人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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「はーい!ビーストの皆さんしゅうごー!私のセイバー!私のセイバーの見せ場でーす!ちゃんと注目してねー!あ、三日前から全裸待機してたけどフォウ先輩何か言うことある?」


「臭いんだよ服着ろよ。ボクが至高の裸体と認めるのは一人だけだから。オマエみたいな腐ったファブリーズ常習女なんか願い下げだから」


「ひどーい!」


「それより・・・」

「はいはい、約束の一つでしょ。わかってますよーだ。ほーら、おいでー、マナカの胸においでー」

「なんでヘドロやコールタールに飛び込まなきゃいけないんだよ、浄化されろよ」


「辛辣ー!」


白銀なりし星の極光――解き放て!未来を救え!アーサー!

天にそびえる肉塊、魔神柱

 

 

 

バルバトスと銘打たれしその醜悪なる肉塊、見るも語るもおぞましき魔神に

 

 

 

「あ、アーサー!大丈夫!?一人で・・・!」

 

 

 

ゆっくりと、確かな足取りで。蒼銀の騎士王、アーサー・ペンドラゴンが歩み寄る

 

 

 

「あぁ。マスター。本当は独断専行なんて悪いことなんだが、ここはどうしても、僕に任せてほしい」

 

 

「随分と強気ではないか。剣を振るう内に、何か思い出しでもしたか?」

 

 

「あぁ。――告白させてもらうと、今の今まで、僕の頭には霞がかかったように不明瞭な箇所があった」

 

 

「痴呆ですかアーサー?そのルックスで?」

 

 

「父上!ここは黙るとこだぜ!絶対!」

 

 

 

――やはり、その特異なる召喚が原因だろうか

 

 

彼は、まるで『届けられた』ような召喚であった。サークルが起動し、独りでにカルデアに招かれたようだった

 

 

・・・そんな超常の存在の手でここにいる自分は、まぐれや運命と一笑に伏すことなどできない『意志』を感じたのだ

 

 

「何のために召喚されたのか?何のために剣を振るうのか?僕は何を救うのか?――その総てを、君の言葉と、君の在り方で思い出せたんだ」

 

 

視線の先にいるのは

 

 

「ほう?貴様に向けて何かを語った覚えは無いのだがな」

 

 

黄金なりし器、英雄王

 

 

「あぁ。僕個人じゃない、君が皆に語った『人類悪』という概念、そして『決戦術式』としての英雄の在り方・・・――それは、僕の迷いを、打ち払ってくれたよ」

 

 

――彼の姿に迷いはもうない。銀のように輝き、蒼き空のようにすみわたっている

 

 

「僕の果たすべき使命、打ち払うべき巨悪。人類最古、黎明の世界を見定めた王に――高らかに謳ってみせるとも」

 

 

「よい。許す。此処ならざる世界、アルトリアの原型なりし騎士の王よ。この我の眼に、しかとその輝きを魅せるがよい」

 

「あぁ!・・・そして、マスター」

 

つぎに向けられるは、人類最後のマスター、リッカ

 

 

「君に、心からの敬服を。フランという一人の少女の心を、刃を振るうことなく奮い立たせた君の輝かしき在り方に、僕は敬意を表する」

 

 

「あ、聞いたの?大袈裟だよ!私はただ、フランの話し相手になっただけ。誰かを救ったなんてつもりはないよ。――人を救うって、そんな簡単な事じゃないしね」

 

 

「先輩・・・」

 

――時折見せる、マスターの人生観は鮮烈だ

 

『誰とでも仲良くなれる』という光と『人は醜く、悪意を忘れぬものである』という闇

 

 

それを兼ね備えているマスターの生きざまは、やはり英雄には明瞭に伝わるのだろうか

 

 

「そうだね。・・・でも君は、誰かと繋がることを恐れはしないだろう?」

 

 

「それはね!意思と心があるなら、私は必ずだれとでも繋がってみせるよ!それが私、藤丸リッカの人生だからね!」

 

 

――マスターの在り方は、まさに太陽だ。

 

 

そこに在るだけでいい、そこにいるだけでいい

 

 

あなたを照らす理由は、それだけでいいのですと・・・その在り方にて雄弁に語るのだ

 

 

「――その在り方に、フランという少女は救われたんだ。そして僕は、その魂のカタチこそが好ましい」

 

「アーサー・・・あ、忠義ね!?忠義の話だよね!?」

 

「ご想像にお任せするよ――故に、僕の剣を託すことに、迷いはない」

 

 

笑顔を浮かべた表情が、引き締められる

 

