人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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上空

サタン【始まったね。大切な仲間を取り戻す、気高く崇高な戦いが】

ベルゼブブ【サタン様。我等もカルデアに手を貸すべきでは。星を破壊されては彼らの旅路は…】

サタン【大丈夫だよ。彼等は必ず素晴らしい結末に辿り着く。必ず、僕が見るに相応しい結末を掴んでくれる。僕達の手助けなんて無粋なだけさ】

ベルゼブブ【しかし…】

サタン【僕がそう言うんだ、間違いないよ。ベルゼブブ】

ベルゼブブ【……】

(…魔神バアルを看取りし魂有すカルデア。このような場所で果ててほしくはないが…サタン様の言葉に逆らえよう筈がない…)

サタン【でも、ちょっぴりだけ。皆には気をつけてほしいな…】

ベルゼブブ【…?】

【善意と絆。素晴らしき光が舗装する道は、時にとある場所に続いていたりするから。どうか、彼等が迷い果てないように祈ろう。もしかしたら…】

彼らの選択は、ただ倒すよりもっともっと辛くなるかもしれないからね──


善意と絆が紡ぐ道

「カイニス!文字通り君に一番槍を任せよう!頼んだよ、我がサーヴァント!」

『カイネウスが勇ある戦士と見せてやれ』

 

「任せとけ!そんでジジイは黙っとけ!!オラオラオラァーーー!!!」

 

ピアを守護するために展開された、星型の自動防衛装置。35機あるそれらを破壊しなくては近付き隙を作るどころか、本体の活動すら誘発できない。故にマテリアルに記載されていたそれを、グランドマスターズは破壊に専念する作戦を取る。一騎当千、唯一無二たるパートナー達の力を借りて。

 

「比類なき英雄、シグルド。キリシュタリアとカイニスのサポートを!──私は、悲劇を見ない!」

 

「了解。敵味方識別完了。ピア殿の兵器のみを破壊する」

 

「ブリ!お前も合わせてやってやれ!あたいもやるからなー!」

 

「はい、マスター。あなたに、勇士に祝福を」

 

カイニスの突撃をサポートする、シグルドの絶技にて飛来する小剣。ルーンによるエンチャント、チルノとオフェリアの魔眼による遅延も重なり、兵器は早くも数機撃墜される。

 

『!』

 

ピアの意志を受け取り、目では追えないほどの速度と精度で縦横無尽に空中を駆け巡る機動兵器。その速さは並のサーヴァントすらも上回るほどで、攻撃の隙を的確に突くように飛来する。

 

「いくら速かろうと!」

「その気配を読み取り上回る!」

 

カドック、そしてアタランテは停止し、攻撃してくる瞬間を狙い叩き落とす荒業にて確実に数を減らしていく。光を編んだような全方位攻撃は、獣の勘と何千、何万と繰り返してきた訓練にて読み切り直撃を避ける。

 

「蘭!項羽様と共に道を開きなさい!おまえならできるわ!」

 

「いざ行かん、美麗の将よ」

「身に余る光栄!参りましょう、項羽殿!」

 

全てを破壊し、蹴散らす推進。勇猛と美麗を極めた剣技。そして舞い踊るかのような血の剣。それらが振るわれ大いなる戦果を叩き出す。ターゲットを引き受けながらもそれらをものともしない、嵐のような進撃はまさに中国最強の集いと呼べるものだ。

 

「ゴッホ、お前はお前の戦いをすればいい」

 

「はい、マスター!ウフフ…こんなのどうですヒマワリデコイ!」

 

デイビッドの指示を受け、ゴッホはターゲットを撹乱するヒマワリの質量を有する絵を描き殴りばら撒く。自動追尾を散らし、統率を無くした兵器達は無軌道に飛散していく。

 

「ファンシーな花には、毒やトゲがあったりするものよン!」

「機械はいいねぇ。ぶっ壊しても心が痛まん!」

 

それを的確に叩き落としていくペペロンチーノ、並びにベリル。彼等の生業と技術は、サーヴァントならざる機械程度ならば鎮圧が叶う。それが敵意薄い機械であるなら尚の事だ。

 

「エクスッ!カリバーーー!!!」

「さぁ行きますよー!ガレス!突撃ーっ!!」

 

マスター礼装にて聖剣を振るうマスターアルトリア、そしてがむしゃらに突進し蹴散らすガレス。多少の被弾はものともしない行軍にて、活路と血路を開いていく。

 

 

「皆への治癒は任せてちょうだい!即死だけは避けてね!」

 

そして皆を絶えず癒やしていくのはアイリスフィールだ。体力と魔力を堪えず供給し、間断のない攻めを可能としていく。

 

 

『カルデアも皆を全力でバックアップしている!背中を気にせず君達の全力を以て、ピアちゃんに肉薄するんだ!』

 

魔術王ソロモンの力にて、カルデアに登録されているサーヴァント達のスキルを堪えず使用し自軍を強化していくロマニ。前線で戦うだけが戦いではない。一人一人が、完全無欠の勝利に向けて突き進んでいく。誰も犠牲にしない、どんな犠牲をも容認しない。そんな、常識と情緒と共に切り捨てられる夢物語に全身全霊で挑んでいく。

 

『気持ちで負けてはならんぞキミたち!私も君達の奮闘に誓って決して逃げ出しはせん!』

 

『戦闘の意識が薄い今のうちに、可能な限り減らしちゃうべきですね!だって今のレベルで並の魔術師はロット単位で消し炭なんですもの!』

 

『誰がどれで何がどこだ!?なんなんだこれは!?どうすればいいんだ!?』

 

