらかに示すという愚策の典型例だ!所詮機械仕掛けに兵法なんぞ理解できぬか!あわれなブリキよ笑ってやるフハハ!」
「笑ってないでギルは下がっていてください!フランから眼を離さぬように!」
「無論そのつもりよ!こやつはどうやら戦う気概すら起こらぬようだからな!全く貴様の罪は重いぞファンブラー!」
――財を放つことは可能だが、意識の大半をフランに回しているから選別はあまり精度がよくない・・・!
ここは、皆に任せるしかない!――頼みます!
「その分オレが二倍働いてやらぁ!行くぜ父上!!」
「これもまた腐れ縁、共闘すると致しましょう。どうせ斬り捨てるのです。走馬灯の風景は多い方がよいでしょう――!!」
二人のセイバーが、斬り込んでいく――!
「マシュはギルとフランをカバーして!マシュのガードなら大丈夫!」
「了解です!先輩はまさか、また殴りに・・・!?」
「そうしたいのは山々なんだけどやっぱり数が多いから足手まといになっちゃう!今回はサーヴァントの皆に任せるよ!いい!?ギル!」
「構わぬ!霧と市街地、ソレを考慮し英雄どもを呼べ!」
「オッケー!決めてあるんだよね!―来て!」
右手を高々と上げサーヴァントを召喚する
「『ジャック』!『エミヤ(アサシン)』!」
呼び出されしは二人のアサシン
「でばんだね。よんでくれてありがとう。おかあさん」
堕胎され産み落とされなかった怨霊の集合体、ジャック・ザ・リッパー
「・・・あの手の解体作業は得意だ」
抑止の守護者、エミヤ(アサシン)が現れ、ナイフを構える
奇しくも同じ得物、そして同じクラス
「あれ、バラバラにしていい?いいよね、おかあさん?」
「おっけい!満足するまでやっちゃって!」
「うん――おもうぞんぶん、解体するね」
「被害は抑え、無力化すればいいんだね」
「やりにくいだろうけど、我慢して!私達が一般の人たちを怖がらせちゃいけないから!」
「――やるだけはやるよ。それがサーヴァントの勤めだ」
ガチャリ、とキャリコを左手に構え飛びかかるエミヤ
「――ついてこれるか」
銃撃、発砲、切断、両断、跳躍、粉砕
練り上げられた倫理、身体に染み付き英霊にまで昇華されたその魔術と技術がヘルタースケルターに襲いかかる
銃撃にて爆散し、切断され機能停止し、体術に砕かれ、物言わぬガラクタと成り果てる不明機械たち
「技術が不明だろうと、形を成している機械ならば僕の領分だ」
――『掃除屋』と揶揄される、世界に酷使される運命を背負った男の、効率的な殺害技術、解体術の行使――!
「わたしたちも、まけてられない。いくよ。・・・あ」
くるりと振り返り、リッカに駆け寄るジャック
「どしたの?ジャック」
「なでなで、して?わたしたち、がんばるから・・・」
「よーしよしよしよしよし!ジャックよーしよしよしよし!」
抱きしめ、頬擦りを行いスキンシップを与える
「えへへ、みててねおかあさん」
「見てるよ~!スゴいみてるよ~!」
こくり、とうなずき、纏っていた古びたコートを脱ぎ捨てる
「――きりはともだち。わたしたちをやさしくつつむゆりかご。きたれ、きたれ、わたしたちのみやこ――」
懐から、骨董品めいたランタンを取りだし
「わたしたちのふるさと――『
凄まじい勢いで霧が噴出される。その霧は瞬く間に辺り一帯を覆い尽くし。呑み込み
「なんだ!?こいつぁ!?」
直感を持つモードレッド、アルトリアが異変を訴える
「ヘルタースケルターが、腐食していく・・・!?」
霧に触れたヘルタースケルターの部品が腐食し、融解し、朽ち果て、廃棄されたスクラップへと変貌していく
「おかあさんたちはだいじょうぶ。このきりは、わたしたちがえらべるから」
「成る程、ロンドンにて排出された排気災害の再現か。硫酸を含んだ霧を節操なく撒き散らすとは、誠に『らしい』宝具ではないか」
――この霧はジャックの支配下にあり、指向性を持たせられるらしい。現に自分やマスター達はなんの苦痛も感じない
「――敵に回せば面倒だが、傘下にいれればこれほど効率的なアサシンはいまい。やるではないかジャック」
――まさに、ロンドン・・・人間の文化の負の側面を体現したかのような宝具だ
――これを産みだし、また受け入れる世界の多様性に、ただ感嘆を漏らすばかりだ・・・
世界は、あまりに多様さに満ちている・・・
「わぁい、おーさまにも、おかあさんにもほめられた。うれしいな、うれしいな、うれしいな」
飛びかかり、腐りかけたヘルタースケルターにナイフを振るい『解体』していくジャック
「うれしいな、うれしいな、うれしいな。うれしいなうれしいなうれしいなうれしいなうれしいなうれしいなうれしいなうれしいなうれしいなうれしいなうれしいなうれしいなうれしいなうれしいなうれしいなうれしいなうれしいなうれしいなうれしいなうれしいなうれしいなうれしいな」
まるで無邪気に遊ぶ幼児のように、正しく幼児のように
『組み立てる前のプラモデル』のように規律正しく解体されていくヘルタースケルター。解体に特化した殺人鬼のおぞましい神業が、ロンドンの街にて振るわれる――!
