メタナイト「!…これは…!」
『聖杯が光り輝く…!』
カービィ「ポヨイ!?」
デデデ大王「今度はなんぞい!?」
メタナイト「強者の断末魔に応え、冥界より姿を現すとされる黄泉からの騎士…。審判の日にどこからか現れるとされる夢見の蝶…」
モルガン「聖杯を寄る辺に召喚されようとしている…!?させるものか…!」
『聖杯と蝶々が一つとなる──!』
カービィ「ポ──ポヨーーーイ!?」
「──無事ですか。プププランドの住人たち」
聖杯と、謎の蝶が巻き起こした大爆発。それらの紅き爆発が収まり顔を上げるカービィたち。そこには、自身の脚で立つモルガンが皆を庇う姿が在った。
「モルガン女王!そ、そなたの玉座が…!」
デデデ大王の言葉の通り、モルガンの玉座は見るも無惨に崩れ残骸と化していた。星に、民に、何一つ傷をつけない為に全てのダメージフィードバックを自身で引き受けたがゆえの、玉座の崩壊。女王としての全てと引き換えに、聖杯の暴威から傷一つ付けずに皆を護った。
「玉座など一から組み直せば良いのです。この国の全て、替えの利かないカービィの故郷の全てを護れたならば本望。デデデ大王、良いですね?」
モルガンにとって国は掛け替えのないものだ。亡国の苦しみなど、自身以外の誰に味わわせるものでもない。正体不明の、紅き騎士を睨みながらデデデ大王に問う。
「じょ、女王…!実に、実にかたじけないゾイ…!」
蝶の羽を生やし、紅蓮の仮面をつけし騎士。その威圧感は先のソウル達とは別格であり、対面しているだけで押しつぶされてしまうようなプレッシャーを叩きつけてくる。
「あれは…やはり、バルフレイナイト…。最後の審判の日に現れるとされる冥府の騎士だ…!」
「ポヨイ…!」
「聖杯を寄る辺に現れたのですか。厄介な…やはり玉座を壊されてしまったのは痛手だったかもしれませんね」
だが、モルガンの心は微塵も揺らいでいない。カービィの故郷を護るため、握る杖に力を込める。彼女にとって、理不尽や不条理はいつものこと。伊達に千年裏切られていないというのが彼女の不屈の座右の銘だ。
「ポヨイ…!!」
カービィもまた、全身全霊の迎撃態勢を取る。デデデ大王も、メタナイトもまた然り。ワドルディ達も逃げずに後ろに控えている。誰も、諦めるものはいないのだ。
(平和だからといって、牙なき家畜の安寧では決してない。なんと素晴らしき国、なんと素晴らしき民達でしょう)
ここに来て、デデデ大王の背後に控える臣下や隣に在るライバル、仲間と共にある者達を彼女は敬服する。ウルクの記録でもそうであったが、国が真に富国たるか否かは窮地にこそ試される。特異点における武則天の国が黒龍の襲撃に完全崩壊したように、国は強く一つでなくては滅びゆくのみなのだ。
ならばその国の強さとは?愚問である。民と王の結束だ。民は王を盛り立て、王は民や己の国の為に尽力する。それが出来ぬ国は、どれほど見目麗しかろうとも滅びゆく運命だ。実例を嫌というほど知っている。
(私も楽園カルデアの妖精にして、心のプププランドを有すもの。ここからが──本気です)
モルガン、そしてプププランド一同が冥界の騎士バルフレイナイトと睨み合う、その最中───
変化は、起こった。
「…!?」
瞬間、バルフレイナイトから光が溢れ出す。それらはバルフレイナイトの赤みを塗りつぶすかのように輝き、煌めき、白き光にて染め上げていく。全てを照らす暖かなものでなく、原子爆弾が放つ光のような絶対的にして暴力的な閃光。
「こ、今度はなんぞい何事ぞい!?」
蝶の羽が白く塗りつぶされ、まるで天使の羽根のように変形していく。一対に留まらず、二対、三対と次々に背中を突き破るように翼が増えていく。
「これは…!?」
紅き身体も白く染められ、やがて6枚の翼が背に生えた頃。バルフレイナイトだったものの面影は既になく、神々しく神聖なる姿に変容した騎士がゆっくりと浮いている。
「ポヨイ…!?」
『──やぁ、皆!はじめまして!プレゼントは喜んでもらえたかな?』
するとその騎士が言葉を発した。いや、正確にはバルフレイナイトだったものを利用し言葉を送っている、といった方が正しい。彼はただ意思を送っているだけなのだろう。
「プレゼント…。それではお前が、あの聖杯を送りつけたサタンなる者なのですね」
『そうだよ、モルガン!僕はサタン。プププランドに送った聖杯は僕が作ったものだよ。羽根を一枚抜き取ってね!』
羽根…あの六枚の羽根のほんの一部であれほどの効果をみせるもの。それが本当ならば、このサタンなる存在は通常のサーヴァントの枠に最早いない。
原初の領域に定義された、『神霊は聖杯など必要としない』というルールに当てはまる存在──。モルガンは彼に、最大限の警戒を飛ばす。
「サタンなる者よ。バルフレイナイトはどうした?どんな手段を使い鎮めたのだ」
