人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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「はぁ、はぁ、はぁ・・・!」


「ぜー、はぁ、ぜー」



(・・・なんで女子力の修行で殴りあってるのよ、私・・・)

「私の知ってる女子力はおしとやかで、清楚で、貞淑で・・・いつつ・・・」

「・・・ふふっ、あははははっ!」


「・・・何がおかしいのよ」

「おかしいのではありません、楽しいのです!」

「何が違うのよ・・・」

「こうして喧嘩して、祈りあって、互いを認め合う――とても、素晴らしいものだと思いませんか?」


「少年漫画ワールドに私を巻き込まないで!?私はちゃおとか漫画たいむきららとかそっちの世界の住人でいたいの!河原で友情確かめ合うとか御断りだから!!」


「いいものですよ?少年漫画」

「毒されすぎなのあんたは!拳もう半端なく重ッ・・・いつつ・・・」


「髪を」

「は?」


「髪を、伸ばしてみてはいかがでしょう。きっと貴女に似合います。たなびく髪は美しいと、エミヤさんが言っていました」

「・・・髪・・・」

「えぇ。髪は女の命とも言いますからね。私は貴女にそれを伝えたかった・・・」

「言葉で言いなさいよォ!!なんで伝達手段を拳に頼ってしまったの!?人類が身につけた文明を何故投げ捨てるの!?」

「祈りを伝えなくてはと」

「祈りって手を組んでひざまずいて敬虔にンンンンンンンン――!!」

バタリ

「・・・・・・・・・ねぇ」

「はい」


「マスター、喜んでくれるかしら」

「必ずや」

「・・・ふん。・・・ねぇ」


「はい」

「種火集め、付き合いなさいよ」

「――はい」


「ご無事かジャンヌ!おぉなんと痛ましくまた清々しいお姿か!その姿はまさしく!河原で殴りあい友情を確かめ合うバンチョー達の――」



「私!」
「解ってるわ!」


「ホアッ――!?」



「「そこはスケバンでしょうっ!!!」」

『目 潰 し』



「ホァアァアァアァア――――――――!!!!」


ふらんのけつい

「――聞け、聞け。我が名は蒸気王」

 

 

 

 

迷いを振り切り、確かな足取りにて案内したその先に『彼』はいた

 

 

「アパルトメントのこんな近くにいたとはな。灯台なんとやら、ってか」

 

 

「直感持ちは反省せねばなりませんね・・・」

 

 

「そ、それはしょうがないだろ!この霧がさぁ!」

 

「はいはい霧のせい霧のせい」

 

(投げやり――!)

 

 

灰色の機械のボディ、右手に握る大仰な機械棍棒

 

 

そして――紅く光るモノアイ

 

 

「沖田さん沖田さん!!見てみて!サクラ大戦のアレにそっくり!」

 

『はい!是非中に乗って誠を示したくなりますとも!!』

 

 

「ロンドン歌劇団かぁ・・・マシュがヒロインで、ギルが主役で・・・」

 

「黄金劇場というやつか?・・・いや、この名称はよそう。駄作にしかならん臭いしかせぬ」

 

 

『どういう意味か英雄王!』

 

「はっしっれー、音速のー!(縮地的な意味で)」

『誠の沖田さんー!ヒロイーン沖田さんー!大勝利イェイ!』

 

「摩訶不思議な瞬間移動で逃げられると思わないことです。瞬間移動すると解ったならば、そうわきまえた上で斬り捨てるまでの事」

 

『斎藤さんと同じこと言ってます!?』

 

『拙者も自分の歌劇団を作ってみたいですぞー!拙者主演!ヒロイン、リッカたんで!』

 

 

「ヒロイン――!!」

 

『あなたたち!静かに!静かに!』

 

 

――あの鎧は固有結界が形を成したものと器の眼が見抜く

 

 

「なるほど。ナーサリー・ライムは眠りに落とすことで魔力を絞り上げた。貴様は兵力にて蹂躙することこそが自らを確立させる手段というわけだな?蒸気王」

 

 

 

「――その眼、宿せし神性。黎明の人類を導いた王、ギルガメッシュと認定する」

 

「然り。心して聞け。我が名は英雄王、ギルガメッシュ!貴様ら人類を神より訣別させし、偉大なるゴージャスである!!」

 

 

「――善なる者に寄り添うたか、英雄の王よ」

 

 

「フッ、驚いたか?無理もあるまい。何より他でもない我が驚いているのだからな!」

 

人ならざる機人を前にしても、微塵の動揺も見せない器

 

――己のみを絶対とする価値観。それは、無銘の自分にはとても頼もしい拠り所でもある。肉体と精神が揺らがぬからこそ、確信を以て財を選別できるのだ

 

