人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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「先の話、貴様らには中々に堪えるモノであったであろうからな。王の小粋なトークで口直ししてやろう」




「しかと拝聴するがよい!!」


王が辿り着きし真実

ロンドン、ロンディニウムの地下

 

 

 

「うぉおすっげぇ!!あっという間に来ちまった!」

 

 

地表から数百メートルの深部に、エレベーターを使用し一行は一瞬でたどり着いた。感嘆の声を上げるモードレッド

 

 

「ふふふ、これくらいで驚いてたらギルのお付きなんてできないよ?」

 

 

「はい!英雄王の旅路に、退屈なんて無縁です!」

 

 

「マジか・・・マジかぁ・・・!」

 

 

「そう褒めるな。我が財に不可能はなく、また我が財に底はない。例え人理を救う旅路を終えるまで蔵を騒がせようと、底の一端も見えはすまいよ。フハハハハハハ!」

 

「本当に貴方は規格外ですね。何故生身の人間に負けたのです?」

 

 

「仕方あるまい。物語の勝者は視点によって変わる。主役の補正、天の恩寵を受けしものが勝つのだ。その点においては貴様は実に恵まれていたな?贋作者よ」

 

 

『・・・いい加減、別の時空を引き合いにした罵倒は止めていただけないかね。反応に困るのだが』

 

 

「フン。まぁよい。慢心は毒であり、我なりの慈悲よ。それを無くした我がどのようなものかは・・・今さら語るまでもあるまい」

 

――はい。英雄王は凄いです

 

・・・ちょっぴりジョークセンスがなかったり、脱衣癖があるのが困り者ですが

 

 

「では、さっさと特異点を終わらせるとするか。――霧の大元はアレか」

 

 

器が見やるその先に鎮座するは、見上げるほどの巨大な機関

 

音をあげ駆動し、霧を吐き出し続けるその機関こそが・・・

 

 

 

「『北欧の巨人(アングルボダ)』か。中々によい当てこすりではないか。中学生が頭を捻った名称がごときいじらしさを感じさせる」

 

 

「・・・あ!!」

 

『気付いた?リッカ』

 

「そうだよ!ここどっかで見たことあるなぁと思ったら!冬木だ!冬木の聖杯あったとこだ!」

 

 

――言われてみれば・・・雰囲気、景観どれも瓜二つ、そっくりだ!

 

『ボス部屋のお約束ってやつかな?なんで聖杯安置場所なのに薄暗いんだろうね?』

 

 

「血生臭く匂うからに決まっていよう。酒を飲むには最適の道具だがな。・・・さて、あの戌にはどんな不良品を当て付けてやるか・・・」

 

邪悪な笑みを浮かべる器

 

 

――破壊が必要ならば、財を選別しよう。着弾、爆発をする使い捨て宝具が、損傷を抑えられてよいだろうか

 

「まぁよい。一息に粉砕するぞ。さっさと聖杯を回収し我が楽園に帰還し、宴の一つでも開かねば気が晴れぬ」

 

呆れながら財に手を伸ばす

 

 

 

その時――

 

 

「――奇しくも、パラケルススの言葉通りとなったか。悪逆は、善を成す者によって阻まれなければならぬ、と」 

 

 

響き渡る声。

 

 

「む?この海底にてたなびく海草のような起源を感じさせる声は」

 

 

「あそこ!」

 

指差す先にいるのは、コートに身を包み、澱んだ赤色の瞳に、青い髪の青年

 

「――なんだ、ワカメではないか。いや・・・あれは愉悦部顧問の若かりし姿か?あのちぢれた前髪・・・道化の王たるワカメの気風を感じさせる・・・」

 

 

ブツブツと呟く器

 

 

――解ることは、ここにいる以上は無関係な一般人ではないと言うこと。・・・恐らく、味方でもあるまい

 

ならば・・・

 

 

「巨大蒸気機関アングルボダ。これは我等の悪逆の形ではあるが、希望でもある。ここでお前たちの道行きは終わりだ。善は今、我が悪逆によって駆逐されるだろう」

 