メタナイトの言葉に、不思議そうに首を傾げるサタン。
『バルフレイナイト?誰それ?ただ僕は話せる端末を見つけたから意識を飛ばしただけだよ?』
(…冥府の蝶すら意に介さないというのか。この者…輝きを有していながら底の見えぬ沼のようだ…)
『そんな事より、カービィもモルガンも凄かったね!やっぱり力を合わせて不可能を可能に変える!楽園の旅路はそうじゃなくっちゃね!』
一人悦に入るサタンを、モルガンは牽制する。妙な真似を起こせば即座に撃ち抜く用意がある。
『でもね、カービィ。君はまだ助けられなかった人がいたりするんじゃない?倒すしかなかった、或いはすれ違いで消えてしまった相手とか』
「!…ポヨ…」
カービィはその言葉に思い当たる節はいくつもあった。三姉妹、女王、その部下、そして…カービィもまた、誰も犠牲を出さないという険しい旅路を断念せざるを得なかった者であるという事をサタンは告げる。一言で、カービィの顔は陰ってしまった。
「貴様…カービィを惑わすか」
『怒らないでよモルガン陛下ー。カービィ?そんな君の力になりたいから、僕は聖杯を贈ったんだよ』
「ポヨ!?」
『その聖杯を使って『助けられなかった相手に挑むカービィ』を手助けしに行くといいよ。一人じゃどうしようもなくても、モルガン陛下や皆が助け合えばいい結末を迎えられるはずだから。楽園に住む君を、応援したいんだ!』
サタンの言葉に嘘はない。彼は本気でカービィを案じている。モルガンと力を合わせれば必ずハッピーエンドに行けると信じている。彼の言葉には、無垢の確信があった。
「ボク達みたいに、カービィの仲間が増えるのサ!?」
「そんな事できちゃうの!?」
『勿論、失敗したらそれまでだよ。失敗する楽園なんて楽園じゃないからね。どうかな、カービィ。やる気出てきたかな?』
サタンはあくまで、楽園所属のカービィを助けているに過ぎない。そのためだけに話をしている為、誰が巻き込まれようと微塵も意に介す事はないのだ。それが彼の、おぞましき輝きである。
「ポヨ………」
カービィにもまた、悩みや苦しみはある。それらを前に出さないだけで彼もまた、心ある存在なのだ。サタンの言葉を、一概に拒絶することは叶わなかった。
『その聖杯は君のものだよ、カービィ。君が満点の笑顔を浮かべられる選択をしてほしい!それじゃあ──ばいばい!』
瞬間、バルフレイナイトだったものが光に包まれ霧散する。メタナイトが知る銀河最強の戦士すらも瞬時に消し去った黄泉の騎士を、完膚なきまでに支配掌握してしまうサタンなるもの。──その輝きと、圧倒的な力に仮面の下の表情が曇るのは無理からぬ話であった。
「ポヨ…」
カービィは思い悩んでいた。長い旅路、戦い合うしかなかった者たちがいた。倒す他の道を探したい相手もいた。そんな人達の未来を変えることが、本当に出来るのかどうか。
「カービィ…」
デデデ大王の案ずる言葉が重苦しく響く。カービィは今、囁かれ迷い、悩んでいるのである。
──悪魔、いや。大魔王の囁きに。
モルガン「カービィ」
そんな彼に声をかけたのは、女王だった。
カービィ「ポヨ!?」
モルガン「おまえに曇り顔など似合いません。その顔を曇らせるものがあるのなら…共に蹴散らしに行きましょう」
最早冷静な救世主状態の彼女は燃えていた。カービィの曇りを晴らす使命に。
「その聖杯は神域のもの。それを使えばおまえの旅路に寄り添う事は可能です。ああするしかなかった、という選択を…覆しに行きましょう」
カービィ「ポヨイ…」
モルガン「我が騎士よ。諦めるだなんてらしくはありませんよ」
モルガンの言葉に…カービィは強く強く頷いた。
「ポヨイ!!」
モルガン「よろしい。──それではみなさん。私はカービィと共に、聖杯の導く先へと向かいます」
勿論、カービィと二人で。楽園カルデアに帰れる日は伸びるだろうが、必ず帰れるという確信はあるので問題ない。
「名付けて──グランドフレンズ。…準備をしようと思いますので、引き続き案内をお願いできますか?」
デデデ大王「も、もちろんですぞい!まずはゆっくりしていってほしいぞい!」
次なる目的は定まり、カービィとモルガンはさらなる旅へと向かう。サタンの真意をも、掴むために。
メタナイト「…これは私も、動かねばならないか」
カービィ達の次なる旅路の傍ら、メタナイトもまた動き出す。
──楽園カルデアのプレゼントボックスが揺れるのは、その後日であったという。
モルガン「それではみなさん。引き続き、よろしくお願いしますね」
カービィ「ポヨーイ!」
その新しい旅立ちまで──グランドフレンズを完遂するまで、モルガンとカービィは、もう少しだけ楽園カルデアを離れるのであった。
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