 

 

「見ていてくれ、マスター。僕の真価、君の目で見定めてほしい。これから肩を並べる騎士として、マスターたる君に相応しいかどうかを」

 

 

「――――うん!」

 

 

 

力強く頷くリッカ

 

 

「見せて!アーサー!貴方の輝きを!」

 

 

「あぁ!アルトリア、モードレッド、マシュ。君達も見ていてくれ。――マスターを守護する、仲間達として」

 

 

揺るぎない言葉と視線、態度はまさに『王』

 

 

哄笑と華美、裁定と絢爛にて君臨する『英雄王』とは正反対

 

礼節と自制、騎士たる振る舞いを是とする、あらゆる者が模範として見上げる『騎士王』の姿がそこに顕れていた

 

 

 

「まぁセイバーという時点で遅かれ早かれカリバるのです。華を持たせるも良いでしょう。しくじりは許しませんよ、セイバーとして」

 

「あぁ!」

 

「・・・謎のヒーロー、いや、アーサーか。・・・見せ場は譲ってやる。父上の決断ってなら、まぁ円卓のよしみだ。しくじんなよ!」

 

「ありがとう、モードレッド」

 

 

「台詞被せないでください」

 

「あっ・・・う、うるせー!」

 

 

 

「・・・マシュ」

 

 

「は、はい!」

 

マシュの肩にそっと手をおく

 

 

「怖いままで、悩んだままでいい。君はそのまま進むんだ。君の道には必ず光がある。いいね?」

 

 

「――はい!」

 

力強く頷くマシュに頷き返し

 

 

 

「では――始めるとしよう!」

 

 

ゆっくりと、聖剣を抜刀し高らかに掲げる

 

 

 

「――聞け!!彼方より来たりて、総てを喰らうもの、その一端なりし魔神よ!!」

 

闇を晴らし、光を是とする輝きと確信に満ちた清廉なる言霊が放たれる

 

 

「我が名はアーサー!!アーサー・ペンドラゴン!!父ウーサーの嫡子にして、ブリテンを守護せし、円卓に連なる騎士達を束ねし王だ!!」

 

 

「フッ、我とはまるで毛色が違うが・・・よき王気よ。異世界の貴様と言うのは誤りではないな、アルトリア――ぐぬっ!?」 

 

器の軽口を、チョップで遮るアルトリア

 

「私以外のセイバーを褒めないでください。もやっとしますから」

 

「フン、ヤツが何者であろうが、貴様の在り方は変わるまい。余裕を持て、アルトリア」

 

「解ってますよ。私こそがセイバーの中のセイバーなのですから!」

 

「二人とも、静かにしろ!見逃すぜ!」

 

「わぁ・・・敵に啖呵切ってるギルと雰囲気が同じだぁ・・・」

 

 

「お前たちもよく見ておけ。あれが紛れもなく、一つの時代を統べた王の姿だ。まぁ・・・我以外の王道はどうでもよいがな」

 

 

――正義を詠い、善を鼓舞し、正道を説き、正しき理想をその身に背負う

 

 

人として、理想を完璧に体現した王・・・それが、騎士王

 

 

――英雄王の王道が『豪奢』『孤高』であるなら、彼の王道は『規律』『模範』。対極に位置する、金と、銀の輝き

 

 

・・・そんな印象を、垣間見た

 

 

どちらが正しいか、比べるなんて烏滸がましい。―一つだけ、言えることは

 

何を目の当たりにしようとも、英雄王への想いは揺らぐことが無いという事実と確信だけである

 

 

でも間違いなく・・・あの輝きは、美しいと断言できる

 

 

(ボクはぶっちゃけ、たくさん見た光だからなぁ)

 

 

そんなフォウの呟きが、聞こえた気がした

 

 

 

『ブリテンの騎士王、我等が悪逆を阻むか』

 

 

「あぁ、阻むとも!人間の理想、星の幻想が生み出せしこの剣に誓い、お前たちの目論見を阻止して見せよう!!――さぁ!行くぞ!!」

 

 

『――!!』

 

 

バルバトスの凝視、視線による熱量の着火がアーサーを襲う

 

 

――だが

 

 

「『十三拘束解放(シールサーティーン)円卓議決開始(デシジョン・スタート)!』」

 

両手にて聖剣を構え

 

 

【承認――】

 

溢れだす輝きが凝視を払い、紡ぎ出された音声が、施されしアーサー王の聖剣拘束を取り払っていく

 

 

己よりも強大な者との戦いである(ベディヴィエール)

 

――解放。光が放たれる

 

一対一の戦いである(パロミデス)

 

――解放。輝きが増す。

 

精霊との戦いではない(ランスロット)

 

――解放。増幅された魔力は刀身を溢れ、視覚できるほどの濃縮された光と変わる

 

 

 

「なんだあれ!?父上と同じ聖剣だろ!?」

 

『凄いわ・・・!一つ拘束が解放される度に、魔力が乗算されていく・・・!』

 

「えっ!?」

 

――乗算!?2×2×2という計算式なのか・・・!