「ほざくではないか道化。我が財にすがらねば悪逆一つ成し遂げられぬ魂を腐らせし虫よ。盗人猛々しいとは貴様らのためにある言葉よな」

 

滑らかな口撃が始まる。よし、今の内に選別だ

 

 

「我が名は英雄王ギルガメッシュ。価値ある財を守護し、獲得するが王道たる至高の王。諦念に囚われし哀れな雑種よ、みすぼらしき貴様にも名の一つくらいあろう。我が財に手を伸ばした不遜かつ身の程知らずの名、記憶してやろう。名を名乗り、そして頭を垂れよ。一撃で首を落としてくれる」

 

「――我が名はマキリ・ゾォルケン。この『魔霧計画』における最初の主導者である」

 

 

「――マキリ・・・――だと」

 

 

・・・?

 

器の様子がおかしい。何か、衝撃的なことを告げられて絶句しているかのようだ

 

「英雄王。万物の裁定者である貴様が、善を守護するとはな。――やはり、悪逆は討ち果たされるが道理、なのか」

 

 

「――・・・・・・」

 

「・・・?ギル?」

 

 

「・・・フ、フハッ」

 

 

・・・?

 

 

「フハハハハハハハハハハハハハハハ!!ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!成る程!そうかそうか!そういうことであったか!それならば頷ける!そういうことならば総て説明がつく!」

 

 

腹を抱え、膝を叩く器

 

 

???い、一体何が王のツボに入ったのか?

 

 

「頭は大丈夫ですか?ギル」

 

「あぁ、あぁ・・・――くくっ。問題はないぞアルトリア。――心して聞け!者共!」

 

 

キッと目を開き、厳かに告げる

 

「この特異点の本質!我は今総て見抜いた!!拝聴せよ!我が言葉に耳を傾けることを赦す!」

 

 

「この」

 

「特異点の」

 

『『本質――?』』

 

・・・千里眼や、所感にひっかかるような重大なワードを見落としていただろうか・・・

 

いや、無粋は言うまい。器が上機嫌なのだ。言葉通り拝聴しよう

 

 

「知りたい知りたい!教えて、ギル!」

 

「無論だ!――此度の特異点、どうにも我は気乗りがしなかった。湿ったロンドン、薄暗い都市、下らぬ街並み。どれも好みではなく、また愉快なものもない。ハッキリいって三流以下の観光地であった。だが――」

 

 

ブン、と腕を振る 

 

「それもその筈!この特異点は!――我を封殺するために作られたものなのだからな!!」

 

「「な――」」

 

 

なんだって――!?

 

「マジですかギル。貴方を封殺するためだけに特異点を製作したと?どれだけ暇なんですか相手は」

 

 

「そう言ってやるな。我を野放しにしてはいかんとようやく気付いたのであろうさ。余りに遅きに失したがな。今さら蹂躙の脚を緩めてやる理由もない。油断も慢心も無く確実に潰す」

 

 

「・・・?」

 

――あちらもあからさまに困惑しているのは気のせいだろうか。いや、そんなはずは・・・

 

 

『り、理由を教えてくれないかなギル。なにを以て君は、君を封殺するために特異点が作られたと?』

 

「なんだ、解らぬのか。ソロモンのファンを自称するにしては察しと知恵の足らぬ男よ」

 

『ほっといてくれ!』

 

 

「仕方あるまい。足らぬ頭の雑種にも解るように教授してやる。・・・大まかな理由は三つだ」

 

 

ワインを取りだし、酒を煽る

 

 

「まず一つは『時代設定』。よりにもよって文明開化、我が庭に無駄が溢れる契機ではないか。我の庭に溢れる汚物や害虫、糞尿を護れという。これで我が遣る気は大半を奪われた。つらい」

 

 

――確かに英雄王は無駄を嫌う。消費文明を嫌っていると言うのは理解している

 

 

「奴隷一人殺せぬ世界から、1000人を間引いても10000の雑種が溢れかえる人に優しき世界に移り変わる切っ掛けが変じた特異点。・・・やる気など上がるはずも無かろう。これが一つ」(切欠、は地名)

