人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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はくのん『凄かった、マシュ』

フィリア『はい!ウルトラ6兄弟のシールドにも負けないくらいの素晴らしい防御でした!人間の皆様は本当に素晴らしいです!』

リッカ「でしょー?でっしょ〜?(ニマニマ)もっと言ったげて!できればマシュ本人にも言ったげて!」

はくのん『オルガマリーも理想魔術をマスターできたらますます強く、というか無敵になる。魔術師としてもうヤバいなるレベル…ん?』

オルガマリー→アキレウス仕込みの格闘術、メディア譲りの神代魔術、ダ・ヴィンチ譲りの発想力、器用さ、君主ならではのカリスマ、統率力

マシュ→デミ・サーヴァント。概念クラスの防御宝具獲得。聖杯と神代の肉体を有し、火力もゲーティアにより楽園最強クラス

リッカ→ひょっとして…

はくのん『………三人の中では、一番戦闘力が控えめ????リッカが???』


控えめとは…………三番手とは…………ゲッターとは…………


宇 宙 は く の ん

リッカ「はくのん!?」

フィリア『だ、大丈夫ですか!?なにがあったのですかー!?』

はくのんは衝撃の事実に虚無り、因果地平の彼方でゲッターエンペラーとマジンガーZEROとマルドゥーク神を見てきて正気に戻った。


宇宙の慈悲

『私は負けません!モアは、モアは強い子です!お父様に助けられ、ヴェルバーの侵略から逃れたモアは決して挫ける事はありません!アンゴル族として、決して恥じない生き方を成し遂げてみせます!』

 

心にダイブインするのはリッカにとってはSERAPHの鈴鹿以来、はくのんからすれば今まで食ったパンの枚数ばりの回数。ウルトラウーマンは虚無の中で数万年。その何回目かの心のコースターに、三人でどこまでもどこまでも下降していく。

 

『実家のような安心感…このひたすら浮遊するふわっふわ感は癖になる。足元にはフィリアの掌。安心安全の真っ逆さまコースター。エンジョイ』

 

「この声は…ピアじゃない本来の人格の…?」

 

『私達に語りかけているわけでは無さそうです。本当にこれはただの道筋。乙女の心の発露を聞き及ぶ時間のようですね』

 

『乙女の秘密は気持ちいいゾイ』

 

慣れきった職人の風格すら感じるはくのんの言葉のまま、リッカは聞き及ぶ。鈴鹿の際には心に田村麻呂イマジナリがいたが、今見えるものは宇宙が如き天の川、そして無数の流星群。淀み一つない、美しき心のカタチ。

 

『お父様は私に聞かせてくださいました。私達アンゴル族に意志と人格があるのは、裁きを果たす際に赦しを告げるために宇宙が授けてくれたものだと。ですから私達は厳粛に、誇りを持って。救いを求める生命に裁きと安らぎを与える為に生まれたのだと教えて下さいました』

 

『キングの御爺様も仰っておりました。アンゴル族とは、宇宙の慈悲が形となった者達だと。それ故、ウルトラ一族もその動向を視察こそすれ、阻むことは稀であったとか。厳格で厳粛な誇り高き一族と聞き及んでいます』

 

フィリアの捕捉に、はくのんとリッカはほへぇと頷く。宇宙の果てでエラいクロスオーバーが起きている事にロマンしか感じぬ二人。

 

『ですからモアもやります!罪に苦しむ生命に、赦しを求める声に応えモアはやってきます!皆様、どうかご安心ください!皆様の苦しみはモアが終わらせてみせます!』

 

「ところで、赦しを求める声ってなんなんだろ?誰が発しているものなのかな?」

 

『ヘイムーンセル。…基本的には『星』そのものだって。滅びるべき命が滅びていない事に危惧を覚えた星が、SOSとして他の惑星の最強種を招くのがシステムみたい。南極か北極かのどっかにいる水晶蜘蛛や、あーぱー吸血鬼みたいな…』

 

『アルテミット・ワン。それぞれの惑星の最強種。唯一無二の存在。アンゴル族はその星の救援要請を感じ取って、裁きにやってきていたと推測されます』

 

だとすれば、モアはずっと聞いてきたのだろう。救いを求める声を。赦しを求める声を。宇宙を彷徨う中で、その声を聞き続けた。そしてそれらを、一心に救い続けた。

 

『大丈夫です!モアは絶対に見捨てません!皆さんの声を絶対に聞き逃しません!モアは皆様の味方です、そのためにやってきたのです!』

 

『自分の故郷が滅びても、生き残りが自分だけになっても。誰かの助けになりたいと思って宇宙を彷徨い続けてきた』

 

それがアンゴル・モアという少女。慈愛と慈悲が形となった、救いと赦しを与える断罪者。

 

…しかし。

 

『だから…だから、怖がらないでください。そんな目で、モアを睨みつけては嫌です。どうか、モアのお話を聞いてください』

 

後に聞こえてくるのは、モアへの弾劾、罵倒、哀願、懇願、怒声、罵声。それらはモアに──否。滅びをもたらす恐怖の大王へと向けられた命乞いの全て。

 

『アンゴル族は精神生命体。肉体を持つ生命の死や、物質的な死の概念に疎いもの。本来ならば裁きも、その教育も成人してから行われるのですが…』

 

『おのれ、ヴェルバー…』

 

そう、ヴェルバーは全てを奪い去っていった。恐怖の大王としての使命や心構え、身につけるべき精神。それらを教わり、一人前になる前にモアは永遠の放浪者となってしまった。

 

アンゴル族の裁きとは魂の解放。肉体と罪業から魂を解き放つ、苦痛も苦悶も齎さないこの宇宙で最も慈悲深き裁き。しかし、この世界の生物は大抵が肉体と物質に生命を依存する。

