人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜   作:札切 龍哦

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ヴィクターの娘よ。私は、お前の父ではない



――ァ


――だが・・・私は、お前の在り方を否定はしない


ヴィクターの娘よ。健やかに在れ

お前の存在は・・・けして、有り得ざる空想では無いのだから


ありがとう、せんせー

灰色の曇天、霧に包まれたロンドン

 

 

雨が降りださんとする空の下にて、英雄達の戦いが披露される――

 

 

「ゥウゥウゥウゥウゥウ――!!!」

 

 

大剣を構え、自らの身体に凄まじい量の電撃を溜め込んでいくフラン。辺りの景色が明滅するほどの凄まじいスパークが迸る

 

 

「けんこん、いってき!いちげきにすべてをかけ、いっぱつでしとめます!だからみんな、じかんを・・・!」

 

 

 

「わかって、らぁ!!」

 

 

巨大な暴走機械と化した、バベッジに勇猛果敢に飛び込むモードレッド

 

 

『!!!』

 

 

「耐えろよ!アンタが目にかけてた娘が、必ずアンタを止めるからな!!」

 

 

振り回されるアームを掻い潜り

 

「だらぁあぁっ!!」

 

クラレントを閃光がごとき迅速で叩きつけ切り刻む

 

『!!!』

 

 

「なっ――!」

 

 

鋼鉄、意に介さず。円卓の騎士の剣は鎧に傷一つつかず

 

 

「がぁあっ――――!!」

 

左腕の一撃が直撃し、吹き飛ばされ建造物にモードレッドがめり込む

 

 

「モードレッド!」

 

「何をやっていますかバカ息子!!」

 

「ッッ、なんだこのバカ力・・・ッ・・・キャスターなんぞに、オレが力負けなんざ・・・」

 

 

「当然であろう。ヤツは今聖杯にて許容限界を越えた魔力で駆動している。存続を埒外にした一撃だ、容易いはずがあるまい。それに加え、ヤツの鎧はヤツが夢見た世界そのものだ。防げるとするならば――」

 

 

「マシュ!」

 

 

「はいっ!先輩!!」

 

 

迫り来るバベッジの間に立ち

 

 

「すぅ――ッ」

 

『!!!』

 

振り下ろされる棍棒、その巨体を

 

「ッッッ――!!」

 

呼吸を整え、阻み、雪花の盾で防ぎきる――!

 

「あのように、守勢に特化した英霊のみであろうよ。・・・いつまで壁になっている気だ、トレイター」

 

 

「ああ解ってるよッ!クソ!マシュはともかくあの盾ヤロウにいいとこ持ってかれんのはガマンならねーぞ!!」

 

瓦礫を吹き飛ばし、モードレッドが吼える

 

 

「モードレッド、剣を当てる瞬間に魔力放出を重ねなさい。拮抗は出来るはずです」

 

「あぁ、十分承知だぜッ!!」

 

 

二人のセイバーが果敢に切りかかる!

 

 

「さて、無様に醜態を晒すのみでは芸がない。更なる展開を期待してよいのだな?蒸気の王よ」

 

 

腕を組みながら、愉快そうに笑う器

 

 

――財を選別する。打撃や破砕に特化した武器の原典、設置。射出は被害を考慮し、20門が限度だろうか

 

もしものときにそなえ、剣、槍もサブで選出。あらゆる手段に対応できるようにしておかなければ

――

 

 

 

「バベッジせんせー・・・」

 

チャージの最中、フランがぽつりとつぶやく

 

「言わなくても解るよ、フラン。・・・苦しんでるね」

 

「う・・・」

 

「・・・止めてあげたいね」

 

「う、ぅ」

 

「・・・必ず止めようね!」

 

「ぅー!!」

 

視線を交わし、頷き合う二人

 

 

『!!』

 

 

セイバー達の攻撃を受け、ぐらりとよろけるバベッジ

 

 

「効いたかデカブツッ!オレと父上に敗北はねぇんだよ!!」

 

 

「気を緩めない!慢心は何処かの世界の英雄王だけで間に合っています!」

 

 

「ははは、こやつめ。ははは。事実であるゆえ反論できぬ。貴様らに教授しておこう。別の我を相手取る際は!初手天の鎖&エアで封殺&粉砕するがよい!格下の雑種と慢心を極めている故、何一つ対応できず塵と化すであろう!何?エアと鎖を持っているのはお前だけだろ、だと?知らぬ!そのような事は我の管轄外だ!己のさみしくさもしい懐を呪え!・・・ん?塵と化す?チリと、カス・・・――ハァッ――ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」

 

 

――成る程・・・別個体の英雄王と戦う際の必勝法、確かに拝聴いたしました

 

英雄王を見掛けたら、即座に拘束し世界ごと切り裂くのがセオリーなのですね。必ず実践いたしましょう

 

 

「こいつマジうるせぇ!!・・・ッ・・・!?」

 

 

莫大な魔力の解放を受けて、ハッと二人がバベッジに向き直る

 

 

『――――!!!』

 

バベッジの駆動音に連動して現れしはヘルタースケルター。総数100は越える蒸気世界の尖兵たちが一斉に襲い掛かる!