『落ち着いてくださいムニエル先輩!この俺が単なる童貞では無いところを見せてやる!』

 

『安全地帯とパターンを転送します。活用してください』

 

誰もが必死に、誰もが懸命に最善を尽くしている。その必死さと足掻きが生み出す命の輝き…それが、星の断罪者の裁きに抗っている。

 

 

「――ああ、凄い。凄いじゃん」

 

ピアの目には、それが南極のオーロラと同じ、いや、星々の輝き以上の美しさを有するように感じ捉える。僅かな瞬きしか生きない人間の一瞬の人生。宇宙からみれば刹那にも満たない命の織りなす紋様。

 

 

「こんなにも美しくて、眩しくて…凄い人達なんだ。みんな…」

 

モアの記憶。今まで裁きを受けた生命達の反応は様々だ。許しを請うもの、理性を失うもの、呆然とするもの。怒るもの、嘆くもの。

 

しかし彼等は違う。自分達の同胞と信じた者を助けたいと、もう一度招きたいと足掻いている。それが、自身らを裁く審判者だとしても。

 

「ピア!君はまだ新人だ、楽園のデタラメさはこんなもんじゃないぞ!」

 

「まだ教えていないわ。カルデアで過ごす日曜日は…とても楽しいって…!」

 

……壊したくない。

 

「先輩には敬意を払いなさい!バックレとか論外よ!」

 

「案外、生まれや成り立ちなんてどうにかなっちゃうものよピアちゃん!腐れ外道のアタシが言うんだから間違い無いわー!」

 

壊したくない。

 

「使命や怨念なんぞに縛られるなんて馬鹿らしいぜ?肩の力抜いていこうや」

 

「ゴッホは世界一の画家だ。個展にお前を招きたい」

 

あいつらの未来をこの手で亡くしたくない。

 

「細かいことは美味しいご飯を食べて考えましょう!」

 

「あなたを愛してくれる家族が待っているのよ、ピアちゃん!」

 

…それなら私は…せめてあの子たちの手で。

 

 

『この世界に罪のないものなんていないわ。だけど、その罪は私達が背負っていくものよ』

 

『人間は怠け者だからね!地球の罪なんて背負ったらピアちゃんぺっちゃんこだぞぅ!』

 

 

──死ぬべきだ。

 

「それは違うと言わせてもらおうか!!」

 

『!面白外人…』

 

あたし口に出したっけ…そんな疑問すら押し流す持論を、キリシュタリアは打ち立てる。

 

「君は生きるべきだ、ピア!何故生きるべきか、それは決まっている!私達が君に、生きていてほしいからさ!」

 

 

『…!』

 

『父が君を生かした理由は使命でも打算でもない。むしろアンゴル族は滅びを粛々と受け入れる高潔な種族だっただろう。ならばなぜ摂理に反し君を生かしたか?それは愚問というものだ』

 

そう、父は最期に宇宙の摂理よりも運命よりも娘を選んだ。それが何故かなど最早愚問。

 

【──父にとって、娘は世界一大切なものなんだよ、ピア。私にとって、ナイアと君がそうであるように。君は望まれて今を生きているんだ】

 

『…皆…』

 

投げかけられる言葉。その言葉は暖かき肯定に満ちている。命に本物も、偽物もない。だからこそ、こんな彼等だからこそ…

 

『…モア!いつまで寝てるつもりなの!聞こえないの!?皆の声!』

 

彼等の下に、彼女を受け入れさせたいとピアは願う。ここをゴールにしてほしいと思う。

 

『もう散々傷ついたじゃん…!もう、一人ぼっちは充分じゃん!』

 

姿を見せれば恐れられた。無二の星人として身を追われ続けた。宇宙に自分を知るものも、友好的に接するものもいなかった。

 

『ここならいる、あんたを受け入れてくれる人がたくさんいるんだよ!起きて、はやく皆に挨拶しなよ!』

 

そんな放浪の果て、自身に優しくしてくれた人が、導いてくれた楽園が目の前にある。もうすぐ、その旅路は報われる。

 

『傷ついた分、幸せにならなきゃ嘘じゃん…!辛いこと、あたしが全部持ってくから…!』

 

だから目を覚ませ。そう、起きて胸を張って出逢えばいい。

 

『起きろって言ってるでしょーが!聞こえてるでしょ!アンゴル・モア──!』

 

 

──そして、その願いは。

 

『──きて』

 

『!?』

 

『──いきて。あなたも──』

 

〔精神グラフ、規定数値を低下。アンゴル・モアを生存させるため、プログラムを起動〕

 

『───!』

 

〔オリュンポス・タイプゼウスを確認。ジャッジメント・モード起動。アンゴル・モアの保護の為、全機能の起動開始──〕

 

 

星の断罪者としての本懐を果す形で、聞き届けられる──。

 

 




システム音声『太陽系第三惑星、地球。知性体の罪業確認。推定完了。総数42兆6315億8327万9917』

キリシュタリア「きゅ、急にそっけない感じになったね?」
ゼウス『まずい、これは…!』

『疑似人格・精神バイタル混乱。本人格、極めて低下。生命維持の危機に直面していると判断。速やかに使命を遂行し、個体の保護に入ります。遂行内容──』

オルガマリー『ッ!ロマニ!固有結界投射準備!早く!』

ロマニ『は、はいいっ!』

『知性体の罪業からの解放、星の破壊。ジャッジメント・モード起動。速やかにこの星を、破壊します』

ベリル「おいおいおい…」

『ハルマゲドン、起動。この星を、破壊します──』

善意によって目覚めた星の断罪者が今、蒼き星にその刃を振り下ろさんと起動する──。

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