人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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人理を巡る、開闢の星

「はーい。点呼とるよー!元気よく返事してねー!」

 

 

「藤丸リッカくーん!」

 

「はーい!」

 

「マシュ・キリエライトちゃん!」

 

 

「は、はい!」

 

「オルガマリー・アニムスフィアちゃん!」

 

「はいはい……」

 

「ギルくーん!」

 

「うむ」

 

「そして私!さぁブリーフィングを始めよう!」

 

「……あのさぁレオナルド。緊張感皆無にするの止めようよ」

 

 

ロマンが呆れながら呟く。レクリエーションみたいなノリのブリーフィングルームに喝を入れる

 

 

「女子が集まればかしましいって言うだろ?窮地にもユーモアは忘れちゃダメだぜ?」

 

「今から凄い大事な話をするんだぞぅ!?できれば気を緩めないでもらいたいんだけどね!?英雄王からも何か言ってやってくれないか!」

 

「理不尽は王と天才の特権。凡百な民草はそれに付き合うのが務めよ」

 

「くそっ!まともなのは僕だけか……!」

 

本当に弛んでいるなら自分が一喝する。緊張をほぐす天才の心遣いだとしておこう

 

 

「ロマニ、私が説明するわ」

 

オルガマリーが歩み寄る

 

「所長として、まずはお礼を言います。マスターリッカ、マシュ。そして英雄王ギルガメッシュ。あなたたちの尽力で、冬木の特異点は消滅しました。本当に、お疲れさま」

 

 

「皆頑張ったからだよ!ね?マシュ、ギル?」

 

「はい、先輩!」

 

「うむ。して、事態は好転したのか?何か不明瞭な点はあるか?」

 

 

「つい先ほど、私とレオナルドでシバを復旧させ、ロマニに観測を頼みました。どう?」

 

「はい、こちらを」

 

 

浮かび上がるカルデアス。変わらず紅蓮に燃えた球体のままだ

 

 

「わぁ真っ赤っか」

 

 

「2017年以降の未来は変わらず焼け落ちたまま、か。星は余さず焼かれ、踏みとどまれたのはこの天文台のみ、外界は冥府も同じ……」

 

「うん。カルデアは宇宙に浮かぶコロニーだと思ってくれ。一歩踏み出せばそこは死の世界だ。外界に繋がるものは何も無い。すべて死に絶えている」

 

「ロマンチック……でもないなー。どこにもいけないし」

 

図太いのか心胆が太いのか。動じた様子はない

 

……大したマスターだ。死地を潜り抜けただけはある

 

「それで?よもや現状確認だけで脚を運ばせたのではあるまい。打開の策を申せ策を」

 

「せっかちだなぁ、余裕は大事だよ?」

 

「拙速を尊べ、阿呆」

 

「打開策!あるの、ロマン!?」

 

「もちろん!これを見てくれ」

 

紅蓮のカルデアスが、青色を映す

 

その地球は、歪んでいた。七つの点を浮かび上がらせ、滅茶苦茶に光り輝いている

 

 

……あれらは人類史のターニングポイントのようなモノらしい

 

革新的な発明

 

画期的な興国

 

決定的な訣別。 

 

人類が人類足るがゆえに必要な事柄。人類史の土台となった七つの輝き

 

それらに立ち向かい、歪みを修正する

 

「特異点には聖杯がある。時間移動、空間転移には聖杯が無いととてもとても無理なんだ」

 

「聖杯こそが特異点の中核。いくら特異点を直しても聖杯が残っていたら、またやり直しになってしまう。回収……ダメなら破壊をしなきゃクリアにはならないということ」

 

「じゃあつまり、特異点にいって聖杯持って帰るのを繰り返すんだね。簡単そう!」

 

「そう楽観はできない。特異点とはいえ、紛れもなくそれは人類史」

 

「僕たちは立ち向かわなくてはならない。人類史に弓引く冒涜を、人類史を救うために」

 

人類史に、か

 

歴史の偉人が積み上げ、歴史の英雄が切り開き、築き上げてきた一枚の紋様

 

 

それを直すために、一から織物を編み直していく。少しずつでも、確実に

 

「……」

 

「……こうなってしまった以上、私はあなたにこう問わなくてはならないわ。卑怯だと、小賢しいといった罵倒は全て私が受けます」

 

オルガマリーに少し前までの困惑はない。毅然とリッカを見据えるその姿は、人の上に立つ風格を纏い始めていた

 

 

――これだから、人間は面白い。叩けば響くとはこの事よ

 

