マシュ「何の光です!?」
ロマン『これは…!?』
ニャル【──では、行ってくる】
ディーヴァ『気をつけてね、マスター!』
〜
ギル《さて、これからよ。椅子はいくつ用意するべきか…ふはは、さぁ見せてみるがよい!》
──どきどき…ニャル様、家族をお増やしになってください!
フォウ(皆待ってるぞー!頑張れよー!)
〜
サタン(感涙)
ベルゼブブ【……ある意味で、この裁きは苦しみもなく、嘆きもなく終焉を迎える人類に与えられた最後の慈悲だった】
(それすらも跳ね除けた人類は…一体どこへと向かうのだろうな…)
「おじさまーー!!」
【モア!】
フィリアの手から光の珠となってニャルに突撃したモアは万感の思いで彼に突撃を敢行し、邪神はそれを正面から受け止める。かつては嘲弄を、今は心からの安堵を以て彼女に向かい合う。
【あれだけのつらい目に逢いながらも、よくぞここまで真っ直ぐに在ってくれた。こうして再会できた事、心から嬉しく思うよ。モア】
「おじさまがモアと触れ合ってくださったからです。あの時に助けていただいて、地球の場所を教えていただき…モアはこの美しき蒼き星に辿り着く事ができました」
そう、ニャルは彼女に地球の場所を示した。いつまでも彷徨していては面倒なことになるやもといった悪辣な打算すら、彼女は自身の希望として懐き続けたのだ。
「そして、魔神さんの一柱、マルコシアス様に説かれたのです。『まだ滅びの時には早い。人は罪業を乗り越えられる。人は必ず罪を越えるものを生み出せる』と」
【マルコシアス…正義感と義憤を有する魔神か】
彼がモアに人の勇気と美徳、そして可能性を熱弁したのだという。彼等の根底、それは人類愛。今ある人間ではないとの注釈はあれど、彼等は罪と死を乗り越えようと本気で考えモアに説いたのだ。人は、罪を超えることができると。
「その言葉を信じて良かった。モアのもたらした裁きを、皆さんは見事覆してくださった。だからこうしてまたおじさまに出逢えました!モアは、モアはとても幸せものです!」
【……──】
あれほどの目に逢いながら、幸せと心から言ってのける事ができる彼女の純真さは最早宇宙に放逐していいものではない。邪神だからこそ、彼女の純真さが他人に触れればどうなるかを分かりきっている。
…自身が真っ先に悪用したように。母星が滅んだ今、彼女の居場所は、彼女が彼女でいられる場所はもう宇宙のどこにもないのだ。清水の中でしか生きられない魚の如く、彼女を擁することができるのは最早、ここしかない。
「おじさま?」
楽園の皆に保護を任せるのはあまりにも無責任だ。自身がもたらした悪行にて、カルデアと地球…そして彼女自身に多大なる迷惑をかけた。
【…………よし】
最早盤外で嘲笑う邪神は楽園に討ち果たされた。今は自身も、この世界と叙事詩にて生きる一人の役者。ならば己の全てに責任を背負わねばならない。
【…モア。君さえよければ…】
そう、彼女を本当の意味で受け入れる。彼女の第二の人生を支える。それが自分が、父として成すべき事だ。彼女の先達として、縁を結んだものとして…。
(今更、何を言うつもりだ?)
【!】
心の内より聴こえた声。別人格ではない。これは彼自身だ。彼自身がこの楽園で培ったもの。『良心』…その呵責が彼を責め立てる。
(家族に誘うつもりか?利用し、星を滅ぼさせる手前にまで悪用したこの無垢な娘を?どの面を下げて彼女を娘などと呼べる?)
なんという皮肉か。彼自身は無貌なる者。故に後悔も反省もない存在だった。それが今、自身が新たに得た無二の貌にて最後の締めを邪魔立てする。
(疑似人格の洗脳とは訳が違うぞ。彼女の純真さを踏み躙ったお前が彼女の父を名乗るなど赦されると思うのか?)
【…………】
(父を、家族を、全てを失った恐怖の大王。さぞや情愛に飢えているだろう。お前は彼女を一瞬でも、生物兵器として見ない確信が持てるのか?)
彼は理解している。自身がいつか…彼女を『兵器』として扱うやもしれない可能性を。親子の情を悪用してしまう可能性を。ナイアの様な比類なき奇跡が二度も起きる、天文学的可能性を。
(彼女の親はもう死んだのだ。ナイアの様に絶たれた訳ではない。お前に、肉親以上の親になる覚悟はあるのか?)