 

「――私を、打倒しに来たのだな。有り得た未来を掴むことかなわず、仮初めとして消え果てた空想世界の王を。この都市を覆う『魔霧計画』の首魁が一人たる、霧より呼ばれしサーヴァントたる私を」

 

「無論だとも。我が前に敵意を以て立つ者に下す裁定は例外なく処断のみ。そこに弁明の余地はない。――だが」

 

 

 

くい、とマスターに合図を送る

 

 

「冥土の土産の一つはくれてやろう。精々冥府の査定の足しにするがよい」

 

 

「うん!・・・フラン!」

 

呼び掛けに応え、フランがチャールズ・バベッジの前に立つ 

 

 

「バベッジせんせー!」

 

 

「!?――ヴィクターの、娘・・・!?」

 

 

「父はこの世にはもうおらぬがな。目覚めさせる者なきこやつを我等が目覚めさせた。肉体と叡智をくれてやったぞ。・・・精神はまぁ、手違いがあったがな」

 

「モードレッド・・・」 

 

「うるせぇうるせぇ!俺は悪くねぇ!そら親玉!フランと話をしやがれ!」

 

クラレントを地面に突き刺す

 

「お前の知り合いの娘がお前を止めに来た!腹を割って話を聞いてやれ!御託も理想もそれからだ!んで、どうするかはテメェが決めろ!」

 

クイッ、とフランに合図を送る

 

 

「うん!バベッジせんせー!わたしは、あなたをとめたい!」

 

「おぉ・・・ヴィクターの娘よ、お前は言葉を・・・」

 

感嘆の感情を迸らせるバベッジ

 

 

「せんせーは、いだいなるせきがく!みらいをかんがえて、じんるいをかんがえて、じぶんができることをいつもかんがえていたりっぱなひと!わたしを、ヴィクターのむすめとよんでくれたやさしいはかせ!」

 

「・・・・・・」

 

「わたしは、しんじています!はかせはいいひとだと!はかせは、じんるいをみまもるいいはかせだと!そして、ここのひとたちもしんじてくれました!」

 

たどたどしい、けれど必死な説得が響く

 

 

「とまってください!ほんとのはかせは『ほろび』なんてかんがえていない!しんじてます!はかせはじんるいにかかせないきかんをつくった!いだいなるけーがくだから!」

 

 

「――おぉ、忘れるはずもなきヴィクターの娘。他ならぬお前の言葉で、身体で。我が身を案ずるのか、おまえは」

 

 

――敵意は、ない。フランの呼び掛けは、確かに届いている

 

 

「可憐なる人造人間よ。造物主に愛されず、故に愛を欲す哀れなる者よ。――お前の言葉は、我が心を打つ」

 

「せんせー!」

 

 

(その調子だよ、フラン!)

 

(さて、上手く行けば手間が省けてよいのだがな)

 

 

「アルトリア、柄から手を放すなよ。『我が財』が呼び水になっているのなら、恐らくは」

 

「えぇ。――哀しいことですが」

 

 

「そう、だ――」

 

 

バベッジが威厳のある駆動音を響かせる

 

 

 

「私は、我等は。碩学たる務めを果たさねば。我等は人々と文明の為にこそ在るはずだ。故にこそ、私は求めた。空想世界を、夢を新時代を」

 

 

「う!それらは『すべてのひとびとのこうふくのため』!」

 

 

「そうだ。私はお前に語った。文明の意義を。私はお前に語った。人々の幸福の尊さを。――そうだ、ヴィクターの娘よ」

 

 

機械ながらも、優しい視線がフランに注がれる

 

 

「私はチャールズ・バベッジ。鋼鉄にて、文明をみちびかんとしたもの。想念にて、人々の幸福を願ったもの」 

 

「そして、せかいとみらいのはってんをねがうもの!」

 

 

「――そうだ。その通りだ・・・我等は、英雄は、その為に・・・」

 

 

フランの願いが、鋼鉄を貫く――

 

 

刹那

 

 

「グッ・・・!?」

 

 

バベッジの身体が、止まる

 

 

「!?」

 

 

「――チ。有象無象の分際で手早い対応よな」

 

 

『リッカ!フランを護りなさい!』

 

「え!?」

 

『別の場所から凄まじい干渉を確認!これは――』

 

 

「聖杯だ。有り得ざる妄念の使徒め、自らの計画に組み込んだ我が財に呑まれたか」

 

 

器の所感に呼応し、小刻みに震えるバベッジの身体

 

 

 

「これ、は――!アングルボダの、介入――!我が身を縛り、駆動させんとする・・・!計画、その為に・・・!」

 

 

「せんせー!!」

 

 

・・・アングルボダ!?もしかしてそれが、霧を産み出す・・・!