 

 

 

「成る程、自らの聖剣に総出で封印を施していたか。配下の騎士どもの承認なくば本領を発揮せず、使い処を制限される、か、まことに――」

 

 

「かっこいぃいぃい!!!」

「めんどくさいですね!」

 

マスターとアルトリアが同時に叫ぶ

 

 

「拘束、承認解放のシークエンス完備とか最高!ニチアサ!?ニチアサなの!?ニチアーサー!?あっ!見覚えある!あるよあれ!!仮面ライダーブレイドキングフォームだ――――!!!!」

 

 

「なんなんですか!カリバーにまで干渉してくるんですかあの円卓たちは!なんなんですか!!王にブッパしてほしいのかほしくないのかどっちなんですか!?」

 

「落ち着け父上!別の父上!別の父上だから!」

 

 

「あなたたちの承認なぞ不要です!振るいたい時にぶっぱして振るいたい時にカリバる!それが真のセイバー道に他なりません――!!」

 

 

『うぅん、アルトリア見てると正しい気が・・・』

 

「・・・清く正しい王に、清く正しい騎士。流石は、音に聞こえし華のキャメロット」

 

 

我では一日と保たんだろう、とうんざりげに吐き捨てながら、輝きをみやる

 

 

 

『――この、光は・・・』

 

 

いくら凝視し、火を放とうとも。黄金の輝きに呑み込まれ、阻まれ、無力となるバルバトスの攻撃

 

 

邪悪との戦いである(モードレッド)

 

黄金の魔力粒子が辺りに満ち溢れ、地下の暗黒一切を塗り替える

 

 

『――耐久、回避の可能性・・・皆無』

 

 

決議無用・自動承認(ガレス)

 

爆風と振動が一帯を支配し、地響きが大地を揺らし、一直線に伸びた光の柱が遥かなる天空に向けて、バルバトスすら上回る太さと高さを誇り屹立する

 

 

『――崩壊、限り無く確定事項と判断。計画の遂行を優先』

 

 

私欲なき戦いである(ギャラハッド)

 

 

もはや直視すれば眼が潰れ、悪であるならば晒されただけで消滅するほどの光の奔流、質量すら擬似的に獲得した輝ける黄金の瀑布が無差別、縦横無尽に放たれる。

 

 

大気は歓喜の悲鳴を上げ

 

 

 

踏み締めた大地はひび割れ砕ける

 

 

 

星そのものを具現化させたかのような輝きは、王命を得るその時を待つ――!

 

 

「っ、あ――・・・?」

 

「マシュ?」

 

ぐらりとよろけるマシュを支えるリッカ

 

 

「どうしたの?大丈夫?」

 

「は、はい。なんだか今、身体の奥底が、疼いて・・・」

 

「ひょっとして、マシュの中の英霊もテンション上がってたりして?」

 

「ひ、ヒーロー好きな英雄なんでしょうか・・・?」

 

「たわけ、余所見をするな。いよいよ本領の――『半分』を見せるときが来たぞ」

 

 

――半、分?

 

 

 

『――然れど汝は、その瞳を混沌に曇らせ侍るべし。汝、狂乱の檻に囚われし者、我はその鎖を手繰る者――』

 

 

「此は――」

 

 

アーサー・ペンドラゴン。誉れも高き騎士王が訃げる

 

 

「――【世界を救う戦いである】!!!」

 

 

 

【アーサー】

 

 

白銀の武骨な刀身が弾けとび、星の内海にて鍛え上げられた極光を刃と為す黄金の剣が姿を表す――!!

 

 

『汝三大の言霊を纏う七天・・・抑止の輪より来たれ、天秤の――』

 

 

――其は、星を救う輝きの聖剣。およそあらゆる悪を退ける黄金の刃

 

 

 

此処ならざる世界の決戦、自らを太陽と同一せし王との雌雄を別ける戦いにて。救世の一射と共に振るわれし、穢れ無き理想と殉教の極致

 

 

その輝きに呑み込まれし王が『彼等こそ、自らに代わり世界を救う者達である』と確信を抱きし消滅を認めた至高の刃

 

 

 

原初の地獄を示すが乖離の剣ならば

 

その光は『人よ、斯く在れ』と誉れと模範、理想を示す聖なる剣

 

 

 

――――彼方より来たりし獣よ、この輝きを見るがいい

 

 

 

下段にその聖剣を構え――

 

 

 

――皆を余波から護らなくては・・・!

