ディーヴァ『無事よ、マスター。今娘さんと接触中』
ニャル【そうか…良かった。皆で帰ってこなくちゃ意味がないからね】
ディーヴァ『大丈夫よ。機械の私達も受け入れてくれたんだもの。今更異星人くらいへっちゃらへっちゃら!』
うたうちゃん『うたうもそう思います』←ログインした
ニャル【…迷惑をかけてばかりだな、みんなには。それでも、言える言葉は一つしかない】
『『?』』
【ありがとう。ここにこれて良かったよ。…さて、父として男として、けじめを付けなくては】
うたうちゃん『……切腹でしょうか?』
ディーヴァ『怖いわ!発想が!』
「それでは、改めてご挨拶をさせていただきますね。私はモア。アンゴル・モアと申します。ニャルラトホテプおじさまの言葉の導きにて地球にやってきて使命を果さんとしていたのですが、魔神マルコシアスさんの要請を受け衛星軌道上近くで眠っておりました!どうぞよろしくお願い致します!」
遂に目覚めたアンゴル・モア。ピアとルシファー・スピアから生まれた第三人格の大本にして、正真正銘の断罪者。本来ならばラスボスの降臨、真打ちの登場という絶望的なシチュエーションであるのだが、彼女本人に敵意や害意は微塵もない。純真無垢が形となったような精緻なる人当たりは、宇宙の慈悲と呼ばれしアンゴル族の気性が形となっているかのようだ。
「私はこの世界に生きる人類って種の一人、リッカです!こちらは月の王様、こちらはウルトラウーマン!あなたをカルデアに招く為にやってきたんだ!」
『月のフランシスコザビエルこと岸波白野。モアどのと呼ぶのが何故か非常にしっくりくる。よろしくお願い致します』
『私はフィリア、O-50出身のフィリアです。モアさん、長い長い放浪の旅、大変お疲れ様でした…!』
挨拶を交わすと、それに倣い頭を下げるモア。頭の下げあい挨拶の交わし合いに発展した微笑ましい光景は、今まで宣告に抗っていた星の存亡のやりとりの首謀者との対話とは思えない程に和やかである。
「あなたを家族として迎え入れたいって人が待ってるんだ。ニャルラトホテプって覚えてるかな?」
「おじさま!?おじさまがこの星に辿り着いているのですか!?なんという事でしょう!モアはすっかり寝過ごしてしまっていて…!地球に来た際に色々ご案内できたらとも考えていたのに…!」
哀しげにしょんぼりするモア。彼女はニャルラトホテプの単語を聞くととても嬉しそうに感情を発露する。きっと、今もずっと変わらずに彼を恩人と捉えているのだろう。騙されたなどとは考えもついていないところは、まさに慈悲と善性の化身の面目躍如といったところか。
「心配しなくても、パパ…あぁいや、おっさんはあんたの事を待ってるよ。寝坊したんだからごめんなさいだけは忘れないようにしなよね?」
「あっ!ピアですね!夢の中で私はそう名乗っておりました!休眠状態にあった私の存在を保護してくださり、本当にありがとうございます!おじさまに是非、ご挨拶しに参りましょう!」
自分の存在、疑似人格の独立にも決して動じることなくありのままを受け入れる。それは彼女が精神生命体であると同時に、自身の存在が揺るがぬが故の堂々とした自己確立性の現れだ。故郷と隣人を滅ぼされ、宇宙を放浪し続けて尚微塵も精神に異常をきたさなかったその心は、今更もう何人かの自分程度の事象で揺らぐはずもないのである。
【今回の責任は、早合点した私にもある。防衛システムと精神生命体の掛け合わせで偶発的に生まれてしまった人格である私ですが、カルデアに宇宙の現状や情報提供くらいは可能なはず】
「事務担当、理路整然タイプのモアちゃんってところかな?ニャル喜ぶよ、きっと!二人だと思ってた娘に、もう一人来てくれたんだから!」
『とんだ大家族でこれにはニッコリ。これで立派なビッグダディ』
『授かり方は違えど、想い合う心があれば家族!キングのお爺さまもそう仰ってくださいました!分かり合うことが出来て、何よりです!』
ここに来て暴走、最終決戦といったこともなく話し合いは潤滑に進むこととなった。一度目覚めた魂は、決して誤解や威嚇などで力を振るうことはない。彼女は改めて、リッカ達へと向き直る。
「それでは、改めてこの星に身を置くためのよろしくの御挨拶をさせてください!アンゴル族出身、アンゴル・モア。どうぞ今後ともよろしくをお願いしたいのですがよろしいでしょうか?」
「勿論よろしいですとも!こちらこそ、どうぞよろ」
「あーっ!!」