 

 

「はぁあ――ん?あぁそうであった戦闘中であったな。フッ、面白い!第一形態からの雑兵召喚とは、ボスバトルと言うものをわきまえているな!」

 

 

「チッ、有象無象らしく薙ぎ払うぞ!!」

 

「えぇ、雑魚にかかずらう暇はありません。経験値にもならぬエネミーなど相手にするだけ――」

 

 

「なら任せて!来て!『スズカ』!」

 

右手を掲げ、光を放つ

 

「はいはーい!やっと出番だしぃ!JKセイバー見参だし?」

 

フリフリの日本衣装に身を包んだセイバー、鈴鹿御前が、霧のロンドンに現れる

 

「つぅか霧ヤバ!湿気激ヤバ!あーもう!髪ベタつくんですけどぉ!」

 

 

「スズカマジリスペクトっすから!よさげな宝具マジヨロ!」

 

「ったくー、特別だかんね~?ホラホラゴリラ二人、ダッシュダッシュ!」

 

「あぁっ!?」

 

「・・・カルデア所属で命拾いしましたね」

 

「ギル!何発か援護お願い!」

 

「フッ、良かろう!」

 

 

「じゃ、狐の嫁入り、いってみる?なーんか此処に一ミリも関係無いくせにでしゃばってきそーな駄狐に牽制を込めて!」

 

「盾ヤロウ!構えて走れ!」

 

「私達の護衛を!斬り込みます!」

 

「はいっ!!やぁぁあぁあ!!」

 

 

 

「――『草紙、枕を紐解けば、音に聞こえし大通連。甍の如く八雲立ち』・・・えっと」

 

 

「アルテミス!私の願いを聞き入れて!」

『いいよー!』

 

「一面制圧射撃は我の得手よ!頭の悪い悪癖だがな!『王の(ゲート・オブ)』――」

 

 

 

剣を頭上に大量発生させる鈴鹿。アルテミスの力を一時的に再現し、弓矢を無数に生産するリッカ。王の財宝、その一端を垣間見せる英雄王

 

 

 

「『カビ臭ポンコツ 雀刺し!文殊智剣大神通!恋愛発破ッ!『天鬼雨』』ッ!」

 

「発射!『アナタに届け、月の光!』」

 

『ハーイ!いっけーリッカー!』

 

――選別、完了!

 

「『財宝(バビロン)』!!露払いは御手の物だ!物言わぬガラクタと成り果てよ!!フハハハハハハ!!これが真なる絢爛と言うものだ!!」

 

 

無数の剣が

 

月の祝福を受け、放たれるレーザーアローが

 

豪華絢爛なる財宝の数々が

 

 

怒濤のごとき質量となり降り注ぎ、放たれ、擲たれる――!

 

 

「合わせろ父上!!」

 

 

「今回だけですよ!」

 

「私の肩を!!」

 

マシュの肩を踏み、魔力放出で飛び上がる

 

「だぁぁああぁあ!!」

 

「はっ!!」

 

勢いを乗せた二つの剣が、バベッジに叩き込まれる!

 

『――――!!』

 

胸に×の形の傷を付けられ、血液のごとき蒸気を噴出するバベッジ

 

 

「しゃあっ!!」

 

 

「きいたようですね!油断大敵ですが・・・!」

 

「この調子なら楽勝・・・だ・・・」

 

 

二人が絶句する

 

『――我が夢見し、蒸気、世界――!』

 

 

身体中の至るところから蒸気を噴出し、凄まじい魔力を生成する。その限界を越えた排出量は一目見て、許容限界を遥かに越えているものと解る程の無茶苦茶な可動だ・・・!

 

 

――まずい、あれはもしや・・・!