 

一息に酒を煽り、再び注ぐ

 

 

「二つは、敵の質だ。怨霊、下らぬ道化師、善かれと思って魔術師、ワカメ。・・・我が手を下すには余りにも不釣り合いな顔触ればかりよ。まぁ、一部例外を除き、我が財が蹴散らしたがな」

 

 

――あぁ、良かった

 

アリスと、バベッジ碩学は。王に敵とはみなされていないのだ・・・

 

 

「モードレッドナイス!」

 

 

「だろぉ?」

 

 

「セイバーがあまりいない、という点ではニコニコでしたが・・・」

 

 

「我的には話にならぬわ。エアはもとより、財宝を放つのも億劫であったぞ。マスターと魂の研鑽がなくば投げ出していたわ。引率も楽ではない。これが二つ」

 

 

「・・・・・・」

 

 

『何いってんだこいつ』的なマキリとやらの視線をさらりと流す器

 

 

「そして――三つ。これがもっとも重要だ」

 

 

ギロリとマキリを睨み付ける器

 

 

「ごくりっ・・・」

 

「そ、それは一体・・・」

 

 

「うむ、よい質問だ。・・・度重なる妨害、嫌がらせにも屈しなかった我の健気さに、いよいよ貴様らは打ってでた。姿を晒し、正体を晒し、形振り構わぬ暴挙に出た」

 

 

バリン、とグラスを割る

 

 

「そう――奴等は我が『腹筋』を破壊する算段を立てたのだ――!」

 

 

「ふ」

 

「腹筋だぁ?」

 

 

・・・・・・え、ちょ

 

 

まさか?まさかです?まさか?

 

これ――すごく、下らなかったりしますです・・・?

 

 

「そうだ!だが我は寸での所で看破した!貴様の姑息な策はここに御破算となった!!我を謀ろうなど100年早い!醜悪な虫の塊になってから出直すがいい!!」

 

 

 

「・・・では、一応訪ねよう。貴様を害する作戦とはなんだ?」

 

 

・・・なんで相手方が聞いてしまっているんです・・・?

 

 

――非常に嫌な予感がするがあえて口をつぐむ

 

 

・・・いや、まさか

 

 

「良かろう。我が至った真理、その下らぬ目論見の真相を語ってやる!」

 

いよいよ以て高らかに、器は言葉を紡ぐ

 

 

「貴様らはロンドンのみならず、英国全土を霧に包み時代を焼却しようとしていた。そうだな」

 

 

「・・・そうだ。ロンドンだけではたりぬ。この時代を焼却することで定礎を消去する」

 

「それが貴様らの諦念の果てに選んだ結末。まこと語るにもつかぬ下らぬ末路よ。真に下らぬのは諦念ではなく、諦念に屈した心根だがな。――まぁそれはよい」

 

 

「いいんだ!?」

 

「貴様らが何に仕え、何に屈し、何に諦念を抱いたかなどどうでもよい。我に楯突いた以上末路は一つだ。我が旅路の彩りとなりて無様を演じ興じさせ、そして地に這いつくばり己の愚かさを総身で悔やんで詫びて死ね。・・・では核心に至るぞ」

 

 

クワッと表情を険しくする

 

 

「英国全土を霧で満たし、時代を焼却する『魔霧』計画!!そしてそれを行う主導者の名、マキリ・ゾォルケン!この二つに当てはまる符号、ここまで語り聞かせれば読み取れよう!!」

 

 

「魔霧に・・・マキリ?魔霧計画・・・」

 

 

――あっ

 

 

「貴様らの王とやらなどどうでも良いが、ジョークセンスだけは認めてやらねばならぬな!!そう!!人理焼却ならぬ我が腹筋焼却を為さんとしたその渾身の計画の全貌とは――!!」

 

 

 

ガァン!!と脚をならし腕を組み、どや顔をする英雄王

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――『マキリ』が撒きリ(し)『魔霧』」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「・・・・・・・・・・・・」」」」