【……私は…】
楽園にて紡がれた貌の言葉が突き刺さる。モアへの言葉が出ない。モアは心配そうな目で見上げてくる。その顔に、告げる言葉が出てこない。
【……君に、私などが…】
親子になどなれるはずがない。そう、俯きかけたその時──
『秘匿通信、解放』
瞬間、ニャルのみが聞こえる音声にてチャンネルが開かれる。それは、彼が紡いだ縁。…うたうちゃんがもたらした、家族へと繋ぐ絆。
『何でそこでヘタレんのさ、バカ!』
【エキドナ…!】
彼のケツを蹴り上げる威勢万端な声音、彼の妻、エキドナその人。言い出せない彼を見かね、通信を繋げたのだ。
『アンタ、ナイアの親やってるでしょうが!あんなに立派な娘に育てたでしょうが!ならなんでモアにも同じようにしてあげようってならないの、バカ!』
【いや、しかし。私は彼女にとてもひどいことを…】
『子供が新しい人生歩むかどうかっていう瀬戸際にアンタの私情なんか挟むんじゃないよ、ボケナス!!』
断罪だった。彼の悩みを打ち砕き切り裂くキッパリとした一撃だった。エキドナは知っているのだ。父たらんとしている彼の姿を。理解しているのだ。親たらんとする苦労を。
『アンタね、リッカの何を見てきたの?親が自分の都合で子供の幸せを奪うことがどんだけクソッタレか見てたでしょ?アンタが今言うこと言わなきゃ、モアはもう今度こそ親の温もりなんて味わえなくなるんだよ!』
【エキドナ…】
『アンタだけなんだよ、今彼女を幸せにしてあげられるのは!親として生きるって決めたんなら、半端な真似するんじゃないよ!!子供の幸せと笑顔より、アンタの悩みは重いもんなのかい!?しゃんとしな!ニャルラトホテプ!!』
【…………!】
『マスター。もう一件のメッセージをどうぞ』
そして更に、うたうちゃんの導きにより彼女が告げる。娘としての、後押しを。
『お父さん…』
【ナイア…!】
『私…幸せです。お父さんに出逢えてからずっとずっと幸せです。お父さんは親として…、全てのものを私に授けてくださいました。娘として、お父さん以上に自慢の人はいません』
良心の呵責があろうとも、積み重ねてきた罪業があろうとも。彼が大切にしたもの、彼が大事に磨き上げたものの価値は決して変わらない。今まで積み重ねてきた罪悪感が咎めるとするならば、今まで積み重ねてきた美徳と幸福が背中を押すのは自明の理。
『だから、娘としてお願いします。お父さん…!彼女を、彼女をどうか家族としてお迎えしてあげてください!星も、家族も、友達も亡くしてしまった彼女を、私達で支えましょう!』
【…娘よ】
『私は充分に幸せにしていただきました。なら今度は、この幸せを誰かと分かち合いたいのです!お父さんがしてくれたように、私は目の前の彼女に、この幸せを分かち合いたい!許されるなら、家族として!この宇宙で出会えた、大切な隣人として!』
──邪神は、顔を上げる。自身では屈した罪悪感を、見据える。
(…あれだけ言われなければ前すら向けんとは。真の意味で、貴様は邪神の面汚しだ───)
愉快げに消え去る、良心の咎。消え去ったそこには、心配と不安を浮かべる娘がいる。
【……あぁ、その通りだ。私は決して、背を向けてはならないのだ。犯した罪にも、自分にも】
我が身可愛さに、成すべきを成さないのは楽園の参列者として相応しくない。地獄の業火や極寒に晒されようと、成すべき事が今ここにあるのだから。
──幸いな事に、自身の不甲斐なさを蹴散らしてくれる絆は傍にいてくれる。彼女たちがいてくれれば、必ずや成し遂げられる。償いではなく、家族として。
【モア。君さえ、君さえよければ…いや違う。君を…】
「おじさま…?」
【君を、家族として迎えたい。私の娘となってくれないか。もう君を…悲しませないと誓う。君を…幸せにしたいんだ】
邪神は…否。今を生きる父として彼は告げた。どうか、君を家族として迎え入れさせてくれと。
「──!お、お、………」
【お?】
彼女は理解した。把握したのだ。彼が今、自身の幸せを一身に願ってくれている事を。故に──いや、あるいは。
「────おじさまーーーー!!!!」
【おぶふぉおっ!!!】
邪神と断罪者故、こうなる事は必然なのやもしれない。モア歓喜のタックルに、邪神は腹と胸に甚大なる愛のダメージを受けるのであった──。
モア「モアは、モアは嬉しいです…!家族と、仲間と分かれずっと一人でいるしかないと思っていました!それがまた、家族を作れるだなんて…!」
ニャル【モアだけじゃない…君たちもだよ。ピア】
ピア『!…パパ…』
【(爆散)…ふふ、おっさんはもうやめたのかな?(吐血)反抗期は誰にでもある。気にしないでいいんだよ】
『…ありがと』
【そして、君も。名前がまだないんだったね。私の大切な隣人達が、君の名前を考えてくれているんだよ】
恐怖の大王【…!】
ニャル【それでは、改めて…三人共、私は君達の幸せを助けさせてもらう。これから、よろしくお願いするよ】
モア「はい!おじさま!モアたちを、どうかよろしくお願い致します───!」
……こうして、本当に裁きは覆された。
──そして残るは、彼女達の地球の来訪の祝福のみ。彼女達の新たなる人生の門出の祝福のみ──。
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