人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜 作:札切 龍哦
ベリアル【大魔王サタンだと…?オレ様を差し置いて好き勝手にやっているじゃねぇか】
(円谷ではまぁ色々あってデビルスプリンターだのアブソリュートだので騒がしいようだが、息子に引導を渡されたオレ様には関係ねぇな)
【だが、息子と違いオレ様の娘は人間だ。負けるはずは無いにせよ、アブソリュートタルタルソースだのなんだのに狙われない保証はねぇか…】
(よし、オレ様が一肌脱いでやるか。かわいい娘の護身具を用立ててやる)
【参考資料を探すか…だが実際問題、ウルトラマンは地球人どもにはでけぇ。小さいままにするのは中々疲れる。折衷案はねぇか…む?】
『ULTRAMAN広告』
【ほう…人間が独自にウルトラマンを模したSUITSを作り戦う、か…ハッ。脆弱な連中の考えそうな事だ】
(…いや、これは案外使えるのかもしれねぇな。リッカは基本等身大の活動がメインだしな)
【──よし、ものは試しだ。NETFLIXに登録して見てやるとするか…】
【というわけで、お前の為にベリアルSUITSを製作する。父の粋な計らいに感涙しても構わないぜ?】
「いきなりどうしたの…!?」
ベリアルカプセルから響く開口一番。お前の為にSUITSを作ってやるというフリーダムウルトラマン、ベリアルパパ。本来カプセルにはカプセル一個分の力しか無いはずだが極めて真っ当に話せているのは何故なのか。理屈が通じないウルトラマンそれがベリアルである。
【最近オレ様の残骸を巡って小物どもが忙しなくてな。それはまぁいいんだがオレ様自身はヒマなわけだ。だからこうして、娘の安全を用立ててやるって考えに至った訳だ】
「な、なるほどぉ…部員ネット時空では確かベリパパって一線を退いてるんだっけ?」
【あぁ。故にオレ様は自由にお前の時空にちょっかいを出せられるわけだ。ベリアルアトロシアスカプセルには、オレ様の魂の一部を宿らせてバックアップ代わりにしているからな。この宇宙、この時空においてオレ様は不滅というわけだ】
光の国の皆様が聞いたら血相変えるアイテムを託されていたリッカ。顔面蒼白の彼女を意に介さずベリアルはカプセルから語りかける。
【異星人共や宇宙の小物は、地球に多く潜んでいるものだ。隠れて人を食ったりさらったり、くだらん悪事を働く事に余念が無い奴ら…そんな奴等は大抵が悪質な宇宙人だ】
「地球は素晴らしいけど、人間は軽視されがちだもんね…」
【そういった奴等は水面下で事を運ぶことを好む。それに重ねてアブソリュートタルタルソースだのなんだので宇宙も騒がしい。お前も、対宇宙人の装備の一つも持ってなきゃあぶねぇって訳だ。オレ様の言葉は理解できるな?】
リッカは頷く。ようはぶっきらぼうではあるが自身を心配してくれているのだ。地球人は侵略のノウハウが少ない。異星人にされるがままなのは気に食わない。実にベリアルなパワフル論理である。
【そこでだ。オレ様は円谷が作り上げたもう一つのウルトラマンの世界、最近スーパーロボットなんちゃらにも参加した作品を知った。ウルトラマンが去った後、人間がSUITSを着込む人間どものウルトラマン物語…名付けて【ULTRAMAN】だな】
ベリアルはディーヴァの端末に乗り込む。ヒェッとなったディーヴァの隣を通り抜け、その映像を見せる。
【見ろ、リッカ。ウルトラマン因子を受け継いだ小僧と、人間の猿真似のスーツが重なればこれ程の力を出すことができるんだぜ】
「おぉお…!」
それは、メカニカルアレンジが加わったメカウルトラマンが宇宙人とアクションを繰り広げる光景が拡がっていた。プロレス技系統のプロトタイプ、コネクターを重ねることで放つスペシウム光線など、実にメカニカルでSFなウルトラマンなのは疑いようがない。
【主人公、早田進次郎は親父からウルトラマン因子を受け継ぎ超人的な力を有している。ウルトラマンごときの因子を持っている程度で是程の力を振るえるようになるわけだ】
ビルを飛び越え、大跳躍し空中のヘリに乗り込み大気圏を生身で突破する。ウルトラマンの超人的な力は確かに遺伝していたのだ。
【ならば…オレ様は対抗し、我が娘に超高純度のベリアル因子を授けてやる。これはストルム星人に息子を産み出させた際に渡したオレ細胞と同等、いやそれ以上の純度を誇るものだ。何を隠そう、このカプセルの中にそれらは詰まっている。リッカ、この因子を取り込みオレ様の強さと力を手に入れろ。SUITSを纏うに相応しき資格を得るためにな】