 

 

「そうか、『M』が・・・この、私、さえも・・・!!」

 

「う!?」

 

右手に握られた棍棒が、振り上げられる――!

 

 

「ヴィクターの娘――逃げ、ろ・・・!いや・・・!『私を、止めて』くれ・・・!」

 

 

「せんせ――」

 

 

振り下ろされる棍棒をアルトリアが阻み

 

「モードレッド!」

 

「解ってら!」

 

フランを抱き抱え、マスターの傍に引き下ろす

 

 

「はかせ――!」

 

 

『稼働効率、暴走状態!まずいぞ、今の彼に意思はない!聖杯の強制力で、サーヴァントとしての意思は剥奪されている!』

 

 

――それでは・・・!

 

『――倒すしか、ない・・・!』

 

「――フン。結束すら我が財にすがるとはな。まこと見るに堪えぬ有象無象の集まりよ」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

 

「・・・フラン・・・」

 

 

「どうする?貴様に重荷であるならば、我が代わりに手を下してやっても――」

 

――瞬間

 

「――ゥ」

 

 

「う?」

 

――いけない!

 

『防音』の原典、震動遮断耳栓を全員に配布!聴覚を保護する!

 

「あれ?音が」

 

――配布と『ソレ』は同時だった

 

「――――ゥアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァア――――――――――――ッッッッッッ!!!!!!」

 

 

叫びだった。絶叫だった。

 

 

 

雷鳴や地獄の嘆きにも似た、凄まじい音量のシャウトがロンドンを震撼させる

 

音圧で外灯は砕け、窓にはヒビが入り、ビリビリと大気が悲鳴をあげる

 

 

それは、フランが見せた、『伝承』における嘆きの再現であった

 

 

「――――はい!けついひょーめーかんりょー!」

 

 

グッとガッツポーズをとるフラン

 

 

「バベッジせんせーは、フランがとめます!」

 

「・・・改めて問おう。やれるか?フラン」

 

「やります!せんせーはわたしが!せんせーはいいひとのまま!フランもおはなしできた!なら――」

 

ジャキリ、と、鉄の剣、らしきものを構えるフラン。その目に迷いはない

 

 

「ここでとめなきゃ、おんながすたる!ですよね、ますたー!」

 

 

「――うん!!」

 

 

「そうだ。お前はよく話したし、アイツもそれに応えた。よくやった。――けどな」

 

「想いとは簡単には伝わらぬもの。心が通じ合いながらもその手に握った刃を向け合う。――それが、対話というもの、心という不確定要素のままならなさだ」

 

「う・・・」

 

「だがお前は恵まれている。互いを理解しあい、尊重しあい、自らの介錯を託す相手に恵まれたのだ。この世にはそんな機会に恵まれず、憎悪と悲哀にて互いを罵り、後悔と怨嗟の中で呪詛を謳い命を共に落とす愛し合った者共・・・一括りに悲劇と片付けられし物語は山とある。――貴様はソレに連なることは望むまい?ヴィクターの娘よ」

 

 

「・・・おうさまいうことはむずかしいです。もっとしんぷるに、すまーとにあるべきです。びびっとして、びびっとわかりあう、みたいな」

 

 

――王様言語は哲学だ。聞くだけで自分は勉強になる。ただ・・・授業内容の九割を反芻に割かなければならないのだが

 

 

「ふはは!笑って許せ!王は語りたがりでもあるゆえな!」

 

「うん!物事はシンプルにだよ!いこう!フラン!」

 

 

「うー!さいだいぱわーで、せんせーをとめます!チャージまで、じかんをください!」

 

――倒すためではなく、止めるために

 

 

「よい!貴様に与えられたものはファンブルだけではない!サーヴァント戦に耐えられるクリティカルな肉体、その真価を発揮せよ!」

 

「うーっ!!あたってくだけて、ごーふぉーぶろーく!!」

 

「砕けちゃだめぇ!」

 

怪物と呼ばれた少女は、武器を取る!




「あーまったく。酷い目に遭ったわ・・・」



「(・・・キョロキョロ)」



マイルーム



『ディスク・せかいのわんにゃんこ』



「再生っと・・・」



ニャーン、キャウ,ワンワン

「・・・・・・(*´ω`*)」


一時間後


「・・・やっぱり荒れた心にはアニマルセラピーね・・・さて、もう一枚っと」



エチゼン、オマエハセイガクノハジナンヤデ


「!?」

ネコクジョダ‼ネーコークジョーダゼーツーブーセー


「ちょ、なによこれぇ!?私の、私のアニマルセラピー・・・!」


『リッカたんへ 忙しい人のためのテニミュ くろひげ』

「――あの髭ブッ燃やすッ!!!」

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