明日と今日で返していくのでしばしお待ちを!
「此処が…アンゴル・モアちゃんの心の深淵」
『ネロがフワァって降り立つの好きだった。今でも好き』
スパイナルコースターを抜け、辿り着いた星の審判者の魂、心の最奥。ここには虚飾や建前のない、本当の心の発露のみが現れる場所だ。
『あれがレリーフ。とても美しい。乙女の心は美しい』
(はくのんも乙女だと思うんだけどなぁ…)
花弁と石板の合わせた意匠のレリーフに、紫と白の衣装にて目を閉じる白髪白肌の少女のモニュメント。間違いなく、ここの心の象徴にして彼女の心そのものたる証明。
『でしたら、心の顕れたる本人がいらっしゃるはずなのですが…戦闘にならずにお話できる事をお祈りします…!』
フィリアの言葉に、はくのんとリッカは生唾を飲み込む。リッカはともかく、はくのんは少し諦めが悪いだけの美少女である。ハルマゲドンを受けては木っ端微塵は免れない。終末の一撃の威力は把握しているが故に畏怖は拭えない。
「だいじょーぶだよ。モア、そんな娘じゃないからさ」
すると3人に掛けられる朗らかな声。振り返ってみれば、そこにいたのは短いながらも見知った、ニャルラトホテプの新たな愛娘。リッカと瓜二つの見た目の少女。
「ピア!!良かったぁ!消えなかったんだね!!」
「あはは…疑似人格とのコンクリフトを危惧してたんだけど意外と図太かったっていうか。流石は宇宙の慈悲たる娘、あたしくらいはへっちゃらっぽい」
照れくさそうに告げるピアは、やがて向き直る。自分は新たな人格として、成すべきを為さんとしているのだ。
「三人が来てくれたって事は、モアをどうするかは決めてるんだよね?」
「もちろん。モアちゃんの心に触れたよ、さっき。そして決めた。──ピアも、モアちゃんも、必ず助け出す。カルデアに連れて帰る!」
『私達は区別も差別もしない。疑似人格でもシステムでも、仲良くなったらずっとマブダチ。何を隠そう私もただの人間では…おっとネタバレ厳禁』
「ん…ありがと。正直なところ、死にたくも消えたくもなかったっていうか…そうするしかないかなと思ったからやろうとしただけ。受け入れてくれるなら…」
どうぞ、よろしくお願いします。そう告げピアは頭を下げた。図らずとも、いや必然的に彼女を救出する事に成功した三人は笑みが溢れる。
『ニャルラトホテプの顔を全部喜びに染めてやる』
「ニコニコホテプってどうかな!クトゥルフっぽくないかな?じゃあさらなる笑顔のために、次はモアちゃんとお話がしたいな!」
「オッケー。モアの心は今眠ってる。本来ならあたしが消えて人格を表層に出す必要があったんだけど…皆が来てくれたなら」
ピアは手を翳し、空を示す。すると空からモニュメントと同じ姿と人相を有した少女が厳かに舞い降りやってくる。
「彼女が、恐怖の大王アンゴル・モアの主人格。最初におっさんに接触した少女の人格だよ」
『zzz……』
『気持ちよさそうに眠ってらっしゃる』
ピアによると、先程までは表層に出ることすら叶わぬ程に意識の深淵にいたらしい。しかし皆の尽力で、ノンレム睡眠からレム睡眠…つまり、浅い眠りにまで漕ぎ着けたのだという。
「眠りが終わるまで、あともうちょいかかりそうなんだよね。だからそれを待ってる間…っていうのは変なんだけど。もう一人、面倒を見てほしいやつを見っけたんだ」
ピアがそう口にし、指し示した者。それは体育座りで俯いている、衣装が黒いアンゴル・モアに認識できた。3人にピアは説明する。
「彼女は、ルシファー・スピアに仕込まれてたアンゴル・モアの防衛システムと肉体に宿る生体反応、そしてモアの本能が奇跡的に人格として起動した言うなれば恐怖の大王という側面そのもの。モアでもピアでもない、全く新しいモアの存在ってやつかな」
『アンゴルシリーズ…完成していたのかっ』
『モアちゃんでもピアちゃんでもない…あっ!先程皆さんと戦っていたのは彼女ということでしょうか!』
フィリアの言葉にピアは頷く。彼女こそ、アンゴル族が残した最後の遺産にしてセーフティ。彼女自身を防衛する第三の人格なのだ。
「─────なら!」
なら、決まっている。彼女は部外者でも邪魔者でもない。真剣に人類の未来と苦悩を憂い、涙を流してくれた心優しい審判者だ。そんな彼女を見捨てることなどできない。リッカの腹はとっくに決まっている。
「こんにちは、アンゴル族のあなた。お話をしたいのですがよろしいですか?」
目線を合わせ、丁寧に有効的にゆっくり話しかける。体育座りをしていた恐怖の大王は、そろりと顔を上げる。
【…こんにちは】
「さっきは、私達の為に裁きを与えようとしてくれてありがとう。あなたの慈悲深さに一言お礼が言いたくてやってきました。私は藤丸リッカ。こちらは月の新王岸波白野。こちらはウルトラウーマンフィリア!すごいメンバーでしょ!」
『座右の銘は蛮勇であれ。プレミアムロールケーキ大好きはくのんです』
『ご紹介に預かりました、フィリアです!その節は大変お世話になりました!』
【…私は、あなた達を罪から解き放つ事ができなかった】