ベリアルは息子であるウルトラマンジードを産み出した時より遥かにノリノリで事に及んでいる疑惑がある。息子には厳しく娘には甘いタイプだったのだろう。カプセル一個分に自身の最重要因子を仕込ませておくあたり相当な過保護である。
【そしてSUITSを作り上げ、お前が装着する晴れ舞台を見届けた後、地球に不法侵入している奴等を締め上げる。カルデアにまた一つ礼装ができちまうって事だ。良かったじゃねぇか】
「う、うん!何が凄いって、ベリパパが凄く協力的なところ!」
【オレ様は娘は溺愛するタイプだ】
息子のリク君にももう少し手心を…そう思わずにはいられないリッカであったが、憚ることなく自分を娘と呼んでくれるベリアルの懐と情の深さには救われる思いだった。
【では早速オレ様の因子を…と、思ったが。いきなり生身の身体に因子を打ち込むのは、拒否反応や適合するかどうかが危なっかしいじゃねぇか。オレ様としたことが逸るところだったぜ】
「い、意外…『適合できなきゃ死ぬだけだぞ、リッカ』って言われるかと思ったんだけど…!」
【1から作った実験体だった息子と違い、お前にはお前のままでいてもらわなくちゃあ意味がねぇからな。慎重にもなるってもんだろうよ】
いちいち発言が暖かく息子には厳しいベリアルの子煩悩っぷりに思わず目頭が熱くなるリッカ。そして、彼は中々に数奇な運命を子たちに託そうとしている。
ウルトラマンとしての運命と宿命を、息子であるウルトラマンジード…朝倉リクに。
ULTRAMANとしての道を、娘であり人間であるリッカに。悪の道に邁進している筈のベリアルが、皮肉にもウルトラマンの可能性に挑戦し続けている。運命というものは、とても数奇なるものである。
「──うん、わかった!じゃあベリパパの因子、受け取ってみる!」
それならば、自分も魂をかける価値はあるというもの。朗らかに立候補するリッカに、ベリアルはやや難色を示す。
【おい、オレ様の話をちゃんと聞いていたか?因子を取り込むにはリスクがだな】
「メリットだけ貰って、リスクはいらないなんて甘えた考えだよ、ベリパパ。大塚料理長が言ってたんだけど、毒も薬も飲み込むのが肝要なんだって。ベリパパの贈り物なんだから、それ相応の気合で飲み込まなくちゃ!」
リッカは最初から、そう答える以外に言葉を選ばなかっただろう。自身の思う以上に覚悟を決めていたリッカに、ベリアルは満足気に頷く。
【──いいだろう。お前の頑丈さに懸けてやろう。カプセルを砕き、超高純度のベリアル因子をお前のものにするがいい…】
ベリアルは娘の意思を尊重し、任せることにした。リッカは頷き、アトロシアスカプセルを握り、そして…
「ふっ!」
バキリ、と握り潰す。全宇宙の悪の宇宙人達が喉から手が出る程欲する貴重品が、今一人の人間の為に使用され、宿ることとなった。その判断を、ベリアルは満足気に見やる。
「っ…!?」
瞬間、リッカの身体に黒と緋の因子が流れ込み、彼女の魔術回路を変質させて行く。
【どうだ、リッカよ。身体に異常は無いか?】
父に問われ、身体を見渡してみるもおかしいところは無い…身体に不調も無い。拒否反応も起こさず無事吸収は成功──と、思いきや妙なところに変化は訪れる。
【おい、お前の背中に何か浮かび上がっているぞ。なんだそりゃあ】
「ふぁ?」
言われるがままに鏡にて見てみると、背中には龍の六翼とベリアルの両目の意匠を象った禍々しい刻印が刻まれていた。おそらくこれはアジ・ダハーカと、ウルトラマンベリアルを模したものであろう。
「魔術師の家系じゃないのに魔術刻印みたいなのが背中に浮かんじゃった…!?」
【背中に入れ墨か。温泉には入れなくなっちまうが、オレ様の力を取り込むデメリットにしてはまぁまぁだな。そら、ラボに行くぞ。リッカ】
どこか楽しげに、娘との交流を楽しみながら…凶悪なる等身大のウルトラマンベリアル制作計画が動き出したのであった…
にとり「SUITSを作れって!?」
ベリアル【やってみせろ。カルデアの技術を見せてみるがいい】
にとり「ウルトラマンを人間大スケールに抑える…!しかもそれがウルトラマンベリアルだって!?着るのがリッカだって!?」
【出来るよな?】
にとり「できらぁ!!見てなよリッカ!絶対に作ってやるからな!」
リッカ「う、うん!」
ベリアル【楽しみだ…我が娘は、オレ様の力を得てどれほど強くなるのか…】
にとり「うわっ、背中に入れ墨彫ってんのか!」
「違うよ!?」
ベリアル(強くなれ、娘よ。息子のように…ウルトラマンジードのようにな…)
悠々自適に子の面倒を見る、ベリアルなのであったとさ。