「!?」
「DNA情報検索結果照合…!もしや、もしやリッカさんは私の疑似モデルの娘さんと言うことになるのでしょうか!?」
「───うん!そうなります!母親が、大変お世話になりました!(お辞儀)」
モアの言葉に悪気はない。そしてリッカの中にももう、その存在は蟠りでもなんでもない。だからこうして彼女を受け入れる。血縁の繋がりも否定しない。彼女はもう、誰の代替でもない一人の人間なのだから。
「いえいえこちらこそ!お母様には大変モデルの参考にさせていただきとても感謝しておりまして!(お辞儀)」
「いえいえこちらこそ!(お辞儀)」
『道を譲り合う過程でフェイント合戦になった時かのような奥ゆかしさ。ジャパニーズ侘び寂び』
「……あたし…謝らなきゃね」
『ぬ?』
「おっさんって、モアにつられて言ってきたけど。おじさまとおっさんじゃ、全然受け取りの印象が違うじゃん?傷つけちゃったよね、おっさ、…パパの事」
ピアは無知ではなく、むしろモデルにした女性の聡明さと美徳を完璧に受け継いだがゆえに軽い自己嫌悪に陥りかけていた。そんな精神の多感さを、はくのんは受け止める。
『娘がすることはなんでも可愛いもの。それくらいの言葉でニャルパパはあなたを嫌ったりしない』
「え…」
『親の思い通りに育つ子供なんていてはならない。自由に、時には反抗的にもなっていく一人の存在を育てるのが子育て。だからピアのやんちゃな物言いを、あのファーザーは受け入れてくれる』
「月の王様…」
『他者には子供の無礼でも等しく殺す邪神で、家族や身内には殺されようと笑顔。それが楽園にいるパパラトの風貌。あなたは大切な家族。クソオヤジと言っても赦してくれる。多分死ぬけど。だから…』
だから、帰ってあげてほしい。はくのんは王としてピアの迷いを晴らす言葉を授ける。その妙かつ確信に満ちた後押しに、ピアは意を決し頷く。
「変なやつだね、あんたって」
『魂がオヤジとはよく言われます』
【私はルシファー・スピアの端末AIとして、二度とこのような裁きの違いがないように管理を行う。…家族がみな、いなくなった今、裁きと許しを決して違えない事こそが一族の誇りを護る唯一の術だ】
そして、真面目な恐怖の大王たる彼女は頷く。本来なら人格の形態は不要なのだが──
『なら是非、人を知ってもらえたら嬉しいです。星の声だけでなく、そこに生きる人達を知る。見聞を拡げる事こそ、大切な成長の第一歩ですから』
それをフィリアが制する。かつて彼女は光に選ばれるために作られ、見出された者だ。そんな彼女だから解るのだ。生命は使命のためだけに生きてはいけない。この世界には楽しく素晴らしい事が数多ある。知らぬままでは勿体ないのだと。
『世界を知ってください。素晴らしき人間の皆様と一緒に。それがきっと…あなたを愛した人々への安らぎにも繋がるはずですから!』
【…えぇ、わかりました。精神生命体として、冤罪や手違いというエラーを抹殺するために。モアとピアを見守り、制し、そして共に歩むと致しましょう】
こうして、一同は三人の娘を救出。対話の成功をディーヴァの端末からカルデアに報告する。
「それじゃあ皆、帰ろっか!私達の家に!家族が待つカルデアに!」
『記念の節目も近い。がっつり皆でお祝いしよう』
「おじさま…漸くまたお会いできます!お話したいこと、たくさんあるのです!」
「ナイア姉さんにもお礼言わなくちゃ。妹として…ね」
【まずカルデアの皆様にごめんなさい。それが、私の成すべき使命】
『ふふっ、それでは皆様!しっかり掴まってくださいね!この世界から帰還いたしますよ!』
『というと言える。リッカ、生のアレが』
「あ!アレ!ウルトラマンが飛び立つ時の!よし行くよ、皆!せーの!!」
「『「『【──シュワッチ!!】』」』」
フィリアの手の中で、大切に保護され飛び立つ一同。取りこぼしは何もなく、確かに救いは果たされたのだ──。
…こうして、ノストラダムスの大予言はまた外れ、人類滅亡は夢想となった。
人はこれよりも生きていく。積み上げた業の何倍もの成果と成長を掴むことを夢見て。
…ただ、一言付け加えさせていただくとすれば。
はくのん『(地球が滅亡するの)何度目』
である。
…しかし、全てが終わった後で。
【もう一度】、世界の滅びが来ちゃうのはまた別のお話…。
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