 

慈悲深き赦免の審判者は、恐怖と滅亡を撒き散らす大王として畏怖され恐れられ、疎まれ、蔑まれた。それはモアも例外ではない。

 

『無理もない。恐怖の大王の顕現は生命体の生命活動ではどうにもならない。神に心を保ってもらうか、恐怖をそもそも知らないかの二択』

「チルノちゃん凄すぎない?」

 

『哀しいすれ違いと、諍いと争いをずっとずっと続けてきたのですね、モアさんは…本当なら、争いなんてもっての他な方なはず』

 

モアからしてみれば理不尽な話である。星が、魂が赦しを求めて声を発し、それに応えてやってきてみれば向けられるのは敵意と拒絶。救いを求めし生命体が何故自分を攻撃してくるのか、彼女にはどうしても解らなかった。強くなる赦免の願い。命への執着。彼女は生きろと願われた。断じて、救われた命を投げ捨てるなど出来なかった。星の願いに答えたモアは──裁きを、与え続けた。

 

『黙示録撃!一分の一──!!』

 

 

宇宙を渡り歩く灯りは、それだけだ。星が、生命が救いを求めている。呼んでいる。助けてほしいと。赦してほしいと。

 

『怖がらないでください…モアは皆様を助けに来たのです…』

 

拒絶、抵抗、星を挙げた討伐、生き延びるための交戦。裁きを果たすまで、何度傷を受けたかすらも解らない。気が遠くなるほどの星の声を聞き、気が遠くなるほどの裁きを下した。

 

『やめてください!モアは、モアは何も持っていません!』

 

星を股にかけるハンターやシーフ、ギャングにも何度も身柄を狙われた。恐怖の大王、断罪者の幼体。星を砕く力を持つ者は、俗物から見れば格好の兵器に他ならなかった。

 

『ぐすっ、ひっく…お父様…お母様…みんな…』

 

逃げ果せ、傷つけられ、孤独の暗闇で一人泣き伏せる日々。この宇宙にもう、言葉を交わせる相手は誰もいない。自分を受け入れてくれる者は誰もいない。

 

『どうして、どうしてモアを一人ぼっちにしてしまうのですか。モアは皆に会いたいです。モアはただ、誰かとお話がしたいです。どうか、モアの話を聞いてください…』

 

あまりに高次であるために、あまりに高潔であるために、彼女を理解できる存在は誰もいなかった。彼女の無垢な精神は、その孤独と疎外感に打ちのめされていた。

 

『モア様…私達ウルトラ一族がなんとか保護してあげるべきであったというのに…!』

『フィリア、責めてはいけない。……間が、悪かった』

 

悪いのは、全てを理不尽に収穫したヴェルバーだ。彼女から、宇宙から慈悲を収穫した遊星。この存在こそ、宇宙に飛び出してまず排除するべき存在だ。

 

『…泣いてばかりでは、ダメです!モアはアンゴル族最後の生き残り…!まだまだ助けを求める声は聞こえます!』

 

だが、脆弱な精神ならば狂いも壊れもするが当たり前のこの地獄を、なんとモアは一人で切り抜けてきた。彼女は、宇宙の慈悲そのものだった。

 

『モアよりつらい目にあっている方はたくさんいるはず!モアより哀しい目にあっている方はいっぱいいるはず!ヴェルバーをこの手でやっつけるため、モアは挫けてはいられません!』

 

『ウッソ』

 

復讐ではない。なんと恨みや憎しみですらない。彼女はヴェルバーを倒すことを目的に放浪していた。それは、仇討ちでは断じてない。

 

『モアのように、全てを奪われた人達を一人でも減らすためにも!モアはヴェルバーを必ずややっつけます!そうすればもう、モアのように哀しい想いはなくなるはずだから!だからモアは、絶対に絶対にヴェルバーを倒すのです!』

 

ただ、自分の耐え難い哀しみと苦しみを広げないために。もう誰も、自分のように奪われる事のないように。何よりも──。

 

『ヴェルバーをやっつけたら…皆様、モアとお話してくださるでしょうか?もしそうなら、嬉しいです!』

 

誰かとの触れ合いを何百年も行わなかった彼女は、ただの会話を望んでいて。宇宙を脅かす脅威を討ち果たした代償は、とりとめのない世間話を自分としてくれるだけでいいと心から思っている。

 

『いつか、モアとお話してくれる人がいてくれますように…。さぁ、今日も裁きを頑張るぞ!おー!』

 

彼女は、たったそれだけを夢見て遥かな宇宙を彷徨い続けてきたのだ。

 

 

ただの一度も理解されずとも。

 

ただの一度も対話できずとも。

 

救われたい全ての者達の為に、己の全てを捧げる。そんな高潔なる宇宙の慈悲が『恐怖の大王』と畏怖されし少女の全てだったのだ──。

 

 




リッカ「…。…ねぇ、はくのん」

はくのん『ほい』

「きっと、宇宙の全てがモアちゃんに助けを求めてたよね」

『うん』

「モアちゃんはずっと、それを聞いてたよね」

『うん』

「じゃあ、誰が…モアちゃんを助けてあげたんだろうね」

『…うん』

フィリア『ニャルラトホテプさんを慕う理由は、本当の本当に…自分と話をしてくれたというだけ。だったんですね…』

リッカ「……伝えに行こう。モアちゃんにも、ピアちゃんにも。…恐怖の大王にも」

あなた達も、救いはあるべきだと。あなたたちだって、大切な存在なんだからと。

『うん』『はい!』

決意を固め──心の最下層に三人は降り立つ──

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