 

 

「成る程、自爆か。夢破れた文明が選ぶ手段としては妥当ではあるか」

 

さして動じる様子もなく、愉しみを隠す事ない器が告げる

 

 

「霊核、固有結界を暴走、起爆剤に起用し爆発させる一撃だ。この都市の一つは吹き飛ぼうな」

 

「なっ――!」

 

その事実に絶句するマシュ

 

 

――器の所感は正しい

 

 

サーヴァントの器に限界まで圧をかけ、それを爆発させるのだ、只では済むまい・・・

 

そして、固有結界という存在も追加されるのだ。都市が吹き飛んでもなんら不思議はない!

 

 

「野郎!道連れに吹き飛ぶ気かよ!!」

 

憎々しげに吐き捨てるモードレッド

 

『ロマニ!固有結界を投射する準備を!』

 

『りょ、了解!でも際どいな、間に合うか・・・!?』

 

吹き飛ばす世界を改変しようと準備を始めるマリーとロマン

 

「――マスター、宝具の許可を」

 

冷静につぶやくアルトリア

 

「私の聖剣なら、爆発させる事なく消し飛ばせるでしょう。・・・相応の被害は出るでしょうが」

 

「アルトリア・・・」

 

「なっ、待てよ父上!ここはアンタの・・・!」

 

「だからこそです。『聖剣による僅かな犠牲で』『ロンドンそのものを』救済する。王ならば取ってきた手段です」

 

「そんなもん!いや・・・オレは認めねぇ!!」 

 

「・・・また叛逆ですか、モードレッド」

 

 

呆れるように言うアルトリア

 

「あぁそうだ!ここは父上、アンタが愛した土地だ!アンタが護りし土地だ!それをアンタが壊すなんて認めねぇ!『父上の土地を汚していいのはオレだけだ』!例え、父上だろうと汚すのは赦さねぇ!」

 

「そうですか。・・・マスター」

 

「ッッ――」 

 

「・・・このようにバカ息子がうるさいので、振り切るためにも、令呪で命令してくださいますか?」 

 

「・・・リッカ!」

 

「うん!『どうにもならなくなったら』ね!まだ諦めるのには早いよ!」

 

グッ、と親指を立てる

 

 

「――間に合ったから!」

 

 

――雷電が、迸る!

 

 

「――ちゃーじこんぷりーと!!おまたせしました!!」

 

フランの掛け声と共に、手にするウェポンツールが雷電剣の形を取る!

 

 

「わたしのすべてをかけて!!バベッジせんせーをとめます!」

 

 

「フラン!!――どうだ父上!諦めんのはまだはぇえぞ!!」

 

「――・・・」

 

「何、問題はあるまい。こやつに託してみよ。貴様の剣を曇らせるのは忍びないからな」

 

「――頼みます。マスター、フラン」

 

 

「うーっ!!!」

 

 

「もちろん!令呪をフランに!いっけぇ!!」

 

 

「――さぁフランよ、示すがいい。貴様の怪物(えいゆう)としての雷撃、この我が見定めてやる!」

 

 

「はい!!いきます!バベッジせんせー!!」

 

 

アスファルトを砕き、跳躍し

 

 

「でんげきひっちゅう!びりびりの――どっかんかーん!!」

 

 

身の丈を遥かに上回る電撃の刀身が顕現し

 

 

「『串刺の雷刃(スキュアド・プラズマブレイド)』!!すぱろぼてきぶれーど!!いっけぇ――――!!!」

 

 

迷いし大恩ある碩学に一直線に振るわれる――!!

 

 

『――――――!!!!!』

 

「ウァアァアァアァアァアァアァア!!!!」

 

 

バベッジの蒸気、フランの雷撃がぶつかり合い。その余波にてあらゆるものが吹き飛ばされていく!

 

 

「『ジャンヌ』!!皆を!!マシュ!!」

 

素早くジャンヌを呼び、マシュを呼び戻し

 

「はい!我が旗よ!我が同胞を護りたまえ!」

「宝具、展開します――!!」

 

 

雪花の楯、守護の旗がマスター達を守護する――!

 

 

「――勝負は見えたな」

 

確信に満ちた裁定を器が告げる

 

 

「ホント!?」

 

 

「見るまでもない結果よ。――傀儡に堕し、その理想を見失った者」

 

『我が理想、我が想念――そ、れは――』

 

ビシリ、とバベッジの肉体に亀裂が走る

 

 

「それに対するは・・・知己の為、己が全霊で挑む者」

 

「ウゥウゥウゥウゥウゥウァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァア――――――――ッッッッ!!!!」

 

蒸気が緩まったその瞬間――

 

 

「――気迫の差、というヤツよ。勝負とは強きモノが勝つのでは無い」

 

 

優しき怪物の全霊が――

 

「――気迫(ノリ)のよい者が覇を掴むのだ!」

 

「いーじゃんいーじゃんすげーじゃん!!フラン!!いっけぇぇえ――――!!!」

 

 

――今こそ!