 

「我の後ろから動くなよ、マスター、マシュ」

 

 

右手に『天の鎖』を巻き付け、A+クラスの強度に補強し辺りを守護する

 

 

――来る!

 

 

 

――白銀なりし常勝の王は高らかに

 

 

 

『――――――』

 

 

手にした奇跡の真名を謳う!

 

 

 

――其は!

 

――――『約束された(エクス)!!勝利の剣(カリバー)』ァアァアァアァアァアァアァアァアァア――――――――ッッッッッッッッッッッッ!!!!!

 

 

 

獅子のごとき咆哮と共に剣を振りあげる

 

 

 

束ねられ、鍛え上げられ、打ち上げられた輝きは、比類なき光の刃となりて、大地、天、あらゆるものを呑み込みながら魔神に迫る!!

 

 

 

『――統括局に打電、我が所感を、我が感慨を報告する』

 

 

万物を抉り、呑み込み、砕き、蹴散らし、荒れ狂う熱量と奔流の化身となった『聖剣』は、その質量を思うまま魔神に叩き付ける

 

 

『人類最後のマスターと、それに率いられし者たちは。我等の計画の――障害と、なる、可能性を、ひめ――――』

 

 

――魔神はそれより先。意思を、理性を赦されなかった

 

 

邪悪なる肉の柱は、更に圧倒的な光の息吹に晒され、浄化され――昇華され

 

 

『――――――――』

 

 

――凝視したのは、目を潰さんばかりの光

 

 

最期の光景を目にし

 

 

――マキリ・ゾォルケンもろとも・・・幻想の彼方に消え去った――

 

 

 

「――ふぅ」

 

 

総てを消し飛ばし、一段落を終えたアーサーが息を吐く

 

 

「――見たか。これが、人の夢見る輝き。理想と夢により鍛え上げられた至高の一撃」

 

 

柄を、強く握り締める

 

 

「この光と、それを信じる者達が有る限り。世界はけして滅びない。――いつか必ず、善き人々がお前たちに至り。そして打ち倒すだろう」

 

 

白銀の輝きに、曇りなく

 

 

「僕と、仲間達――そして、その先頭を走る英雄達の王と、最後のマスターが必ず!」

 

 

 

掲げた黄金の剣もまた、輝きを放っていた――




「きゃぁあぁあぁあぁあぁあぁあ!!聞いた!?聞いた!?私に至るって!!セイバーが今私に至るって!!それって!それってプロポーズ!?プロポーズよね!?セイバーったらぁぁあぁあぁあ!!」

「お幸せに」


「フォウ先輩も聞いたよね!?聞いたよね!?」


「近寄んなヘドロ女ァ!!ボクは美しいものソムリエだ!泥に投げ捨てられたコールタールゾンビなんか視界に入れたくも無いんだよ!!オマエの臭いがこびりついて無銘に『くさいね、フォウ』なんて言われてみろ!ボクは即座に霊長の殺戮者だ!!」

「セイバー!セイバー!!あははははっ!うふふふ!あははははっ!!」

「はぁ、はぁ・・・――約束守ってくれたら何も言わない。精々後ろからまた刺されればいいさ。で、ゲーティア。バルバトスがオマエに」


「我が偉業!我が誕生の真意を知れ!!」

「それしか言えないのかこの鹿ァ!!もうやだ、無銘、英雄姫の胸に飛び込みたい・・・」


「Aaaaa(大丈夫?膝、貸そうか?)」

「あ、お願い・・・」


「私も、是非あの光に・・・というかいっそカルデアに・・・」


『ぉおぉおぉおぉおぉお!!』


「ま、またですかグランドアサシン様――!?」

「あぁ~・・・」





「――――」

「あれが、ファラオの認めし輝き・・・このニトクリス、感服いたしまし」

「――・・・尊い、とは、こういう、ものか・・・(消滅)」

「ふぁらっ、ファラオ――!?」




カルデア



「そうか。・・・あいつは」 


『ビール』


「何も変わっちゃいない。代わらず、善の為に剣を振るう、か・・・嬉しいねぇ・・・見てるかい?ファラオの兄さん・・・」

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