 

 

『『・・・・・・・・・』』

 

「・・・・・・・・・」

 

 

――――神よ

 

 

 

「ハァッ――ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!よせ!控えよ!!腹がよじれる!死んでしまうではないか!マキリが勧める魔霧計画!よくいったものだ!ハハハハハハハハハ!これは!これは流石に予想外であった!この我と!対等なジョークセンスの持ち主がいようとはな!ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」

 

 

 

――神よ!シュメルとか、メソポタミアとかのあらゆる神々よ!どうして――

 

 

「そら!笑え笑え!!懸命に考えたジョークなのだ笑ってやれ!雑種ではあるが道化としては一流だ!!貴様らの王とやらは最高の芸人だぞ!!フハハハハハハ!!」

 

 

 

どうしてこの王に――ジョークセンスを与えなかったのですか――!!!!!

 

 

「・・・なぁ」

 

 

「ん・・・?」

 

 

「バカだろ、アレ」

 

 

「すごく偉大で、カッコよくて、憧れで、今まで会ってきた男性で二人目の一番素敵な人だけど・・・うん、愉快、と書いてそう読んじゃうよね」

 

 

「ギル・・・貴方はここまでこの旅を楽しんでいるんですね・・・楽しみすぎてバカにしか見えませんが・・・」

 

 

「・・・王のセンスは解りません・・・」

 

『ノーコメント!僕はノーコメント!』

 

『今度・・・ジョーク、ユーモアをケイローン先生に教えてもらわなくちゃ』

 

(あぁ、無銘の傍に駆け寄ってあげたい・・・)

 

――王の大爆笑はいつ終わるとも知れず続き

 

 

「はぁ・・・はぁ・・・・・・はぁ・・・いかん、笑い死ぬところであった。つまらぬと言っていたが訂正しよう。この特異点、最高に面白きものであったわ・・・」

 

終わる頃には・・・

 

 

「ん?」

 

 

『我が名、バルバトス。我が悪逆の写し身にて汝を滅ぼさん・・・!』

 

 

目の前に変な柱があった

 

 

「なんだ、我が慧眼に真実を暴かれそこまで恥じ入ったか?余程図星を突かれて悔しかったと見える」

 

 

・・・よし。エアで吹っ飛ばして聖杯抱えて帰ろう・・・フォウを抱きしめて眠るんだ・・・うん

 

 

「笑うだけ笑った、暴く真実は暴いた。・・・よし、貴様は用済みだ。フランに涙を流させた罪過を贖い、原初の塵に還るのだな」

 

 

ゆっくりと、乖離剣を引き抜く・・・

 

 

刹那

 

 

『英雄王、皆!この場はこの謎のヒーローX・・・いや』

 

 

「わわ!?」

 

 

召喚の術式が発動し

 

 

「この、アーサー・ペンドラゴンに任せてほしい!」

 

「なっ――アーサー、だと・・・!!」

 

 

 

(一名除き)皆知ってた、謎のヒーローXの正体が明かされる・・・!!

 

 




「アーサー、今まで何をしていたのです。人類悪の話をしたころより姿が見えませんでしたが」


「すまない、アルトリア。冬木からオケアノスまでのフリークエストを特訓がてら総てクリアしてきたんだ」


「ファッ!?」

「お陰で霊基の調子は万全だ!さぁ、ここは任せてくれ!」

「・・・父上が」

「ん?」

「父上が・・・父上だとぉお!?」

「良かったですね。アーサー。これいります?私はそんなにいりません」

「父上!?」

「ははっ、そうして油断したところをモードレッドごと、だろう?」

「はい、まずはモードレッドを犠牲にします。セイバーの殲滅その犠牲に。犠牲になるのです・・・セイバー、セイバー、愚かなセイバー。貴方はその罪、解ってない。反逆、重さを、解ってない」


「父上ぇえぇ!?」


「うん、流石にモードレッド二人はちょっと」

「ですよね。私も嫌です」


「父上ぇえぇえぇえ!?」

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