 

 

 

「とどいて――!!」

 

――忌まわしき戒めより、師を解き放て――!!

 

 

「バベッジせんせぇえぇえぇえぇえぇえぇえ――――――ッッッッッッ!!!」

 

 

最大出力にまで高まった雷電刃が・・・

 

『――ヴィクターの、娘、よ』

 

 

「う――!」

 

――機械の、いや

 

『――感謝する』 

 

「ゥウ・・・――!」

 

血の通った、人間の手が、確かに

 

 

――フランの頬を、優しく撫で上げた・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『・・・機能、完全停止を確認』

 

蒸気の王の機能は停止し、粒子となりて退去が始まる

 

『――ヴィクターの娘よ。心から感謝を。我が目にかかりし霧は、お前の雷電に晴らされた』

 

 

傍に寄り添う娘に、静かに語りかける

 

「バベッジ、せんせー・・・」

 

『・・・やはり、お前は・・・失敗作などでは、ない』

 

「――!!!」

 

『その涙、その真摯さ。その優しさ。・・・お前には、清く美しきすべてがある』

 

「・・・ぁ・・・」

 

『――造物主に愛されずとも、拒絶に終わりしものだとしても』

 

砕けゆく右手が、フランの頭を撫でる

 

『・・・世界は。――私は。お前を、お前の在り方を愛している・・・』

 

 

「ぁ・・・あぁ・・・バベッジ、せん、せい・・・!」

 

 

『――人類最後のマスターよ』

 

「――はい」

 

『地下に。地下に行け。そこにアングルボダが・・・我等が計画の中心がある』

 

「・・・はい」

 

『・・・我が想いを遂げることなき世界であれど。我が望みし世界は結実せずとも』

 

ゆっくりと、脱力していく

 

 

『私は――隣人(あなたがた)の世界を・・・滅ぼそうとは、思わない・・・英雄王――』

 

 

「――末期に遺す言葉があるか。蒸気王」

 

 

『――ヴィクターに代わり、感謝を――この娘に、言葉を授けてくださったこと・・・――心から、感謝する・・・――どうか、どうか・・・』

 

――・・・はい

 

 

「案ずるな。こやつは我等が庇護する。・・・有り得ざる妄執の王よ、何一つ憂いを残さず眠るがよい」

 

『――――――感謝する』

 

――退去が、完遂する

 

 

 

「・・・ァ」

 

「・・・フラン・・・」

 

 

「・・・ァ、ゥア、ぁあ、ぁ・・・」

 

 

「――泣いてよい」

 

 

「!!」

 

 

――そうだ

 

 

『人間』は・・・悲しいときには、泣いていいのだ

 

それが・・・

 

 

「我が赦す。――貴様は、嘆き哀しみ、涙を流す『心』がある」

 

 

「――ゥウゥウ・・・ぁあぁあ・・・せんせー、バベッジせんせぇ・・・・・・!!」

 

 

 

――雨が、降る。霧の都に。

 

 

粒は雨となり、雨は涙となって

 

 

「フラン・・・!」

 

マスターが、フランを抱きしめる

 

 

「せんせぇ、せんせぇ!ぁあぁあ!!ぁあぁあぁあぁあ!!ぁあぁあぁあぁあぁあぁあ――――っ!!ぁあぁあぁあぁあぁあぁあ――――っ!!!!!ぁあぁあぁあぁあぁあぁあ――!!!」

 

 

――いつまでも、涙を流す、心優しき怪物を慰めるように

 

 

 

「ぁあぁあぁあぁあぁああ――――――――ッッッッッッッッ!!!」

 

 

 

雨は――嘆き哀しむ少女の心を・・・静かに打ち続けた・・・

 

 




「――行き先、決まったな」


「うん」


「フランのヤツはジキルに任せる。――このふざけた特異点を終わらせるぞ」

「――うん!」

「ならばそれに相応しき財を見繕うとするか。地下への徒による散策なぞ、王の行軍とは呼べぬからな」


――当然、選別は終わっている。『降下』の原典、オプティカルファイバーエレベーターだ

「これを使用すればたちどころに辿り着こう。準備はよいな、アルトリア、マスター」

「えぇ、決着をつけましょう」


「うん!!でも、ちょっとだけ」

「?」

「――フランが落ち着くまで、傍にいてあげようね」

――うん。もちろんだとも
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