「アサシンなんぞに遅れを取るかよっ!」
魔力放出でアスファルトを砕き猛進するモードレッド
「Take That,you fiend――!!」
ハードでロックな単語をshoutしながら、迷いなき稲妻のごとき剣閃を振るいヘルタースケルターを蹴散らしていく
「くたばりやがれ!!go to hell!イヤッホォウ!!」
剣をぶん投げ引っ付かんで引きちぎり蹴り飛ばす、誰が呼んだかトレイター殺法が唸りを上げる――!
「『
聖剣に纏う風圧を爆発解放させ、その勢いで腐食したヘルタースケルターを塵へと還す
「キリツグが一人キリツグが二人キリツグが三人キリツグキリツグキリツグキリツグァアァアァア!!」
両手に聖剣を握り締め荒ぶるアサシッ、セイバーの修羅となり森羅万象を滅多斬るアルトリア
通った先にセイバーなく、通った後にセイバー無し。天上天下にセイバーなるは我一人――!
「令呪の呼び掛けも適当になっていきましたね!我がサーヴァント→我が傀儡→セイバー!あれ?最後は原点回帰?にしてもなんの説明もなく聖杯破壊しろはあんまりだとは思わなかったのですかキリツグァアァアァア――――!!」
猛り狂うセイバーとなったアルトリアは、誰にも止められはしないのだ――!
大混戦の様相を見せる最中、こちらは比較的安定していた
理由は簡単。前線が凄まじすぎてヘルタースケルターが来ないのである
「フハハ!良いぞ英雄ども!蹂躙とはこうでなくてはな!」
「がんばえー。フランはだらだらと、あんないをするだけです」
上機嫌に戦場を眺める器
「やっぱり、私なんてまだまだだなぁ・・・もっともっと精進しなきゃね!」
月女神の弓矢を放ち、ヘルタースケルターを撃ち貫きながら決意を新たにするリッカ
『いや、女神の弓矢を放ちながらパンクラチオンを修めてるマスターなんて君しかいないからね!?』
「それはアルテミスや先生あってのもの!私が磨かなきゃいけないのは――女子力!!」
『・・・私もそれには付き合うわ。だから無事に戻るのよ、リッカ』
「うん!よーし!乱れ撃つぞ~!」
秒間5発の弓矢が、機械を貫く――!
「・・・スゴい、です」
圧倒されたようにマシュが呟く
――マスターのマスラオ、現代の英雄ぶりにだろうか
「一応言っておくが、アレを見習うなよ。反面教師にするがよい。目をかけたマスターとデミ・サーヴァントが互いに脳筋になったなぞ、我の沽券に関わる」
「は、はい!マスターはとても逞しく、雄々しく、カッコいいです!私の自慢のマスターです!」
――全く同感である
「先輩もそうですが・・・感嘆していたのは、皆様の、宝具に、です」
「――ほう?」
――宝具。究極の幻想、至高の一。英雄の半身にして自己の証明
「皆さん。本当に多種多様な宝具を所持していて・・・目の当たりにするたび、魂が揺さぶられるような衝撃です」
「フッ、無理もなかろう。宝具とは己の偉業、足跡、人生を昇華したもの。それを目の当たりにしたならば、その英霊と結び付く絶対証明に他ならねばならん名刺のようなモノだからな」
――器たる英雄王の宝具は、財を納める『蔵』そのもの。これこそが、最大にして最高、総ての財を上回る神秘を秘めた至高の財なのだ
生前の『総て』を手に入れたとの絶対証明。あらゆる財と可能性をその手に納めた、王の中の、王の証明――
それを目の当たりにした総ては即座に理解するのだ。この王の偉大さを
こんなデタラメなものを見せられて驚かない人はいるのだろうか?いや、いない!だって、財を選別するたびに自分が驚いてばかりなのだから間違いない!
「そういえば、マシュめの宝具は真価を発揮していなかったな」
『・・・はい。マシュに宿った英雄の力が・・・まだ』
「はい。私はまだ、使いこなせていません」
はっきりと、マシュは口にした
「――随分と割り切っているな。もう少し悩むと踏んでいたのだが」
「悩んではいます。ですが、すぐそこに答えはありました」
――答えが、そこに?