三人の自己紹介に、彼女は申し訳なさそうに俯く。彼女は生命を滅ぼしたいわけではない。生物が抱える罪に赦しと、罰に終わりを与えるために行ってきたのだ。
【罪は赦されなくてはならない。私は、アンゴル族は宇宙にその赦しを担われた一族。我等の黙示録は、声に招かれ振るわれる。…あなたたちの罪はあまりにも多く、重いものだった】
あまりにも深く、あまりにも重い。起動した彼女は全身全霊で人の罪を解き放とうとした。しかしそれは、阻まれた。
【私は罪を赦すもの。アンゴル族が心と人格を有するのは、その痛みと苦しみを共有するため。だから私は、恐怖の大王のシステムとして起動した。だが…】
『私達カルデアは、その裁きを跳ね除けた』
恐怖の大王は頷いた。それは裁きを受けなかったことへの弾劾ではなく、人という生き物への憂いであった。
【これから先、あなたたちはずっとずっと苦しんで生きていくのです。私が裁きを、赦しを与えられなかったばかりに。私は恐怖の大王として、赦されない罪というのを容認してしまった】
「………」
【永遠に赦されない罪がどれほど残酷なるものか、私は知っています。今までの生命は、罪を背負えない生命は自滅を辿るのみでした。自身の罪に、耐えられなくなって】
その光景は地獄であったという。お互いが殺し合い、秩序も自制も効かない魂たち。消えるべき時に消えられない魂は、救いを求め暴走し自滅に向かうのだとも。
【あなたたちは、アンゴル・モアと疑似人格を受け入れてくれた。その優しさと慈悲は、宇宙における宝物です。そしてこの美しい蒼き地球も。だからこそ…私はみなさんが抱える罪を打ち払いたかった】
「私達が、積み上げてきた罪で自滅することが嫌だったから?」
【はい。私は…皆さんにそんな終わりが訪れてほしくない。そう感じるようになりました。ですが…私の力は及ばず、皆さんに救いを与える事ができませんでした。このままでは、いずれ皆さんは…】
いずれ、自滅と残酷な破滅に押し潰されてしまう未来を彼女は憂いていたのだ。人間の罪の重さを責めるのでなく、あくまで自身の至らなさを悔やんでいるのだ。
【地球に生きる生命達よ、ごめんなさい。私は、恐怖の大王として…審判者として。皆さんに捧げられる救いを取りこぼしてしまいました…】
どこまでも罪人や咎人を思い、偲び、どれほど虐げられようと慈悲と寛容を失わない。これこそがアンゴル族。そして彼女は、その失敗を悔やんでいる。
『リッカ、ピアとモアは大丈夫そうなら、彼女にも注力しよう。彼女は、ちょっと対話に手順がいりそう』
(うん!彼女にだって、笑ってほしいから!)
三人は頷く。彼女たち『三人』を助ける。こちらも三人。相手と数に不足はない。
──ウルトラ一族に並ぶ宇宙の番人。それらとの未来を懸けた対話が始まった!
はくのん(対話の主題は如何に)
リッカ(見た感じ、裁きの失敗と私達の罪の行く先に凄く憂いを感じてるね。人間は大丈夫だよって教えてあげるか、そもそも裁き自体が失敗してないよって認識を変えてあげるか…)
フィリア『!それならば『星の声』を彼女に伝えるのはどうでしょうか?彼女は人間の有する罪業に反応して起動しました。ですが本来はまず『星の声』にて裁きを開始するはずです』
リッカ「そうだね!つまり『まだ裁きの時じゃなかったからノーカン』でアプローチすればいいんだ!」
はくのん『ならば星の声。しかしどうやって』
リッカ「実はこんな時の為に、ある人から映像受け取ってたんだ〜!」
はくのん『さすリッカ。ではレガリアで再生』
リッカ「これを見てください!」
【?】
タンクトップアルクェイド『こんにちは!星の触覚、アース・ブリュンスタッドです!』
【!?ほ…星の、声!?】
はくのん(カルデアホントまじぱないの)
リッカ(星の声に直接聞けるよ!)
『それでは地球に聞いてみましょう!はい地球の触覚!星は人間を裁いてほしいのかな?裁いてほしくないのかな?』
リッカ(あれっ?これって)
『どっちなのかなっ!?裁いて〜〜〜〜〜〜!!』
はくのん『あの曲流したい』
『〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!』
フィリア(ドキドキ…)
『〜〜〜〜〜〜!!!』
はくのん(なげぇ)
リッカ(何気にこのギャグに全人類の命運がかかってるんだけど!?)
『ほしく!ないっ!!!むーん!!(月の意)』
【!!】
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アース・ブリュンスタッド『にぱっ☆』
はくのん(映像、終了)
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(どうしよう、この空気)
紛れもない星の変な意思表示に、一同全員は長い長い沈黙に包まれてしまったのだった…。
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