器の感慨に同意しながら、顛末を見守る

 

 

「マスター番号48。人類最後のマスター藤丸リッカ。貴女は、この人類最大の試練に向き合う覚悟はある?」

 

「カルデアの手足となり、眼となり、刃となり盾となり、狂い果てたこの歴史に立ち向かう意志はある?」

 

「曖昧な言葉は認めません。是か非か。はっきりとこの場で口にしなさい」

 

 

「貴方に――決意はあるかしら?」

 

「もちろん!私達で世界を救おうよ!」

 

 

――向こう見ずか、はたまた本物の豪胆か

 

「クッ、ハハハハハハハハハ!即答とはな!医師よ、どうやらこやつが残ったのは思わぬ活路かも知れぬぞ?」

 

……それでこそだ。愉快に笑う器に、魂がまた意志を固める

 

「……ごめんなさい、リッカ。こんな重荷をあなたに……」

 

「違いますよ、オルガ所長」

 

「そういう時は、ありがとう!だよ?ね。ギル!」

 

そうだとも。友人の間に、過度な敬いは不要なのだから

 

「親しき仲にも礼儀あり、という言葉を忘れるなよ。貴様は馴れ馴れしすぎるきらいがある」

 

「身体でぶつかれば仲良くなれるんだよ!ね、マシュ!」 

 

「そ、そうなのですか……?解りました!でしたらこのマシュ・キリエライト!全力でぶつかります!」

 

「死ぬぅ!」

 

「真面目に聞きなさい!……聞いたわね!ロマニ!」

 

「はい!今の言葉で僕達の運命は決まった!これより我等はオルガマリー所長の決定の元、原初にして最終のオーダーを実行する!」

 

カルデアが沸き立つ。頼りなく破滅に浮いていた木の板は、今確かに漕ぎ出す船へと変わる

 

「人理修復を行う果てない旅、『グランドオーダー』!カルデア所長、オルガマリー・アニムスフィアの下に決行を裁定します!」

 

 

背筋を伸ばし、前を見据え。今一人の少女が独り立ちを始めたのだ

 

自分の意思で。自分の願いのままに。自らを動かす『生きたい』という願いのままに

 

「総員、自らの使命を全うしなさい!過失と損失の責任は全て私が取ります!!私達の頑張りが、奮闘が!私達自身の未来に繋がるわ!泣き言は、ちょっとだけなら許容します!皆で掴み取るわよ!私達の未来を!!」

   

「皆――進み続けるわよ!私達の明日に!」

 

 「「「了解!!!」」」

 

力強く返答を返す一同

 

自分も、この無銘の英雄王もその一員とロマニは言った

 

 

……自分になにができるか、未だに断言できる訳じゃない

 

でも、少しずつでも。自分の意志で、何かを成し遂げる事を選び、見て、決めてみよう

 

 

あらゆる物事を見て、決めて、処断し裁定する

 

この、至高にして黄金の器――

 

英雄王ギルガメッシュに、恥じない練磨と邁進を

 

己という異物を未だ拒絶せず、見守ってくれている度量に、敬意と感謝を

 

いつかこの器をお返しする折に――

 

 

胸を張って、自分が何者かを高らかに告げられるように。日々を生きていこう

 

 

 

――万物を照らす。あの星に

 

ほんの少しでも、近付けますように――

 

 

 

――――僕はいつでも見ているよ。君の傍らでね――

 

 

 

ふと

 

 

 

――しっかりね。無銘の魂よ――

 

 

 

器でも、魂でもない何者かの声が。胸を打った

   

――そんな懐かしい声が

 

 

 

 

 

 

――聞こえた気がした

 




これにて、無銘の英雄王の魂のファーストオーダーは完結です。いよいよ本番、グランドオーダーに移ります

無銘の英雄王、いかがでしたでしょうか?なんと!このギルガメッシュ、雑種と呼んだ回数が片手で足ります!基本名前か愛称なのです!フレンドリー!

序章とはいえ。暖かいコメントをくださった皆様のお陰で、きりのよいところまで描ききれました! 

無銘の魂を受け入れてくださった皆様に感謝を。善き人々はカルデアの外にもたくさんいます!

特異点ごとにマテリアルを見返してから執筆しようと思いますので、更新遅れちゃうかもしれません、ごめんなさい

でも、一人でも待っててくださる方がいるのなら、拙くても頑張りたいと思います‼

目指せバビロニア!救えウルク!雪崩れ込め、怒濤の採集決戦!!! 

今はひとまず、これにて!ありがとうございました!!

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