「ほう?聞かせよ。どんな解答を得た?」
「はい。『先輩や英雄王との旅の先に、答えがある』です!」
――・・・なんと
「焦る必要はないんです。みなさんと進む限り、足を止めない限り、私はいつか、必ず私に宿るサーヴァントの本領に向き合える」
「――」
「だから、今は半人前でも、けして下を向かず進もうと。世界を救うため走り続けるマスターのように。世界の総てを背負い、がっしりと立ち続ける英雄王のように」
その顔に卑屈さはない。むしろ、清々しくすらあった
「いつか、皆に誇れる私の宝具を――マスターや英雄王にお見せできる日が来るその日まで。私は諦めないし、挫けません!・・・おかしいでしょうか?」
――・・・マシュ
「そして、私には目標があります」
「・・・ほう?」
「はい!私はいつか――」
キッ、と眼を合わせる
「英雄王最強の切り札、『天地乖離す開闢の星』を防げるような、私だけの守護を手に入れたいと考えています!」
――――
「・・・フ」
――それは
「フハハハハハハハハ!!見事に背伸びをしたものよ!我が至高の一撃を!防ぐことを目標にするとはな!フハハハハハハハハ!!」
――スゴい目標だ・・・!
「よい!許す!励めマシュ!研鑽し、歩み続けよ!何時の日か、かの全て遠き理想郷が如く!我が『天地乖離す開闢の星』を凌ぐ守護を完成させてみせるがいい!その完遂を目の当たりにしたとき!お前は真なる雪花の守護者となるであろう!」
「はい!マシュ・キリエライト!最強の矛たる英雄王と先輩を守護する楯となります!」
――どうやらマシュも、この英雄王を見て、マスターを見て目標を定めたようだ。自分のように
――やっぱり、英雄王はすごいのだ!
「あれ!あれが、りもこんです!」
指差すフランの先に現れし巨大なヘルタースケルター。英霊達が雪崩れ込む!
「フハハハハハハハハ!!誠に面白いものを聞かせてもらった礼だ!止めは我が決めてやろう!!」
――財の選別は、終わっています!
5メートルを越える巨大ヘルタースケルター。必死の抵抗と性能により攻めあぐねている仲間たち
「くそっ!!ブンブン振り回しやがって!」
「いいえ、これでよいのです」
まとめて薙ぎ払わんと、大振りに甘えた攻撃を放つヘルタースケルター
「一瞬でも隙を作れば――」
その瞬間、引き絞られた弓矢の一撃がアスファルトに着弾し、穿たれたクレーターに足を取られ駆動に異常をきたす
「先輩!」
月女神の弓矢を放ったリッカが、不敵に笑う
「ギル!――今!!」
――任せてほしい!
「英霊ども、そしてマスター!ご苦労であった!幕を下ろすぞ!受け取れ!!『
放ちし財は五門。両腕、両足の関節部分、そして動力部分を正確に射抜かせる――!
回避など間に合うべくもなく直撃し、四肢をもがれ轟音を立て沈黙するヘルタースケルター
呼応して、辺りのヘルタースケルターも停止する。やはりこの大型がリモートコントローラーだったのだ
「テメェ抜け駆けかよ!!」
「露払い、ご苦労であった!誉れある首級は総て王のものよ!フハハハハハハハハ!!」
「・・・終わったか」
「ありがとうエミヤ!ジャック!よーしよしよしよしよし!!」
「えへへ、おかあさん。またよんでね」
「はぁ、はぁ、はぁ・・・私以外のセイバー断ち切るべし・・・」
「落ち着けよ父上!オレ敵違う!」
「どうだマシュ!目の当たりにしたか!これが!英雄どもの頂点に立つ者の威光よ!賛美せよ!賛美せよ!フハハハハハハハハ!!」
「はい!英雄王は、凄いです!」
――マシュに負けないよう、自分も頑張らなくては・・・!
霧の都に、上機嫌な王の笑いが響き渡った――
『マシュ、手間をかけて悪いけど、その残骸の映像情報をまた送信してもらえるかしら。私と師匠で解析するわ』
「了解しました」
「壊れ行く瞬間ならともかく、朽ち果てた残骸を漁るのはよい趣味とは言えぬが・・・まぁ、贅沢は言うまい」
「――、オルガマリー所長。英語表記の単語を発見しました。製造者名、でしょうか・・・?」
「う・・・?なまえ?」
『読み上げてくれる?もしかしたら、サーヴァントの真名かもしれないわ』
「ラベルを貼るとは几帳面な事よな。さぞこの機械に夢を託していたと見える」
「はい――『チャールズ・バベッジ、AD.1888』」
「!?ばべっじ、せん、せい・・・!!?」
「・・・?フラン、どうした?」
「・・・・・・う、そ・・・うそ・・・」
「フラン・・・?」
「――チ。成る程。そういうことか。とことん下らぬ催しを見せ付けてくれる・・・!」
――フランの身体が、小刻みに震えている
・・・チャールズ・バベッジと・・・知り合いなのだろうか・・・?
どのキャラのイラストを見たい?
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コンラ
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桃太郎(髀)
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温羅(異聞帯)
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坂上田村麻呂
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オーディン
-
アマノザコ
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ビリィ・ヘリント
-
ルゥ・アンセス
-
アイリーン・アドラー
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崇徳上皇(和御魂)
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平将門公
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シモ・ヘイヘ
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ロジェロ
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パパポポ
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リリス(汎人類史)